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おもしろサイエンス
毒と薬の科学

定価(税込)  1,728円

編著
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07354-0
コード C3034
発行月 2015年01月
ジャンル 化学

内容

天然由来、人工合成も含めて多くの化学物質が薬として使われて人間の生命や健康を守っているが、薬になる化合物はその使い方次第によって肉体や精神を損なう毒にもなる。毒にもなれば薬にもなる化学物質を化学、生物学の面からとともに歴史的、文化的な面からも取り上げる。

佐竹元吉  著者プロフィール

(さたけ もとよし)

執筆者

第1章 毒の基礎知識
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター 研究協力員)

第2章 毒と人間の古い関わり
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター 研究協力員)

第3章 植物の毒と薬
関田 節子(昭和薬科大学 特任教授)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター 研究協力員)
紺野 勝弘(富山大学 和漢医薬学総合研究所 教授)

第4章 動物の毒と薬
紺野 勝弘(富山大学 和漢医薬学総合研究所 教授)

第5章 鉱物の毒と薬
伏見 裕利(富山大学 和漢医薬学総合研究所 特命准教授)
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター 研究協力員)

第6章 化学合成の毒と薬
佐竹 元吉(お茶の水女子大学 生活環境教育研究センター 研究協力員)

第7章「くすり」と薬物乱用
牧野 由紀子(東京大学 大学院薬学系研究科 研究員)

目次

第1章 毒の基礎知識
1 毒になる化学成分
2 毒の症状から見た分類
3 毒の由来から見た分類
4 毒の強さの表し方
5 中毒を治す薬「解毒剤」

第2章 毒と人間の古い関わり
6 毒の利用は古代エジプトで高度に発展
7 ソクラテスが飲んだ毒とは何か
8 古代中国の医学書に記載されていた毒鳥は実在した
9 正倉院に保存されていた毒物
10 タバコは新大陸から薬として伝わった
11 熱帯で使われていた矢毒が現代の医薬品に

第3章 植物の毒と薬
12 カビから作られる薬
13 ライムギ中毒を起こす麦角菌から産婦人科薬
14 きれいな花には毒がある
15 古くから薬として利用されてきた猛毒植物トリカブト
16 チョウセンアサガオで世界初の全身麻酔手術
17 キツネノテブクロの表は薬、裏は毒
18 テロリストが用いたトウゴマの毒タンパク
19 毒樹イチイが抗がん剤に
20 センナのダイエット茶で起きた中毒事件
21 アマチャの誤用で起きた健康被害
22 薬にならなかったキノコ毒
23 抗がん剤の開発に利用されるカビ毒

第4章 動物の毒と薬
24 ガマカエルから採取する心臓の薬
25 ヘビ毒から高血圧の薬
26 トカゲの毒から糖尿病の薬
27 イモ貝から強力な鎮痛薬
28 カイメンの細胞毒性物質から抗がん剤
29 ハチ、クモ、サソリの毒と薬

第5章 鉱物の毒と薬
30 漢方薬に用いられる鉱物
31 不老不死の薬として使われていた水銀
32 水銀問題で使用制限された赤チン
33 ヒ素も薬として使われていた
34 セレンは有毒元素にして必須微量元素

第6章 化学合成の毒と薬
35 化学合成薬の副作用で起こった薬害事件
36 世界規模の薬害事件を起こしたサリドマイドが難病治療薬に
37 キノホルムによるスモン病で薬事法が大改正
38 網膜症の原因となったクロロキンの類似化合物が膠原病の薬に
39 効能効果も副作用も多いステロイド剤

第7章 「くすり」と薬物乱用
40 なぜ薬物乱用は規制しなければならないか
41 歴史の長い栽培植物アサから大麻
42 アヘンから鎮痛薬モルヒネ、麻薬ヘロイン
43 麻酔薬として使われていたコカイン
44 喘息の薬の開発研究で得られた覚醒剤
45 覚醒剤の取り締まり対策
46 医薬品の開発研究で生まれた合成麻薬
47 医薬品の研究成果が悪用され流通した危険ドラッグ
48 薬物依存は病気であるから治療が必要

Column
「毒消し」の薬
幻の動物の毒と薬
毒薬の知識の豊富だったアガサ・クリスティー
カモノハシの毒
中国の文人を虜にした鉱物性薬物
農薬が起こした中毒事件

索引

はじめに

「毒にも薬にもならない」という言葉は役に立たないという意味で使われていますが、化学物質には使い方次第によって毒にも薬にもなるものがいっぱいあります。
 薬の歴史は、裏を返せば人と毒との関わりの歴史でもあります。
 人類は誕生してから長い間、自然界の中から食べられるものを見つけ出し、病気になると身の回りの植物から薬草を捜し出し、狩猟のために矢に塗る毒物を捜すという原始的生活を行っていました。その後、農耕や牧畜が盛んになり、文明が生まれてきました。
 最古の文明である古代エジプトでは、4000年前には医療に関する情報がパピルスに書かれており、この頃の医療技術が現在の西洋医学の基盤となっています。それと同時に毒の利用も高度に発展しました。エジプト最後の女王クレオパトラはいろいろな毒を下女で試して、コブラの毒を選んで自殺しました。古代中国では、農業と薬の神様である神農大帝が、百草を嘗めて食用か薬草か毒草かを選びました。これらの中で、健康増進に寄与するもの、薬になるもの、および有毒だが薬効のあるもの365種類が選ばれています。
 漢方薬の原料として古くから利用されてきた植物には毒をもつものも多く、トリカブトのような猛毒植物も、燻製にして安全な薬にすることができます。
 第二次大戦後、さまざまな化学合成薬が開発され、これによって多くの病気が治るようになりました。しかし、その一方で、サリドマイドやキノホルムのように深刻な副作用による薬害事件も起こり社会問題となりました。
 精神を損なう各種の麻薬(乱用薬物)は鎮痛剤や麻酔薬や疲労回復薬などとして医療にも用いられています。最近社会問題となっている「危険ドラッグ」も、医薬品のために研究開発された化学物質が悪用されているものです。
 現状では薬として利用されていない毒物もこの先、薬に利用できる可能性を秘めており研究が進められています。
 本書では、このように使い方によって毒にもなれば薬にもなる化学物質を、化学、生物学の面からとともに歴史的、文化的な面からも取り上げます。

2015年1月  
佐竹 元吉 

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