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松陰の妹二人を愛した名県令・楫取素彦
松下村塾を支え富岡製糸場を救った群馬の恩人

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ 四六判
ページ数 252頁
ISBNコード 978-4-526-07341-0
コード C3034
発行月 2014年12月
ジャンル ビジネス

内容

楫取素彦(かとりもとひこ)<1829年~1912年>は、吉田松陰の親友で松陰投獄後、松下村塾を支え、維新志士としても参謀として名を馳せ、明治9年に群馬県令となった人物。2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公である美和子(文)は松陰の妹であり、楫取素彦の二番目の妻(一番目の妻はその姉)。(第二次)群馬県初代県令として、蚕糸業の発展、教育の振興など、群馬県の基盤を築いた名県令としても有名。

大野富次  著者プロフィール

(おおの・とみじ)

1945年群馬県生まれ。

群馬銀行勤務。群馬郷土史研究所主宰。

前橋市文化政策懇話会委員。(前橋市文化振興条例案審議)

『群馬郷土史研究所紀要』(創刊号)監修・編集・発刊。

小説『杢左エ門の死』(新聞社・大衆日報連載)

千葉県銚子市市民ミュージカル(庄川杢左エ門)に協力。

越前大野市より前橋支店主に委嘱され、文化活動に協力。

『剣豪/上泉信網の魅力』(歴史読本掲載・新人物往来社)

産経新聞コラム『えにしで結ばれた郷土史』連載。

『沼田氏の研究』(群馬風土記)・『上野伊達家の一考察』(群馬風土記)

『補陀落渡海における上野国と琉球王朝のえにし』(歴史散歩の会)

他多数。

目次

はじめに  


序 章 素彦が最も開花した地方官時代

1 足柄県令時代  

2 『難治の県』への赴任  


第一章 儒官の時代

1 江戸遊学  

2 松陰の妹・杉寿との結婚  
3 吉田松陰との親交  

4 小田村伊之助と越氏塾  

第二章 志士の時代

1 第一次長州征討  

2 改名を命じた敬親侯の親心  

3 第二次長州征討  

4 敬親侯の懐刀・姓を楫取素彦と改名  
5 敬親侯の逝去  

6 坂本龍馬との会談  
7 薩長同盟の端緒役から坂本龍馬の死・王政復古  

8 新政府参与就任  


第三章 県令時代

1 至誠を以て県政を施行  

2 群馬県令楫取素彦の妻・寿の事  
3 松陰の妹・美和子(文)との再婚  
4 船津伝次平の推挙を決める  

5 県都を前橋に移した楫取県令  

6 日本一の蚕糸県・群馬の礎を築く  

7 銀行の設立  
8 鉄道の敷設  
9 ユネスコの世界遺産『富岡製糸場』に繋いだ恩人  

10 文化財保護  
11 全国に先駆けての廃娼運動  

12 楫取群馬県令と鈴木貫太郎一族とのえにし  

13 義兄・民治への熱い思いやり 

14 臨江閣と茶室 


終 章 現存する楫取素彦と寿・文の残照記録

一 群馬県  

二 埼玉県  
三 東京都  

四 静岡県  

五 京都府  
六 山口県  
七 アメリカ合衆国  



参考文献  

掲載写真一覧  

協力者一覧  

楫取素彦・寿・文年譜  

あとがき

はじめに

二○一二年に楫取素彦の没後百年に当たり、萩市では萩博物館に於いて『楫取素彦と幕末・明治の群像』と題する記念特別展が催され、防府市では『楫取素彦没後百年顕彰会』が発足となり、大楽寺境内に『顕彰標』が建立するなど活発な動きを見せている。

 名県令として多くの功績を遺した楫取素彦を称えるため、群馬県では顕彰会を中心に、有志によって銅像建立の動きがあるなど、友好都市である萩市市長等を迎え二○一三年には、前橋で楫取素彦のシンポジウムが開催された。

 二○一五年からの大河ドラマ『花燃ゆ』では、素彦の妻・美和子(文)がヒロインとなっており、関係機関の自治体は特に注目を集めている。
名県令として惜しまれながら風のように群馬県を去っていった素彦であるが、調査をしていくうちに、大変な人物が地方官として赴任したものだと再認識する次第である。

 時間は未来に向かって動いているが、人間は未来にばかり目を向けていると、過去の過ちを繰り返すと考える。戦争体験のない者が、過去の歴史を直視せず、検証しないままに政治を司ることほど危険なものはないからである。

 人間形成の上で重要なのは、過去の歴史人物を知ることであるが、その所作を与えてくれるのが楫取素彦ではないかと考えている。この人物が生きた幕末は、イデオロギーのぶつかり合う激動期であり、生々しい殺戮が日常茶飯事に起きた時代である。

 この日本の大きな転換期に、素彦のとった行動には大変興味を示すものがあるが、それは、藩の中枢に居りながら、脱藩もすることなく、暗殺を企てる輩にも属さず、武力によって相手を圧倒する行動を一切主導しなかったことである。だが、消極的であったわけではなく、藩政のこと、国事に関することも、全て建白によって自らの考えを示しているのには驚く。

 建白して了解を得るというスタイルは、藩士時代から地方官時代に至るまで一貫している。このように、突出した行動や主導する立場を執らなかったことが、明治新政府の一翼を担うまでにはならなかったともいえるが、幕末の行動を振り返れば、それらの人物以上に重要な役目をしたことがわかる。本書では、そのことを詳述することに心掛けている。

 楫取素彦という人物の一生は、藩校・明倫館の儒官の傍ら、名君である藩主毛利敬親に従い、藩の命運を左右する幕府との交渉にも捨身で行動している。また、薩長同盟の端緒を務め、明治維新の切っ掛けをつくった功績や、一地方官として輝かしい事績を積み重ねるなど、行政官としての事績を辿れば、日本の民主主義の先駆者といっても過言ではない。

 本書は、素彦の儒官時代から志士の時代を経て地方官として、晩年に至る八十四年間の資料をもとに弛まない一生を通し、妻であり松陰の妹である寿(前妻)と美和子(後妻)のすべてを綴ったものとして、新たな発見と人生観を感じられたら幸甚である。


大野 富次

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