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SiC/GaNパワー半導体の実装と信頼性評価技術

定価(税込)  3,888円

編著
サイズ A5判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-07339-7
コード C3054
発行月 2014年12月
ジャンル 電気・電子

内容

SiCやGaNなどの次世代パワーデバイスの実用化が進むためには、これらワイドギャップ半導体の信頼性が確立されることが重要で、そのためには、高温度の熱衝撃に耐えられる信頼性の高い鉛フリー・ダイアタッチ技術や、高周波の伝送損失を抑えられる新しい配線技術が必要とされている。本書は、本技術を実装面で確立するためのこれらの技術および信頼性の評価手法などを解説したもの。また、その際に必要となる新たな実装材料やパッケージング構造の設計についてもまとめている。

菅沼克昭  著者プロフィール

(すがぬま かつあき)
1977年東北大学工学部卒業、1979年東北大学工学系大学院原子核工学専攻修士修了、
1982年同博士課程修了、同年、大阪大学産業科学研究所助手、
1986年防衛大助教授、1996年阪大産研教授、現在に至る。専門:実装工学、材料工学

目次

はじめに 

第1章 緒 言  
 1.1 電力変換とパワー半導体  
 1.2 パワー半導体の実装と信頼性課題  

第2章 ワイドバンドギャップ半導体パワーデバイスの現状と実装  
 2.1 パワーエレクトロニクスとは  
 2.2 ワイドバンドギャップ半導体の特長とパワーデバイス  
 2.3 パワーデバイスの性能指数  
 2.4 他のワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスの現状について  
 2.5 ワイドバンドギャップ半導体にむけた実装技術の課題  

第3章 SiC/GaNパワー半導体の開発  
 3.1 SiCとGaNを用いたパワーデバイスとは  
 3.2 SiCデバイスの特徴(低オン抵抗、高温動作、高速動作)  
 3.3 SiC SBD  
 3.4 SiCトランジスタ  
 3.5 SiCモジュール  
 3.6 GaNパワーデバイスの特徴  
 3.7 GaNパワーデバイスの特性  
 3.8 GaNパワーデバイスの応用  

第4章 ワイヤボンド技術  
 4.1 ワイヤボンド技術とは  
 4.2 ワイヤボンディングの種類  
  4.2.1 ワイヤボンディング方法  
  4.2.2 接合メカニズム  
 4.3 ワイヤ接合部の信頼性  
  4.3.1 パワーモジュールの疲労破壊  
  4.3.2 接合部の破壊現象  
  4.3.3 接合部におけるクラック進展  
  4.3.4 ワイヤ接合部の破壊に及ぼす影響因子  
 4.4 ボンディングワイヤ材料  
  4.4.1 アルミボンディングワイヤ  
  4.4.2 銅ボンディングワイヤ  
  4.4.3 銀、ニッケル素材のワイヤへの適性評価  
  4.4.4 クラッドボンディングワイヤ  
 4.5 ワイヤに代わる接続技術  
  4.5.1 リボン接続  
  4.5.2 リードフレーム接続  
 4.6 むすび  

第5章 ダイアタッチ技術  
 5.1 ダイアタッチ  
 5.2 鉛フリー高温はんだ  
  1) Sn-Sb系はんだ  
  2) Bi系はんだ  
  3) Au系はんだ  
  4) Zn系はんだ  
  5) Sn-Cu系はんだ  
 5.3 TLP接合  
 5.4 金属焼結接合  
 5.5 固相接合とストレスマイグレーション接合  
 5.6 ボイド  
 5.7 今後の展望  

第6章 モールド樹脂技術  
 6.1 半導体パッケージとは  
 6.2 パワーモジュールの構造と適用材  
  6.2.1 ケース型パワーモジュール  
  6.2.2 モールド型  
  6.2.3 パワーモジュールパッケージの進化  
 6.3 封止材に対する要求特性  
  6.3.1 絶縁性  
  6.3.2 低熱応力  
  6.3.3 接着性  
  6.3.4 耐酸化性  
  6.3.5 高放熱性  
  6.3.6 流動性と成型性  
  6.3.7 耐湿性と信頼性試験  
 6.4 高耐熱技術の開発状況  
  6.4.1 高耐熱シリコーン樹脂  
  6.4.2 高耐熱エポキシ樹脂  
  6.4.3 熱硬化性イミド樹脂  
  6.4.4 高耐熱ナノコンポジット材料  

第7章 基板技術  
 7.1 パワーモジュールの変遷と適用される基板  
 7.2 基板概要  
  7.2.1 基板種類と分類  
  7.2.2 セラミック基板  
  7.2.3 メタルベース系基板  
 7.3 放熱板/MMC(金属-セラミック複合体)  
 7.4 SiC/GaNパワー半導体用基板における要求特性  
 7.5 今後の基板技術動向  

第8章 冷却技術  
 8.1 冷却技術とは  
 8.2 SiC/GaNパワー半導体の特長とその冷却にかかわる課題  
  8.2.1 高温動作への対応  
  8.2.2 発熱密度の増大への対応  
 8.3 電機・電子機器の冷却技術の基礎  
 8.4 パワー半導体の冷却において考慮すべき要件  
 8.5 次世代パワー半導体の冷却の考え方  
 8.6 ワイドバンドギャップ半導体冷却への適用が期待される技術  
  8.6.1 熱伝導経路の進化:直冷式冷却器  
  8.6.2 冷却構造の進化:両面冷却モジュール  
  8.6.3 熱伝達の進化:液冷用高性能フィン  
 8.7 サーマルインターフェースマテリアル  
  8.7.1 サーマルインターフェースマテリアルとは  
  8.7.2 次世代半導体用サーマルインターフェースマテリアル  
  8.7.3 TIMに求められる特性と問題点  
  8.7.4 高熱伝導率を達成できるフィラーシステム  
 8.8 高温動作実現のために  

第9章 信頼性評価・検査技術  
 9.1 パワー半導体の信頼性試験  
 9.2 代表的な環境試験  
  9.2.1 保存試験(高温、低温)  
  9.2.2 保存試験(高温高湿)  
  9.2.3 温度サイクル試験  
  9.2.4 高温動作寿命試験(高温逆バイアス試験)  
  9.2.5 高温高湿バイアス寿命試験  
 9.3 その他の環境試験  
  9.3.1 減圧試験  
  9.3.2 塩水噴霧試験  
  9.3.3 加湿+実装ストレスシリーズ試験  
 9.4 パワーサイクル試験  
  9.4.1 パワーサイクル試験の種類  
  9.4.2 パワーサイクル試験の負荷方法  
  9.4.3 熱抵抗  
  9.4.4 試験装置に求められる性能仕様  
 9.5 パワーデバイス信頼性試験における検査方法  
  9.5.1 X線透過解析  
  9.5.2 超音波映像装置(SAT:Scanning Acoustic Tomograph)  
  9.5.3 断面観察  
  9.5.4 ロックイン赤外線発熱解析  
 9.6 材料の熱抵抗評価  
  9.6.1 界面熱抵抗を含んだ熱伝導特性(有効熱伝導率)  
  9.6.2 熱特性評価システムの構成と測定原理  
  9.6.3 熱特性測定事例  
 9.7 まとめ  

編集後記(編集を終えて)  
索 引  

はじめに

パワー半導体の長い歴史の中で、Si製品適用の限界が見え始めている。Siデバイス技術の弛まぬ改善から電力変換損失削減の限界が近づき、さらに、小型化、高周波化、大電力化などで、今以上の特性を出すことがかなり困難になってきた。一方で、世の中の電力機器は増加の一途である。国内には約1億台の電動モーターが稼働しているが、このために必要な電力が日本の全消費電力の6割に当たるそうだ。パワー半導体によって省エネルギー化が達成できれば、莫大なエネルギー消費とCO2排出量の低減が達成される。また、発電所から各家庭に送電する間に、何度も電力変換されるために6割ほどが消失しているという。さらに、IoTによる情報ネットワークの高トラフィック化は鰻登りで、端末機器ばかりでなく通信基地局などインフラ設備を含めた電力消費は、先進国はもちろん開発途上国における膨大なエネルギー損失の原因になっている。このような世界的なエネルギー問題に対応する1つの現実的な解がパワー半導体の普及であり、且つ、Siに替わるワイドバンドギャップパワー半導体の実現である。
 世界のパワー半導体の市場成長は大きく、毎年、10%近い成長率を示している。日本においても、安定した成長産業として、持続的に発展することが期待される。幸いなことに、パワー半導体は「摺り合わせ」の技術が集成された「アナログ的」な技術である。半導体メモリのように、生産がデジタル化され、高価な装置を買えば世界の何処でも生産できる成熟産業にはなり得ないものだ。同時に、今日の日本の電子・電気産業が世界に先行して築いた最も強い分野であり、モノづくりの絶妙なバランス、材料、プロセスが要求される世界であり、これからも長く国内に定着できる最先端の技術である。
 一方で、この技術領域に注目しているのは、もちろん日本ばかりではない。SiCやGaNなどのワイドバンドギャップパワー半導体は、省エネルギー技術の切り札として、日米欧をはじめ世界中で大規模プロジェクトが開始されている。ウェハ製造の完成度が高まり、実際の生産拡大が強く望まれる時期となり、その最大の関心がこれまで経験のない耐熱実装技術に注がれている。言うまでもなく、実装は電子機器モノづくりの最後のハードルである。パワー半導体の実装においては、デバイスの機能を十分に発現することに加え、これまでにない機器の安全安心を実現するための設計が必須である。SiCやGaNの実装では、250℃から300℃の高温までの熱衝撃に耐えられる高信頼の鉛フリー・ダイアタッチ技術や、大電流と熱の負荷に耐え、しかも高周波の伝送損失を抑えられる新しい配線技術が必要とされている。
 動き出した世界のパワー半導体産業の流れの中で、ワイドバンドギャップパワー半導体の実装に関し基礎と信頼性に焦点を当てて本著を執筆する機会を得られたことは、筆者一同、幸運と感じている。本書では実装に的を絞り、その現状と課題を各分野の最先端を熟知する専門家により詳説している。主な章立ては、ワイドバンドギャップパワー半導体の現状と実装、モジュール構造と信頼性課題、ワイヤボンド技術、ダイアタッチ技術、モールド樹脂技術、絶縁基板技術、冷却放熱技術、信頼性評価・検査技術である。極限環境における材料の劣化メカニズムの解明は、まだまだ十分なレベルに達していないが、今後どのように対応を進めるべきであるかを、できるだけわかりやすいように、新たな実装材料やパッケージング構造の設計についてもまとめている。ちなみに、実装にはリアクトルやスナバコンデンサなどの受動部品やEMI対策なども含まれるが、最新技術に関しては新たな情報が蓄積されるまで待つことにしたい。
 最後になったが、本書を執筆するに当たり大変良いタイミングで執筆の機会を与えてくださり、最後まで遅々として進まぬ執筆に実に辛抱強くお付き合い頂いた日刊工業新聞社の辻總一郎氏には、執筆者一同、深く感謝したい。本書が、パワー半導体の製造現場で信頼性向上や新たなチャレンジに取り組もうとする技術者、あるいは、これからワイドバンドギャップパワー半導体に取り組もうとする研究機関の技術者や研究者の皆様に少しでもお役に立てれば、筆者一同、誠に幸いと感じる次第である。
 
平成26年12月吉日
大阪大学 産業科学研究所 
菅沼克昭 

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