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製造業の原価管理を根本から変える!
付加価値会計の強化書

定価(税込)  2,484円

著者
サイズ A5判
ページ数 260頁
ISBNコード 978-4-526-07326-7
コード C3034
発行月 2014年11月
ジャンル 生産管理

内容

本書で提案する「付加価値会計」とは、付加価値の基本式(売上高-外部購入費=付加価値)に則り、労務費と固定費を配賦しない「付加価値ベースの損益計算」。モノづくりに関連しない非製造業の会計手法で、合理的な範囲で原価計算を行うこと。本書は先の「モノづくりを支える管理会計の強化書」の続編として、付加価値会計の提案を通じて、製造業におけるこれからの管理会計を解説する。

吉川武文  著者プロフィール

(よしかわ たけふみ):公認会計士

東京工業大学工学部修士卒。エンジニアとして三菱化学株式会社、太陽誘電株式会社に勤務。新製品開発や革新的な生産技術の開発に従事。数十億円規模のコストダウンや自動化の成果により三菱化学プレジデント表彰などを受賞。特許出願多数、1級保全技能士など。原価計算を研究し業務の傍ら公認会計士試験に合格した後、有限責任監査法人トーマツにて勤務。財務監査、内部統制監査、国連の排出権審査(CDM)などに従事。日本公認会計士協会の経営研究調査会サステナビリティ保証専門部会に参加。公認会計士登録の後、大手電機メーカーの生産技術部部長を経て、現在は横河ソリューションサービス株式会社にてコンサルタントとして活動中。

目次

〈はじめに〉利益って何だろう?


序 章

1.製造業を揺るがす4つの環境変化
2.環境変化に対応する新しい管理会計とは?

第Ⅰ部

管理会計のあるべき姿

第1章 何故、付加価値なのか?

1–1 管理会計を行う目的

1–2 管理の目的に答えられなくなった原価計算

経営意思決定に使えない/売価計算目的に使えない/予算管理目的に使えない/原価管理目的にも使えない

1–3 付加価値会計の必要性

第2章 誤った判断を導く固定費配賦

2–1 不適切な配賦率

更新されない配賦率/力関係で決まる配賦率/他部門の影響を受ける配賦率

2–2 誤った判断を導いた固定費配賦

2–3 簡便な計算で、タイムリーな意思決定!

2–4 配賦を止めると何が起こるか?

2–5 どうしても分担させるなら、総額を明確にしてから

第3章 管理会計が目指すべきもの

3–1 原価計算とPDCA

3–2 管理すべきものを管理する

3–3 新しいコアコンピタンスへの対応

3–4 削減ではなく成長の視点を

3–5 付加価値の成長こそ判断の軸


第Ⅱ部
付加価値会計のコンセプト

第4章 固定費と配賦の問題

4–1 製造業と原価計算

4–2 直接費と間接費の区分を見直す

4–3 二階建ての配賦計算

4–4 変動費と固定費の区分を見直す

第5章 原価計算において解決すべき課題

5–1 全部原価計算の計算構造

5–2 全部原価計算が抱える5つの問題点

第6章 直接原価計算という試み

6–1 2つの原価計算(全部原価と直接原価)

6–2 ジャストインタイムと相性の良い原価計算

6–3 直接原価計算が採用されない理由

6–4 直接労務費は変動費か?

6–5 直接原価計算が解決した課題、解決していない課題

第7章 管理会計でコアコンピタンスを管理する

7–1 製造業の2つのコアコンピタンス

7–2 ①現場のモノづくり力の管理

7–3 ②モノづくり力や研究開発を踏まえた創造力の管理 

第8章 付加価値会計の基本となる3つのポイント
ポイント1.付加価値を明示する

ポイント2.管理のカーテンを取り払う

ポイント3.研究開発費の管理から逃げない


第Ⅲ部
付加価値会計で回すPDCA

(あしはら製作所の戦い)

PART1-PLAN編

第9章 損益分岐点分析(CVP分析)
9–1 CVP分析による利益計画(タイプ1)の理解

9–2 CVP分岐による利益計画(タイプ2)の理解

9–3 CVP分析と連携する付加価値会計、利益の三角形

第10章 付加価値会計における利益計画の手順

10–1 ベース資源を把握する(STEP 1)

10–2 付加価値計画(販売計画とコスト計画)を立てる(STEP 2)

10–3 成長計画を立てる(STEP 3)

10–4 資本コスト計画を立てる(STEP 4)

10–5 調整とフィードバック(STEP 5)

第11章 利益最大化の3原則

11–1 利益の三角形と、利益最大化の3つの原則

11–2 原則A:生産・販売数の増加

11–3 原則B:付加価値率の向上

11–4 原則C:固定費の生産性向上

第12章 従来の管理会計による中期計画

12–1 数字合わせの中期計画

12–2 管理のカーテンにぶつかる

12–3 技術者よ、大志を抱け!

第13章 付加価値会計による中期計画

13–1 成り行きでの損益予測と問題把握

13–2 コストダウン計画

13–3 購入価格の交渉計画

13–4 新製品の投入計画と成長の視点

PART2-DO編

第14章 勝てるカイゼンを目指す

14–1 カイゼン復活の前提

14–2 カイゼンが目指すべき2つの姿

14–3 7つのムダと付加価値

第15章 勝てる自動化を目指す

15–1 自動化によるコストダウンという罠

15–2 自動化が及ぼす影響

15–3 自動化に失敗しないための考慮

第16章 勝てる原価企画を目指す

16–1 コストダウンができない理由

16–2 作り方で負けているのではない

16–3 全社の協調による原価目標の設定

第17章 勝てる発注管理を目指す

17–1 在庫観の違い(製造業vs流通業)

17–2 適正な在庫を考える5つの要素

17–3 「材料在庫」と「製品在庫」の違い

17–4 何をムダと考えるのか?

17–5 リードタイムと金利

第18章 勝てる増産判断と生産分担

18–1 全部原価計算による検討

18–2 付加価値会計による検討

PART3-CHECK編

第19章 原価差異の管理

19–1 標準原価と原価差異

19–2 原価差異の計算(変動費の場合)

19–3 原価差異の計算(固定費の場合)

19–4 原価差異の管理

19-5 管理をすれば差異が出る

PART4-ACTION編

第20章 研究開発プロジェクトの管理(縦糸の管理)
20–1 どうやって付加価値を増やすか?

20–2 個別プロジェクトの評価(縦糸管理)
正味現在価値法、内部利益率法、割引回収期間法

20–3 プロジェクトのチェックポイント

20–4 プロジェクトの実績管理

20–5 新製品の原価企画と第三者チェック

第21章 研究開発プロジェクトの管理(横糸の管理)
21–1 製造業と非製造業の付加価値の違い

21–2 全体管理の指標(横糸管理)の指標

21–3 プロジェクトのリスク管理

第22章 付加価値と資本コスト

22–1 日々の活動が目標とすべき利益水準

22–2 加重平均資本コスト(WACC)の求め方

22–3 会社に眠る宝の山
第Ⅵ部
進化する管理会計

第23章 生産方式の変遷に応じた原価計算

23–1 フォード方式と全部原価計算

23–2 ジャストインタイム方式と直接原価計算

23–3 これからの新しい生産方式と、それを支える原価計算

23–4 新しい管理会計の必要性

第24章 様々な管理会計セオリーとの調和

24–1 全部原価計算系の管理会計

24–2 直接原価計算系の管理会計

24–3 調和の会計を目指す

第25章 付加価値から考える、製造業の新しいビジネスモデル

25–1 真のムリ・ムダは何処にあるか?

25–2 固定費における7つのムダ

25–3 固定費の生産性こそが生き残りのカギ

25–4 製造業が目指すべき新しいビジネスモデルとは?



おわりに

はじめに

 利益って何だろう?



 「今朝の訓示は厳しかったね。また給与カットがあるらしい。
愛社精神を発揮して“利益”を増やそうと言われたけど、なんだか気合が入らないね。
僕らの給与を削って利益を増やす…。利益って何だろう。誰のためのものだろう?」
 
「何を言ってるんだい。決まってるだろう、利益は株主さんのものさ。
会社は株主さん達のものなんだから。」
 
「理屈はそうかもしれない。でも顔も知らない株主さんの取り分のために、現場の僕達が給与を削って利益を増やすっていう目標はどこか変だなあ・・・
なんだか元気が湧かないよ。」

 「なあ、そもそも従業員っていうのは“外部”の人間なんだろうか?
つまり僕らの労務費ってやっぱり“コスト”なんだろうか?
仮にその“外部”の人間かもしれない僕らが『愛社精神を発揮して頑張る』とするなら、
それはどんな経営理論なんだろうね。」

 「確かに目標の設定の仕方が間違っている気がする。
これじゃ僕達のモチベーションは上がらないし、
それって結局、株主さんだって損をすることになるんじゃなかろうか。」
・・・

 「わかったぞ! きっと僕らが最初にやるべきことは利益じゃなくて、付加価値の最大化だ。
だって株主さんへの配当も、銀行に払う金利も、経営者の報酬も、僕らの貰う給与だって、
全ては獲得された付加価値から分配されるものなんだから。」

 「そうか! 全てのステークホルダーから見れば付加価値こそが目標なんだね。
会社が社会に貢献して評価され、少しでも大きな付加価値を獲得する。
それをみんなで分配する。利益(つまり…株主さん達の取り分)をどうするかっていうのは、
付加価値が最大化できた後で、ゆっくり話し合うべきことだもんな。」

 「そうだよ、きっとそうだ。それなら僕も頑張れそうな気がする。
付加価値こそが判断の軸なんだ! 少し元気が湧いてきたぞ。」



 はじめまして、会計士の吉川です。
 
もし私がここで「利益って何でしょう?」と問えば「どうしたんですか?」と問い返されるかもしれません。会社が業績を上げて利益を伸ばす。そこには何の疑問もありません。流通業者なら、会社が達成した売上から売上原価(仕入等)を差し引いた残りとして粗利が計算され、更にそこから一般管理費や金利が分配され、最終的に株主に帰属する利益が計算されていきます。それは正に経済統計で用いられる付加価値の式の構造そのものです。





 では、製造業の場合はどうでしょう?







 ここで1つの大きな疑問にぶつかります。付加価値の式では引かれていない「労務費」が製造業の損益計算では引かれているのです!

 今日の製造業の損益計算書においては、当然のように労務費(しかも製造現場の労務費のみ!)が材料費の次に差し引かれて粗利が計算されます。こうして損益計算で差し引かれる製造現場の労務費とはコストでしょうか? それとも付加価値の分配なのでしょうか?

 会社が稼ぎ出した付加価値がどこにも明示されない製造業の損益計算書とは実に不思議なものです。これは今日の原価計算システムが確立した20世紀初頭の社会構造を、そのまま反映しているのかもしれません。当時の会社の所有者であった資本家にとって労務費は紛れもなくコストだったことでしょう。損益計算書は資本家の取り分(利益)を明らかとするため、特に疑うこともなく労務費を控除するのです。

 それから100年後の今日、社会の様相は変わりました。労務費をどう管理するかはそれぞれの会社が決めることでしょう。労務費がその場限りのコストだと考えるなら製造原価の一部という扱いでよいかもしれません。しかし共に会社の運命を担ってカイゼンを行い

共に価値創造を進める仲間だというのなら

損益管理の構造(少なくとも管理会計上の構造)もその趣旨に沿ったものであるべきだと思われます。



付加価値とミッション

 ところで子供の頃、学校の行事でキャンプに行きました。キャンプ場に着くと1人1人が何等かの役割を担います。設営班、買出班、たきぎ集め班、炊事班、衛生班、レクリエーション準備班・・・ そこでは1人1人に役割があることを実感させられます。それは社会においても同じです。社会では1つひとつの会社が何等かの役割(ミッション)を担い、その貢献の大小が付加価値として現れます。

大きな貢献は大きな付加価値、小さな貢献は小さな付加価値

 会社がその社会的役割(ミッション)を経済合理的な手段で達成すればするほど付加価値は大きくなります。社会のどんなニーズに、会社はどんな工夫で答えるのか…。

 そこには労務費も利益も顔を出しません。それ等は付加価値を「獲得」した後の「分配」の話だからです。だからこそ付加価値の最大化と利益の最大化では管理の方向性が少し異なります。そして結局の所、利益だけを目標にすれば会社はバラバラになり、自らの存在意義を見失ってしまうでしょう。

それが赤字という形となって現れます。

 目指すべきものは利益ではなく付加価値の最大化です。結果として利益も最大化されることになるのです。では、付加価値を最大化するにはどうすればよいのか?

 本書はコストダウンやマーケティングのノウハウ本ではありませんが、「付加価値会計」というツールによって社内の様々な活動ベクトルを調和させ、付加価値の最大化というゴールに至る道程の“道しるべ”となることを目指すものです。



全てのゴールは、付加価値の最大化!

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