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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい粉の本
第2版

定価(税込)  1,512円

著者
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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07315-1
コード C3034
発行月 2014年10月
ジャンル ビジネス 化学

内容

「粉」と一口に言っても、小麦粉や砂糖など身近にあるものから、宇宙や医療などの最先端分野で活躍するものまで、その種類、用途は多岐にわたる。本書ではさまざまな粉を取り上げ、その機能と特徴をやさしく解説する。初版を見直し、最新情報にアップデートした第2版。

山本英夫  著者プロフィール

(やまもと・ひでお)
1943年東京都生まれ。1967年東京大学工学部卒業、1976年同大学院博士課程修了。東京大学生産技術研究所助教授、創価大学工学部教授を経て、2007年創価大学学長。2014年創価大学名誉教授。工学博士。

主な著書(いずれも共著):粒子径計測技術(日刊工業新聞社)、不思議な粉の世界(日刊工業新聞社)ほか多数。


伊ヶ崎文和  著者プロフィール

(いかざき・ふみかず)
1948年山口県生まれ。1972年京都大学大学院工学研究科修了、同年大阪市環境汚染監視センター勤務。1973年工業技術院東京工業試験所入所。2001年独立行政法人産業技術総合研究所に再編後、物質プロセス研究部門長、九州センター長等を経て、2008年退職。産業技術総合研究所名誉リサーチャー。日本大学理工学部非常勤講師。工学博士。

主な著書(いずれも共著):粉体-その機能と応用(日本規格協会)、粒子径計測技術(日刊工業新聞社)、不思議な粉の世界(日刊工業新聞社)、先端粉砕技術と応用(NGT)、粉砕技術とエコ・リサイクル(NGT)ほか多数。



山田昌治  著者プロフィール

(やまだ・まさはる)
1953年静岡県生まれ。1977年京都大学工学部卒業、1979年同大学院修士課程修了。大学助手などを経て、1988年日清製粉株式会社入社。2010年より工学院大学工学部応用化学科教授。工学博士。

主な著書:MECHANICS OF GRANULAR MATERIALS
(ELSEVIER)、ENCYCLOPEDIA OF FLUID MECHANICS
VOL.4(GULF PUBLISHING)、不思議な粉の世界(共著、日刊工業新聞社)、食品とガラス化・結晶化技術(サイエンスフォーラム社)ほか

目次

第1章 粉って何? 何で粉なの?
1 粉の代表選手〝小麦粉〟の秘密 「粉にする理由」
2 粉の大きさってどれくらい 「ミクロとナノの世界」
3 電子コピーは粉が決め手! 「電子コピーのトナー」
4 いのちを守るガラスビーズ 「ロードマークの主人公」
5 粉にすると鉄でも燃えちゃう?! 「比表面積の増加」
6 粉をコントロールしておいしいコーヒーを!! 「粉の抽出性」
7 粉にする効果(大吟醸の秘密) 「単成分化」
8 縄文土器の発明は先端技術の幕開け!! 「成形・加工性の進歩」
9 氷は透明なのに雪はなぜ白い? 「光学的特性」
10 ディーゼル排出微粒子 「大気環境の問題児とその除去方法」
11 粒子を捕集する 「障害物分離型と外力作用分離型」
12 バグフィルターと電気集塵装置 「代表的な高性能集塵装置」

第2章 こんなところにも粉が…
13 粉が貴女のお肌を守ります 「化粧品と粉」
14 朝から晩まで粉まみれ 「生活の中の粉」
15 デンプンの秘密 「植物のエネルギー源」
16 上白糖の秘密 「わが国独自の砂糖」
17 多忙な君らを支える粉たち 「違いの分かるインスタントコーヒー」
18 フラットディスプレイは住空間を変える?! 「粉(スペーサー)の役割」
19 夏の風物詩 花火の仕組み 「日本の芸術品」
20 バイオテクノロジーを支える粉たち 「マイクロキャリアなど」

第3章 粉を創ろう!
21 分子 ・原子と固体の狭間 「粉体を作るときに重要な「付着力」」
22 小麦粉からはじまった粉砕技術 「固体を粉体化する技術の変遷」
23 どこまでできる粉砕の世界 「付着現象と粉砕限界」
24 凝集粒子を一次ナノ粒子に 「媒体攪拌型ミル」
25 PVDの世界で何ができるの? 「プラズマを利用した超微粒子の製造法」
26 伝統工芸の中のハイテク 「墨とサブミクロン微粒子」
27 CVDって何? 「気体中の化学反応で超微粒子を作る」
28 液中で超微粒子を作る 「液体中の化学反応で超微粒子を作る」
29 逆ミセルでナノ粒子! 「界面活性剤でナノサイズの反応場」
30 日に一度飲めばよい薬が欲しい 「徐放性製剤」
31 川の流れのように 「粉の変身・表面改質」
32 土壌から粘土を取り出す 「ストークスの式」
33 塩化ナトリウムの雪を降らせよう! 「飽和食塩水から食塩粒子を析出させる」

第4章 粉をもっと知ろう!
34 粒子の大きさってどうやって決めるの? 「粒子径の定義」
35 粉体の粒子径を測る 「最も重要な情報」
36 粒子径分布の表現 「個数基準か、質量基準か」
37 ナノ粒子の大きさを測る 「測定は難しい。新しい方法も」
38 粉の形は個性的 「形状指数で表す」
39 粒子密度の測定 「粒子径とともに粒子速度を規定」
40 屈折率測定は隠れ身の術で! 「屈折率の測定」
41 大きな比表面積は粉の命 「比表面積測定」
42 どこまで細かくできるか? 「粉の強さ(ボンドの式)」
43 小さいものほどくっつきやすい 「粉の付着特性」
44 粉は〝表面〟で勝負 「小さくなるほど表面が支配的」

第5章 粉は一人ではいられない
45 液体のようにふるまう粉 「粉の流動」
46 薬を飲みやすくする造粒技術 「顆粒化、カプセル化、易溶解化」
47 押しくら饅頭で粉が詰まる 「粉の閉塞現象」
48 粉が火を噴く 「粉塵爆発」
49 粉が空気に浮かんで走る 「浮遊性」
50 地盤がゆるみ、マンションが沈む 「地震と液状化現象」
51 地球環境をおびやかすエアロゾル粒子 「エアロゾル粒子の役割」
52 ケミカル・メカニカル・ポリッシング(CMP)スラリー 「平坦な表面加工はお任せ」
53 ピラミッドの宝探し 「粉は固体なの?(ヤンセンの式)」

第6章 未来は粉とともに
54 光の作用でいろいろな機能を発揮 「光触媒微粒子」
55 モノ作りのパラダイムシフト 「ナノ粒子」
56 カーボンナノチューブ 「ナノテクノロジーの代表格」
57 カーボンナノチューブを作る 「アーク放電法とCVD法」
58 宇宙時代は粉の時代?! 「新材料創製と粉体制御」
59 夢のエネルギーは粉から 「色素増感太陽電池」
60 常温でセラミックス膜ができる! 「エアロゾルデポジション法(AD法)」
61 燃料電池と電極材料 「焼結多孔質体」
62 マイクロカプセルで生活が変わる 「食料からハイテクまで」
63 医療の最前線は微粒子が主役 「マイクロカプセル技術」
64 粉体技術は高齢化社会の救世主 「健康と粉体技術」
65 環境を守る微粒子 「よりクリーンな燃料を求めて」
66 環境にやさしい粉体塗料 「有機溶媒系より「環境適合型」」

【写真で見る「粉」】
●造形美
●石? 砂? それとも土?
●結晶粒子
●デンプンのいろいろ

【コラム】
●夕陽はなぜ赤い? そして、なぜ空は青いの?
●水滴の芸術─虹
●環境汚染のバロメーター─鳴き砂
●春の風物詩─黄砂
●生体内の超微粒子磁石

参考文献

はじめに

 「粉」は「こな」と読みます。でも、場合によっては「こ」とも読みます。「身を粉(こ)にして働く」が良い例です。そんなことはさておいて、読者のみなさんは「粉」と聞いたら何を連想するでしょうか。たぶん、ほとんどの方が最初に「小麦粉」を連想することでしょう。うどんにしろ、パンやケーキにしろ、「小麦粉」を練って作られることは常識になっているからでしょう。特に最近は趣味で手打ちうどんを作ったり、パンを焼いたりするのが流行っていますのでなおさらです。余談ですが、うどん粉とメリケン粉はどう違うのでしょう。答えは〝同じ〟です(厳密には違うのですが)。昔からの国産の小麦から作った「うどん粉」に対して、アメリカから輸入した小麦粉、あるいは輸入された小麦から作った小麦粉を「(ア)メリケ(カ)ン粉」と言ったまでのことです。

 「粉」の語源は「米」+「分」の造漢字のようです。「米が分かれたもの:細かいもの」という意味が一つの解釈です。昔、白粉(おしろい)は米の粉が使われていたからだということです。もう一方で、「米のように分かれるもの」という説もあります。「米」とは「粒が十印から四方に点々と散った形を描いたもの」ですので、「米のように分かれてしまう(散らばってしまう)小さなもの」とも解釈されるそうです。

 ところで、「米」はそのまま炊いて食べるのに、「小麦」は何故粉にするのでしょう。「小麦」は米や大麦(麦飯の素材)に比べて堅く、粒のままでは調理がしにくく美味しくないので、粉にして調理しやすくするのです。また、小麦の粒には食べられない「ふすま」の部分が中までしっかりと食い込んでいるので、粉にしなければ取り除けないからです。さらに、細かく砕いて粉の粒の大きさを揃えて均質にしてあげると、砂糖やイーストなどとよく混じり合い、これを水を加えてこねると、いろいろな形のパンやパスタなど、作りたいものが作れるようになります。このように、「小麦粉」には「粉」にする効用が凝縮しています。

 さて、話を元に戻して、「粉」と聞いたら何を連想するかですが、順序は別として、お砂糖、お塩、胡椒、スープの素、インスタントコーヒー、薬、ベビーパウダー、洗剤、化粧品などなど、次々に挙げることができるでしょう。しかし、多い人でも、20も数え上げると、それ以上はなかなか思い浮かばないのではないでしょうか。意外と私たちの身の回りには「粉」は少ないように見えます。しかし、直接目には触れませんが、私たちの日常生活を取り巻く品々には、「粉」が絡んだ物がたくさんあります。テレビやCDなどの家電製品からコンピュータ、スマートフォン、自動車に至るまで、その素材や製造プロセスをたどると、ほとんどが粉からできていると言っても過言ではありません。
 例えば、蛍光灯の管の内壁には電磁波があたると光を発する粉が塗ってあります。燃料電池などの電極には金属や金属酸化物の粉末を焼結した多孔質体が用いられています。鮮明なコピーはトナーという粉の性能で決まります。自動車のボディの塗料も絵画の顔料も、紫外線カットの化粧品も紙おむつも、みんな中身は「粉」なのです。

 一方、「粉」そのものではないけれど、茶碗もガラスも「粉」から作られています。プラスチック製品も素材は「粉」です。チタンの合金も遠赤外線セラミックスも「粉」から作られます。コンデンサー、半導体、圧電素子などのエレクトロニクスの部品も「精密な粉」から作られるセラミックスです。私たちの身の回りは、目には触れないけれど、「粉だらけ」なのです。みんな、砕いて、混ぜて、練って、形にして、固めるといったぐあいに、「粉」の機能を利用して創り出されています。

 さらに、宇宙飛行士が無事帰還できるのも「粉」から作られた超耐熱タイルのお陰です。リニアモーターカーを実現した超伝導材料も「粉」を混ぜて創られます。バイオテクノロジーや医療の分野でも「粉」が活躍しています。まさに、ナノテクノロジーをはじめとした21世紀の先端技術は、「粉」を制御し、「粉」の機能を引き出す粉体技術が「カギ」と言われています。

 本書は2004年3月に発刊されましたが、その後の急速な技術の進展に伴い、粉体技術もますます進化をしております。そこで、関係者のご配慮をいただき、最新の話題を取り入れ、改訂いたしました。1人でも多くの方が、本書を通して「粉」の機能・効用を理解し、最新の「粉」事情を楽しんでいただけることを願っています。そして、何の役にも立ちそうにない石でも「粉」にすることで隠れていた機能が発揮されるということに、「身を粉(こ)にして働く」人生をダブらせて考えてみるのもおもしろいのではないでしょうか?

2014年10月
山本英夫

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