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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい放電加工の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07311-3
コード C3034
発行月 2014年10月
ジャンル ビジネス 機械

内容

金型製作になくてはならない放電加工(型彫り放電加工とワイヤ放電加工)を、基礎から特徴、加工ノウハウまでわかりやすく解説する。また、近年、用途が拡がっている放電加工の応用事例(量産部品加工や非接触加工の特徴を生かした精密微細加工など)も紹介する。

武沢英樹  著者プロフィール

(たけざわ ひでき)
1966年生まれ
1990年 埼玉大学工学部機械工学科卒業後、
自動車部品メーカに就職
2001年 豊田工業大学大学院博士課程単位満了
2001年 埼玉大学工学部機械工学科助手
2002年 東京大学にて博士(工学)を取得
2003年 工学院大学工学部国際基礎工学科講師
現在 工学院大学グローバルエンジニアリング学部
機械創造工学科教授

専門分野:精密加工、特殊加工(放電加工)、精密計測

2006年より一般社団法人電気加工学会常務理事

●主な受賞歴
 1998年度、2001年度精密工学会論文賞受賞
 1997年度、2000年度、2006年度電気加工学会
 全国大会賞受賞

目次

第1章 放電加工とは
1 なにはともあれ放電加工「案外身近な加工法」
2 「放電」ってカミナリと同じ?「ぴかっと光るものの正体は?」
3 放電加工のはじまり「放電加工の生みの親」
4 放電加工の原理「「形彫り放電加工」と「ワイヤ放電加工」」
5 放電加工の利用分野「切削加工の苦手な部分を補完していたが…」
6 形彫り放電加工とワイヤ放電加工の違い「現在ではワイヤ放電加工機が多い」
7 放電の発生でなぜ火災や爆発が起きない?「加工液中で放電を発生させる理由」
8 放電加工の得意な点と苦手な点「切削加工が困難な場合に登場!」

第2章 放電加工の基礎
9 「単発放電現象」がもつ意味「放電加工は単発放電の繰り返しで加工が進む」
10 工作物側のみが除去されるメカニズム「放電加工の対象となることが多い鉄鋼材料」
11 銅材の他にも電極に用いられる材料がある「溶融せずに昇華型の物質(グラファイト材)」
12 放電が発生する電極と工作物の距離(極間距離)「短絡状態が発生しないように」
13 放電加工における加工速度「除去量を予想できない理由」
14 放電加工で精密加工が可能な理由「荒加工から仕上げ加工までを使い分け」
15 ワイヤ電極材料の特性「黄銅が一般的」
16 放電痕の形成過程「正確に予測することは非常に難しい」
17 放電はどこで発生しているのか「距離が近い条件よりも他の要因が大きく影響」
18 バリバリという放電の音は放電状態の貴重な情報「放電状態の分類」

第3章 放電加工機のしくみ
19 形彫り放電加工機の構造「工作物に電極形状を反転させた形状を加工する」
20 ワイヤ放電加工機の構造「順次繰り出すワイヤを電極として工作物を糸鋸状に切り取る」
21 複雑形状の加工が可能なワイヤ放電加工機「丸棒を角形状や多角形形状に仕上げることも可能に」
22 コンデンサ放電回路の基本「トランジスタが一般的になる前の主役」
23 初心者向きのコンデンサ放電回路「回路構成が簡単」
24 トランジスタ放電回路の基本「コンデンサ放電回路に代わって登場」
25 トランジスタ放電回路は加工条件が設定できる「電流値とパルス幅を独立に変更可能」
26 ワイヤ放電加工の放電回路「高電流、短パルスの放電を容易に発生」
27 初期のトランジスタ放電回路「電圧印可時間一定回路とは」
28 アイソパルス回路「放電パルス時間が一定」
29 電極極性による加工現象の違い「電極極性と加工現象の関係」

第4章 放電加工の勘どころ
30 電極無消耗の加工は可能なの?「電極消耗:その1」
31 ワイヤ放電加工の電極特性「電極消耗:その2」
32 低電極消耗を実現させるための工夫「回路の構造が簡単になりコスト面で有利に」
33 加工面積と加工面品質の関係「電極の面積効果」
34 オシロスコープによる放電波形の観察「極間で生じている加工現象を計測」
35 放電が不安定状態になる要因「加工粉の排出がうまくいかないことが主因」
36 放電の不安定状態を解消する電極の揺動運動「2次元揺動加工と3次元揺動加工がある」
37 放電発生位置の観察で試みられた手法「放電の発生位置」
38 放電痕が連なった放電面に形成される加工変質層(白層)「加工面品質の悪化の要因」
39 加工液による加工品質の違い「加工法によって異なる加工液」
40 ワイヤ放電加工における切り残しと切り離し「難しい切り残し部位の扱い」
41 電極と工作物の自動交換と各種位置決め治具「放電加工でも利用できる各種治具が必要」

第5章 用途広がる微細放電加工
42 広がる微細加工への応用「容易に細穴加工を行うことが可能」
43 細穴放電加工の専用機「高速に多数個の細穴を加工する」
44 ワイヤの直線状を保持する手法「ブロック成形法」
45 ワイヤ放電研削法(WEDG法)「軸の成形精度がよく自動化が可能」
46 いろいろな微細電極成形法「「走査放電軸成形法」や「軸成形法」」
47 連続した多数穴を加工する方法「亜鉛電極を使う」
48 微細放電加工における放電回路「短いパルス幅を容易に実現するために」
49 静電誘導給電法による微細加工用の回路「配線のみの浮遊容量で加工ができる」

第6章 その他特殊な放電加工(気中放電、絶縁性材料の放電加工、放電表面処理など)
50 粉末混入放電加工「大面積でも容易に面粗さを改善」
51 放電表面処理の工夫「電極を大量に消耗させる対策」
52 絶縁性の材料でも放電加工を可能にした大発見「絶縁性材料の放電加工」
53 セラミックスがなぜ放電加工可能なのか「「長パルス放電」と呼ばれる現象」
54 単純電極を用いた走査放電加工「単純形状の銅材やグラファイト材を電極として利用」
55 絶縁液を用いない気中での放電加工の実現「静電気の「ビリッ!」と同じ現象」
56 ワイヤ放電加工での電解作用の活用「電解作用を効果的に利用する手法の提案」
57 放電加工の加工状態を観察する手法「透明体電極を用いた放電の極間観察」
58 気中放電による肉盛り、表面処理「金型の補修などで活躍」
59 回動電極を用いた放電加工「電極消耗を気にしない形彫り放電加工」
60 焼結ダイヤモンド工具の形状仕上げ加工「特殊材料の放電加工:その1」
61 チタン合金など難削材の放電加工「特殊材料の放電加工:その2」
62 永久磁石など機能性材料の放電加工「特殊材料の放電加工:その3」

第7章 「小型放電加工機」を作ってみよう!
63 単発放電で形成される「放電痕の観察」「自作放電加工機:その1」
64 手動サーボによる連続放電「自作放電加工機:その2」
65 極間を自動的に制御する放電加工機の試作「主軸の自動サーボ制御」
66 簡易版トランジスタ放電回路の試作「電圧印可時間一定回路」
67 大電流放電の発生回路の試作「高価な直流電源は要らない」

【コラム】
●物理現象としての各種放電
●夢の電極材料と「超合金ロボ」
●放電加工の極間制御は多少いい加減?
●放電加工に不可能はない?
●Traditionalじゃない放電加工
●昔の加工機はよかった?
●「一家に1台放電加工」の時代はくる?

参考文献
索引

はじめに

 切削加工や研削加工は目にしたことがあり、どのような加工方法なのかおおよそは理解できるけど、「放電加工」なんて初めて聞くという方が大部分なのではないでしょうか。特殊加工の中でもレーザ加工ほど広く知られてなく、工学関連以外の方におかれましては、イメージすらわかない加工方法かもしれません。
 ただし、この放電加工、これまでの日本の製造業の発展において必要不可欠な加工方法であったことはたしかです。昭和40年代の高度成長期、自動車産業や電機産業が拡大した理由の1つが、高精度な製品を安く大量に製造することができたためです。それには、高精度な金型を利用することが必須でありました。この高精度な金型を製作するうえで、必要となった加工法が「放電加工」です。
 金型の寿命を延ばすため焼き入れ処理をして硬くしますが、その後の形状仕上げには放電加工が用いられました。それは、文字どおり刃が立たないほど硬い材料は切削加工が難しかったためです。その後、40年以上経ちますが、最近では金型加工のみならず、小さな穴あけなど微細加工においてその特長を発揮しています。ただし、いずれの場合も縁の下の力もちではありませんが、広く一般の皆様に知りわたることは少なく、「よくわからない加工法」という立ち位置になっているようです。
 そこで、本書「トコトンやさしい 放電加工の本」の出番になります。放電加工がよくわからないもう1つの理由として、解説本や教科書的な本がほとんどないことがあげられます。過去30年間をみても10冊あるかないかという程度です。ましてやその多くは、放電加工の研究者、技術者向けの内容となっており、やや専門的すぎるものが多かったようです。比較的読みやすいバイブル的な教科書もありましたが、30年ほど前の本であり、今ではなかなか入手困難な状況です。
 そのような状況のなか、日刊工業新聞社から本書の執筆のお話をいただきましたので、やさしい読み物的な内容として、それでも内容を読み進めれば、放電加工がトコトン理解できる本とすることを念頭に執筆作業を進めてきました。機械系でなくても、工学系でなくても放電加工とはどのような加工法であり、その特長は何なのか、わかりやすく記述しました。
 一方では、最新の加工技術や計測技術、加工メカニズムの詳細など高度な知識もありますので、放電加工をかじったことのある皆様にも満足いただける内容をめざしました。さらに、実際の大型の高価な加工機がないと体験できないとお考えの皆様には、自作の小型放電加工機の製作についても詳細を記述しましたので、どうぞご自身で体験いただき、放電加工の実際を目にしていただければと思っています。
 製品の調達がグローバルになりつつある近年、製造業における独自性、優位性を保つために製造の基盤技術である各種加工法の進化はとても重要であり、日本の発展において核となる技術だと考えています。その一翼を担う放電加工について、本書を通して少なからず知識を得ていただければ幸いです。
 本書の執筆においては、多くの諸学会の論文、メーカカタログなどを参考にさせていただきました。また、放電加工機および関連メーカの皆様からは、貴重なサンプル写真などの資料を提供いただきました。ここに厚くお礼申し上げます。さらに、放電加工関連の研究者の皆様からも、研究内容についての各種資料、写真の提供および公開をご了承いただきました。厚くお礼申し上げます。
 そして本書の執筆機会を与えていただきました日刊工業新聞社出版局長の奥村功様、文章の手直し、企画、校正に際し多大なるご援助をいただきましたエム編集事務所の飯嶋光雄様、イラストの作成、レイアウトでお世話になりました志岐デザイン事務所の大山陽子様に心よりお礼申し上げます。
 最後になりますが、私が今日まで放電加工に関する研究を続けてくることができましたのは、齋藤長男豊田工業大学名誉教授ならびに毛利尚武東京大学名誉教授(現 大学評価・学位授与機構教授)にご指導いただいたお蔭であります。心より深く感謝申し上げます。
 多くの皆様のお力添えがなければ本書が完成することはありませんでした。大変ありがとうございました。

2014年10月
武沢英樹

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