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トヨタが実践する価値創造の確かな進め方
リーン製品開発方式

定価(税込)  4,860円

著者
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訳者
サイズ A5判
ページ数 402頁
ISBNコード 978-4-526-07297-0
コード C3034
発行月 2014年09月
ジャンル 生産管理

内容

複数の設計解を集め、トレードオフを精査しつつ絞り込むことで、手戻りのない確実な設計案が低コストで見つかるセットベース手法を柱とするリーン製品開発方式の思想と進め方を指南する。わが国企業が苦手なイノベーションを効果的に進める方法を具体的に示す。

アレン・ウォード  著者プロフィール

(Allen Ward)

アメリカ陸軍で士官を勤めた後、MITの人工知能研究所で自動設計理論を研究し、博士号を取得。その後、ミシガン大学工学部助教授として機械設計を教える。その間、ジェフリー・ライカー教授(「ザ・トヨタウェイ」著者)とともに日本の自動車メーカーの製品開発プロセスを研究し、トヨタの製品開発方法からリーン製品開発方式を体系化した。その後、大学を辞め、欧米企業への普及に尽力するなどリーン製品開発方式の開拓者として知られる。

デュワード・ソベック  著者プロフィール

(Durward Sobek)

ミシガン大学博士課程の学生として、ウォードとライカー教授に指導されながらトヨタとクライスラーの製品開発システムを研究した。その後、トヨタおよび関連部品メーカーへの調査をもとに、トヨタの製品開発システムの体系化を試みる。博士号取得後はモンタナ大学工学部の教授となり、製品開発を教えている。リーン製品開発の推進団体であるLean Product and Process Development Exchangeの創立者の一人で、現在は活動の中心的な役割を果たしている。

稲垣公夫  著者プロフィール

(いながき きみお)

1975〜2001の間、NECおよびNECアメリカで生産システム開発、生産改善活動や経営企画などに携わる。この間、モノづくり改善に関わる本を15冊執筆/翻訳している。主な著書に「TOC革命」「開発戦略は『意思決定』を遅らせろ!」、主な翻訳書には「ザ・トヨタウェイ(シリーズ)」「トヨタ製品開発システム」などがある。2010年からリーン製品開発の研究と日本企業への普及に専念。現在、グローバリング㈱代表取締役、ゴール・システム・コンサルティング顧問。

目次

序 文

Introduction アレン・ウォードという男と彼が遺した成果


序 章 本書の目的〜筆者の意図するところ   

基本的な秘密/リーン製品開発方式と私がそれを学んだ方法/みなさんにはなぜこの本が必要か?/本書の構成


第1章 価値とパフォーマンス

1 儲かる生産バリュー・ストリームをつくり出す   
2 プロジェクトの結果   
プロジェクト投資利益率/市場シェア変化/プロジェクト失敗率

3 利用可能な知識の創造に注力する   

4 競争相手より学習する   
コンセプト構築から解析・試験結果までのサイクルタイム/変化のレベルと速度への理解/技術や市場機会発生から売れる製品を定常生産速度で量産するまでのリードタイム

column トヨタのリードタイム   

5 学習のコストパフォーマンスで見よう   


第2章 開発の中のムダを見つける

1 散乱のムダ   

コミュニケーションの障壁/貧弱なツール

focus point 既存の手順から付加価値を探し出す   
2 手渡しのムダ   

無用な情報/待ち

column アメリカ陸軍における知識と責任、行動、フィードバックの統合  
column 特許調査での成功   

3 希望的観測によるムダ   
仕様に対して試験する/捨てられる知識

column 試験データを再利用し、知識づくりに利用する   
4 時間軸マップでムダが見やすくなる   

5 今まで学んだ教訓   

第3章 未来を見る

1 価値の創造に集中する   
基本的な価値創造サイクル/サイクルを繰り返す重要性
focus point
 ゴルフ用具メーカー・ピンのLAMDA活用例   

2 リーン設計とはシステム設計   

バリュー・ストリームには一貫性が必要だ/2つの流れを管理するために事業を整合させる/生産システムの設計/部品メーカーと「デザイン・イン」して知識価値を上げる

3 価値指向でシステムをプルする   


第4章 起業家的システム設計者
(Entrepreneur System Designer)

1 組織的緊張の心理学   
column
 素早く、静かに、時間を守れ   

2 リーンプロジェクト・事業リーダーを選び育成する方法   
3 あなたならどうする?   

顧客を代表する/資源を得る交渉をし、ビジョンの合意を得る/利益とリスクに責任を持つ/システムの設計

colnmn 製品コンセプト文の例   
colnmn プログラムマネジャー主導の「ライン組織」で開発期間短縮〜アトラス・コポの事例   


第5章 セットベース・コンカレント
エンジニアリング

1 従来の開発がうまく行かない理由   
2 SBCEが機能する理由   
3 いつ、なぜ幅広く探索すべきか?   

計算してみなさい/コスト面でも優位に立てる手法
colnmn
 無菌・無塵装置の開発事例   
4 シンプルなモデル、独立イノベーション、厳しい除去   
5 トレードオフ曲線   

トレードオフ曲線シート/実効あるシートの運用方法

column トレードオフ曲線の活用で知識の標準化に成功〜コンスベルグ・オートモーティブ社の事例   

6 収束と交渉   
7 仕様を徐々に固める   
column 意志決定を遅らせた空調機器メーカーの事例   

8 プロジェクトの分類:SBCEとプロジェクト・ポートフォリオ   
カスタマイズプロジェクト/戦略的ブレークスループロジェクト/再統合プロジェクト/研究プロジェクト

column オートバイプロジェクトタイプの分類   

9 全容のおさらい   


第6章 リズム・流れ・プルで乱流を乗り切る

1 従来のプロジェクト管理の問題   

2 現状を理解する   

3 インテグレーション・イベント   
column コンスベルグ・オートモーティブ社でのインテグレーション・イベント  

4 プロジェクトのリズムを設定する   

カスタマイズプロジェクト/戦略的ブレークスループロジェクト/研究プロジェクト

5 素早いサイクル〜小さな知識のバッチの流れとプル   
column フェーズゲート開発プロセスに気をつけろ!   
focus point
 新製品開発のためのスクラム   

6 負荷計画   

7 情報のプル   
column
 カーズ・アポルスタリー社のワーキングスペース改革   

focus point 情報を可視化する簡単な方法   
column サーブ電子防衛システム(サーブEDS)での目で見る管理   

8 部分を組み合わせる   


第7章 責任ある専門家チームをつくる

1 行動様式:責任、チームワーク、専門知識   

2 価値をつくり出し、流れをサポートするマネジメント   

3 ナレッジマネジメントと継続的改善   

4 効果的な規律のためのリーダーシップ   
5 効果的で効率的なコミュニケーション   

focus point 効果的なリーダーシップの行動様式   
6 専門知識と責任のための人事管理   

7 「それは大人のためのシステムだ」   

8 最後の分析   

第8章 変革を始める
事例1
事例1  スカニアの研究開発工場:リーン製品開発事例   

研究開発構造/製品戦略/リーン製品開発方式の進化/研究開発の「家」/リーン原則の展開/モジュラー化原則:SBCE思考の例/製品開発プロセスの進化/プロセス改善ツール/目で見る管理/能力開発/リーダーシップの原則/結論

事例2 フォードの車体部門、安全製品部門と
プレス技術部門でのリーン製品開発の導入   
GPDSの開発/車体・プレス技術におけるリーン原則の実行/責任ある専門家チームの編成/プロセス最適化/標準作業/学びのイベント/グローバル展開/結果/推進要因

column 変革の背景   
事例3 ピンの物語:リーンの原則適用による研究開発部門のアウトプット向上 

歴史と背景/ピンの製品開発の旅路/変革の実行/まとめ

事例4 グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバーでのリーン製品開発活動   
会社概要/なぜリーンか?/リーン製品開発の開始/標準作業/能力計画の目で見る管理/プル、1個流し、流れと遅れて開始/コンカレントエンジニアリング(CE)/現在までの成果/チェンジ・マネジメントと研修/次は何か?

事例5 リーン・イノベーションの喜び:メンロ・イノベーションの事例   

何よりもまず深く理解する/整合/プロセスの流れをつくる/品質の組み込み/ペアで学びイノベーションする/メンロの喜びの例




巻末注   

謝 辞

訳者あとがき

索 引

はじめに

序 文






 2007年3月に出版されたアレン・ウォードの「Lean Product and Process Development」初版は、リーンの世界では最も定評のある作品に位置づけられる。同書が主張する概念や慣行に対し、世界中の読者が熱心な賛同者になった。個人的にも、あらゆる出版社のリーンに関する書籍の中で、最も気に入った一冊と言える。同書はリーンについて深く学ぼうとする読者を着実に獲得し続ける一方で、設計・開発業務にリーン思想を適用する関心が高まってくるにつれ、第2版を待ち望む読者が相次いだ。その結果、私たちは第2版を出版せざるを得なくなった。そこで、内容を更新し拡充するため、デュワード・ソベックに第2版の編集を引き受けてもらうことにしたのである。

 デュワードは、この仕事を依頼する唯一の候補者と言える存在だった。モンタナ州立大学の機械工学・IE学科の教授で、リーン・プロダクト・デベロップメント・エクスチェンジ(リーン開発推進協会)の共同創立者でもある彼は、ミシガン大学のリーン製品開発に関わるすべてについてアレン・ウォードの一番弟子を務めた。デュワードの博士課程の研究(彼の論文審査委員会はアレン・ウォードとジェフリー・ライカーが共同委員長を担当)では、トヨタとクライスラーの製品開発システムを比較している。これは、2つの開発システムの対比がとりわけ際立っており、興味深い時期(1990年代)であったことが理由だ。トヨタ方式は自動車業界の中で圧倒的な優位性を示し、一方のクライスラーは当時の“夢のチーム”ともいうべきリーダーによる指導の下、その設計や製品開発システムのイノベーションや実行が広く賞賛されていた。

 デュワードは初版の文章を技術者のきめ細かい視点で読み込み、必要に応じて更新したり、役に立ちそうな部分はさらに情報を追加したりした。具体的には、次のような改善点が挙げられる。

  ○全体的な更新

  ○新たな例や説明

  ○洞察に満ちた5つの事例を第2版で初収録

  ○役立つ索引


製品開発、設計やエンジニアリングのリーン的な見方とイノベーション

 リーンは1990年の「リーン生産が世界の自動車産業をこう変える」の出版とともに、新しいビジネスパラダイムとして世間に登場した。この画期的な本では設計、生産、サプライチェーンと販売・マーケティングにほぼ同じ紙数が割り当てられた。しかしその後、リーンに関する大半の議論は生産プロセスに集中することになる。これはやや変であり、実に残念なことである。無論、製品を生産することは非常に重要だ。しかし、顧客要求や要望に応えることは、どのような製品やサービスを提供すべきかを決めてから生産バリュー・ストリームの設計を始めることと同様に正しい。

 アレン・ウォードは、開発の目的は儲かる生産バリュー・ストリームを創造することと教えてくれた。リーンの関係者たちは工場現場での改善に多くの時間をかけつつ、設計やエンジニアリング、開発などモノづくり上流部門の活動には驚くほどわずかな時間しか割いていない。それが今、変わるべき時がきた。

 アレンは本書(初版)の狙いについて、「『開発プロジェクトをこれまでよりずっと儲かるようにしつつ、同時に楽しむにはどうすればよいか?』という簡単な疑問に答えること」と語っている。とても魅力的な言葉に聞こえてこないだろうか。


開発現場から:5個の新たなリーン製品開発事例
 
初版に関して読者からの質問で最も多かったのは、「考え方は確かにわかったが、自身がどうすべきかより理解できる実際の事例がほしい」というものだった。そのため、第2版では5つの洞察に満ちた事例を新たに用意している。以下に簡単に紹介する。

 ○スカニア(スウェーデン)

 デュワード・ソベックは2011~12年度をスウェーデンのチャルマース大学で過ごし、そこでスカニアにおけるリーン開発の適用事例を知った。乗用車とは異なり貨物トラックの顧客は、注文する製品に関してきわめて独自性の高い構成を指定してくる。大手大型トラックメーカーとして、スカニアの挑戦はわがままな顧客と生産、開発部門のインターフェースをうまく管理することにあった。

 ○フォード(アメリカ)

 「トヨタ製品開発システム」著者の1人であるジェームズ・モーガンも、1990年代にトヨタの製品開発システムを研究した研修者チームの一員だった。彼は2006年に始まったフォードのV字回復劇の核心に、自身の研究成果を適用する機会を得た。同事例ではフォードの複雑なグローバル車体技術部門にリーン製品開発をどのように適用し、いかにしてリードタイムの60%削減と、業界をリードする品質確保、顧客および社員満足度の大幅な向上につなげたかを説明する。

 ○ピン(アメリカ)

 同社の元イノベーション担当部長であるダン・ショーエンヘアが、競争が激しくサイクルが短いゴルフクラブ業界の新製品開発に対し、リーン製品開発によってピン社がいかに顧客要求を満たすのに役立ったかを説明する。「設計してから試験する」という方法から、「試験してから設計する」方法に転換できた要因を説き明かす。トレードオフ曲線などリーン製品開発ツールの適用は、リソースを増やさず新製品開発のアウトプットを500%増加させたり、リードタイムを50%短縮させたりすることに直接つながった。

 ○グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー(アメリカ)
 
ノーバート・マヤースは長い間製品開発システムを研究しており、同社の厳しい製品開発体制にリーンの原則を適用する経験豊かな実践者である。主要顧客であるグローバル規模の自動車メーカーは、大手サプライヤーである同社に対して特に厳しい要求を突きつける。期待した品質や納期を守らないことは絶対に許されない。同事例ではノーバートを中心とするチームがリーン製品開発を導入し、年間1,500種の新製品を立ち上げるための混乱を抑えつつ、リードタイムを70%削減したプル生産や1個流し、目で見る管理を紹介する。

 ○メンロ・イノベーション(アメリカ)

 メンロ・イノベーションは普通のソフト会社ではない。その共同創立者たちは「喜び」に満ちた企業、つまり社員や顧客の人生に喜びをもたらす企業をつくろうとした。その中で彼らは(ひょっとして意図せず)、リーン製品開発の革新的な適用に特徴づけられるような製品開発システムをつくり出した。これらの事例に触れることで、読者のみなさんがリーンへの旅路の支度を整えてくれることを願う。


 ところで第2版の発行を前にして、これまでの考え方の多くを覆すような新たなリーン思考の時代が始まろうとしている。また「リーン・スタートアップ」や「デサイン・シンキング」「メイカーズ」など、リーンと関連した新たな挑戦や実験が随所で始まり、そのことが現状の活動に新たな活力とアイデア、視点をもたらしている。

 ぜひ、みなさんが経験した結果をリーンの世界と共有してほしい。みなさんの意見や洞察はinfo@len.org やLPPDのホームページにお寄せいただくか、デュワード・ソベック、ジェームズ・モーガンらによるリーン製品開発など最新の話題を載せた「The Lean Post」に提供いただくことを切望する。

 最も重要なことは、みなさんに本書を読んでもらい、行動を起こしてもらうことにある。著者の言葉を借りるとすれば、「リーン製品開発の目標は良い製品をつくる方法を速く学ぶこと」。したがって、みなさんが早く始めるほど速く学べることになる。もし、どこから手をつけたらいいかと悩んでいるなら、さっそくアレンの忠告に従うべきだ。「良いと思った部分から始めればいい。ただし、絶対に止まってはならない。リーン製品開発の最も良いところは、どうすればより良い製品開発体制を構築できるか、みなさんが永久に学び続けることができる点にある」のだから。



2014年3月

ジョン・シュック
リーン・エンタープライズ・インスティチュート

会長兼CEO

マサチューセッツ州ケンブリッジ

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