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実態調査で見た
中堅・中小企業のアジア進出戦略「光と陰」

定価(税込)  3,240円

著者
サイズ A5判
ページ数 360頁
ISBNコード 978-4-526-07291-8
コード C3034
発行月 2014年08月
ジャンル 経営

内容

アジア20カ国地域100社以上を取材し、足で稼いだ検証レポート。机上のアンケート調査などでは絶対にわからないリアルな声が満載。進出時の事業化検討・進出後の現地経営の難しさ・志半ばでの事業縮小/撤退の全容をノウハウとして抽出し、やさしく紹介する。

安積敏政  著者プロフィール

(あさか としまさ)
〈略歴〉
 1971年 東北大学経済学部卒業,松下電器産業(現・パナソニック)入社
 1981年 米国イリノイ大学企業派遣留学
     エグゼキュティブ・デベロプメントセンターPEATAプログラム修了
 1994年 松下電子工業取締役経営企画室長
 1996年 松下電器産業本社経営企画室グローバル企画グループリーダー
 1998年 同社アジア大洋州本部企画部長
 2001年 同社アジア大洋州地域統括会社アジア松下電器副社長
 2003年 同社本社グローバル戦略研究所首席研究員
 2007年 甲南大学経営学部教授に就任(現在に至る)

〈専門分野〉
 ASEAN,中国,インドを包含するアジア経営戦略論
〈所属学会〉
 国際ビジネス研究学会,アジア経営学会
〈著書〉
 「激動するアジア経営戦略 ─中国・インド・ASEANから中東・アフリカまで─」,日刊工業新聞社,2009年
 「サービス産業のアジア成長戦略」,日刊工業新聞社,2011年 他
〈対外役職歴〉
 ・経済産業省経済産業政策局「グローバル産業金融研究会」委員
 ・経済産業省製造産業局「ASEAN・インドを中心とする製造業の国際分業に関する研究会」委員
 ・金融庁・財務省・日銀「アジア金融資本市場とわが国市場の発展に関する共同研究会」委員
 ・日本貿易振興機構・アジア経済研究所 業績評価委員
 ・大阪市総合計画審議会専門委員
 ・大阪市夢州産業・物流ゾーン推進会議委員
 ・神戸市産業振興局「神戸中小企業のアジア進出研究会」座長
 ・神戸市アジア進出支援センター顧問  他多数

目次

はじめに

第1章 アジア20カ国・地域100社強の現地調査の概要
 1. 中堅・中小企業の定義
 2. 訪問企業の選定
 3. 現地インタビューの方法
 4. 進出国
 5. 本社所在地
 6. 業種
 7. 売上高
 8. 資本金
 9. 従業員数
10. インタビューリスト

第2章 中堅・中小企業のアジア進出事例研究
◆1.東アジア編
  ●モンゴル
  1.モンゴル人元実習生が経営するモンゴル現地法人
    賛光テックモンゴリア株式会社
  2.厳冬期にでも稼動できる北海道の生コン技術
    アイザワモンゴルLLC
  ●中国
  1.顧客とは日本語で仕様書を打合せ
    北京信思成信息技術有限公司
  2.ゴム長靴日本トップ企業の現地企業買収
    大連金弘橡?有限公司
  3.金型製作・プラスチック事業・水気耕栽培装置
    大連大暁協和精模注塑有限公司
  ●韓国
  1.日華化学グループ内で存在感上昇
    ニッカコリア株式会社
  2.韓国政府の国産化政策に連動して進出
    韓国三星ダイヤモンド工業株式会社
  ●台湾
  1.中国大陸市場を狙う橋頭保としての台湾
    台湾曽田香料股?有限公司
  2.海外初の研究開発部門を備え持つ表面処理剤メーカー
    台灣上村股?有限公司
  ●香港
  1.日本と海外現地法人間に横たわる諸課題
    サンコール香港株式会社,新?精密科技(深?)有限公司
  2.困難を増す採用,高騰する賃金
    明興産業(香港)有限公司,東莞萬江明興産業塑膠製品廠
  3.岐路に立つ日本の着物市場と来料加工貿易
    京蝶苑(香港)有限公司,京蝶苑和服工藝廠

◆2.東南アジア編
  ●インドネシア
  1.小規模時代からグローバル視点で事業拡大
    P. T. Meiwa Indonesia
  2.労組対策と最低賃金の急上昇が課題
    P. T. Komoda Indonesia
  ●シンガポール
  1.シンガポールとマレーシアが連携した一貫生産体制
    Kyowa Singapore Pte. Ltd.
  2.みりん,調味料メーカーのアジア戦略拠点
    キング アルコール インダストリーズ シンガポール株式会社
  ●タイ
  1.創業者のDNAが継承される同族経営
    Muramoto Electron (Thailand) Public Co., Ltd.
  2.着実な配当による投資回収,現地上場を実現
    タイミツワ株式会社
  3.進出後,苦労した新規顧客の開拓
    Kobayashi Industrial (Thailand) Co., Ltd.
  ●フィリピン
  1.問われるグループ一体化経営
    Nikkoshi Electronics Philippines, Inc.
  2.日本IBMの雇用受け皿会社でスタート
    P. IMES Corporation
  ●マレーシア
  1.金属表面処理剤で日本をリード
    Dipsol (M) Sdn. Bhd.
  2.最大の従業員数はインド系マレー人とネパール人
    トーケンマレーシア株式会社
  ●ベトナム
  1.ハイフォン市進出のパイオニア企
    Witco Vietnam Ltd.
  2.レンタル工場活用による中小企業進出支援
    ザ・サポートベトナム有限会社
  ●ミャンマー
  1.インドシナ3カ国で医療用縫合針を分業
    マニーヤンゴン株式会社
  2.IT業界初のミャンマー進出に挑戦
    株式会社ミャンマーDCR
  ●カンボジア
  1.海外生産展開に生き残りを賭ける
    マルニックス・カンボジア株式会社
  ●ラオス
  1.ヴィエンチャン郊外に独自進出
    ラオ ミドリ セフティ シューズ株式会社
  2.特恵関税を活用する婦人靴製造
    ラオシューズ株式会社

◆3.南アジア編
  ●スリランカ
  1.スリランカに進出して30年
    トロピカル ファインディングス リミテッド
  2.現地のドイツ企業を買収した筆専業メーカー
    ウスイランカ株式会社
  3.スリランカ人留学生の熱意が生んだIT企業
    メタテクノランカ株式会社
  ●ネパール
  1.頭を悩ますIT企業の離職率の高さ
    ネパールKCコンサルティング株式会社
  2.国際村おこしとネパール進出
    株式会社かんぽうネパール
  3.日本の“山岳民族”とも言われる立山芦峅寺が発祥地
    丸新志鷹建設株式会社 ネパール支店
  ●インド
  1.縫製品から生活雑貨品までの第三者検品のプロ
    インドフルシマ検品センター株式会社
  ●バングラデシュ
  1.従業員2,000名,原材料調達から製品までの一貫生産
    丸久パシフィック株式会社
  2.チャイナプラスワンを意識した縫製副資材メーカー
    横浜印刷(バングラデシュ)有限会社
  3.停電頻発国に停電時にも点灯するLED電球で生産進出
    Kami Electronics International Bangladesh Ltd.
  4.最大の売上高を誇るバングラデシュ・インド市場
    ペガサスミシン シンガポール バングラデシュ・リエゾンオフィス
  ●パキスタン
  1.合弁パートナーの工場の一角に合弁工場を設立
    パキスタン リークレス インダストリーズ株式会社

第3章 中堅・中小企業のアジア進出の20大留意点
 3.1 進出前の留意点
    3.1.1 安易な合弁設立
    3.1.2 ロイヤルティの確保
    3.1.3 販路の確保
    3.1.4 現地調査が杜撰な事業計画
    3.1.5 資材調達
    3.1.6 仲介人の見極め
    3.1.7 入居先の決定
    3.1.8 派遣人材の質
    3.1.9 国際契約の重要性
 3.2 進出後の留意点
    3.2.1 出向者の異文化経営対応とコミュニケーション能力
    3.2.2 労働争議への対応
    3.2.3 親子ローンによる資金調達
    3.2.4 強まる移転価格調査
    3.2.5 完全出資を認められない時代の合弁会社の独資化
    3.2.6 遵法精神
    3.2.7 情報収集と情報管理
    3.2.8 日本本社の内なる国際化
 3.3 事業撤退時の留意点
    3.3.1 成功・失敗の具体的イメージ
    3.3.2 撤退時の企業売却
    3.3.3 日本の親会社の第三国企業への売却

第4章 中堅・中小企業のアジア活用戦略
 4.1 地域戦略の視点
    4.1.1 急成長するモンゴル,挑戦する日本の中小企業
    4.1.2 台湾から中国市場を攻略
    4.1.3 岐路に立つシンガポール・バタムの
        ツイン・オペレーション
    4.1.4 イスカンダルプロジェクト
        ─シンガポール・マレーシアのツイン・オペレーション
    4.1.5 インドシナ半島の国際分業
        ─ミャンマー・ラオス・カンボジア・ベトナム─
    4.1.6 東ティモール
    4.1.7 アジアと中東の結節点,パキスタン
 4.2 生産戦略の視点
    4.2.1 新たな生産拠点と輸出拠点の構築
    4.2.2 きめ細かな事業拠点の選択
        ─西マレーシアと東マレーシアの事例─
    4.2.3 外国人労働者の活用 ─海外および日本での活用事例─
    4.2.4 賃貸工場の活用
    4.2.5 ポストアジアの生産拠点,アフリカの検討
 4.3 研究開発戦略の視点
    4.3.1 新興国でのIT開発
 4.4 経営機能戦略の視点
    4.4.1 設立形態と出資形態
        ─自前進出/合弁/戦略的提携/企業買収─
    4.4.2 資金調達 ─アジアの証券取引所上場を視野に─
    4.4.3 グローバル人材の確保
        ─人材不足の中で誰が現地法人を経営するのか─
    4.4.4 二世経営者(後継者)育成の場
    4.4.5 ホームページの活用
    4.4.6 リスクマネジメントの構築
 4.5 中堅・中小企業の強みを生かした経営 ─スピード経営の光と陰─


第5章 中小企業のアジア進出は地元経済に何をもたらすのか
─神戸市アジア進出支援センター開所1周年記念シンポジウム─
はじめに
 5.1 基調講演の骨子
    ─中小企業のアジア進出は地元経済に何をもたらすのか─
    5.1.1 デメリット
    5.1.2 メリット
 5.2 パネルディスカッション ~企業編~
    企業経営視点から見た
    「中小企業のアジア進出の地元経済への貢献」
 5.3 パネルディスカッション ~行政編~
    行政の視点から見た
    「中小企業のアジア進出の地元経済への貢献」
    5.3.1 海外進出支援組織や制度を作った背景とその内容
    5.3.2 組織・制度の今日までの進捗や実態
    5.3.3 海外から地元経済に具体的にもたらされるもの
    5.3.4 費用対効果の評価方法と対外的な透明性確保
    5.3.5 モデレータの総括

注 釈
おわりに
国別訪問企業一覧
国別訪問市場一覧
参考文献
図表一覧
索 引

はじめに

 本書は,日本の中堅・中小企業のアジア進出の実態をアジア20カ国・地域100社強(巻末の国別訪問企業名一覧参照)の現地法人を直接訪問し,インタビューした結果をまとめた実証研究(Empirical Study)である。2012年1月から2014年2月の2年間,中国,インドはもとより,北はモンゴルから南はインドネシア,東は東ティモールから西はパキスタンまで各国の事業現場を自ら歩いた「アジア路地裏経営」の実態である。
 100社を超す製造業,非製造業(サービス業)の経営現場を訪問すると同時に,アジア各国の大きく変化する消費の実態や消費行動を理解するため,各国の訪問都市のショッピングセンター,ショッピングモール,伝統的な地元市場について,トップの規模と言われる上位3カ所(巻末の訪問市場リスト参照)を歩いた。アジアで急増する中間層の消費動向を体感するのが目的である。
 本書を書く背景となったのは,産業界の要請である。ダイナミックに変化するアジアで日本は2010年代にどのような経営をなすべきかという疑問から,2009年に「激動するアジア経営戦略?中国・インド・ASEANから中東・アフリカまで?」を上梓した(2014年5月現在6刷)。本書は主に自動車,電機,化学,機械などの大手製造業に焦点を当てた。その後,商社を除いて新興国進出が大きく遅れたサービス業のアジア進出の課題や対応策がほとんど述べられていないという前著への批判から,2011年に「サービス産業のアジア成長戦略」を上梓した。その後,製造業,サービス産業の大手企業に対して中堅・中小企業のアジア進出が加速化したことが本書出版の動機である。そういう意味では,本書は筆者の“アジア経営戦略シリーズ”3部作の3冊目に当たる。
 今回のアジア20カ国・地域100社強の現場を訪問したことが,日本の中堅・中小企業のアジア進出の実態を普遍化,標準化することにはならない。これら企業は,業種も規模も経営スタイルも大きく異なるからである。また,これらの進出企業の日本の本社は,北海道から九州まで全国にまたがっており,各々異なる地域経済の特性を反映しているからである。そのような状況の中で,進出国,進出事業の異なる100社強の個別実態から具体的に何が学べるかというインプリケーション(示唆・含意)が重要である。進出時の検討,進出後の現地経営の困難さ,そして志半ばでの事業縮小・撤退という3段階で日本の中堅・中小企業は何と格闘して,どのように解決しようとしているのかという実態の一端を産業界,官界,学界の皆様にご理解をいただければ幸いである。
 中堅・中小企業の海外進出のリアルな実態は,進出企業の日本本社にアンケートを送って回収した結果を机上でまとめる程度ではわからないのである。海外現地法人の事業の現場で経営トップに詳細な突込んだインタビューを行い,工場見学,事業所見学をさせていただく中からその実態が浮かび上がってくる。インタビュー中で言えないことも多いし,話していただいても書けないことも多いのが中堅・中小企業である。
 中堅・中小企業の海外進出に関しては,「匠の技を持つ日本の中堅・中小企業は素晴らしい」という礼讃一辺倒の本や論文がある。現地で事業困難に陥り,事業撤退や事業売却を余儀なくされた多くの企業の存在に触れることなく「光と陰」の「光」の部分だけに焦点を当てたワンサイドの本もある。また,「中堅・中小企業の海外進出は,日本本社の雇用を増大し,企業の活性化に大きく貢献している」といった例外的企業を取り上げた所轄官庁の希望と期待を書いた本なども多い。本書ではそれらの先入観なく20回に及ぶ現地出張を通して,現場を一社一社丹念に歩いて,見て聞いて感じた結果を海外の現場サイドから記載しているアジア路地裏経営学である。本書に,筆者が訪問した現地法人の中から42社の具体的事例を収録したのも,今後アジア進出を計画し現地での様々なご苦労に直面するであろう中堅・中小企業の皆様の実践的な参考書となることを願ってである。なお,企業事例の内容,経営の数字は,筆者訪問時点であることにご留意いただきたい。
 また,本書の第5章に,筆者が顧問を務めている神戸市アジア進出支援センター(檀特竜王所長)の開所1周年記念シンポジウムを収録している。筆者が企画しモデレータを務めたこの討論会の中で,2010年代に入って雨後の竹の子のごとく全国自治体や経済諸団体が立ち上げた中堅・中小企業の海外進出支援制度や組織は,地方経済の活性化に本当に役に立っているのか,その具体的な課題と展望は何かを追求している。関係官庁,関係諸団体の皆様の今後の政策立案や支援活動の参考になれば幸いである。
 なお,本書出版に当たっては,著者のインタビューや問合せに,日々の業務で多忙な中にもかかわらず温かくご支援・ご協力をいただいたアジア各国現場の経営者・経営幹部の皆様に心より感謝を申し上げたい。
 また,筆者の海外インタビューの多くの行程に同行いただき,拙稿に貴重なコメントをしていただいた神戸市アジア進出支援センターのシニアマネージャー 八伏俊彰氏(元・松下電器産業勤務)の支援がなければ,本書の発刊は困難だったと言わざるを得ない。あらためて感謝を申し上げる次第である。
 最後に,日刊工業新聞社・大阪支社の辻總一郎氏には本書の企画段階から編集・校正に至るまで懇切に作業を進めていただいた。同氏をはじめ関係者の皆様に心より御礼を申し上げたい。
 
 2014年6月
 安積敏政

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