買い物かごへ

金を掛けずに知恵を出す
からくり改善事例集 Part2

定価(税込)  2,376円

編者
サイズ B5判
ページ数 152頁
ISBNコード 978-4-526-07269-7
コード C3034
発行月 2014年08月
ジャンル 生産管理

内容

国内では大量に生産する仕事が減り、設備効率を上げても意味がないという考え方をする企業も出始めてきた。そうした中で、現場の創意工夫を活かした「からくり」装置を取り入れ、ローコストで生産効率化を果たす取り組みが最近注目されている。ムダのない生産の実現に導いた現場発の自慢の改善を70事例紹介。からくりを活用した最適な設備体系と作業方法のあり方を示す。

目次

はじめに モノづくりの底力を引き出す「からくり改善」の効用

生産性向上。作業改善(作業改善)
01 ボルト径の相違を利用し、転がすことで向きを揃える
   だって揃っちゃうんだも~ん
02 重心の偏りを利用して向きを揃える
   必殺BKT返し
03 リンク機構を利用してパーツを整列
   おみくじくん
04 ビスを振動で整列させ、ビス締め作業性を向上
   ビス整列君
05 部品の定数・定点取り出し
   切出し君
06 圧入工程のシリンダー動力を利用して部品を自動供給
   バルブガイド A GO GO!!~踊るタロー、ジロー
07 円筒部品を確実に2個取り出せる簡易供給装置
   ニコニコ・ポン
08 カムを利用したスナップリングの1個取り
   引くとデルくん
09 重なり合ったOリングを一列に整列し1本ずつ切り出す
   あなたも手延べ職人
10 粘着シートを利用してガスケットを1枚ずつ取り出す
   一枚どうぞ
11 低気圧吸引を利用した1枚取り装置
   トルネードキャッチ
12 ワークの定点取り出しとトレーの自動返却
   KARA(空)返却ししおどし君
13 部品トレーの入れ替えと電動ドライバー手元化改善
   からくり劇場
14 基板ラックのワンタッチ入れ替え
   つぎのラックはラクー
15 コロコロクリーナーでコンタミをシャットアウト
   コロコロスイッチ
16 荷紐掛け作業の定位置化で楽に、早く、確実に!
   紐掛け名人
17 新たな動力を使わず、設備の動きを利用してスクラップを排出
   ギッタンバッコン
18 こっぱみじんに破砕することで詰まりをゼロに
   粉々君

生産性向上・作業改善(搬送)
19 1つの動力源で動くからくりパーツフィーダー
   スリムビック
20 摩擦力を利用して倍速移動を実現
   ふしぎハンソー倍速くん
21 動滑車とスプリングバランサーを使った重量物運搬装置
   倍力君
22 製品トレーの自動運搬とトレーの定点取り出し
   坂道のぼる君
23 別々の機械から成形品を1カ所で取り出せる装置
   ニコいちトランスポート
24 部品箱の回転半径を小さくしたシュート
   クルッとスマート君
25 箱自重と人の踏力だけで供給/排出するシューター
   あらっ♪「楽し~そ~」
26 最後の部品を取ると供給トレーが自動返却
   ハシロック
27 ワークの供給と空容器の払い出しを自動化
   楽々空ポリ返し
28 実箱を排出すると自動で空箱が供給される
   だるま落とし改
29 少し離れた工程への部品1個供給
   宅急便1号
30 ゼンマイとスプリングの力で無動力搬送
   ぜんまい半蔵(搬送)いざ参上
31 ワークの重量を利用したシーソー式振り子搬送機
   なんでやねん!
32 付加価値のない枕木運搬作業ロスを廃止
   搬送治木(はんそうなおき)
33 2階から1階へ製品を供給する昇降設備のからくり化
   自重戦隊 自力でオリルンダー!!
34 パレット段取り作業を楽に進める
   パレドロ
35 台車へのパレット搬出・搬入の自動化
   動力回生台車
36 誰の手も使わずAGVが台車を連結・解放
   楽々ラック(小型AGV)+連結台車もアンロック

生産性向上・作業改善(治具)
37 長尺製品の無動力順次搬送
   かってにメリーゴーランド
38 バランスを利用したワーク保持台で目視検査が楽に
   らくらく検査台
39 シーソーの原理でワークの打痕を防止する
   かに挟みストッパー
40 製品の流れる力を利用した1個取り出し
   ワンタッチからくりストッパー
41 揺動運動により小物パイプを楽々セット
   パイプとおる君
42 組付順に合わせ、必要なときに必要な数だけボルトを取り出す
   臨機応変
43 治具にワークを通すだけできれいに塗布
   ずっと潤いラク注入

工具改善
44 ドライアンカーの穴あけを正確できれいに仕上げる
   明ける君
45 クランプレバーの手の移動距離を短縮
   減らストロック
46 一斗缶を開ける作業の安全性向上
   K・A・I・K・A・N

自社開発機器
47 ボール供給シュート内で異品ボールを選別
   そのボールちょっとまった
48 簡易自動化でエアブロー作業のバラツキをなくす
   終電ですよ!お客さん
49 テーピング部品のカットと端子曲げの効率化
   電解コンデンサカット

安全改善
50 不要になったドライアンカーを折らずに抜き取る
   抜取りちゃん
51 重りを利用した自動閉め扉
   しまるん?
52 重りの落下スピードを調整して閉まる自動扉
   しまるん?No.2
53 災害時に避難の邪魔をせず定位置から絶対に動かない台車
   ママチャリ・ロック!
54 テコとリンクを利用してケガを防ぐ搬送台車
   ガッチャン・マン
55 部品箱の引き出し・戻し作業改善
   ひきまる
56 1つの動作でワーク送りと搬送パレットのシュート
   エル・君
57 ばねの力で作業者の重量作業をサポート
   楽々ちゃん
58 階段を使わず楽々「荷上げ・荷下ろし」の実現
   カルカッタ君
59 板パレット積み上げ時の重筋作業を廃止
   板パレ上げノミクス
60 既存の動力利用でエンジン組立作業の工程一部削減
   アーム起し&テーブル旋回装置
61 グラスウール材料を簡単・楽々で供給
   押っす! かたぐるま

省エネ・環境改善
62 屑受けが治具に押されてもすぐ戻る
   うけるくん
63 パレットが回転することで差し替え作業をなくした
   まがっターン!!
64 エアシリンダーを廃止して手動でワッシャーを8枚切り出し
   わっしゃー48
65 ワンプッシュでワークが回転し異物吸引するクリーナー
   無動力回転バキューム装置
66 安価でつくったジェットタオル+吸引方式で手袋のゴミを除去
   吸ちゃん
67 防錆油噴霧作業の廃止で工場環境を改善
   もみじまんじゅう式ピアノ
68 作業者の集中力を妨げないアンドン表示
   手動あんどん

目で見る管理
69 自重を利用して定位置に戻る一旦停止板
   パタ・パタ
70 設備内エアブローの可視化
   風の為のミエルカ

FOCUS ~みんなが夢中になるからくり改善活動の進め方

はじめに

モノづくりの底力を引き出す「からくり改善」の効用

「からくり」とは
『からくり』という言葉からは、日本古来の「茶運び人形」や「弓曳き童子」などの「からくり人形」を連想される方が多いと思います。「からくり人形」の歴史を調べると、1619年の“東宮祭”に初めて山車が登場し、翌1620年には、「からくり人形・弁慶と牛若丸」が初めて披露されたという記録が残っています。その後、江戸時代に人形芝居が盛んになると、興行を通じて全国各地に広がり、根づいていったと言われています。
 ではなぜ、江戸時代に「からくり人形」が誕生したのでしょうか。江戸時代の日本は、長い戦乱の世が終わり、非常に平和な時代でした。今までの戦乱の世に進歩した、鉄砲などの武器の技術や時計職人が作り上げた「和時計」の技術などが、庶民の遊びに利用されるようになったのが大きな要因と言えます。このような時代背景と高度な技術が、その後の『からくり文化』を非常に大きく発展させ、明治時代・近代へと引き継がれていきました。
 また、昭和40年代には、「鉄腕アトム」や「鉄人28号」などのロボットがヒーローとなる漫画本の出版やテレビ放映が多くなり、少年が目を輝かせて真剣に見ていました。その少年たちが後にロボット技術者となり、多くのロボットの開発を行ったのです。一例としては、“二足歩行ロボット”です。このロボットは、碧南市などに残っている、階段状の杭を登っていく「山車からくり」の“乱杭渡り”に、その原型を見ることができますが、漫画のロボットヒーローにもつながります。つまり、「からくり人形」は、日本の機械工学の原点なのです。

「TPM」と「からくり改善」
 当会が1971年より提唱している『TPM(Total Productive Maintenance:全員参加の生産保全)』を導入・展開していただいている企業では、現場第一線のオペレーターの方が、TPM活動の8本柱のひとつである「自主保全活動」を推進する中で、【自分の設備は自分で守る】を合言葉に、設備への関心と改善の心を磨き、日々の生産活動でやりにくい作業や困っている問題を、自らのアイデアで解決するために、さまざまな改善と努力が行われています。
 このオペレーターの方による『改善』の多くは、日本古来の「からくり人形」に見られるような原理(メカニズム)である「てこ」「カム」「クランク」「ギヤ」「リンク装置」「ゼネバストップ」などを利用した、『手づくりでお金をかけない「改善」』です。当会では、製造現場から誕生した改善を1994年以降、「からくり改善」と名付け、積極的に普及をしています。また、正しく普及をさせるためには、共通の認識を持っていただくことが重要と考え、当時、TPM優秀賞の審査委員をお願いしていた芝浦工業大学・名誉教授の津村豊治先生と「からくり改善」の定義を一緒に検討し決定しました。その定義は以下のとおりです。
 ◇メカニズムは単純シンプル
 ◇お金をかけない
 ◇ムリ・ムダ・ムラを退治した改善
 その結果、創造性が高く他の見本となる楽しい改善となります。
 現場第一線のオペレーターの方が、「知恵を出し」「手づくり」で製作し、結果としての作品は、「創造性が高く」「楽しい改善事例」であること。これを基本として、
 ◇1つの動きで多くの動きをさせる
 ◇メカニズムは単純・シンプルで、故障・トラブル時の対応がとりやすい
 ◇(材料、動力に)お金をかけない改善
 ◇現場のムリ・ムダ・ムラを退治した「作業改善事例」
です。これらの条件を満たした改善により、直接的には品質向上、生産性向上、故障低減、チョコ停低減、保全性・安全性向上、段取り・調整時間の短縮、刃具交換時間の短縮、部品供給や運搬・搬送効率の向上、原単位の効率向上、騒音低減、省エネルギーなどに大きな成果が得られ、オペレーターの方も楽に・早く・楽しく仕事ができるようになる、としました。

ロス低減の具体策
 近年、「からくり改善」が積極的に企業で導入・展開されている背景には、わが国の製造業が置かれている厳しい環境が大きく関係しています。製造業の国内空洞化が進み、国内の生産量が減少し、新規の設備投資が積極的にしにくい時代だからこそ、日本のモノづくりの強化と国内生産存続のためにも全員参加によるからくり改善が今、注目を集めているのです。
 実際の事例をご紹介します。某自動車メーカーでは、当時、景気の低迷などにより販売予測が難しいため、新車の計画段階から新規設備の導入を極力抑え、既存設備にからくり改善を積極的に取り入れ、大幅に製造コストを削減しました。その結果、新車販売価格を下げることができ、計画を超える販売を実現しました。
 また、某事務機器メーカーでは、加工後の事務机の天板を、従来はロボットを使って方向転換し、次工程に送っていましたが、「方向さえ変わればよい」と考えたオペレーターの方が、傾斜を使って流れてくる天板に「てこ」を応用したピンを使い、天板の方向を90度転換し、次工程に送るからくり改善を考案しました。この改善にかけた費用はわずか数万円で、約600万円のロボットが不要になるのと同時に、ロボットのランニング費用やメンテナンス費用をなくし、大幅なコスト削減を達成しました。
 このように、からくり改善は、生産性向上やコスト削減などにつながるさまざまなロスの低減・撲滅に大きな成果をあげています。また、今後の設備投資の面からも「生まれの良い設備づくり」にからくり改善は重要な役割を果たしており、LCA(ロー・コスト・オートメーション)、すなわち設備の低コスト化にも寄与しています。

「からくり改善くふう展」の開催
 1993年当時、「資源のない日本は、社員の知恵を集結しなければ、海外企業との差別化はできない。各社の『からくり改善』作品を一堂に集めて、多くの方に直接見ていただくことで、産業界全体に貢献できるのではないか」との思いを強くした私は、作品展を形にすべく働きかけを始めました。展示された他社のからくり改善作品を見ることで、新たな発想が生まれ、自社の改善のヒントとなって、それが大きく全国に普及していく姿を想像したのです。
 開催までにはさまざまな苦労がありましたが、構想から約1年後の1994年3月に名古屋で、「第1回からくり改善くふう展」を開催することができました。これまでに、「からくり改善くふう展」の開催は、名古屋で11回、東京では7回を数え、延べ出品作品数は約4,000作品。参加者数は、約56,000人に達し、年々盛大になっています。2014年度も、9月25日?26日にパシフィコ横浜で開催を予定し、現在、鋭意準備を進めているところです。
 おかげをもちまして、2009年に発行した前著「からくり改善事例集」も順調に版を重ねており、このたび、このように続編をまとめることができました。その他、当会でもからくり改善の「通信教育」「DVD」などの教材や「セミナー」「工場見学会」「現場改善支援」などを通じて、企業のからくり改善の取り組みを支援させていただいています。

原点は「楽に作業できること」
 からくり改善の原点は、「効率化」ではなく「楽」に作業できることです。「やりにくい」作業を改善したり、自身が日常作業の中で困っている問題を自らのアイデアで解決することから始まるのです。行き詰まったときには、生産技術部門や保全部門と相談し、知恵を貸してもらうことも有効ですが、気をつけなければいけないのは、決して「複雑」にはしないことです。メカニズムを簡素化しないと、操作性や保全性の容易さにはつながらないからです。
 からくり改善の目が養われてくると、今まで見えなかった製造現場のいろいろな場所や機会にある「重たい」「危ない」「やりにくい」「きつい」「汚れる」「うるさい」など、多くの課題が見えてきます。これらの課題をからくり改善により解決することで、3K職場の排除につながり大きな成果が生まれます。また、仕事が安全で楽になり、結果として仕事が楽しくなるのです。
 「楽になれば楽しくなる」「楽しくなければ長続きしない」と私は思っています。楽しくなれば、今まで気づかなかったおもしろい世界がどんどん見えてきて、興味が広がってくると思います。からくり改善に終わりはありません。満足した時点から後退してしまいます。常に問題意識を持ち、楽しく改善を進めてください。
 最後になりますが、本書は、からくり改善の先進企業21事業場様より、たいへん貴重な70事例をご提供いただきました。みなさまに深く感謝を申しあげます。
 製造業のみなさまにおかれましては、本書を改善のためのヒントとしてご活用いただき、「楽に楽しく仕事をする」一助としていただければ幸いです。

2014年8月
公益社団法人 日本プラントメンテナンス協会
専務理事 鈴置 智

※「からくり改善」は、JIPMの登録商標です

買い物かごへ