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シリーズ電力大再編
電力小売全面自由化で動き出す分散型エネルギー

定価(税込)  2,160円

編著
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07271-0
コード C3034
発行月 2014年06月
ジャンル ビジネス

内容

日本でも2016年に電力小売が全面自由化される。これに向けて、あらゆる業種の多くの企業が発電、小売事業への投資を拡大している。一方、需要サイドでの新規サービスの展開も加速している。本書は、電力の全面自由化で今後、付加価値が飛躍的に高まる分散型エネルギーの「電源技術」「制御技術」「市場」などをわかりやすく解説する。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)

株式会社日本総合研究所

執行役員 創発戦略センター所長

1958年生まれ。81年、早稲田大学理工学部機械工学科卒業、83年、同大学院理工学研究科修了。83年、三菱重工業株式会社に入社。90年、株式会社日本総合研究所に入社。95年、株式会社アイエスブイ・ジャパン取締役。2003年、株式会社イーキュービック取締役。2003年、早稲田大学大学院公共経営研究科非常勤講師。2006年、株式会社日本総合研究所執行役員。

環境・エネルギー分野でのベンチャービジネス、公共分野におけるPFIなどの事業、中国・東南アジアにおけるスマートシティ事業の立ち上げなどに関わり、新たな事業スキームを提案。公共団体、民間企業に対するアドバイスを実施。公共政策、環境、エネルギー、農業などの分野で50冊を超える書籍を刊行するとともに政策提言を行う。

目次

はじめに 


第1章 なぜ新世代分散型エネルギーか

1.1 社会を支えた大規模集中型エネルギーシステム 

1.2 期待される分散型エネルギーシステム 

1.3 分散型エネルギーシステムの挫折 

1.4 分散型エネルギーシステムを後押しする
IT革命と自由化 

1.5 ダウンサイジング・イノベーション 
1.6 2020年に実現するダウンサイジング・イノベーション 


第2章 進化を続ける発電設備

2.1 世界最高効率のガスエンジン 

2.2 ガスタービンが生み出すシステムの多様性 

2.3 劇的進化を遂げる小型燃料電池 

2.4 大型燃料電池の可能性 

2.5 燃料電池が変える分散型エネルギーシステム 

2.6 内燃機と燃料電池がカバーする
分散型エネルギーのマップ 


第3章 付加価値を高める再生可能エネルギー

3.1 オンサイト型太陽電池の普及 

3.2 潜在力を秘めたヒートポンプ 

3.3 効果の高い太陽熱利用システム 

3.4 小型風力発電システムの可能性 

3.5 バイオエネルギーシステムの可能性 

3.6 進化が期待される家庭用蓄電池 


第4章 効率性を押し上げる熱利用設備

4.1 分散型エネルギーシステムの優位性の基盤 

4.2 排温熱の冷熱利用技術 

4.3 低温熱源の徹底利用 

4.4 低温排熱利用のバイナリー発電技術 

4.5 成長が期待されるハイブリッドシステム 


第5章 革新の需要制御システム

5.1 分散型エネルギーと需要制御システムの可能性 

5.2 定番となるBEMS 

5.3 普及段階に入ったHEMS 

5.4 マンションの商品価値を高めるMEMS 

5.5 スマートシティの必須アイテムCEMS 

5.6 目白押しのスマート機器 


第6章 分散型エネルギーを後押しするエネルギー自由化

6.1 始まったエネルギー自由化 

6.2 自由化が可能にした
系統電力と分散型エネルギーのベストミックス 

6.3 さらなる自由化が期待される
需要家同士のエネルギー融通 

6.4 アグリゲータによる
分散型エネルギーシステムのインテグレーション 

6.5 分散型エネルギーの価値を高める電力取引市場 


第7章 スマート市場の広がり

7.1 スマートシティへの期待と現実 

7.2 エネルギーのクールジャパン:スマートハウス 

7.3 理想の居住空間:スマートタウン 

7.4 都市を強くする:日本版スマートシティ 

7.5 海外に見る日本型スマートシティの可能性 


第8章 市場の牽引役となる事業者

8.1 先端技術を提供するスマートメーカー 

8.2 エネルギーサービスの中核となる
スマートエナジー・サプライヤー 

8.3 スマートシティを牽引するスマートデベロッパー 

8.4 エネルギー業界への新たな参入者
スマートオペレータ 

8.5 分散型エネルギーシステムのグローバル成長戦略 



コラム

分散型エネルギーを考えない人はいない 

進む技術の大転換 
里山エネルギー事業 

人口減少時代と分散型エネルギーの関係 

ITの進化はエネルギーをどこまで変えるか 

好景気に緩むことなく改革を 
スマートシティで思ったこと 

成功する企業と留まる企業 

はじめに


2013年、電気事業法が60年ぶりに大きく変わった。本来であれば10年前に電力市場は自由化されていたはずだったが、既存勢力の反対でとん挫した。電力市場の改革と並行して都市ガス市場も自由化される。2016年の電力小売市場の全面自由化を睨んで、多くの事業者がエネルギー市場への投資を開始している。すでに、PPS(Power Producer and Supplier)に申請した事業者の数は200を超えるとされる。

 今回の大改正は東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故が契機になったわけだが、震災前からエネルギー市場への注目は高まっていた。スマートグリッド、スマートシティ、あるいはPHV(Plug in Hybrid Vehicle)や電気自動車と電力系統の接続、燃料電池のコジェネレーションシステムなど、エネルギー関連分野では革新技術が目白押しであった。その意味で言うと、60年ぶりの大改正とはいえ、既存の電力事業への新規参入が進むだけでは、市場の潜在力を底上げしたことにはならない。電気事業法の改正は伝統的な大規模集中型エネルギーの市場の規制を緩和するに過ぎないからだ。上述したような革新技術、革新的なサービスが成長する市場が生まれなければ、せっかくの大改正も頭打ちのエネルギー市場のパイの切り方を変えるに過ぎなくなる。また、EUでの自由化の帰趨を見ても、大規模集中型エネルギーの市場では、新規参入より、大電力を軸にした統合が進むと考えるのが自然だ。原子力発電が復帰し始めれば、新規参入者は大電力の実力を思い知ることになる。

 60年ぶりの大改正を日本経済の成長につなげるためには、規制緩和と並行して、次世代のエネルギーシステムが導入されなくてはならない。それが「分散型エネルギーシステム」であることはすでに論をまたないところだ。技術的に見ても、規制緩和と並行して分散型エネルギーシステムが普及するには、今が絶好のタイミングと言える。本文で詳しく述べるが、この10年間、分散電源、オンサイト型の再生可能エネルギー、熱供給設備、制御システムが飛躍的な進化を遂げたからだ。何よりも、ITとの融合により分散型電源がネットワーク型のエネルギーシステムに進化したことが大きい。10年前、単独でメインフレームに立ち向かっていたパソコンが、自らも高機能化しインターネットでつながれたのと同じようなものだ。


 本書では、第1章で分散型エネルギーが再び注目される背景を述べた後、第2章から第5章で新世代の分散型エネルギーシステムを構成する核技術である、分散電源、オンサイト型の再生可能エネルギー、熱供設備、制御システムについて技術の状況を示す。そのうえで、第6章から第8章では、自由化が分散型エネルギーシステムに与える影響、分散型エネルギーシステムのためのスマート市場、新たな市場のプレイヤーについて述べている。本書が分散型エネルギーシステムの新しい時代の可能性を想起するのに役立てば幸いである。


 本書の企画から刊行に当たっては、日刊工業新聞社の奥村功出版局長にお世話になった。長年のご支援に対して心より御礼申しげたい。

 第2章から第5章の多くは、日本総合研究所の木通秀樹さん、瀧口信一郎さん、梅津友明さんに執筆いただいた。また、同じく七澤安希子さんに調査や助言で協力いただいた。多忙の中、本書の執筆に協力いただいたことに心より御礼申し上げる。

 最後に、筆者の日頃の活動に対して、ご支援、ご指導をいただいている株式会社日本総合研究所に心より御礼申し上げる。



2014年 初夏

井熊 均

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