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実用 レーザ切断・溶接加工
実践に役立つレーザの知識

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-07265-9
コード C3053
発行月 2014年06月
ジャンル 機械

内容

対象材料が薄板から厚板、極厚板へと拡大し、加えて特殊な材料の出現で、ますます難易度が増してきているレーザ加工。レーザ加工を製造技術として採用するためには、その知識と加工現象のさらなる理解が求められている。本書は、レーザ切断加工とレーザ溶接加工の理論・原理を、実務経験も豊かな著者が噛み砕いてわかりやすく解説する。

新井武二  著者プロフィール

(あらい たけじ)

中央大学研究開発機構 教授

1945年生まれ。東京教育大学(現 筑波大学)大学院修士課程修了、
中央大学 大学院博士課程(単位取得)満了。

同 理工学部専任講師、ファナック基礎技術研究所主任研究員、アマダレーザ応用技術研究所長を経て現職。その間、電子技術総合研究所(流動研究員)、産業技術総合研究所(客員研究員)を歴任。

2006年~ 2010年までレーザ協会会長を歴任、現在、理事。

工学博士、農学博士。



●主な著書

「レーザ加工の基礎工学(改定版)」丸善出版、2013年12月

「絵とき レーザ加工基礎のきそ」日刊工業新聞社、2007年 6 月

「高出力レーザプロセス技術」マシニスト出版、2004年 9 月

「はじめてのレーザプロセス」工業調査会、2004年 6 月

その他多数



目次

はじめに   



序 章 レーザ加工技術の変遷

1-1 レーザ加工の変遷   
1-2 レーザと波長   


第2章 レーザ加工の基礎

2-1 レーザと物質   

 2.1.1 材料の光反射   

 2.1.2 材料の光吸収   
 2.1.3 ビーム走行と吸収率   

 2.1.4 各種材料の吸収率   

2-2 エネルギーパワー密度   

 2.2.1 ガウス分布とパワー密度の算出   
 2.2.2 ガウスビームのパワー密度   

 2.2.3 デフォーカスと熱源幅   

2-3 レーザ照射とプラズマの発生   

2-4 レーザ加工とエネルギーバランス   

 2.4.1 レーザによるエネルギー   

 2.4.2 酸化反応によるエネルギー   

2-5 レーザとビームモード   

 2.5.1 強度分布とビームモード   

 2.5.2 切断とビームモード   

 2.5.3 溶接とビームモード   

 2.5.4 ファイバレーザとビームモード   

2-6 レーザの発振形態     

 2.6.1 レーザの連続発振   

 2.6.2 レーザのパルス発振   

 2.6.3 パルス発振と波形   

2-7 ビームの集光   

 2.7.1 レンズの収差   

 2.7.2 回折限界   

 2.7.3 レンズによる集光   

 2.7.4 ビームの収束性   



2-8 加工を支配する要素   

 2.8.1 レーザ加工の4要素   

 2.8.2 加工パラメータ   



第3章 レーザと加工機

3-1 CO2レーザ   

 3.1.1 CO2レーザ   

 3.1.2 CO2レーザと発振   

 3.1.3  CO2レーザ加工機   

3-2 YAGレーザ   

 3.2.1 YAGレーザ   

 3.2.2 YAGレーザと発振   

 3.2.3 基本構造としくみ   

 3.2.4 YAGレーザ加工機   

3-3 ファイバレーザ   

 3.3.1 ファイバレーザと発振   

 3.3.2 ファイバレーザと加工機   

3-4 半導体レーザ   

 3.4.1 半導体レーザと発振   
 3.4.2 半導体レーザ加工機   
3-5 ディスクレーザ   

 3.5.1 ディスクレーザと発振   

 3.5.2 ディスクレーザ加工機   

3-6 加工システム   

 3.6.1 ワーク移動方式   

 3.6.2 光移動方式   
 3.6.3 併用方式   

 3.6.4 3次元加工システム   

 3.6.5 ロボット結合方式   



第4章 レーザ切断加工

4-1 レーザ切断の技術変遷   

4-2 切断加工の位置づけ   

4-3 切断加工の特徴   

4-4 切断加工の種類   

4-5 切断加工の加工現象   



 4.5.1 切断加工の原理   

 4.5.2 切断フロントの挙動   
 4.5.3 切断フロントでの溶融流れ挙動   

 4.5.4 材料表面の温度ボリュームとフロントの除去量   

 4.5.5 切断速度に対する条痕ピッチの影響   

 4.5.6 切断フロントの温度分布と熱拡散   

4-6 切断の限界速度   
4-7 切断とドロスの生成 

 4.7.1 切断フロントの断面   

 4.7.2 溶融金属の流れベクトルで切断面を上から見る   
4-8 フロント形状のCAD化とシミュレーション   

 4.8.1 切断速度に対するガスの流速分布   

 4.8.2 溶融金属の流れ密度分布   

4-9 パルス発振での切断   

4-10 レーザ切断の加工事例   

 4.10.1 薄板の切断加工   

 4.10.2 中厚板の切断加工   

 4.10.3 厚板切断加工   
 4.10.4 特殊レーザ切断加工   



第5章 レーザ溶接加工

5-1 レーザ溶接の変遷   

5-2 レーザ溶接加工の位置づけ   

 5.2.1 シートメタル加工での溶接法   

 5.2.2 レーザ溶接の分類   

 5.2.3 レーザ溶接加工の特徴   

5-3 レーザ溶接のメカニズム   

5-4 ビードオンプレート   

 5.4.1 シミュレーションと実加工サンプル   

 5.4.2 速度変化と変形量の比較   

 5.4.3 溶接に伴う応力分布   

5-5 突合せ溶接   

 5.5.1 接合部材間のキャップ   
 5.5.2 エネルギー配分の検証   

 5.5.3 シミュレーション解析   

 5.5.4 溶接後の変形量   



 5.5.5 突合せ溶接と角変形量   
5-6 重ね溶接 

 5.6.1 重ね溶接の加工現象   

 5.6.2 重ね溶接のシミュレーション   

 5.6.3 実加工実験による検証   

 5.6.4 重ね溶接の貫通時間の比較   

5-7 溶接加工の実際   

 5.7.1 溶接のパラメータ   

 5.7.2 溶接の欠陥   

5-8 溶接加工の事例   
 5.8.1 薄板の溶接加工   

 5.8.2 パルス溶接   
 5.8.3 シーム溶接とスポット溶接   

5-9 自動車産業における溶接事例   

5-10 ハイブリッド溶接 

5-11 レーザ溶接の製品事例 


第6章 レーザ作業の安全対策

6-1 レーザ加工システムの安全対策   

 6.1.1 レーザ加工システム   

 6.1.2 レーザ発振器   

 6.1.3 テーブル駆動系   
6-2 作業時の安全 

 6.2.1 レーザ光に対する安全対策   
 6.2.2 レーザ作業の安全   

6-3 異常発生時の措置 

 6.3.1 加工異常   

 6.3.2 レンズの熱暴走   

6-4 そのほかの安全対策   

 6.4.1 安全予防の実施と定期点検   

 6.4.2 日常安全衛生の奨励   
 6.4.3 使用者への安全予防策   



あとがき   

索引   
 




はじめに

レーザを長年扱った経験をもつ中堅技術者でも、自分の知識では対応し切れない場合や解決に窮することがある。新規工程の導入や新しい生産技術の開発に直面したときなどである。このようなときには、実際的で豊富な知識をもっていると思われる技術者に期待が向けられる。

 一方で、技術者が不意に質問され、アバウトな答をせざるを得ないとき、あるいは、正確でなくとも何らかの解答を強いられることがある。それは、自身が明快な知識をもち合わせていないときに起こる。この場合に要求されているのは現場知識だけではなく、工学的な知識で裏付けられた実用的な技術である。当然なことながら誰にもわからないことはあるが、それでも技術者は本来「いい加減」な解答をすることを望まない。これはエンジニアの性分のはずである。

 レーザ装置メーカの熟練営業マンは、時にはエンジニア以上に明瞭に技術的な説明を加えることがある。技術者が営業マン以下の説明しかできないならばどうあろうか。それでは技術者の立つ瀬がないばかりか、技術に精通しているというプライドがそれを許さないであろう。技術者は根本的に営業マンとは違う。なぜなら技術に裏打ちされた理解と思考回路をもっている。それを発揮できるのは技術者であって、これが技術者の持ち味でもある。また、このことに喜びを感じるはずである。それは広範な知識と高度な工学的バックグラウンドがあってこそ可能なものなのである。

 レーザ技術は広く普及してきた。そのことによってレーザ加工はすでに十分理解されているかのように思われている。しかし実際はそうではない。細部にわたってわかったようでわからないのが「レーザ加工」である。その理由は、レーザ加工は事象が高速なうえに照射部の輝度が高く、発熱による溶融が材料内部にまで生じるために、視覚的に捉えることが困難なためである。さらに、本当の理解には多方面の学際的な知識を必要とすることにもよる。

 通常、判断のために得られる情報は加工後の被加工物(サンプル)のみである。そのため、理解不足から不十分な推論が生じ、時として邪推に近いアバウトなものがまかり通る。推論の多くは自らの経験に基づいており、その範囲を超えることは稀である。したがって、予想もしなかったような斬新な結論が導かれることもほとんどない。周辺もそれらに対する反論の根拠をもたないために、半ば既成の事実のようになってしまうのである。比較的新しいレーザ加工の分野でよくありがちなことである。技術開発を推進していく過程では、意外性との遭遇は日常茶飯事である。また、研究によってもすっきりしない事象が生じ、疑問の溝の埋まらないことがある。これは“未知の領域”に接したときである。この唯一の解決策は加工原理の正しい理解である。

 日本のレーザ応用技術は切断が全体の80%近く占め、溶接などの割合も増加しつつあるが、反対に、欧州では溶接の割合がレーザ応用の70%を占め、徐々に切断の割合が増加しつつあるという。その意味で切断加工や溶接加工はレーザによるもっとも重要な応用技術である。材料の対象が薄板から極厚板へと拡大し、特殊な材料の出現でますます加工の難易度は増してきている。さらに、加工精度や面粗度の追及が高度化し、多様化する材料に対応しつつ生産技術を向上させるためには、より実用的で高いレベルの知識と現象の深い理解が要求される。したがって、そのニーズに応えるような書物が必要になってきた。

 本書は、技術者として知ってなければならないレーザ加工のうち、「高出力による切断加工と溶接加工」に絞ってより専門的にまとめたものである。普及の割には必ずしも明確でないカオス状態のレーザ切断加工と、溶接加工のレーザ技術をできるだけあきらかにすることで、技術者に実用的なレーザ加工技術の正しい技術伝承と、その上に立った新たな挑戦を促そうとするものである。



2014年6月


新井武二

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