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雰囲気熱処理の基礎と応用

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07259-8
コード C3057
発行月 2014年05月
ジャンル 金属

内容

雰囲気熱処理とは、熱処理炉内の雰囲気ガスの成分や温度、処理時間などを目的に応じて調整することにより、被熱処理品に所望の性質を加える金属改質技術。本書はその技術を基礎から解説した入門書で、実務にも使える内容となっている。

神田輝一  著者プロフィール

(かんだ きいち)
1948年  埼玉県大宮市(現・さいたま市)に生まれる
1973年3月  東海大学大学院工学研究科修士課程終了
1973年4月
~1988年12月  共栄金属工業(株)に勤務
        無公害液体浸炭法の確立、
        鋳鉄の熱処理、一般熱処理に従事
1973年4月
~現在     関東冶金工業(株)に勤務
        熱処理、ろう付、焼結などの雰囲気の研究開発に従事
2008年3月   東海大学より博士(工学)を授与される
        現在 関東冶金工業株式会社 取締役技術開発室室長
(一社)日本熱処理技術協会監事
(一社)表面技術協会、表面技術とものづくり研究部会監事
Society of Advanced Science (SAS) 理事
〈主な研究〉
超高温雰囲気炉によるセラミックス反応焼結の研究
    常圧不活性雰囲気の研究
    メタノールの分解雰囲気の研究
    アルミろう付の研究

目次

はじめに

第1章 熱処理の基礎
1―1 雰囲気熱処理の分類
1―2 鋼の熱処理概要
 1―2―1 変態とは  
 1―2―2 変態を知り熱処理の原理を理解する  
 1―2―3 鋼の状態図に現れる変態  
 1―2―4 亜共析鋼の組織変化模式図  
 1―2―5 過共析鋼の組織変化模式図  
 1―2―6 共析鋼の組織変化模式図  
 1―2―7 加熱温度と熱処理の種類  
 1―2―8 冷却速度と変態点  
 1―2―9 冷却方法と変態点 
1―3 鋼の組織
 1―3―1 フェライト  
 1―3―2 オーステナイト(大洲田)  
 1―3―3 セメンタイト(脆面体)  
 1―3―4 パーライト(波来土)  
 1―3―5 マルテンサイト(麻溜田)  
 1―3―6 トルースタイト(吐粒洲)  
 1―3―7 ソルバイト(粗粒陂)  
 1―3―8 ベイナイト  
1―4 共析炭素鋼の熱処理による組織変化
 1―4―1 共析鋼の焼入れ・焼戻し熱処理による組織変化  
1―5 熱処理を難しくしている要因
 1―5―1 マス・エフェクト  
 1―5―2 コーナ・エフェクト  
 1―5―3 シェープ・エフェクト  

第2章 雰囲気の基礎知識
2―1 雰囲気ガスの種類
2―2 雰囲気熱処理で用いられる重要な物理量
 2―2―1 圧力  
 2―2―2 体積  
 2―2―3 温度  
 2―2―4 物質量  
2―3 示量性と示強性
2―4 ボイルの法則
2―5 シャルルの法則(ガスは加熱すると膨張する)
2―6 ボイル・シャルルの法則と気体の状態方程式
2―7 ガス定数
2―8 理想ガスと実在ガス
2―9 混合ガス
2―10 ドルトンの分圧の法則
2―11 雰囲気の化学熱力学
 2―11―1 反応熱  
 2―11―2 燃焼反応と発熱量  
 2―11―3 エンタルピ  
 2―11―4 ヘスの法則  
 2―11―5 エネルギ  
 2―11―6 エネルギ保存の法則(熱力学第一法則)  
 2―11―7 熱力学第二法則  
 2―11―8 自由エネルギと反応の方向性  
2―12 化学平衡と平衡定数
 2―12―1 可逆反応と不可逆反応  
 2―12―2 平衡定数  
2―13 ファント・ホッフの等温式
2―14 標準生成エンタルピおよび標準生成自由エネルギ

第3章 熱処理用雰囲気の種類と製造方法
3―1 熱処理用雰囲気の種類
 3―1―1 酸化性雰囲気  
 3―1―2 還元性雰囲気  
 3―1―3 中性雰囲気(不活性雰囲気)  
3―2 単体ガスの製造方法
 3―2―1 空気から分離されるガス  
 3―2―2 空気以外の原料から製造されるガス  
3―3 単純ガスの供給方法
 3―3―1 パイピング  
 3―3―2 液化貯蔵  
 3―3―3 シリンダー  
3―4 ガス流量計
 3―4―1 ガス計測用面積流量計における単位表記について  
 3―4―2 流量目盛の読み方  
 3―4―3 代表的な配管系統図  
3―5 変成ガス雰囲気の製造方法とその性質
 3―5―1 炭化水素系ガスの変成  
 3―5―2 燃料と発熱量  
 3―5―3 炭化水素系ガスの燃焼機構  
 3―5―4 完全燃焼  
 3―5―5 不完全燃焼  
3―6 発熱形変成ガス
 3―6―1 プロパンガスを原料ガスとした発熱形ガスの理論成分算出方法  
 3―6―2 発熱形変成ガス製造の実際  
3―7 吸熱形変成ガス
 3―7―1 吸熱形変成ガスの実際  
3―8 窒素形変成ガスと実際
3―9 アンモニア分解形ガスの発生装置
3―10 アルコール分解形ガスの発生装置

第4章 金属の酸化・還元
4―1 酸化・還元の熱力学
 4―1―1 平衡酸素分圧  
 4―1―2 DGxoの求め方  
4―2 エリンガム図
 4―2―1 副尺  
4―3 金属材料の無酸化熱処理
 4―3―1 オキシノン炉の雰囲気理論  
 4―3―2 連続オキシノン炉の構造  

第5章 鋼の光輝熱処理
5―1 光輝熱処理
5―2 光輝焼ならし(normalizing)
 5―2―1 普通焼ならし  
 5―2―2 二段焼ならし  
 5―2―3 等温焼ならし  
5―3 光輝焼ならしに用いられる雰囲気
5―4 光輝焼なまし
 5―4―1 完全焼なまし  
 5―4―2 等温焼なまし  
 5―4―3 球状化焼なまし  
 5―4―4 応力除去焼なましおよび中間焼なまし  
 5―4―5 磁気焼なまし  
5―5 焼入れ・焼戻し
 5―5―1 焼入れ  
 5―5―2 焼戻し  
5―6 鋼の光輝熱処理に用いられる雰囲気ガスの種類
5―7 鋼の光輝熱処理の原理
 5―7―1 鉄の酸化  
 5―7―2 鉄の酸化反応  
 5―7―3 鋼の脱炭反応  
 5―7―4 脱炭現象の実際  
 5―7―5 鋼の浸炭  
 5―7―6 鋼の窒化  

第6章 雰囲気の見える化と雰囲気管理
6―1 雰囲気熱処理炉の雰囲制御と可視化の原理
6―2 雰囲気可視化炉の実際(その1)
 6―2―1 発熱形変成ガス雰囲気炉の可視化と実際  
 6―2―2 発熱形低水分、低二酸化炭素変性ガス雰囲気炉の可視化と実際 
 6―2―3 吸熱形変成ガス雰囲気炉の可視化と実際  
 6―2―4 メタノール分解ガス雰囲気炉の可視化と実際  
 6―2―5 水素雰囲気炉の可視化と実際  
 6―2―6 窒素ベース雰囲気炉の可視化と実際  
 6―2―7 雰囲気炉可視化のためのデータベースと制御部 
 6―2―8 実験例  
6―3 雰囲気可視化炉の実際(その2)
 6―3―1 オキシノン炉可視化のための熱処理システムと制御部  
 6―3―2 オキシノン炉可視化のための演算処理装置の構成と動作  
 6―3―3 オキシノン炉の雰囲気管理  
 6―3―4 オキシノン炉可視化のためのデータベース  
 6―3―5 オキシノン炉可視化のための制御部  

別表
参考文献

はじめに

熱処理とは、一言でいうと加熱し冷却する熱加工プロセスのことである。この意味からすると、鋼の熱処理も無論のこと接合技術であるロウ付や最近話題の炭素繊維製造も熱処理の仲間である。
 この熱処理の三大要素は温度、時間そして雰囲気である。この三要素がないと熱処理は成り立たない。そして温度は温度計で数字として表わし記録することができる。また時間も時計で具体的な数字として表わし記録することができる。すなわち、この両者は計器や記録計で視覚的に見ることができる。
 一方、熱処理雰囲気においては抽象的であり、炉中の雰囲気の状態を直接視覚化できない。そして、温度と時間とは被熱処理品の内部の組織を改質することができるが、雰囲気は被処理品の表面のみを改質するか保護することになる。そのようなわけで熱処理雰囲気技術は難しく経験を要するといわれる由縁ではないかと思う。ところが、熱処理雰囲気のみを解説した書籍がほとんど見当たらないのが現状である。
 熱処理雰囲気技術がないと鋼の表面を硬くしたり柔らかくしたり、耐腐食性を増したり、そして光輝な表面を得ることができない。また最近話題によくでる炭素繊維も作ることができない。等々熱処理雰囲気技術は工業界で重要な技術の一つである。
 しかし最近、雰囲気熱処理に関する不具合や問題が多く発生し、雰囲気熱処理に携わる技術者を悩ませている。現に熱処理セミナーなどで講師をすると雰囲気に関する質問を多く受ける。
 私が知る限り日本で雰囲気熱処理についてまとめられていた書籍は今から五十三年前の1961年に日刊工業新聞社から発行された『ガス熱処理』ではないかと思う。この本の著者は、私の恩師の一人でもある故・内田荘祐博士である。そして、内田荘祐博士のまたその上の先生である故・河上益夫博士のお二人の大御所に学生時代熱処理の基礎を教わり、その後私の仲人をしていただいた熱処理一筋に打ち込んでこられた故・大和久重雄博士とも邂逅し熱処理の原理原則そして実務についてとことん教えを受けた。このお三方が私の熱処理の恩師である。
 そこで、私が熱処理の専業技術者として、また雰囲気熱処理炉の設備技術者として、おおよそ四十五年間雰囲気熱処理に携わり、多くの経験とノウハウの知見を得た。それを礎にやさしい雰囲気熱処理の入門書を執筆したいと考えていた。この思いのもとコツコツと執筆を始め実はこの書籍を完成するまでに二年間を費やした。執筆中に、私がたどり着いた一つの結果がある。それは“雰囲気熱処理技術は酸素を制することである”という結論である。このことは本書を読めば理解していただけると思う。
 本書は、熱処理の三大要素の一つである雰囲気を取り上げ、熱処理雰囲気の「基礎のきそ」からわかりやすく解説した雰囲気熱処理初心者向けの入門書である。内容としては、熱処理の原理原則と雰囲気の基礎知識から始めて、雰囲気の製造方法とその特徴を解説し、エリンガム図を中心に金属の酸化・還元の雰囲気に関して詳細に述べ、その後、鋼の脱炭・無脱炭雰囲気を中心に鋼の光輝熱処理について、続いてエリンガム図を用いた雰囲気の可視化と雰囲気管理について理論面と実務面よりわかりやすく述べた。
 読者層としては、熱処理の現場や設計そして品質管理に携わる人々、雰囲気熱処理炉の設計技術者、またこれから雰囲気熱処理を学ぶ人たちを対象としたものである。
 本書を執筆するにあたり多くの企業および人たちの助言や協力によりまとめることができたことに心より感謝いたします。また本書の出版にあたり数多くの文献を参考にした。感謝申し上げると共に多大なご尽力をいただいた日刊工業新聞社出版局書籍編集部の野伸一氏をはじめとし関係各位に感謝申し上げる。
 内容的に私の勘違いから誤った表現や箇所などがあればご指摘ご助言いただければ幸いである。
 最後に関東冶金工業(株)の故・高橋進会長の教え、そして現社長の高橋愼一氏の寛大なるご配慮に心より感謝の意を表します。

2014年5月 神田 輝一

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