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おもしろサイエンス
酸素の科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07239-0
コード C3034
発行月 2014年04月
ジャンル ビジネス 化学

内容

酸素は水とともに身の回りで最もありふれた物質であり、これなくして生物は生きられないが、そのありがたさを我々は忘れがちである。また、化学や金属などの工業分野でも酸素は重要な役割を果たしている。こうした酸素のさまざまな働きをやさしく解説する。

神崎 愷  著者プロフィール

(かんざき やすし)
1942年、神奈川県厚木市(愛甲郡南毛利村)生まれ。
神奈川県立厚木高校、横浜国立大学、東京工業大学大学院(卒業、修了)。
青山学院大学理工学部化学科実験講師、東京工業大学理学部化学科助手、昭和薬科大学薬学部助教授、教授(2009年退職)。青山学院大学客員研究員・非常勤講師、国立東京工業高等専門学校非常勤講師、神奈川工科大学非常勤講師、東京学芸大学非常勤講師などを歴任。
現在、神奈川工科大学客員研究員
著書:「おもしろサイエンス 水の科学」(日刊工業新聞社)
専門:電気化学、イオン交換、分析化学
著書:「おもしろサイエンス 水の科学」(日刊工業新聞社)
「最先端イオン交換技術のすべて」(工業調査会)(監修)
「トコトンやさしい イオン交換の本」(日刊工業新聞社)(共著)
「セシウムをどうする:福島原発事故、除染のための基礎知識」(日刊工業新聞社)(共著)
「水のふしぎ」(山文社)
「化学平衡と分析化学」(廣川書店)(共著)
「薬学生のための分析化学」(廣川書店)(共著)
「薬学テキストシリーズ 分析化学Ⅰ」(東京書籍)共著
「NEW 薬学機器分析」(廣川書店)(共著)
「演習を中心とした薬学生の分析化学」(廣川書店)(共著)

目次

はじめに 

第1章 酸素のふしぎ ―もっと酸素を知ろう
1  地球は「酸素惑星」だ―原始大気に酸素はなかった 
2  地球の酸素はどこにある?―クラーク数のなぞ 
3  酸素は何とでも結合する―姿を見せない酸素のふしぎ 
4  大気中の酸素の起源―大気酸素は全て植物の光合成で生まれた 
5  「ロウソクの科学」の酸素―ロウソクの炎はなぜ光り輝くのか 
6  酸素が生んだ熱―熱の正体をあばこう 

第2章 酸素の化学 ―酸素は化学の母
7  酸素は元素だった―ラボアジェ時代の元素表 
8  化学では原子・分子の数を数える―体積を測ると分子の数が分かる 
9  酸素は化学の先生泣かせ―酸素は暴れん坊ラジカル 
10  酸と塩基―酸素は酸のもと? 水素は水のもと? 
11  酸化と還元―酸素の力の源は電子だった 
12  水素結合―酸素の多彩な結合力が環境を制御する 
13  酸素が窒素と結合すると―酸素・窒化化合物のふしぎな性質 
14  酸素と炭素―生体物質の主役炭素と脇役酸素 

第3章 地球と酸素 ―地球表面は酸素だらけ
15  地球の酸素はどこからきた―岩石・土壌・海・大気 
16  岩石と酸素―マグマが固まった岩石の美しい形 
17  土壌と酸素―植物を育む土壌の秘密 
18  粘土の生い立ち―水熱合成のふしぎ 
19  海、川、陸の酸素―地球上の水循環 
20  酸素を使った水の浄化―酸素の環境パワー 

第4章 酸素と金属 ―文明は金属とともに
21  人類と金属―科学技術の歴史の金属の歴史 
22  金属はなぜ錆びるのか―酸素の強い結合力の秘密 
23  鉄、アルミニウム、ナトリウムの精錬―脱酸素による金属の出現 
24  錆を利用するアルミニウムとステンレス―金属の不働(動)態化 
25  酸素と電池―燃焼のエネルギーを電気に変える 
26  金属とセラミックス―金属酸化物の限りない可能性 
27  酸化物で磁石ができた―フェライトの発明 

第5章 生命と酸素 ―活性酸素は薬か?毒か?
28  生命から生まれた酸素―植物の光合成と酸素・炭素循環 
29  大気中の酸素と動物の発生―酸素と植物を利用する動物 
30  生体内の酸素―酸素から活性酸素 
31  酸素を運ぶ酵素―呼吸のメカニズム 
32  エネルギー源としての酸素―アデノシン三リン酸と酸素 
33  活性酸素とセレン欠乏症―有毒元素の効能・必須微量元素 
34  酵素の中を電子が流れる?―チトクロムの仲間とNOS 

column
第一の火、第二の火、第三の火 
酸と塩基の定義 
水をきれいにする土―ゼオライト 
セシウムイオンを取り込む土壌 
チャップリン―ネルンスト―エジソン―ラングミュア 
リチウムイオン電池の元祖―フッ化黒鉛 
銅の精錬と日本の公害 
超強力磁石の出現―ネオジム磁石 
ホジキンによるビタミンB12の構造決定 
ポルフィリン環の2つの役割 
使えるエネルギーと消えるエネルギー―エントロピーをマスターしよう 
NOと医療 

索 引 

はじめに

 「空気のように……」と言われるように、空気は水と並んで「ありふれたもの」の代表格です。酸素は地球大気の約20%ですが、空気といえばほとんどの場合、大気中の酸素を意味します。日常はほとんど意識することはない酸素ですが、もしこれがなくなったら、現在地上で暮らしている生物のほとんどは生きていけない物質です。また、科学の面から見ても、アリストテレスに代表されるギリシャ哲学では、水、土、火と並んで空気は物質の根源である元素と考えられていました。
 この酸素は、宇宙規模で見ても、水素、ヘリウムに次いで3番目に多い元素で、地球でも最も多い元素の一つです。しかし、我々が実感しているのは大気の20%を占める気体の酸素分子です。これに水素と酸素からできている水を考えても、地球全体の0・03%しかありません。それでは酸素は一体、地球のどこにあるのでしょうか。
 地球は岩石が主成分である微惑星や小惑星がぶつかり合って生まれたと考えられています。そうです。その岩石はケイ素、マグネシウム、アルミニウムなどの酸化物が主成分で、岩石は酸素の固まりといっても良いでしょう。大気中の酸素と、ごつごつした岩石はあまりにも違いすぎるので、岩石を見て酸素を思い浮かべる人は少ないのではないでしょうか。
 酸素は科学の発展に重要な役割を果たしています。それは、ものが燃える「燃焼」から始まりました。化学史のなかでプルーストやラボアジエなどの間で繰り広げられた燃焼についての激しい論戦は、やがて酸素の発見につながり、さらに「不可分の物質=元素」という基本的な概念を生んだのです。つまり、酸素は化学という学問分野の原点とも言うべき物質なのです。一方、文明の発展の尺度とも言える金属は金属酸化物として産出します。ここから金属を取り出す過程も学問としての化学に欠かせない存在といえるでしょう。化学の萌芽期から現在の先端技術、生命科学、医療・医学に至るまで酸素は至るところで我々に関わっています。
 本書は、「やさしくサイエンスを紹介する」という「おもしろサイエンス」シリーズの意図に沿って執筆したつもりですが、各所に専門分野向けの話題も取り入れています。これは筆者の年代で途絶えてしまいそうな専門分野での話題を後世にも伝えたいため「話の種」として敢えて加えたもので、内容を理解するより「昔そんな話があったのか」程度に読んでいただけたら幸いです。
 最後に、本書の企画を立ち上げていただいた日刊工業新聞社出版局書籍編集部の三沢薫氏、森山郁也氏、前書である「おもしろサイエンス 水の科学」を編集していただいて今回も適切なご示唆をいただいた同社の天野慶悟氏に深く感謝の意を表します。

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