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ベトナムで新しいモノづくりは実現できるのか
モノづくり中小企業ネットワーク計画

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ 四六判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-07256-7
コード C3034
発行月 2014年04月
ジャンル 経営

内容

中小企業もさらなる成長を求めて海外展開が不可避の状況である。そうした中、筆者ら複数の中小企業が連携してベトナムのレンタル工場に進出。操業を開始した。中小企業にとってベトナムが新たなモノづくりの舞台にマッチしていることをやさしく情熱的に紹介する。

井上伸哉  著者プロフィール

いのうえ しんや)

ザ・サポート株式会社 取締役

クエスト株式会社 代表取締役

2013年4月、ベトナムドンナイ省ロンドウック工業団地にザ・サポートベトナムを立ち上げ、現在、モノづくり中小企業のベトナムへの進出支援、進出企業の運営支援を実施中。

2012年からは、毎月ベトナムを訪問している。

e‐mail:inoue@thesupport.jp

目次

はじめに  



第一章 ベトナムという国    
◎ベトナム人の矜持  
◎重要な村落共同体  
◎帰属集団の違い  
◎ベトナムの土地神話  
◎経済格差の拡大  
◎敬う論理  
◎ベトナムの赤い道、赤い川  
◎香りを聞く  
◎盆栽から見たベトナム  
◎ベトナムの政治体制  
◎ベトナム将棋 
◎ベトナムの気候  


第二章 ベトナムの歴史と日本との関わり   
◎戦いの歴史  
◎ベトナム戦争を考える  
◎ホー・チ・ミンとベトナム  
◎17世紀の日本とベトナム  
◎テト攻勢とテト祝賀  
◎ベトナムのラストエンペラー  


第三章 ベトナムとモノづくり   
◎心情的共感  
◎着実な経済成長とひずみ  
◎ベトナムの雇用環境  
◎独特の組み合わせ  
◎ビジネスに反映されるエスプリ  
◎万葉仮名とチュノム(字喃)  
◎稲作が培ったモノづくりの基盤 
◎新たなモノづくり  
◎モノづくりの国ベトナムの魅力  

第四章 モノづくり中小企業の生きる道   
◎モノづくりのこれからの希望  
◎裾野産業の育成  
◎ASEAN共同体の中のベトナム  
◎ベトナム進出の成功パターン  
◎一念発起が技術を生かす  

おわりに
 
◎メコン圏と発展への熱情  
◎企業集積のメリット  

はじめに

 モノづくり中小企業にとって、いまだ厳しい経済状況が続いており、苦境からの脱出、さらなる成長のために、事業の海外展開は不可欠な戦略になっています。しかしながら、海外展開は中小企業にとって、資金、人材、ノウハウなど課題も多く決して簡単なことではありません。そこで、ベトナムでのレンタル工場という最小限の投資形態で何社かが共同して進出する計画を推進しています。

 具体的には、ホーチミン近郊のドンナイ省のロンドウック工業団地のレンタル工場に、モノづくり中小企業が一斉に進出するという計画です。レンタル工場は、2013年9月引渡しを受け、数社が既に進出し、操業を開始してます。

 進出の検討・準備、進出申請、進出後の操業支援を、私ども「The Support」(ベトナムへの進出企業に対するサービス会社)が一貫してお手伝いしながら、スムーズな進出の実現をめざしています。

 では、なぜロンドウック工業団地なのか。第一の理由は、ベトナムには計画、造成中を含めると約260の工業団地があると言われています。しかし、そのほとんどは現地資本あるいは中国、シンガポール資本などです。ロンドウックのように日本資本(双日、大和ハウス、神鋼ソリューション)が9割近くを占める工業団地は稀な存在です。また、日本企業だけの入居をめざしている工業団地は他にありません。

 第二の理由は、ベトナム進出において、工業団地の選択は事業成功の重要なポイントになるからです。というのは、海外展開に不慣れな中小企業が、ある程度日本語で手続きなどを進められ、互いに協力し合い融通をきかせられる相手が近くにいることは、進出初期段階で大きな力になるからです。ロンドウック工業団地には好条件がそろっています。

 第三の理由は、ベトナム最大の商業都市ホーチミンの近郊であることです。ベトナムへ進出している日系企業(約1800社)の六割以上はホーチミン周辺に居を構えていますし、エンジニアなどの雇用においてもホーチミン近郊は有利だからです。

 ロンドウック工業団地の総開発面積は270ヘクタール、分譲面積178ヘクタール。近い将来大半の区画に日本企業が進出し、日本企業が集積する代表的な工業団地になっていると推測できます。こうした見通しの中、「日本のモノづくり中小企業のための集積地をつくりたい」という私どもの思いに対し、ロンドウック工業団地が賛同の意を示し、そのご協力の下で、1000平方メートル五区画、750平方メートル2区画、500平方メートル6区画の計13区画のレンタル工場で計画を推進することが可能になりました。

 当計画は、モノづくり中小企業が自力で危機を打開し、新たな成長の光を見いだす手助けになればという思いから推進している小さな試みです。しかしながら、意欲と技術を持ったモノづくり中小企業が連帯し、ベトナムの地で企業集積を実現できれば、モノづくり競争力の向上が期待でき、閉塞状況にある日本のモノづくりが新しい形で蘇生できると確信しています。

 上記したロンドウック工業団地レンタル工場での活動は、ベトナムにおけるモノづくり中小企業ネットワーク計画の第一ステップと位置づけています。今後は、モノづくり中小企業のベトナム進出の支援を一層強化し、ベトナムの地でのモノづくりネットワーク充実(企業集積)を図っていく展望を持っています。したがって、レンタル工場という形態ではなく、自力でベトナム進出をお考えの中小企業の方々との連帯も積極的に推進していきたいと考えています。

 筆者はベトナムの専門家ではありません。ただ残念ながらベトナムについての出版物も少なく、あっても進出のノウハウを教える本や政治経済の紹介本が中心です。そこで、ベトナムという国がモノづくりにとって良い国であるのかどうかを知るために、上記した活動を進める中で、情報を集め、いろいろな人の話を聞き、多くの学習をさせてもらいました。そして、不思議なことに、知れば知るほどベトナムはモノづくりに適した国だという確信を深めることになりました。そのことを多くのモノづくり中小企業の皆さんに知ってもらうことを目的に、この本を出版することに致しました。

 モノづくり中小企業が海外へ進出するに当たっては、政治経済の情報だけでは国同士の比較はできても、進出を決断する材料にはなり得ません。進出する国の日常的な生活様式や人々の考え方といった素顔を知ることが重要です。モノづくり中小企業の社長が「この国でやっていけそうだ」「この国で是非仕事をしたい」という意欲を、進出前に持てるかどうかです。本書では、筆者が見たベトナムの素顔についてご紹介していきます。

 ご紹介する内容は、2012年に日刊工業新聞社の月刊誌「型技術」に6カ月間連載した原稿とモノづくり中小企業ネットワーク計画の有料メールマガジン「Cam On」の原稿が中心になっていますが、加筆、修正を加えて一冊の本にしています。初めから順番に読み進まないと理解できない構成にはなっていません。興味のあるものから読んでもらえば、ベトナムという国の一端を理解していただけるはずです。モノづくりに携わるモノづくり中小企業の方々の中で、ベトナムへ進出を考える経営者が一人でも増えることを願ってやみません。

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