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モノづくりを支える「管理会計」の強化書
技術者こそ読んで欲しい「お金」と「原価計算」の基礎知識

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 280頁
ISBNコード 978-4-526-07235-2
コード C3034
発行月 2014年03月
ジャンル 生産管理

内容

「会社は何を目標に活動すべきなのか?」「会社の事業と技術開発活動をどのように整合させるか」など、会社の事業には、すべて会計的な知識が必要。本書は、内部管理を目的とし、会社の事業運営に活かすために注目されている「管理会計」の基礎知識について、製造業で働く人のために、物凄くわかりやすく紹介する本。適切な管理会計の仕組みを理解し、会社を「強化」しよう。

吉川武文  著者プロフィール

(よしかわ たけふみ):公認会計士


東京工業大学工学部修士卒。エンジニアとして三菱化学株式会社、太陽誘電株式会社に勤務。新製品や生産技術の開発に従事。数十億円規模のコストダウンや自動化の成果により三菱化学プレジデント表彰などを受賞。特許出願多数。1級保全技能士、エネルギー管理士など。原価計算を研究し業務の傍ら公認会計士試験に合格した後、有限責任監査法人トーマツにて勤務。財務監査、内部統制監査、国連の排出権審査(CDM)などに従事。日本公認会計士協会の経営研究調査会サステナビリティ保証専門部会に参加。公認会計士登録の後、大手電機メーカーの生産技術部部長を経て、現在は横河ソリューションサービス株式会社にてコンサルタントとして活動中。

目次



はじめに 

オリエンテーション なぜ、工場は閉鎖されたのか?


Part 1
世界の会社の共通言語・お金

第1講 製造業の2つの宿命 製造業は固定費業
第2講 コロンブスの成果報告 貸借対照表の成り立ち

 コラム 本当の簿記の始まり
第3講 お金を借りたらタダではすまない 利益目標は資本コスト

 コラム 敵対的買収
第4講 会社を活かすも殺すも固定資産 財務安全性と固定資産

第5講 私の給料はどこに? 損益計算書に感じる疑問
 コラム 迫りくる世界同一賃金の波



Part 2
本当にコストダウンになってますか?

第6講 誰だって早く会社を黒字にしたい! 損益分岐点と固定資産
第7講 そのコストダウンは順調ですか? 原価差異とPDCA

第8講 在庫はお金のかたまりだというけれど 正しい安全在庫の判断

 コラム 加重平均資本コスト(WACC)の求め方 

第9講 第三の原価計算? 全部原価計算vs直接原価計算

 コラム 稼働率と可動率
第10講 期末在庫なんかどうでもよい 在庫回転率のワナ

 コラム 7つのムダの変化

第11講 会社を迷走させる方法 差額原価と埋没原価

 コラム 今までのコストダウン、これからのコストダウン



Part 3
そのプロジェクトをどう評価する?

第12講 設備投資は決意表明! 設備投資評価という壮大なはったり

第13講 本当は怖い自動化の話 見果てぬ夢「自動化工場」

第14講 技術者よ大志を抱け 研究開発という名のビジネス・プロジェクト

 コラム 原価企画の担い手

第15講 何がカイゼンを駄目にしたのか? 労務費管理とカイゼン

 コラム コストダウンの司令塔

第16講 お金が尽きたら会社は終わり 費用の繰延とキャッシュ
 コラム 日本のGDPと貿易赤字


Part 4
地球の未来と会社の未来

第17講 今度こそ石油がなくなる? 材料費突出の背景

第18講 気候変動という巨大なニーズ 危機か? チャンスか?

第19講 指標が行動を変える 会社の付加価値が見えた!
 コラム 付加価値と資本コスト 

第20講 ニーズは会社の外にある 製造業の責任と可能性




補 遺   

はじめに

「上司に、もっとコストダウンをやれと言われるが、どう取り組んだらよいのか?」

「不景気が続く会社を立て直すためには、どんなプロジェクトを企画すればよいのか?」

「今やっている5Sやカイゼンや自動化だけで、海外のライバルと戦えるのだろうか?」

製造業を取り巻く昨今の厳しい事業環境の中で、なかなか答えの見つけられない疑問はたくさんあります。答えを探して経営学の本を読んでも、モノ作りの本を読んでも、あまたあるノウハウ本を眺めてみても、どこかしっくりきません。

「何か足りない気がするんだよなぁ。でも一体何が、足りないのだろうか?」

 例えば、経営学の本を見ても、モノ作りのあるべき姿は書いてありません。モノ作りの本を読んでも、整理整頓しろとか在庫を持つな、としか書いてありません。でもゼロ在庫などたいていはあり得ない以上、これでは行動指針になりません。そもそも在庫を持っていけないのはなぜなのでしょう? 全員で整理整頓をやっていて会社は大丈夫なのでしょうか? もちろんいつだって整理整頓が大切なことくらい、私だってよくわかっているつもりではありますが…。

「これじゃあ、来年のリストラを回避できる気がしない!」

「いったいどんな知識があれば、日々の問題解決の道筋が見えるのだろうか…」
 
結局のところ、会社における全ての活動は「お金」に換算されなければなりません。お金に換算して、やるべきことの優先順位を決めなければ「何が良い/何が悪い」を語れないからです。

「お金の勉強かぁ、我慢して簿記でもやってみるかな」

「でも、やっぱり興味が湧かないなぁ…。何か良い本ないかな?」

 かつて私は、そんな悩みを抱える一人の技術者でした。


技術系の方々のための会計テキスト
 
皆さんはじめまして。公認会計士の吉川と申します。今は会計士をやっておりますが、実は私は20年間、日本のモノ作りの最前線で生産技術の開発に従事してきました。日本は「良いものを安く作る」国であり、技術立国です。技術があるからこそ先進国の一角を占め、経済的な繁栄を謳歌してきました。そして「良いものを“安く”作る」ためには原価計算や会計の知識は不可欠なものです。それにも拘らず、私はモノづくりの現場で技術者の方々と一緒に勉強するための使いやすい会計テキストがないことにいつも困惑してきました。

 確かに書店に行けば、会計の本は書棚に溢れています。しかしながらたいていのテキストは、専門用語の定義に厳密すぎて、あるいは詳細な会計技術に拘りすぎていて、「重要なこと」と「あまり重要ではないこと」の見分けがつき難くなっているように感じます。その一方で「どうしてそうあらねばならないのか?」という背景を十分に説明していないケースがあり、物足りなさも感じてきました。「モノづくりと会計を繋ぐ会計テキストがどうしても必要だ!」それが会計士であり技術者でもあった私が、このテキストをまとめてみようと思ったきっかけです。ですから主として製造業(メーカー)に従事する技術者の皆さんが会計を理解し、会社で何を目指して日々の技術開発に取り組むべきなのかという手掛かりにして頂く場面を念頭に置き、以下の3点について特に注意しました。

1.簡単な用語を使うこと

 まず用語の正確な定義に拘りすぎて難解な表現になってしまわないように注意しました。例えば手許のキャッシュの説明をするとき、「現金及び現金同等物」と書くのが会計的には正確な表現です。「現金」とは手許現金、普通預金、当座預金などを指す言葉です。これ以外にも「3か月以内に満期日が到来する定期預金」なども事実上の手許現金と見なし得るものですが、それが厳密な意味での現金ではない以上、「現金」ではなく「現金同等物」と呼び習わされます。両者を合わせて「現金及び現金同等物」となる…などとやっていたのでは、煩雑で話の本筋を見失ってしまいそうです。そこでここでは思い切って「お金」と書くことにしました。

  手許の「現金及び現金同等物」→手許の「お金」

2.簡単な数式を使うこと

 他方でこのテキストでは数式も簡略化しています。本来、数式の単位について特に正確を期すよう教育を受けてきた自然科学系の技術者であれば、一般的な会計テキストの数式表現には違和感を覚えるかもしれません。例えば、工場設備の理論的生産能力(設備台数に操業日数と1日の勤務時間を乗じたもの)を求める式は、正確には以下のように書き表されるべきものでしょう。

  5(台)×250(日/年)×8(時間/(日・台))=10000(時間/年)

 しかし美しくない数式だなあとは思いながらも、多くの会計テキストと同様、ここでは以下のような簡便な表現を用いることにしました。
  
5台×250日×8時間=10000時間

3.日常業務につながるよう配慮すること
 
会計には、法律で規定されていて厳密な「制度会計」と呼ばれるものがある一方で、業務上の意思決定や内部管理を目的とする自由な会計「管理会計」もあり、会社の事業の実態に合った会計指標を作っていくことが可能です。このテキストは制度会計を説明するためのものではありません。あくまでも製造業者(メーカー)で働く方々が会計や原価計算のあらましを知り、今日の製造業というビジネスモデルの強みと弱みを理解して、適切な管理会計の仕組みを構築していくという状況を想定しています。

  制度会計のテキスト≠管理会計のテキスト


「なぜ」を5回繰り返せ!
 
カイゼンの本を読むと「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」と5回は繰り返せとあります。実際のところ会社には、かつて技術者だった私には解決できない「なぜ?」がたくさんありました。

「なぜ、在庫を削減するべきだと言われるのか?」

「なぜ、カイゼンや自動化がなかなか成功しないのか?」

「関係者の努力にも拘らず、次々とモノづくりが失敗し、事業が危機に直面するのはなぜなのか?」

 こうした私自身の「なぜ?」を踏まえて、技術者の皆さんにおおまかな事象のイメージをつかんで頂く事を最優先しています。もし何か御縁があり、更に深く会計を学ぶことになりました場合には、改めて定義に厳密な「本当の専門書」に当たっていただければ幸いです。

 これは決して良書ではないかもしれませんが、製造業に関わる関係者(特に技術者の方々)が理解しておくべき最低限の会計知識とその背景を伝えようと試みるものです。ぜひ一緒に頑張って参りましょう。このテキストが、日本の製造業復活のヒントとなることを願っています。



公認会計士・吉川武文

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