買い物かごへ

シェールガス革命が日本に突きつける脅威

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ 四六判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07209-3
コード C3034
発行月 2014年02月
ジャンル 環境 ビジネス

内容

「シェールガス革命」という言葉が誕生して6年、当初のバラ色の幻想が少しずつ剥がれはじめ、もしかしたら日本の産業に脅威をもたらす資源かもしれないという可能性まででてきた。本書は、シェール資源の実像を明らかにし、日本産業の生き残るべき道を模索する。

野神隆之  著者プロフィール

(のがみ たかゆき)
現職:(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)上席エコノミスト
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業、米国ペンシルバニア大学大学院およびフランス国立石油研究所付属大学院(ENSPM)修士課程修了1987年 石油公団入団。1995?97年 通商産業省資源エネルギー庁国際資源課、2001?03年 国際エネルギー機関(IEA)石油産業市場課に勤務後、石油公団企画調査部調査第一課長を経て2004年より現職。2007年より帝京大学客員准教授を、また2010年よりJOGMEC石油調査部調査課長(現調査部エネルギー資源調査課長)を兼任。

目次

はじめに 

序章 そもそも革命を引き起こしたシェール資源とは?
従来存在する油・ガス田に賦存するシェール資源 
世界のシェールガス賦存状況 
世界のシェールオイルの賦存状況 
上方修正される可能性もあるシェール資源量、しかし…… 
シェール資源生産が簡単でない場合も、 
地下資源は誰のモノ? 
世界各国のでシェール資源開発状況 

第一章 シェール革命以前の石油及び天然ガス市場はどうだったか?
世界的市場のない天然ガス市場 
シェール以前の米国、欧州、アジアでの天然ガスの供給手段は? 
シェール以前の米国の天然ガス価格と原油価格の関係 
シェールガス増産前のLNG市場の変化 
2004年頃から乱高下しはじめた原油価格 
将来への不安感が高値を呼んだ 
米ドル下落で即、原油価格が上昇 
株式市場との連動をはじめた原油価格 

第二章 シェール資源は世界のエネルギー地図をどのように変えたのか
大量生産への弾みがついたシェールガス 
2011年後半以降、シェールガス増産後の米国天然ガス市場の動向 
最近の米国天然ガス市場:もはや供給過剰ではない 
シェールガス開発は当初中堅・中小企業で行われた 
米国のシェールガス革命は他の地域にどのような影響を及ぼしたか 
米国発シェールオイルは世界の石油市場をどのように変えたか 
予想を裏切り続けているシェールオイルの生産見通し 
シェールオイルの増産が世界を変えはじめている? 
これらの原油はメキシコ湾岸地域へ 
シェールオイル増産により世界の原油の流れが変化してきている 
シェールオイル増産はこれからも続くのか 
シェール以降、石油製品輸出を活発化させる米国 
欧州の動き 

第三章 シェール資源が提示する世界石油需給シナリオ
シェールオイルの原油価格への影響 
中期需給見通しー緩和感強まる 
将来の天然ガス需要に関する世界的な認識 
シェールガスでLNG価格は大幅に下がるのか 
米国LNG輸出の可能性について考える 
天然ガス価格は今後も上昇を続けるのか? 
市場を見通した時の日本へのLNG価格は? 

第四章 シェール資源革命の日本産業への脅威
シェールガス革命が起こってもLNGはすぐには安くならない 
シェールガス革命の日本の製造業にとっての影響は 
シェール資源で復活する米国石油化学産業 
想定されるシェール資源革命の日本への脅威 
低く抑さえられる米国のエネルギー価格 
米国発、LNGで天然ガス調達コストは日本にとって有利になるのか? 
資源調達の価格差がそのまま強さになる 
国際競争の中で苦しむ日本化学産業 
すでに空洞化してきている日本化学産業 
大打撃を受ける日本産業 
縮小していく国内石油精製産業 
さらに中東、インド、中国も競争力を強化している 
煽りをうけつつも復活の可能性もある欧州 
もろに煽りをうける日本 

第五章 シェール資源革命の脅威に立ち向かえ
シェール資源革命の逆風に立ち向かうためのエネルギーコストの低減 
シェール資源の開発、生産に積極的に進出する 
石炭を上手に利用する 
世界最先端をいく、日本の省エネ技術の活かし方 
新たなエネルギー源開発のススメ 
求められるエネルギー基本計画の速やかな策定 

あとがき

はじめに

 米国でシェールガスの増産傾向が明確になってから数年が経過した。シェールガスの増産が明確になりはじめた頃「シェールガス革命」という言葉が声高に叫ばれ、日本では「近いうちに米国からシェールガス由来の安いLNGが大量に入ってくるとともに、世界中でLNGを含めた天然ガス値引き競争が発生、その結果価格が大幅に低下し、日本がその恩恵に預かり、最終的には日本の製造業を活性化する」との見解も出てきていた。
 当時、東日本大震災後の原子力発電所の稼働停止、そして原油価格連動型のLNG価格による輸入LNG費用の高騰(これが一因となり日本は2012年に過去最大の貿易収支の赤字を記録した)という環境下にある日本では、「シェールガス」が救世主であるかの如くもてはやされ、いわゆる「バラ色(あるいは、「黄金色」かもしれない)」の将来が待っているかの如き認識が世間に広がった(これは一種「シェールガス狂想曲」と言ってもいいかもしれない)。
 ただ、米国をはじめとするシェールガス等の情報を丁寧に分析してみると、実は世界の天然ガス市場の現状と今後の展望に関して、日本で浸透しているイメージとは相当程度異なる実像が明らかになる。筆者はかなり早い段階で対外的にこのような情報を発信してきたが、この分析はしばしば「地味」な印象を与えることもあり、報道機関を含め世間の認識を修正させるのに相当程度の労力と期間を要している。2013年に入ってからは報道機関の認識もかなり変化してきているように感じられるが、なお当初の「バラ色」のイメージが残っている部分も多い。そこで、より早く、より広く認識を持って頂くよう、その一助となればと思い、本書を上梓することにした。
 本稿では、シェールガスがもたらす世界エネルギー市場への影響、特に、世界の天然ガス市場の需要、供給、価格等にどのような変化をもたらしたのか、そして、日本では、依然として米国で天然ガス供給が過剰であるとのイメージが持たれているが、現在米国の天然ガス市場等は実際どのような状況になっているのか、さらに、天然ガス市場が今後どのような展開となっていくと考えられるか、そしてそのように想定される将来に備えて日本にいる我々は何をどう考えなければならないか、ということにつき、現在入手できる情報をもとに考察を試みることとする。
 また、シェールガスの世界への影響を語る際にはシェールガスの液体版とも言えるシェールオイルについても触れる必要があろうし、また、読者の皆さんには、そもそも世界の石油・天然ガス市場とシェールガス及びシェールオイルがどのように関係しているかということも理解して頂くことが肝要であると考えられるのでそれらについても併せて説明することにする。
 ここに述べられていることは必ずしも「バラ色」ではないかもしれないが、「バラ色」でもないのに「バラ色」のイメージを引きずることにより、例えば日本のエネルギー対策が実状から乖離し、気が付いたときには手遅れになってしまっているという事態が発生したとすれば、悲劇である。だから、地味になるかもしれないが、敢えて筆者の良心に基づき、妥当であると考えられる議論をここで展開させて頂きたい。なお、本稿は非技術者を含め一般読者にも幅広く理解して頂き、世界の、そして日本のエネルギー情勢について深く考えて頂くという点を優先させる関係上、厳密性が犠牲になっている場合があるが、その点については御了承頂きたい。


2014年 2月
野神 隆之 

買い物かごへ