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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい軸受の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07213-0
コード C3034
発行月 2014年02月
ジャンル ビジネス 機械

内容

軸受は摺動部に欠かせない機械要素のひとつで、これなくしては自動車や工作機械など、あらゆる機械は動かない。本書はそんな軸受を興味深い話題を題材にしてわかりやすく解説した軸受の超入門書。楽しみながら理解できる内容となっている。

吉武立雄  著者プロフィール

(よしたけ たつお)


1932年生まれ。1960年東京大学社会科学研究科博士課程中退。光洋精工(現(株)ジェイテクト)に入社。海外軸受メーカーとの技術提携などに従事。現在は執筆活動に専念。訳書にクーロン「簡単な諸機械の理論」工業調査会(1996)、エッシュマン・ブレンドラインほか「ころがり軸受実用ハンドブック」工業調査会(1996)、編訳書および著書に「トライボロジーの世紀」工業調査会(2000)、「現代軸受の誕生」新樹社(2003)、「絵とき『軸受』基礎のきそ」日刊工業新聞社(2006)などがある。

目次

第1章 軸受の歴史的成り立ち


1 ドアソケット軸受は人類が生みだした最初の軸受 「ピボット軸受の先がけ」

2 ピラミッド建設のなぞ 「使われたのは“そり”か“ころ”か」

3 アッシリアの 巨像運搬のなぞ 「ころの使用目的は“すべり”か“ころがり”か」

4 日本における巨石の運搬 「修羅は大石(たいしゃく=帝釈天)を動かす」

5 ツタンカーメンの愛車のハブは滑らかに回る 「死因はスピードの出しすぎか」

6 ケルト人の4輪馬車のハブのなぞ 「2000年前のころ形ハブユニット?」

7 古代ギリシア人の独創性 「直動ころ軸受とピボット軸受」

8 古代ローマ人は機械工学の天才 「2000年前の玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受」

9 レオナルドの世界最初の保持器付き玉軸受 「ピボット軸受も考案」

10 中世の風車は風力発電装置につながる 「旋回座軸受、砲塔用軸受の原型」

11 伊能忠敬の水晶軸受 「日本の精密ミニチュア軸受の先駆け」

12 世界最初、直動玉軸受による巨石の運搬 「黄銅合金ボール、大形旋回座軸受」

13 ころがり軸受の実用化は産業革命とともに 「馬車用玉軸受の出現」

14 大量生産時代の幕開け 「軸受用鋼球の生産がネックに」

15 シェフラーグループの成り立ち 「自転車用鋼球のFAG、保持器付き軸受のINA」

16 馬車の車軸用軸受から始まったティムケン 「大きなアキシアル荷重も支持できるころ軸受」

17 軸のたわみに耐える軸受から始まったSKF 「自動調心玉軸受とともに誕生」

18 日本の軸受各社の成立 「日本精工、NTN、ジェイテクト」


第2章 軸受の基本的なしくみ


19 軸を支え、なめらかに回転させる軸受 「すべり軸受ところがり軸受」

20 軸受は摩擦低減のために使われる 「すべり摩擦ところがり摩擦」
21 再生可能エネルギーと軸受 「風力発電装置と太陽光発電装置」




第3章 すべり軸受ところがり軸受


22 現在のすべり軸受 「すべり軸受の種類は千差万別」

23 潤滑はすべり軸受の寿命を左右する 「境界、混合、流体潤滑のちがい」

24 シュトリベック線図の意味するもの 「潤滑状態が一目でわかる」

25 すべり軸受の理論的裏づけと展開 「それは英国で始まった」

26 現在のころがり軸受 「ハードとソフトのノウハウのかたまり」

27 ヘルツの弾性接触理論 「ころがり軸受工学の基礎のきそ」
28 ころがり軸受はハイブリッド軸受 「ころがり軸受におけるすべり」

29 すべり軸受ところがり軸受の比較 「性能的にはすべり軸受が有利」




第4章 いろいろなころがり軸受


30 ころがり軸受の特徴 「ころがり軸受の分類の基本」

31 ころ軸受の特徴 「ころの端には必ず応力が発生する」

32 ころ軸受のミスアライメント(取り付け誤差) 「ころの片あたり」

33 ラジアル玉軸受(その1) 「深みぞ玉軸受、アンギュラ玉軸受、自動調心玉軸受」
34 ラジアル玉軸受(その2) 「ミニチュア玉軸受、超薄形玉軸受、4点接触軸受」

35 ラジアルころ軸受(その1) 「円筒ころ軸受、針状ころ軸受」
36 ラジアルころ軸受(その2) 「円すいころ軸受、単列・複列自動調心ころ軸受」
37 スラスト玉軸受「 スラスト軸受、スラストアンギュラ玉軸受」
38 スラストころ軸受 「スラスト自動調心ころ、円筒ころ、針状ころ、円すいころ軸受」

39 旋回座軸受 「旋回座軸受は本質的には超薄形軸受」
40 ころがり軸受ユニット 「軸受ユニット用玉軸受と軸受箱」




第5章 材料、精度、すきま、与圧、寸法と呼び番号


41 軸受鋼の清浄度に依存する疲れ寿命 「軸受鋼の清浄度が軸受の寿命を左右する」

42 軌道輪と転動体の材料と熱処理 「高炭素クロム鋼」

43 軸受を実際に使用する場合のポイント 「軸受の精度、内部すきまと与圧」

44 軸受の主要寸法と呼び番号 「瞬時にわかる軸受の形式と寸法」

第6章 軸受の負荷能力と疲れ寿命


45 軸受の運転能力を示す重要指標 「静的負荷能力と動的負荷能力」

46 疲れ寿命が軸受理論の基礎になる 「ルンドベリー ・ パルムグレン理論の成立」

47 内部起点はくりと表面起点はくり 「無限寿命理論へのコペルニクス的転換」

48 水素の侵入とクラックの伝播 「軸受寿命理論の新たな展開」




第7章 潤滑剤と潤滑法・密封装置


49 潤滑の原理 「潤滑膜形成が潤滑の最大のターゲット」
50 弾性流体潤滑(EHL)理論の登場 「ピンポイント接触部分にも油膜は存在する」

51 グリース潤滑 「軸受の機能を左右する添加剤」

52 油潤滑 「多岐にわたる潤滑方法」

53 軸受の死命を制する密封装置 「非接触形か接触形か」




第8章 実際に使用する場合のポイント


54 軸受の配列、はめあい 「軸とハウジングの影響の制御」

55 振動と音響(騒音)、許容回転数 「軸受には振動が付きもの」

56 取り付けと取り外し 「細心の注意が必要、ハンマの直撃は厳禁」

57 軸受の損傷原因 「軸受の損傷はいわば交通事故」

58 内部起点疲れ損傷 「内部クラックから表面はくりへ」

59 表面起点疲れ損傷 「疲れ損傷を左右する固体粒子」

60 摩耗と腐食 「摩耗とさびからできる粉は研磨剤に化ける」

61 かじりとスミアリング(微小溶着) 「2つとも潤滑油膜の破断が原因」

62 軌道面の局部的なくぼみ 「電食にはセラミック転動体を」

63 焼き付き 「焼き付きは大規模な溶着現象」

64 取り付けミスによる損傷 「手荒に取り扱えば軸受は破損する」



【コラム】

●ドイツの戦力のみなもと軸受プラント群を爆撃せよ!

●境界潤滑状態で行われたアモントンの摩擦の実験

●すべり軸受を使ったクーロンの摩擦の実験
●飛べない飛行機、軸受の不具合が落とし穴

●メートル系軸受とインチ系軸受のちがいとは

●ころがり軸受の基礎理論を築いたスウェーデン三人男
●本田宗一郎さんは針状ころ軸受が大好き

●トライボロジーの「トライボ」の江戸時代の訳語とは



参考文献

索引

はじめに

まず最初にタイトルに使われている軸受ということばについてコメントしたいと思います。軸受はベアリングとも呼ばれます。軸受というよりもベアリングといったほうが親しみやすいかも知れません。それもそのはずで、日本の工業化が始まった明治時代から太平洋戦争が始まる昭和時代前期まで、ベアリングということばが圧倒的に使われていました。公的用語としての軸受という呼び方が定着したのは戦後のJIS(日本工業規格)の制定以降のことです。

 しかしベアリングということばはその後も使われ続けています。たとえば1948年に日本ベアリング協会として設立された日本ベアリング工業会は、ベアリングという名称をそのまま継承して現在にいたっています。単行本のタイトルもベアリングが多用されています。企業の名称でも㈱ミネベアは、かつては日本ミネチュアベアリング(株)という社名でした。「ベア」とされたのは、何でも短い名前にしてしまうのが大好きな日本人にとって、べアリングというのはまどろっこしくて、省略形のベアのほうが端的で格好がいいと感じられるからでしょう。

 一方、ベアリングの訳語として登場した軸受は当初は軸承と表現されていましたが、やがてもっと読みやすい軸受に統一されました。第2次大戦に入る前の陸海軍、官公庁がその推進力になりました。国家経済体制を整えるために規格化、用語の統一が必要になったからです。この動きは戦後のJISに引き継がれました。要するに、工業化の土台となる規格における用語として軸受ということばは戦前と戦後にかけて広まったわけです。

 ここで本題にもどって、べアリング、その訳語である軸受の意味について考えてみましょう。ベアリングのもともとの意味はベアするもの、つまり荷重(外部から加わる力)を支えるものという意味です。これだけではわかりにくいので、荷重を受けながら、回転する軸を支える機械部品を意味する軸受という訳語が考えだされたわけです。

 本書では、ベアリングではなく、軸受ということばを使うことにします。軸受という漢字からなる単語が日本語になじんてきて、使われる範囲が広くなっているからです。たとえば、軸受はころがり運動するタイプのものと、すべり運動するタイプのものに大別され、前者はころがり軸受、後者はすべり軸受と呼ばれますが、ころがりベアリング、すべりベアリングと呼ばれることはありません。日本人の長年にわたることばにたいする感覚が無意識のうちにことばの組み合わせを選択したからでしょう。

 それはさておき、軸受が使用される目的は、それによって摩擦を低減させることにあります。産業革命以後、消費エネルギーの増加するにともなって、軸受が使用されるケースは飛躍的に増加しました。日本の場合、いわゆる高度成長期以後、その傾向は加速しています。大ヒットした映画『ALWAYS 三丁目の夕日』は、1958年の東京が舞台になっていますが、そのころ一般家庭にあった軸受が組み込まれている機械は自転車ぐらいだったのではないでしょうか。街では都電に並行して三輪自動車が走る姿が見られました。

 その後、いわゆる庶民の三種の神器の「白黒テレビ」「電気洗濯機」「電気冷蔵庫」が各家庭に急激に普及しました。それに引き続き自動車時代が到来し、軸受が数多く用いられているオートバイや自動車が各家庭で見られるようになりました。

 現在では、掃除機、エアコン、パソコンのHDD(ハードディスクドライブ)、録画・再生用のHDD、その他の情報家電が上記の機器に加わっています。いずれもその駆動部分には軸受が用いられています。家庭外部でも、オフィスにはOA機器、建物にはエレベータ、エスカレータ、交通機関には電車、新幹線、航空機、病院にはCTスキャナ装置、工場には各種電気モータ、工作機械、圧延機、コンベア、工事現場にはブルドーザ、ホイールローダ、トンネル掘削機、大形クレーンほか各種の建設機械、農地には各種農業機械、レーダーサイトには回転式レーダー、海上には各種の船舶などと軸受が重要な役割を果たしている機械・装置はいたるところで活躍しています。建物の免震装置にも軸受が使用される例も増えています。それ以外にも、戦車、大砲などの兵器の分野も付け加えることができます。軸受を必須とする機械・装置は、本当に枚挙にいとまがないほど数多く存在しています。このようにいたるところに使われている軸受は、損傷すれば大きな事故につながる可能性があるので、軸受の信頼性を高い水準に保つ必要があります。

 軸受の損傷をはじめ、その性能に大きく関係するのが軸受内部のミクロな動きです。それによって軸受全体の性能が、機械や装置、システム全体の性能が決定されます。したがって、軸受のミクロな世界が非常に重要になります。このような観点から見れば軸受はひとつのミクロ世界そのものであるともいえます。

 さまざまな機械装置に使用されているころがり軸受の外径は極小機器用の1・5ミリメートルからトンネル掘削機用の15メートルまでとずいぶん幅があります。しかしながら、軸受の性能に大きく関係するのは軸受のミクロ世界です。その意味では軸受の寸法の大きさが決定的な意味をもっているわけではありません。ミクロ世界が大きな関心を引き付けるゆえんです。

 一方、軸受のブラックボックス化は進んでいます。軸受が組み込まれている機械装置が身近にたくさん存在しているのにも関わらず、一般の方が軸受の現品を見る機会はむしろ減っているかも知れません。それだけに、知的な関心も逆に高まってくると思われます。軸受というミクロ世界に関心を持たれたこうした方々の手引きになることを本書は意図しています。

 おわりに、本書を企画され多くの示唆をいただいた日刊工業新聞社出版局の野﨑伸一氏に感謝の意を表します。


2014年1月 
吉武立雄

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