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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい石油の本
第2版

定価(税込)  1,512円

編著
編著
編著
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07206-2
コード C3034
発行月 2014年02月
ジャンル ビジネス 化学

内容

石油の成立ちから、分布、化学的利用、そしてマーケットまで石油の基礎をきっちりとまとめ、大好評を得てきた同書。シェールオイルなど今、注目を集める非在来型石油資源の話を追加するとともに、各種の統計数字などを7年ぶりに改訂。さらに使える本とした。

藤田和男  著者プロフィール

(ふじた かずお)
東京大学名誉教授、芝浦工業大学客員教授、ボランティア団体Geo3 REScue Forum代表、1965年東京大学工学部資源開発工学科(石油専修コース)を卒業して、アラビア石油(株)に入社後30年勤務。その間1969年から 4年間本場のテキサス大学大学院石油工学科へ社費留学、1972年12月石油工学博士号 (PhD)を取得して石油危機が始まる直前に帰国する。その後アラビア湾のカフジ油田に 8年余り、日中石油開発(株)の渤海湾プロジェクトに2年、そしてマレーシアの駐在代表として 1年などの海外勤務計15年を経験する。1994年12月アラビア石油(株)を退社して東京大学工学部教授に就任。1997年より大学院主任、1999年より同専攻の専攻長(学科長)を務める。2003年3月東京大学を退官して芝浦工業大学にわが国初めて新設されたMOT(技術経営〕大学院の育成のため招かれ7年間、2010年3学に退職し現在に至る。専門は油層工学を軸に石油資源論、石油開発プロジェクト評価、地球環境・エネルギー戦略論、エネルギージオポリティックスなど。

島村常男  著者プロフィール

(しまむら つねお)
埼玉県生まれ。1969年東京大学工学部資源開発工学科卒業、石油公団(当時は石油開発公団)に技術系一期生として入団。77~80年、96~99年の二度にわたりジャパン石油開発㈱を経由してアブダビの石油開発操業会社に出向し、メジャーズとの共同操業を体験した他、石油公団では計画部、技術部、石油開発技術センター、ヒューストン事務所に勤務。石油公団とその機能を引き継いだJOGMECで理事を務めるなど一貫して石油開発に係わる。2005年6月北海道石油共同備蓄(株)専務取締役。2009年6月、一般財団法人石油開発情報センター理事長。2012年3月末退職。

井原博之  著者プロフィール

(いはら ひろゆき)
技術士(化学部門)事務所・エコ・エネ・リサーチ代表、井原理化教室・室長。大阪府生まれ。1962年、京都大学工学部卒、同年三菱石油㈱入社。開発研究所長、開発部長。和興産業(株)取締役技術本部長を経て2003年より現職。著書に「トコトンやさしい天然ガスの本 第2版」(藤田和男監修・共著)がある。

目次

第1章 石油っていったいなんだろう?
1 石油という名の商品はない「石油は炭化水素化合物」
2 多成分の石油はその用途も多様「一番使われているのは輸送用燃料として」
3 原料・材料としての石油「日常生活を支える石油」
4 石油や天然ガスはどうしてできたか「ケロジェンを基とする生物起源説」
5 原油は地層の隙間に押し込まれている「原油は岩の隙間に貯まる」
6 石油や天然ガスは世界のどこにある?「油ガス田の成立要因」
7 石油誕生に係わる地球の大ドラマ「プレートテクトニクスとは?」
8 増え続ける石油の消費「20世紀は石油の世紀」

第2章 石油を発見するのはとても大変
9 油田の探鉱・開発には数千億円のお金がかかる「地震探査、坑井の掘削」
10 試掘候補地の選定をピンポイントで行う「最先端技術で石油を探す(1)」
11 試掘井の掘削結果で開発・生産を決定!?「最先端技術で石油を探す(2)」
12 ロータリー式掘削と掘削機器「地下数千メートルの石油坑井」
13 掘削泥水は、石油坑井掘削時の血液「循環する泥水の役割」
14 石油坑井掘削と技術革新「技術の進歩はより遠くへ、より深くへ」
15 海洋に石油を探す「陸地周辺でしか行われていない海洋石油探鉱」
16 石油探鉱は「ギャンブル」なのか?「確率とリスク分散」
17 時間とコストのかかる石油探し「石油を掘る前の事前調査が重要」

第3章 石油の採掘と技術革新の新たな展開
18 石油はどのように汲み上げられるの?「岩石の孔隙中の石油をどう効率よく取り出すか」
19 油田に水やスチームを圧入して石油をトコトン回収「石油のIOR・EOR回収」
20 大深度から石油をとる工夫「開発対象は極地・大水深・大深度へ」
21 拡大する大水深石油開発と極地開発「水深1500メートルを超える」
22 期待される新たな油ガス田地帯「新たな発見はそのほとんどが大水深部?」
23 急展開したシェールオイル・タイトオイルの開発「シェールオイルの大増産で活況」
24 非在来型原油代表のオイルサンドとオリノコタール「高度改質精製技術が鍵」
25 原油が製油所に送られるまで「不純物や余計なものを取り除く」
26 いったい石油の埋蔵量はどのくらいある?「成長する埋蔵量」
27 改質を行うことで付加価値をつける「炭化水素の鎖構造の分析・連結」
28 ピークオイル理論と在来型石油埋蔵量「非在来型石油」はピークオイル理論の対象外」

第4章 石油の流通・輸送・貯蔵
29 石油が豊富に生産される国々「ロシア・サウジアラビア・米国 」
30 伸びるアジア・太平洋地域の石油消費「消費は軽質化」
31 全海上輸送物の3分の1は石油「タンカーは海上輸送の主役」
32 原油の輸送は難しい問題「タンカーとパイプライン」
33 日本国内の石油輸送手段とは?「内航タンカーとタンクローリー」
34 日本は緊急時対応のために石油を貯蔵している「石油の備蓄」

第5章 多くの用途に利用される石油
35 石油の精製と精製技術「原油とは油田から直接産油された粗油のこと」
36 製油所で作られる石油製品「石油製品一覧」
37 ガソリンは最適基材を混ぜて高機能になる「石油の芸術品」
38 ガソリン・エンジンの発明・普及と石油「自動車が文明の象徴に」
39 いろいろな石油化学製品になるナフサ「産業社会・日常生活の基礎」
40 石油利用の急増をもたらした灯油「ランプ用(照明)から暖房用へ」
41 成層圏でも特性が変わらないジェット燃料「成層圏で耐える特性」
42 軽油を使うディーゼル・エンジンの発明「軽油使用量が急増した」
43 使用量が減ってきた重油「産業を支える燃料の首位の座を降りるか」

第6章 石油産業と環境問題
44 温暖化防止と日本「地球温暖化対応の状況」
45 石油と大気汚染「日本は公害先進国だった」
46 石油業界の有害物質対策「日本の環境対策技術はここにあり」

第7章 激変してきた石油産業の変遷
47 石炭から石油へ、大手石油会社の誕生「軍事から産業の血液へ」
48 150年で急速に世界に広がった石油産業「大産油地帯の変遷」
49 メジャーから石油資源を取り戻した産油国「企業と産油国政府」
50 石油は誰のものなのか?「資源国家主権の確立」
51 メジャーズ「再編・規模拡大と消滅」
52 活発に動く新興石油企業と産油国「国営系石油会社の勃興」
53 国内生産量が少ない日本での石油産業「開発を積極的に進める」
54 自由化が図られる日本の石油産業「精製・販売に特化」
55 石油の地政学「国境を跨ぐ資源の開発」
56 OPEC、IEAとは?「国際協調の道へ」

第8章 石油市場の形成と価格決定の仕組み
57 石油価格はどのようにして決まるか「カルテル価格から市場価格へ」
58 メジャー・システム下での産業構造と石油価格「3つの特徴をもつ国際石油産業構造」
59 石油の価格が世界経済を変える「急激な需要増がバランスを崩す」
60 石油価格の見通し「短期・中長期的な見通し」
61 石油の価格を規定する要因「コスト競争とその限界」
62 日本の石油事情「分散化と安全保障」
63 先物市場「ジオポリテイクスの影」

【コラム】
●石油、天然ガスと石炭の関係は親子、兄弟、それとも他人?化石燃料のファミリールーツ
●石油産業で使う言葉の意味
●原始埋蔵量と可採埋蔵量
●ピークが過ぎた「ピーク・オイル論」
●油を売る?
●バイオ・ディーゼル復活の影で
●大手国際石油会社の悩み
●価格決定のメカニズム(市場、カルテル、OPEC)

石油の百年
参考文献
索引

はじめに

改訂にあたって

 本書の初版が出版されたのは7年前の2007年(平成19年)でした。顧みればこの年にニューヨーク市場のWTI原油の期近先物価格が1バレル50ドルから急騰、2008年明けには史上初めて100ドルを、同年夏の7月3日には史上最高値145.29ドル/バレルを記録しました。ところがその後、一転して原油価格は急落の道へ向かい、9月半ばには大手の投資証券会社リーマン・ブラザーズ社の破綻を契機に、世界は金融危機と同時株安となり、経済不況に陥ります。
 この間、原油価格高騰の追い風に乗り、米国内では非在来型ガス資源を求め水平掘井戸仕上げに多段階水圧破砕の新技術が功を奏し、2009年頃から米国シェールガスの大増産が実現しました。その結果、天然ガスが供給過多を起こし2011年央以降から米国内ガス価格が百万Btu(英国熱量単位)、約25立方メートル当たり3~4ドルに低迷したのです。それでもWTI原油価格はバレル当たり80~110ドルでの高値推移が恒常的であったため、米国内の発電源構成に石炭から天然ガスに代替するシフトが起り、石油化学業界でも、依然高値の石油に替わり発電源や石化原料に安価なシェールガスの利用を急ぐ産業構造の変革、所謂「シェールガス革命」が現実性を帯びてきています。
 一方わが国では2011年3月11日に発生した東日本大震災と大津波により福島原発の惨事が起り「原発神話」が崩れ、原子力発電によるわが国の喪失した電源の29%分を如何なるエネルギー源で代替するか喫緊の命題となりました。石油、天然ガス、石炭などの化石燃料の中で、CO2排出量が比較的少ない天然ガスが当面の低炭素社会における電力源の切り札となりLNGの輸入量が急増、安倍政権の経済政策アベノミクスの円安誘導策も加担し、貿易収支を悪化させる結果となっています。わが国の前政権がイソップ物語のように太陽光と風力発電の利用促進を謳い、発電した余剰電力を高値で買い取る制度も結局は高い電気料金を国民に押し付けながら、それらが実質的に発電した電気量のシェア規模は小さいことが判明し、頼りにならない状況です。
 この大震災を契機に、エネルギー問題、政策そして戦略に係わる議論が国会や行政省庁や新聞、テレビ、業界誌などのメディアで最近は頻繁に取り上げられています。このような状況下で7年前に出版した「石油の本」の技術データを最新版にアップデイトする必要に迫られ、ここに「第2版」上梓した次第です。
 
 現在、わが国の年間のGDPは約500兆円(国民一人当たり年間約400万円)であり、この原動力となる日本の一次エネルギー消費量は世界全体の消費量(年間石油換算125億トン)の3.8%を占めています。中国22%、アメリカ18%、ロシア6%、インド4・5%に次ぎ日本は五番目のエネルギー消費大国です。しかしわが国はその約9割を海外から輸入調達しています。日本では一次エネルギー消費量の44%が石油で、24%が天然ガス、23%が石炭で賄われています。依然、石油はわが国の一次エネルギー消費源の主役なのです。さらに原発を喪失した現在では、3つの化石燃料は全体の92%と消費シェアが増えています。とりわけ石油消費量の99・6%を輸入し、内90%近くを中東産油国の石油に頼っている実情を知ると、安定的なバランスあるエネルギーの需給政策と適切な節約策の実現を皆さんで考える必要があると思います。
近年のトレンドは米国発の「シェールガス革命」がトリガーとなり、当面の原油の高価格時代の中でタイトオイルやシェールオイル開発のみならず、在来型油田のEOR/IOR回収プロジェクトや非在来型の重質油やカナダのオイルサンドやベネズエラのオリノコタールの開発と高度改質精製技術を奮い立たせ、さらには石炭ガス化の高効率発電技術へと伝播し、そしてやがては水素エネルギー利用への橋渡しとなる時流を暗示するように思われます。21世紀のグローバルな資源・エネルギー開発においては石油開発業界と石油化学産業界が手を組み革新的技術開発でコスト削減やプロジェクトの技術管理などを事業企画段階から共同で取り組むべき時代が訪れたように思います。
 私から皆さんに強く訴えたいことは、化石エネルギー資源に恵まれない島国であるからこそ、国土を囲む広大な海洋を対象に捉えて海洋資源開発に挑戦すべきでしょう。皆さんのような若い世代の英知と根性と情熱を結集することによりわが国の技術力と資金でエネルギー資源開発のグリーン・イノベーションを築こうではありませんか。
 最後に本書「第2版」の目次、章立ての大幅な改訂を行うに当たり企画立案の段階からアップデイトデータの作成、原稿の編集、査読監修作業を通し献身的に作業して頂いた島村常男氏と日刊工業新聞社藤井浩記者に深く感謝する次第です。

2014年2月
東京大学名誉教授 
藤田 和男

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