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省レアアース・脱レアアースモータ

定価(税込)  2,808円

編著
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07171-3
コード C3053
発行月 2013年12月
ジャンル 機械

内容

レアアース磁石を用いた高効率モータの需要拡大により生じた資源問題の解決のため、レアアースの使用量をできるだけ少なくする「省レアアースモータ」、レアアースを使用しないで高効率を実現する「脱レアアースモータ」の開発が進められている。その開発成果と可能性を解説する。

松井信行  著者プロフィール

(まつい のぶゆき)

中部大学 理事長付特任教授



執筆者

第1章 モータの種別と特徴 松井 信行〔中部大学 理事長付特任教授〕

第2章 永久磁石の種類と特性 徳永 雅亮〔明治大学 兼任講師〕

第3章 永久磁石形同期モータ 加納 善明〔豊田工業高等専門学校 准教授〕

第4章 省レアアース磁石モータ技術

4.1 IPMSMの省レアアース化技術 山際 昭雄〔ダイキン工業㈱〕

4.2 可変磁力モータ 新田 勇〔㈱東芝〕

4.3 巻線切替IPMSM 前村 明彦〔㈱安川電機〕

4.4 極数変換と可変磁力モータ 堺 和人〔東洋大学 教授〕

第5章 脱レアアース磁石モータ技術

5.1 スイッチドリラクタンスモータ 千葉 明〔東京工業大学 教授〕

5.2 フェライト磁石補助形シンクロナスリラクタンスモータ 森本 茂雄〔大阪府立大学 教授〕

5.3 アキシャルギャップ型フェライト磁石モータ 竹本 真紹〔北海道大学 准教授〕

5.4 巻線界磁形フラックススイッチングモータ 小坂 卓〔名古屋工業大学 准教授〕

目次

はじめに

第1章 モータの種別と特徴

1.1 歴史的に見た各種モータ

1.2 可変速モータの展開

1.3 用途指向型モータとしてのモータの発展
1.4 リラクタンストルク応用型モータ


第2章 永久磁石の種類と特性

2.1 モータ用永久磁石の歴史

2.2 永久磁石の特性
2.3 モータ用磁石に求められる要件

2.4 省Dy磁石の開発動向

2.4.1 粒界拡散

2.4.2 結晶粒径微細化

2.4.3 H-HAL法
2.4.4 熱間押出磁石


第3章 永久磁石形同期モータ

3.1 永久磁石形同期モータの基礎
 
3.1.1 PMSMの構造と種類

 3.1.2 PMSMのロータ構造と電機子インダクタンス

 3.1.3 PMSMの基本特性

3.2 SPMSMの特徴と高性能化動向

 3.2.1 SPMSMの特徴と課題
 3.2.2 小型・高出力密度化

 3.2.3 可変速運転範囲の拡大

3.3 IPMSMの特徴と高性能化動向

 3.3.1 IPMSMの特徴
 3.3.2 ロータ形状と機器定数との関係および設計指針

 3.3.3 エアコン用コンプレッサにみるIPMSMのロータ構造の変化

 3.3.4 自動車主駆動用モータにみるIPMSMのロータ構造の変化


第4章 省レアアース磁石モータ技術

4.1 IPMSMの省レアアース化技術

 4.1.1 省レアアース化の狙い
 4.1.2 IPMSMの目指すレアアース削減の方向性

 4.1.3 IPMSMの省レアアース事例

 4.1.4 省レアアースIPMSMの効果

4.2 可変磁力モータ
 4.2.1 可変磁力モータの特徴

 4.2.2 可変磁力モータの磁化状態を考える必要性

 4.2.3 可変磁力モータの開発の経緯
 4.2.4 直列型可変磁力モータ

 4.2.5 可変磁力磁石の調製と磁化動作

4.3 巻線切替IPMSM
 4.3.1 開発の狙い

 4.3.2 従来の巻線切替技術

 4.3.3 電子巻線切替技術

4.4 極数変換と可変磁力モータ

 4.4.1 開発の狙い
 4.4.2 可変速モータドライブシステム

 4.4.3 可変磁力モータ

 4.4.4 極数変換永久磁石モータ

 4.4.5 固定磁力と可変磁力複合の極数変換モータ

 4.4.6 3倍比極数変換磁石モータ

 4.4.7 極数変換ハイブリッド磁石モータ


第5章 脱レアアース磁石モータ技術

5.1 スイッチドリラクタンスモータ

 5.1.1 スイッチドリラクタンスモータの特徴

 5.1.2 研究開発状況

 5.1.3 ハイブリッド自動車用永久磁石モータと同等性能のスイッチドリラクタンスモータの開発

 5.1.4 試作事例
5.2 フェライト磁石補助形シンクロナスリラクタンスモータ

 5.2.1 開発の狙い
 5.2.2 開発目標と設計アプローチ

 5.2.3 PMASynRMの設計と解析による特性評価

 5.2.4 試作機による特性評価

 5.2.5 高性能化に向けた検討

5.3 アキシャルギャップ型フェライト磁石モータ

 5.3.1 開発の狙い
 5.3.2 提案モータの構造

 5.3.3 提案モータの解析結果

 5.3.4 試作モータの測定結果

5.4 巻線界磁形フラックススイッチングモータ

 5.4.1 開発の狙い
 5.4.2 三相WFFSMの基本構造・動作原理

 5.4.3 試作モータの諸元
 5.4.4 性能評価試験結果


索 引

はじめに

 かつてICを「産業のコメ」と呼んだ時代があった。これに倣えばモータはさしずめ「産業の筋肉」ということになろうか。本書は、このモータを取り上げ、新進気鋭の研究者、技術者によってわが国で世界に先立って開発が進みつつある省レアアースモータ、脱レアアースモータの開発や製品化実績を紹介し、今後を展望するものである。

 モータは、19世紀初頭に開発された巻線界磁他励直流モータに端を発し、時代の要請に応えるべく進化しつつ現在に至る長い歴史をもつ電気・機械エネルギー変換機器である。要素技術としての電磁材料技術や製造技術のレベル、解析・設計技術としての非線形現象解明の困難性などのために実用に至らないものもあった中で、直流電源駆動可変速モータとしての各種の直流モータ、商用交流駆動定速度モータとしての同期モータ、誘導モータが特に長い歴史と産業界での実績を保ってきた。

 1958年のサイリスタの発明を契機に進展したパワーエレクトロニクス技術が、それまでは直流モータは可変速モータとして、誘導モータや同期モータは定速モータとして位置づけられていたモータの世界を大きく変革した。インバータやチョッパに代表される半導体電力変換器によって可変電圧、可変周波数運転が一般的となり、同期モータや誘導モータも直流モータに並ぶ可変速モータとしての位置を確保し、モータの世界の概念を変えることになった。さらに、制御情報処理がアナログ回路からデジタル、さらにマイクロプロセッサによる自在性に富んだソフトウエアに移るに及んで、交流モータはベクトル制御法によって直流モータに劣らない制御性を具備できるようになった。また、パソコンベースで簡便に扱える非線形磁気現象解析ツールの高度化、一般化などを背景に、半導体電力変換器とモータの挙動を一体的に解析あるいは設計する方法が飛躍的に進歩した。この時代背景には、オイルショックによる可変速ファン、ブロアによる省エネの経済性確立、それに続く家電用機器の一層の快適性追求と並ぶ積極的な省エネ性追求製品の開発、産業用ロボットに代表される生産技術の飛躍的な高度化、車両の電動化などの社会的要求を見逃すことができない。こういう流れの中で、際立ったエネルギー密度の高さゆえに、レアアースを用いた同期モータとその駆動技術への関心が急速に高まりつつある。

 今日のモータを語る際のキーワードは、地球資源問題、省エネルギー、高出力密度に集約され、21世紀に入ってレアアース(希土類)を用いた永久磁石形同期モータに大きな関心が寄せられるようになっている。一方、レアアースは地球上に偏在しているために資源的にはリスク性が高く、その観点から、レアアース使用量が少ない、あるいは全く使用しないモータに、レアアースを用いた永久磁石形同期モータと同等あるいはそれ以上の性能を付与させるための開発研究が活発化し、一部は製品化されている。本書はそこに焦点を当て、省レアアースモータ、脱レアアースモータの開発や製品化実績をもつ新進気鋭の研究者、技術者によって、現状技術を紹介するとともに今後を展望したものである。

 最後に、本書の刊行は、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の森山郁也氏の熱意溢れるご提案と実務があってこそ実現したことを付記し、謝意を表したい。また、執筆者各位のご協力に深い謝意を表したい。この方たちの日頃の大学や企業の中でのたゆまぬ研究開発活動があってこそ、我が国のモータ技術は世界に先んじた実績を誇示することができるのである。多忙な業務の中、本書の出版のご趣旨をご理解の上、貴重な研究開発事例をご紹介いただいたことによって本書の出版が可能になった。

  

2013年12月

編著者 松井信行

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