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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいエントロピーの本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07132-4
コード C3034
発行月 2013年09月
ジャンル ビジネス 化学

内容

「エントロピー」はもともと物理の概念で、それを理解することは自然現象に対するものの見方を深める意味で非常に重要である。本書は数式を極力用いずに、身近な具体的な例を用いてエントロピーをやさしく解説する。

石原顕光  著者プロフィール

(いしはら あきみつ)
1993年 横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了
1993〜2006年 横浜国立大学工学部非常勤講師
1994年 有限会社テクノロジカルエンカレッジメントサービス取締役
2001〜2006年 科学技術振興事業団(2004年以降科学技術振興機構)研究員
2006年〜 横浜国立大学グリーン水素研究センター、産学連携研究員

●主な著書
「トコトンやさしい水素の本」共著、日刊工業新聞社
「トコトンやさしい再生可能エネルギーの本」監修・太田健一郎、日刊工業新聞社
「原理からとらえる電気化学」共著、裳華房
「エネルギーの事典」共著、朝倉書店
「電池の未来を拓く粉体技術」共著、日刊工業新聞社
「再生可能エネルギーと大規模電力貯蔵」共著、日刊工業新聞社

目次

第1章 エントロピーって何だろう
1 エントロピーで自然現象の本質をとらえる 「いろんな分野で使われるエントロピー」
2 本質をとらえて悟りを開くために 「3つのステップで悟りは開ける」
3 エントロピーがとらえる本質とは 「自然現象は「自然に」進んでいく」
4 ものは過去にこだわらない 「過去に関係なく、変化は進む」
5 エントロピーを一言で言うと 「人類が見い出した偉大な経験則」
6 エントロピーはなぜわからないと言われるのか 「わからないことをわかろうとしない」
7 エントロピーでものの見方を変えよう 「見えなかったものが見えてくる」
8 エントロピーがわかると何が良いのか 「エントロピーのご利益(ごりやく)」
9 エントロピーの弱点 「速さは皆目見当もつかない」

第2章 エントロピーを学ぶ前にこれだけは知っておこう
10 「物質は無くならない」という法則 「まず質量保存の法則」
11 エネルギーって、なかなか難しい概念 「仕事をする潜在的能力がエネルギー」
12 潜在的ってどういうこと? 「どんなエネルギーがあるのだろう」
13 熱も電気もエネルギー 「物質がもつ化学エネルギー」
14 エネルギーは形を変えてどんどん変化する 「太陽光の光エネルギーが変化する」
15 人間はエネルギーの形を変えて使いやすいようにできる 「住みよい世界へ」
16 エネルギーは無くならない 「エネルギー保存の法則」

第3章 いざエントロピーに挑戦!
17 全体を見る、それが大切 「興味のある部分だけにとらわれない」
18 完全に元に戻れるか戻れないか、それが重要 「変化の方向性を判定しよう」
19 どこかに影響が残ってないか 「温かい周りに置いてみる」
20 やっぱり元には戻らない 「電子レンジを使ってみよう」
21 動いている物体は自然に止まる 「摩擦によって熱に換わる」
22 熱に換わってしまったらおしまい? 「元に戻らない理由」
23 熱にならなければ元に戻る 「でも必ず抵抗や摩擦は存在する」
24 エネルギーだけじゃダメなんです 「だからエントロピーが必要なんだ」
25 エネルギーには質がある 「質の良いエネルギー・質の悪いエネルギー」
26 自然の変化はエネルギーの質と関係? 「エネルギーの質の低下とエントロピーの増大」
27 エントロピーが減ってる? 「冷蔵庫はコンセントを入れないと動かない」
28 全体で質が悪くなればそれで良い 「エネルギーの質の低下による補償」
29 エネルギーの質の変化で分類しよう 「技術や製品は3つに分類できる」
30 エネルギーの質だけじゃない 「物質は広がっていく」
31 全体のエネルギーの質が良くなってもいい? 「熱のエントロピーを物のエントロピーで補償」
32 熱のエントロピーは物質のエントロピーに換えられる 「水の沸騰は熱のエントロピーを物に変換」
33 エントロピーを変化させる要因は2つ 「物質のエントロピーも熱のエントロピーに換えられる」
34 エントロピーを考える意味 「関係の無い2つの現象を1つの概念で扱える」
35 エントロピーの変化量はこれくらい 「数値で見るエントロピー変化」
36 結局すべてはエントロピー 「悟りの第3段階へ」

第4章 身近な現象や技術をエントロピーで見ると
37 すべての変化は自然に起こる「 人間もエントロピーの法則から逃れられない」
38 錆びる、燃える、傷む 「酸化はエネルギーのエントロピーが支配する」
39 「結露しては消える」の繰り返し 「反対の変化が継続して起こる」
40 結露も蒸発も全体のエントロピーは増大する 「温度が変わると変化の向きが変わる」
41 芳香剤と脱臭剤、そのエントロピーは? 「反対の作用をエントロピーで考える」
42 発熱保温ウェアの秘密 「エントロピーが増大するように工夫する」
43 物が溶ける理由 「物質のエントロピーは増大する」
44 物が溶けない理由 「意外と難しい「溶ける」という現象」
45 着物のシミにご用心 「融点を下げてまでも混ざり合いたい」
46 凍結防止はエントロピーで! 「融雪剤も不凍液も」
47 夏の打ち水でエネルギーのエントロピーを減らそう 「物質のエントロピーで取り去れる」
48 生命活動とエントロピー 「ブドウ糖と酸素との反応を利用して活動している」
49 生命活動も太陽光エネルギー 「太陽光エネルギーは質の良いエネルギー」
50 もし「エントロピーカウンタ」があったら 「いたるところでエントロピーが増大」
51 神通力をもとう 「電卓1つで未来がわかる」

第5章 「エネルギー・環境」問題とエントロピー
52 エネルギー問題、実はエントロピー問題! 「質の良いエネルギーが無くなる」
53 化石燃料は優秀な化学エネルギー 「現代文明は太古の太陽光エネルギーに支えられている」
54 「再生可能」エネルギーは何かヘン? 「正確には永続的利用可能エネルギー」
55 再生可能エネルギーのエントロピー 「エントロピーの増大する量は変わらない」
56 水の惑星・地球の不思議 「水がエントロピーを捨てる」
57 持続可能なエネルギーシステム 「自然のエントロピーの流れの中へ」
58 リサイクルをモデル化しよう 「基本は製品→廃棄物→製品」
59 劣化と再生のエントロピー 「どちらも全体のエントロピーは増大する」
60 リサイクルはしたけれど 「ちゃんとエントロピーは増大している」
61 意味のあるリサイクルを 「「リサイクル」の本当の意味」

第6章 エントロピーの秘密に迫る
62 やっぱり気になるエントロピーの正体 「エントロピーを理解するための準備」
63 ミクロの世界の運動は? 「分子の運動をエネルギー値で表わす」
64 ボルツマン分布は不公平 「じっと見ているとボルツマン分布になっていく」
65 エントロピーはボルツマン分布だった 「それでもやっぱりよくわからない」
66 自然の変化はボルツマン分布に向かう 「温度はボルツマン分布の形状」
67 熱の移動と物質の存在空間 「ミクロに見れば共通の性質」
68 最後にやっぱりエントロピー 「身の周りの現象をエントロピーを使って考える」

【コラム】
●エントロピーを見つけたのは誰?
●エントロピーの求め方
●エントロピーが増大しない体積膨張もある
●「神通力」は偉大な先人たちの努力の賜物
●宇宙は熱的死に向かう
●熱の普遍性と特殊性

参考文献
索引

はじめに

 エントロピーは、身の周りで起こる、一見関係ないようなさまざまな現象と本質的に深くかかわっています。世の中で起こるすべての現象は、一方向にしか進まないという変化の方向性をもっています。エントロピーは、この変化の方向性を理解するために、人間が見い出した普遍的な考え方・ものの見方です。
 エントロピーが、いかにいろんな現象とかかわっているかを理解することは、私たちの自然現象に対するものの見方を深める意味で非常に重要です。たとえば、鉄が錆びる・ものが燃える・結露する・蒸発する・匂いをとる・ものを溶かす・打ち水で冷やす・融雪剤で溶かすなど、すべてエントロピーの観点から理解できます。
 また現在、わが国においては、エネルギー・環境問題が大きくクローズアップされています。エネルギー問題は、エネルギーの枯渇問題と思われていますが、エネルギーは保存されて無くならないため、正確にはエントロピー問題と言えます。そして、急速に導入が進められている再生可能エネルギーやリサイクルをはじめとする環境問題も、エントロピーの観点からとらえることが必要です。
 しかし、エントロピーは難解だとよく言われます。私も、大学の学部生のころに講義を受けましたが、さっぱりわかりませんでした。しかし、エントロピーには何か哲学的な匂いが感じられ、興味がありました。その後、興味をもって考え続けていると、いろんな機会にも恵まれ、あるとき突然「エントロピーがわかった」と思える時がありました。私はそれを「小さな悟り」だと思っています。「小さな悟り」は、それを理解するための「とっかかり」を与えてくれます。とっかかりはとても大切で、とっかかりの有無が、それを理解できるかできないかの分岐点だと思います。本書は、エントロピーを理解するためのとっかかりを得ていただくことを目的としています。とっかかりができると、少しずつわかってくるのです。
 物事の理解とは不思議なもので、わかってからテキストを読むと実によくわかる、そしてさらにわかるのです。わからないで読んでも、それはただ眺めているだけです。本書によって、みなさんがエントロピーを理解するとっかかりをもっていただき、さらに進んだ本で理解を深めていただければ、著者としてこれに優る喜びはありません。
 本書の刊行に際して、執筆の機会をいただいた日刊工業新聞社の奥村功出版局長、編集上のアドバイスをいただいたエム編集事務所の飯嶋光雄氏、また本文デザインを担当していただいた志岐デザイン事務所の奥田陽子氏に謝意を表します。
 最後に、私に化学熱力学を理解するためのとっかかりを与えていただいた横浜国立大学名誉教授朝倉祝治先生、再生可能エネルギーや環境問題に熱力学を適用して考える機会を与えていただいた横浜国立大学名誉教授太田健一郎先生、そして、あれこれ20年以上にわたって物理化学勉強会に参加して一緒に議論していただいている熱力学フリークの方々に深く感謝いたします。

 平成25年9月
石原顕光

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