買い物かごへ

中国に入っては中国式交渉術に従え!
外人・熟人・自己人を理解すれば失敗しない

定価(税込)  2,160円

著者
著者
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-07110-2
コード C3034
発行月 2013年07月
ジャンル ビジネス

内容

中国人は人間関係において、相手を関係性別に3段階に区分けし、これに準じてプライベートのみならず、ビジネスにおいても対応を変えている。よって中国人とのビジネスでは関係性の構築と、関係性に応じた交渉方法が、成功の可否を決めると言っても過言ではない。そこで本書では、中国人特有の関係性を活用した交渉方法を解説する。

平沢健一  著者プロフィール

(ひらさわ けんいち)
G&Cビジネスコンサルタント代表 
(財)海外職業訓練協会理事・国際アドバイザー
特定非営利活動法人日本交渉協会 特別顧問

「はじめに」「第2章」「第3章」「コラム」執筆

[略歴]
早稲田大学 第一商学部卒業。
日本ビクター株式会社(JVC)入社後国内営業課長、米国5年、欧州10.5年、中国5年計約20年間海外現地法人を経営し、全法人で黒字経営/トップシェア獲得、北京、上海、広州の直販体制、売掛金の現地回収を実現して軌道に乗せる。JVCニューヨーク営業所長、JVCイタリア初代社長、JVC欧州副社長、日本ビクター理事、JVC中国総代表(生産、販売統括)を歴任。この間56ヶ所でビジネス経験。
現在、日中数社の顧問、日本在外企業協会のグローバルビジネス研究会主査、大学・大学院で「異文化コミュニケーション」「現代経営行動持論」を担当、日本経団連、ジェトロ、日本商工会議所、早稲田大学、清華大学他多数の企業、協会、大学で講演活動を行う。中国赴任者約3000人の赴任前研修を実施。
[著書]
「中国ビジネスハンドブック」(共著・監修)日本在外企業協会
「中国人の実相と今後の中国ビジネス」(共著)日本在外企業協会
「中国ビジネス研究」(共著)日本在外企業協会
「中国 ビジネス超入門 ─成功への扉を開ける─」産業能率大学出版部
[その他所属]
日中関係学会評議員
大学教授、企業幹部等と中国ビジネス研究会、アジア・新興国ビジネス研究会主宰
アジア立志塾代表

安藤雅旺  著者プロフィール

(あんどう まさあき)
株式会社トランスエージェント代表取締役
特定非営利活動法人日本交渉協会 常務理事

「第1章」「第4章」「第5章」「付録」「あとがき」執筆

[略歴]
二松学舎大学大学院 国際政治経済学研究科修士課程修了。
立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科修士課程修了(経営管理学修士MBA)。
株式会社ジェック(人材開発・組織開発コンサルティング業)での営業経験を経て独立。2001年株式会社トランスエージェントを設立。2006年には上海に中国法人上海創志企業管理諮詢有限公司を設立する。「仁の循環・合一の実現」を理念に、アジア協働支援事業、交渉力・協働力向上支援事業、BtoB営業・マーケティング支援事業を展開している。
[著書]
「心理戦に負けない極意」(共著)PHP研究所
[論文]
「中国進出日系企業の産業財市場における顧客インターフェイスの研究」
(立教大学大学院MBAプログラム 2011年度優秀論文賞受賞)
[その他所属]
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員
公益財団法人渋沢栄一記念財団会員
アジア立志塾事務局長

目次

はじめに

第1章 C to C(チャイニーズトゥチャイニーズ)から学ぶ「関係」の実態
(安藤 雅旺)
1.1 「関係」を重視する中国人
1.2 「関係」の実態 ─中国人へのインタビューから
1.3 先行研究からみる「関係」

第2章 関係作りの失敗の原因と対策(平沢 健一)
2.1 日本のグローバル企業も「関係」で協業につまづいている
2.2 中国における日系自動車大手企業と韓国、中国企業の動向比較
2.3 ビジネス交渉における関係作りの失敗例
2.4 顧客や外部会社、政府や住民等との交渉の失敗事例
2.5 社内における交渉の失敗事例
2.6 中国人パートナーとの協業失敗事例
2.7 三十六の計に学ぶ

第3章 中国ビジネスで失敗しないための「外人」対応法
(平沢 健一)
3.1 中国人特有の人間関係 
3.2 「外人」からの売掛金回収成功例
3.3 「外人」に対する売掛金回収交渉のためのチェックリスト
3.4 「外人」に対する価格交渉のためのチェックリスト
3.5 「外人」に対する契約交渉チェックリスト
3.6 「外人」に対する交渉を成功させるためのA to Z
3.7 「外人」を強い人脈にする広げ方
3.8 日本の企業の中国消費者、官公庁との関係作りについて─真剣に考え、信頼関係を構築してきたか
3.9 中国事業に成功している日本人総経理の特性
3.10 まとめ ─中国市場開拓に成功している外人理解の日本人総経理の3特性とそのためにやるべき3つの課題
3.11 アジアの時代に「外人」とどう対応していくべきか

第4章 関係構築についてのインタビュー ─日本・中国 識者9名の経験から(安藤 雅旺)
4.0 識者へのインタビューから「関係」を知る
4.1 中国人の背景を理解し中国にはない概念を提案する
    元本田技研工業株式会社 執行役員 ホンダ広州総経理 門脇轟二氏
4.2 互いの違いを理解し、乗り越える
    元株式会社小松製作所 専務執行役員 中国総代表 茅田泰三氏
4.3 「忠」と「義」の違いを前提に、まず相手を理解すること
    日本中華総商会 会長 イーピーエス株式会社 代表取締役会長 厳 浩氏
4.4 日本のビジネスモデルのこだわりを捨て中国市場に適応する
    株式会社中国市場戦略研究所 代表取締役 徐 向東氏
4.5 ビジネスにおける中国人との関係構築の限界を踏まえつつ信頼関係を築く方法とは
    Sunny Packaging Group 元総裁 福喜多俊夫氏
4.6 個人間の信頼関係を組織との関係につなげる
    立命館大学 客員教授 前・味の素株式会社 常務執行役員中国事業本部長 前田宏一氏
4.7 日系企業は社員の忠誠心が生まれる環境作りを
    莫 邦富氏
4.8 社会構造の違いを認識した上で互いに尊重し合う
    ラオックス株式会社 代表取締役社長 羅 怡文氏
4.9 先入観を捨て中国の文化を理解する
    東洋大学 教授 劉 永鴿氏
4.10 まとめ

第5章 関係3段階に応じた交渉(安藤 雅旺)
5.1 「関係」の概観
5.2 「関係」の各段階に応じた考え方・行動
5.3 「外人」関係における行動
5.4 「外人」関係での行動のデメリットとその関係性における限界
5.5 「外人」から「熟人」「自己人」関係への移行
5.6 関係構築以前 絶対に陥ってはいけない道  ─反面教師から学ぶ
5.7 「外人」関係を「熟人」関係にする上での人物評価方法
5.8 中国人との協働関係構築 「熟人」そして「自己人」へ
5.9 「熟人」関係から「自己人」関係への道
5.10 新しい関係構築の形「自己人」から「共志人」へ
5.11 「共志人」関係とは

参考文献

付 録(安藤 雅旺)
中国進出日系企業の営業マネジメントに関する実証研究

あとがき
謝 辞

Coffee Break
香港電器大王から教わった中国ビジネス必勝法
SARSに真正面から協働して立ち向かい勝ち残る関係を築く
「性善説」に浸る日本人と「性悪説」でぐんぐん突き進む中国人
中国人幹部が絶賛する董事会の運営にまつわる工夫

はじめに

 2005年以降、日系企業が労働者の組織的デモやストライキに遭遇するケースが多くなってきた。2012年は日中国交正常化40周年の記念すべき年にもかかわらず、尖閣問題などをめぐる外交問題から驚天動地の国難ともいえる厳しい状態が発生し、その後半年以上も騒動が収束する気配を見せない。さらに今回は単なるデモだけでなく、暴徒による工場や店舗の襲撃、放火、略奪、ストライキ、日本製品不買運動、傷害事件など、この状況は両国だけでなく世界を震撼とさせる大騒動にまで発展してしまった。
 昨年の騒動はこれまでの騒動と次の4点で違っていたと考えている。①長期化、②大規模化、③雇われたとしか思えない暴徒による破壊的行動、④暴動は天津、大連ではほとんど見られなかった、といったことである。このような騒動の過激化を受け、日中関係回復のためには、今後日中双方が想像以上の努力と根本的な「関係」作りに乗り出さなければならないと思料する。
 中国はその後も尖閣諸島の領域などにしばしば政府の監視船を送っているほか、日本製品の不買運動を助長するような発言を政府高官がしたり、重要会議を一方的に延期したりして、日本と全面対決ともいえる政策を続けている。しかも経済や文化の領域にも対抗措置を広げた今回の中国のやり方は、世界から、また実は中国内部からも批判の声が挙がっている。なぜなら彼らの日中関係がどうなっても構わないというような姿勢は、それまで日中関係に努力を惜しまず貢献してきた多くの人達を失望させたためだ。尖閣だけでなく西沙・南沙・東沙諸島等、ことごとく周辺国と力で現状を変えようとする中国のやり方を、本来中国は覇権主義と批判してきたはずだ。
 筆者は米国と欧州で15年間、日本企業の現地法人経営に携わった後に、中国法人の生産・販売の責任者としての5年間を含めて、通算15年間、日中ビジネスに携わってきた。そして中国特有のリスクに遭遇し、幾多の辛酸もなめてきた。これを契機にこれまでの歴史は重視しつつも、古い流れや進め方を根本から見直し、屈強な日中関係の構築が今こそ肝要だと思料している。
 また、今回の騒動後に中国から撤退を考える企業もあると聞く。しかし、中国市場のインフラの充実度や魅力はASEAN他国に比し圧倒的に大きいし、中国に留まろうとする企業がまだまだ多数だ。
 日本企業の中国における今後についてはまだまだ不明な部分が多い。しかし、よく目を凝らせば日本製品の良さを知っている潜在的な顧客も沢山いることが見えてくる。
 最近の中国人と接して一番感じることは彼らの自信だ。オリンピックや万博も成功した。このようなことを受け彼らは、いまだ失われた20年で呻吟する日本に対して「勝った」という思いを強くしている。鄧小平がかつて教えた「韜光養晦」(自分の能力を隠して外に出さない)を今彼らはかなぐり捨てており、世界各地で軋轢が生じている。
 今こそ日本人は世界の人たちと積極的に交じりあい、弱いと言われてきた外交力・交渉力を涵養し、日本の良さを改めて示していかなくてはならない。日本人の真面目さや素晴らしさは、20年以上の海外生活を通じてあちこちから聞かされてきた。日本は中国でもこのスタイルを続け、いたずらにおもねることなく自信を持って交流していくべきである。また、治乱興亡の国、中国で恫喝や混乱を恐れていては前に進めない。そのためには良いケンカをする腕を磨く必要がある。
 日中両国は、「自虐性を卒業して自信を取り戻した日本」と「世界を知って謙虚さを身に付けた中国」として、大人の関係を早く築いて欲しいものだ。そのためには、信頼ができ、永く付き合え、強い人脈ともなる中国人の参謀や同志作りが欠かせない。
 筆者は中国滞在中に、合弁事業相手の国有企業幹部に積極的に助言し、国際化などの経験もよく話した。上海の重電企業や北京の電子・電機会社の幹部教育にも積極的に関わり大変喜ばれた。また、そのことで相手先の中国人たちは謙虚になり、その後も支援を続けてくれた。これらの活動成果を受けて、強い意志と覚悟、情熱があれば、中国事業は欧米より難しくはないという自信にもつながった。
 中国の深刻な空気や水、土壌汚染など環境問題に対するこれまでの日本や日本企業の技術提供など誠意にあふれた貢献を、日本側もあらゆる機会を通じて堂々と発表せねばならない。それには欧米主要国のように、日本も産官学とマスコミが一体となり、これまで以上に中国に対し遠慮なくもの申すことできる体制作りが必要となる。長く海外から日本を見てきたが、国内のセクショナリズムに由来するバラバラな対応の隙を突かれる日本の姿が歯痒くてならない。中国は経済成長が下降し始め数多くの問題を抱えており、国民の不満も噴出する瀬戸際に来ている。そこで、特に深刻で抗議やデモ・騒動の対象となることが多い環境問題に対する民意を良好にすることは、日本にとっても喫緊の課題であり、これは日本企業の真骨頂の領域でもあるのだ。 
 かつて筆者は内モンゴルで植林活動を続け、地元から大変感謝されたことがある。日本人は陰徳、すなわち人に知られず密かにする善行だけにかかわらず、それをあらゆる場と手段を使いどんどん主張しようではないか。「遠慮は能力の無さ」と見なされるのは中国だけでなく、いわば世界の常識であり、日本人の意識改革が肝心だと思う。
 2003年のSARS騒動では、数多くの日系企業社員が中国から一時避難した。この時、中国から退去せずに懸命に中国人と一緒に戦った会社は、後に北京政府などから賞賛を受けた。私のいた現地法人もその1社だが、この間の日中両国人の協力ぶりを描いた弊社の小冊子を北京政府が中国語に翻訳し各部門の役職者に配布した。こうした危機における現地人の協力と活躍がきっかけで、現地化が一層進むことにもなった。今後も会社を支えてくれる中国人従業員に、改めて会社の理念、方針をじっくり丁寧に説明し理解をしてもらうことはとても大事なことである。
 これまで日本はアジアの一員であるにもかかわらず、その意識を持つ日本人が少なかった。
 明治維新以来、富国強兵の旗印の下“脱亜入欧”のスローガンを掲げて西欧文化を一心不乱に取り入れてきたのが原因の一つだ。戦後もこの風潮を続け、幸いにも近代化を成し遂げて世界有数の経済大国になってきた。そのためか相変わらず西欧にあこがれ、アジアを上から目線で捉える傾向が残っていることは残念でならない。
 しかしながら潮目は変わってきた。“21世紀はアジアの時代”が現実のものになり始めてきた。
 アジアの若者は実力をつけ目を輝かせ、嬉々として国際化に突き進み始めている。それに負けない日本人を作りだすための若者教育が、今こそ欠かせない。日本の力を知り抜き、それをアジアから世界へとつなげるという、本当に意味での現場主義を実現するためのグローバル教育が大切となる。
 本書では中国人を理解するのに欠かせない、「関係」について、解説をした。日本人の場合、相手とプライベートで非常に関係が深かったとしても、ビジネスの場ではそれを切り分けて接するのが普通であろう。しかし、彼らは違う。中国人はすべて人間関係を基準として動くところがあり、それはビジネスの場においても同様だ。このことが日本人にとってはなじめず、さらには中国人のこの考え方を理解しようとしないことから生じている軋轢も少なくない。
 本書を通じて日中双方がお互いを理解し合い、そして中国やアジアで協働することによって信頼できる「関係」が構築できる一助となれば幸いである。

2013年7月
平沢 健一

買い物かごへ