現在在庫がありません

おもしろサイエンス
微生物の科学

定価(税込)  1,728円

著者
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-07108-9
コード C3034
発行月 2013年07月
ジャンル ビジネス 化学

内容

人類は、微生物の存在が知られていない時代から感染症との戦いや発酵食品の製造を通じて微生物との付き合いが続いている。本書は、基本的事項を抑えながら、特に有用微生物の育種と利用を中心に紹介する。これから微生物学を学ぼうとするときに、最初に手にする本としても最適。

中島春紫  著者プロフィール

(なかじま はるし)
1960年 5月  東京都生まれ
1989年 3月  東京大学大学院農学研究科農芸化学専攻博士課程終了(農学博士)
1989年 4月  東京工業大学工学部生物工学科 助手
1997年10月  東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻 助教授
2004年10月  明治大学農学部農芸化学科 助教授
2007年10月〜 明治大学農学部農芸化学科 教授

主な著書
「キャンベル生物学 原書第9版」共訳、丸善
「エッセンシャルキャンベル生物学」共訳、丸善
「図解 微生物学入門」共著、オーム社
「マリンメタゲノムの有効利用」共著、シーエムシー出版
「ベーシックマスター微生物学」共著、オーム社
「生物工学実験書(改訂版)」共著、培風館
「発酵ハンドブック」共著、共立出版
「ビギナーのための微生物実験ラボガイド」共著、講談社サイエンティフィク

目次

第1章 微生物研究の歴史と立役者たち
1 自作の顕微鏡で微生物を発見したアマチュア観察家 ─アントニ・ファン・レーベンフック─
2 自然発生説を否定したフランスの化学者 ─ルイ・パスツール─
3 細菌学を創始したドイツの医師─ロベルト・コッホ─
4 危険な病原菌に挑んだ日本の医学者 ─北里柴三郎と志賀潔─
5 野心家の日本人医学者、その見果てぬ夢 ─野口英世─
6 カビが生えた培地から抗生物質を発見した医師 ─アレクサンダー・フレミング
7 日本中から発酵微生物を集めた東大教授 ─坂口謹一郎

第2章 目に見えない微生物の上手な取り扱い方
8 地球上のどこにでもいる微生物 ─微生物とは─
9 一般名称とラテン語の学名 ─微生物の分類と命名法─
10 倍々ゲームで増える微生物 ─微生物の増殖─
11 自然界の中の微生物 ─身近な微生物─
12 微生物の飼育法 ─微生物の培養─
13 雑菌を混入させずに目的の微生物を取り扱う作法 ─無菌操作─
14 微生物を「見る」ための基本の道具 ─光学顕微鏡─
15 電子線による超高倍率の目 ─電子顕微鏡─
16 地球上のあらゆる環境に適応する驚異の微生物 ─微生物の生育環境─

第3章 意外な一面をもつ微生物の素顔
17 乳酸菌 ─乳酸をつくる多様な微生物─
18 大腸菌 ─腸内細菌の代表選手─
19 黄色ブドウ球菌と緑膿菌 ─弱り目につけ込んで牙をむく日和見感染菌─
20 枯草菌 ─胞子を造る細菌─
21 酵母 ─単細胞で生涯を過ごす菌類─
22 カビ ─菌糸を伸ばして生育する菌類─
23 キノコ ─胞子を散布する巨大な傘─
24 ウイルス ─生物ではない病原体─

第4章 微生物を利用し、発酵食品をおいしくする
25 漬け物 ─野菜をおいしく長持ちさせる人々の知恵と乳酸菌─
26 ヨーグルトと乳酸菌飲料 ─腸の働きを良くする善玉菌─
27 納豆 ─大豆の栄養価を増す微生物─
28 パン ─麦をおいしく食べる知恵─
29 しょう油と味噌 ─大豆を原料とする発酵調味料─
30 ワイン ─もっとも単純で奥の深い酒─
31 ビール ─メソポタミア時代から醸造されたビール─
32 清酒 ─日本の伝統が育んだ世界最強の醸造酒─

Column
麹菌の酵素を「産業」にした男
DNA鑑定に使われる好熱菌の酵素
日本の国菌
うまみ味調味料

参考文献

はじめに

 宇宙船地球号には、さまざまな生物が乗り合わせています。生い茂る樹木、風になびく草原、空を飛ぶ鳥に、人間をはじめとした種々の動物が歩き回っています。少し目をこらせば、バラエティーに富んだ昆虫が動き回り、海の中には大小さまざまな魚が泳ぎ回り、土の中でも多くの生物が活動しているのを見ることができます。
 顕微鏡の力を借りて、もっと目をこらしてみると、地球上のありとあらゆるところに微細な生物が生息していることに気がつくでしょう。腐った食物、よどんだ沼、肥えた土、動物の腸内などには微生物がウヨウヨしています。そればかりでなく、深海の底、沸騰した温泉、食塩が析出した塩湖、大気圏上層、深深度の岩石中など、生物が生息できるとは思えないような場所からも微生物が続々と見つかっています。
 自然界の中では、光合成や化学合成により生産者の立場にある微生物、ほかの微生物を補食する消費者の微生物、生物の遺体などを分解して栄養素の循環に寄与する分解者の微生物など、目に見えない微生物はそれぞれの役割を果たしながら生態系を形成しています。
 人類は、微生物の存在に気がつく前から、微生物とさまざまな関わりをもってきました。悲惨な感染症に苦しむこともあれば、自然発酵のビールやワインを楽しむこともありました。人類は、微生物の姿を見ることなく微生物の力を借りて、試行錯誤を繰り返しながら大変な手間と時間をかけて、ヨーグルト・漬け物・納豆・パンなどの発酵食品、しょう油・味噌などの発酵調味料、ワイン・ビール・清酒などの酒類を生み出してきました。
 一方で、科学の進歩に伴って感染症を引き起こす病原菌の正体を突き止め、感染症を抑える方法を模索し、抗生物質という武器を得て、今日も次々と現れる新手の感染症との戦いを繰り広げています。
 日常生活の中でも、乳酸菌、大腸菌、酵母、カビ、ウイルスなど、微生物の名前を耳にすることが多くなりました。それでは、このような身近な微生物はどのような素顔をもっているのでしょうか。
 本書の第1章では、顕微鏡の発明とともに微生物の存在に着目し、微生物の働きを明らかにし、感染症との戦いに一身を捧げてきた偉大な先駆者たちの足跡を追い、少しずつ正体を現してきた微生物の姿を描いていきます。
 第2章では、微生物を取り扱う現在の技術を解説します。微生物の取り扱い方には雑菌の混入を防ぐためのさまざまな工夫が凝らされていて、一般に無菌操作と呼ばれる特殊な作法が必要です。また、微生物の観察に必須アイテムである顕微鏡も大幅な進歩を遂げていて、さまざまな微生物の姿を映し出してくれます。
 第3章では、日常生活でよく耳にする微生物の素顔を紹介していきます。善玉菌の乳酸菌、環境汚染の指標となる大腸菌、人々に寄り添いながら時に牙をむく日和見感染菌などの意外な一面を明らかにしていきます。酵母・カビ・キノコなどの真菌類も微生物の立派な仲間です。実は、ウイルスは生物ではないのですが、その正体についても説明します。
 第4章では、微生物の力を借りて造られる発酵食品・調味料・酒類について、一般的な製法と活躍する微生物、およびたしなみ方について解説します。発酵食品のおいしさの秘密、経験と勘だけで手間のかかる発酵食品の製造法を編み出した人類の英知について迫っていきます。
 本書を通じて、目には見えない微生物の世界に少しでも親しみを感じていただければ、筆者にとって望外の幸せです。

2013年7月
中島春紫

現在在庫がありません