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火薬学の基礎

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-07104-1
コード C3043
発行月 2013年07月
ジャンル 化学

内容

火薬の本質を理解するために火薬のエネルギー評価、着火から燃焼、爆轟、それに伴う衝撃波の伝播や爆轟波の構造に関わる熱移動、化学反応の機構を中心に解説する。火薬の物理・化学的な特性を理解し、火薬の設計と最適化応用が行える知識取得を目的とする。

久保田浪之介  著者プロフィール

(くぼた なみのすけ)
1972年プリンストン大学大学院航空宇宙学修士課程修了(学術修士 MA)、1973年プリンストン大学大学院博士課程修了(航空宇宙学 工学博士 Ph.D)、1995年防衛庁技術研究本部第3研究所(現・航空装備研究所)所長、現在は(独)産業技術総合研究所研究顧問を務める。

主な受賞:日本燃焼学会功労賞(2003年)、火薬学会学術賞(2005年)、叙勲:瑞寶中綬章(2012年)
主な著書:「ロケット燃焼工学」(日刊工業新聞社、1995年)、「研究者のための国際学会プレゼンテーション」(共立出版、1999年:新訂版、2012年)、Kubota N.,「Propellants and Explosives」(Wiley―VCH、2002年:Second Edition、2007年)、「超音速の流れ学」(山海堂、2003年)、「エンジニアのための微分方程式入門」(日刊工業新聞社、2006年)、「絵とき『伝熱学』基礎のきそ」(日刊工業新聞社、2009年)「トコトンやさしい燃焼学の本」(日刊工業新聞社、2012年)ほか多数

目次

まえがき 

第1章  火薬の原理
1.1 火薬の発明と発展 
 1.1.1 火薬こと始め 
 1.1.2 黒色火薬は自然界の物質で作られた 
1.2 火薬類の分類と応用 
 1.2.1 火薬類と定義され、火薬と爆薬に分類されている 
 1.2.2 燃焼火炎の生成 
 1.2.3 可燃ガスの燃焼限界 
 1.2.4 可燃ガスのデフラグレーションとデトネーション 
 1.2.5 火薬のデフラグレーションと爆薬のデトネーション 
1.3 火薬の威力 
 1.3.1 火薬の発生する燃焼圧力と推力 
 1.3.2 爆薬の発生する爆轟圧力と破壊力 

第2章  燃焼反応
2.1 化学反応と熱の生成 
 2.1.1 火薬の燃焼過程 
 2.1.2 気体の化学反応 
 2.1.3 高温気体の解離反応 
 2.1.4 燃焼による反応物質と生成物質 
2.2 燃焼熱と断熱火炎温度 
 2.2.1 物質の生成熱と反応熱 
 2.2.2 燃焼ガスの温度 

第3章  燃焼波と爆轟波
3.1 燃焼波の伝播 
 3.1.1 予混ガスの燃焼波構造 
 3.1.2 燃焼波内の化学反応と熱移動 
 3.1.3 可燃ガスの火炎速度と燃焼波 
3.2 衝撃波の伝播
 3.2.1 衝撃波の発生 
 3.2.2 気体流れの保存則と衝撃波 
3.3 爆轟波の伝播 
 3.3.1 可燃ガスの爆轟波 
 3.3.2 予混ガスの爆轟速度 
 3.3.3 水素−酸素の爆轟波 

第4章  高エネルギー物質
4.1 高エネルギー物質の化学組成 
 4.1.1 火薬の化学組成の決定 
 4.1.2 燃料成分と酸化剤成分の生成 
 4.1.3 火薬の酸素バランス 
 4.1.4 火薬と爆薬の燃焼 
 4.1.5 火薬の比推力と爆薬の爆轟圧力 
4.2 火薬と爆薬を構成する高エネルギー物質 
 4.2.1 高エネルギー物質の分類 
 4.2.2 高エネルギー物質を構成する化学結合 
4.3 高エネルギー有機物質 
 4.3.1 硝酸エステル系 
 4.3.2 芳香族系 
 4.3.3 ニトラミン系 
 4.3.4 アジ化系 
 4.3.5 高エネルギー密度物質 
4.4 高エネルギー酸化剤と燃料 
 4.4.1 混合火薬と混合爆薬の高エネルギー物質 
 4.4.2 高エネルギー物質を構成する酸化剤 
 4.4.3 高エネルギー物質を構成する燃料 

第5章  火薬と爆薬の構成
5.1 火薬の構成 
 5.1.1 発射薬の条件 
 5.1.2 発射薬の化学組成 
 5.1.3 シングルベース発射薬 
 5.1.4 ダブルベース発射薬 
 5.1.5 トリプルベース発射薬 
5.2 推進薬の構成 
 5.2.1 推進薬の条件 
 5.2.2 推進薬の化学組成 
 5.2.3 ダブルベース推進薬 
 5.2.4 コンポジット推進薬 
 5.2.5 複合系ダブルベース推進薬 
5.3 爆薬の用途による構成 
 5.3.1 爆薬の条件 
 5.3.2 爆薬の用途による分類 
5.4 爆薬の構成 
 5.4.1 爆薬の化学組成による分類 
 5.4.2 ニトラミン系爆薬 
 5.4.3 ニトロ系爆薬 
 5.4.4 硝酸エステル系爆薬 
 5.4.5 硝安油剤爆薬 
 5.4.6 含水爆薬 
5.5 火薬と爆薬に添加される化学物質 
 5.5.1 物性改良剤 
 5.5.2 添加剤 

第6章  火薬と爆薬の燃焼理論
6.1 火薬の燃焼理論 
 6.1.1 火薬の着火 
 6.1.2 火薬の定常燃焼と熱平衡 
 6.1.3 火薬の燃焼速度モデル 
 6.1.4 火薬の燃焼反応 
 6.1.5 ダブルベース火薬の燃焼反応 
6.2 爆薬の燃焼理論 
 6.2.1 爆薬のデトネーション 
 6.2.2 爆轟波の伝播 
 6.2.3 爆速の理論値と実験値の比較 
6.3 衝撃波と爆轟波の現象 
 6.3.1 衝撃波と希薄波 
 6.3.2 壁に衝突する衝撃波と反射波 
 6.3.3 衝撃波の大気中への伝播 
 6.3.4 爆轟の中断現象 
 6.3.5 爆轟の平面波 
 6.3.6 ノイマン効果 
 6.3.7 ホプキンソン効果 

第7章  発射薬と推進薬の性能
7.1 発射薬の燃焼性能 
 7.1.1 発射薬のエネルギー 
 7.1.2 砲内弾道と発射薬の燃焼 
 7.1.3 発射薬の形状 
7.2 ロケットの燃焼性能 
 7.2.1 推力の発生 
 7.2.2 推進薬の安定燃焼 
 7.2.3 ロケットの発煙と酸性雨 
7.3 推進薬の燃焼速度 
 7.3.1 推進薬の燃焼火炎 
 7.3.2 推進薬の燃焼速度 
 7.3.3 ダブルベース推進薬のプラトー燃焼 
 7.3.4 コンポジット推進薬の燃焼触媒 
 7.3.5 熱伝導による燃焼率の増加 

第8章  パイロラント
8.1 パイロラントの酸化剤と燃料 
 8.1.1 パイロラントの構成 
 8.1.2 結晶性酸化剤 
 8.1.3 金属酸化剤 
 8.1.4 金属燃料 
 8.1.5 非金属燃料 
 8.1.6 ポリマー 
 8.1.7 アジ化金属 
8.2 パイロラントの燃焼 
 8.2.1 金属微粒子の燃焼構造 
 8.2.2 パイロラントの着火現象 
 8.2.3 点火薬に用いられるパイロラント 

索引 

英用語対比表

はじめに

紀元前に発明されたと言われている火薬は、19世紀の産業革命が起こるまでは本格的な登場はなかったが、近代化学を背景とした合成技術による火薬の製造が可能となってからは地下資源の採掘、火薬兵器などに応用されて急激に発展してきた。火薬は化学物質の一種ではあるが、他の化学物質では得られない高温・高圧のガスを発生できる特性を有しており、ロケットの推進力やトンネル採掘の破壊力として用いられてきた。
 火薬は化学物質として高エネルギーを有するために、わずかな量の火薬でも3,000Kに達する気体を生成させ、高圧力を発生させて人工ダイヤモンド、特殊な金属合金などを生み出し、金属加工技術にも応用されて産業界に大きな貢献をしている。微量な火薬は、エアバッグを急作動させて人命救助にも役立っている。火薬には燃焼する現象の中に爆轟とよばれる現象が含まれている。爆轟はデトネーションともよばれ、衝撃波を伴った超音速の現象であり、この特性が火薬の発達を支えてきた。
 火薬の燃える現象は複雑であり、多種多様な事象が現れて性能を変化させ、安全性を脅かすこともある。火薬には、目的に応じていろいろな化学物質が添加されており、花火のような発光、発色、発煙などの技術が発達している。火薬の燃焼速度は、燃焼圧力と環境温度の変化によって変化する圧力感度・温度感度を有しており、圧力が高くなると燃焼速度が増加してロケットの飛翔特性を変化させる難点がある。また、夏場の高温下では燃焼速度が増加し、冬場には減少する難点も有している。これらの感度を低下させる有効な燃焼触媒を模索する研究が進行中にある。これらは火薬の発達によって応用領域が拡大されていることを表しており、このように火薬の研究者および技術者にとっては、それらに対応できるだけの火薬学の基礎に関する理解が不可欠となっている。
 近年のコンピュータの大容量・高速演算の技術の発達は、火薬に新たな機会を与えている。また、光学的な計測技術は火薬の燃焼現象を検証するために大きな貢献を果たすようになってきており、他の学問では関連性の少ない分野に研究開発の必要性が求められるようになってきた。火薬にはさらなる高エネルギー化が求められ、新たな化学結合を有した物質の合成が可能になり、高エネルギー密度物質として分子構造にひずみエネルギーを蓄積させた火薬の主剤が登場するようになってきた。
 火薬学は化学、燃焼学、熱力学、流体力学などに支えられている総合的な学問であり、燃焼現象によって化学エネルギーを運動エネルギーおよび機械的なエネルギーに変換する過程を主題にする学問である。現在まで出版されてきた火薬に関する書籍は化学的な観点から記載されており、火薬のエネルギー放出の過程を記載している書籍はほとんどない。本書においては、火薬の本質を理解するために、火薬のエネルギー評価、着火から燃焼、爆轟、それに伴う衝撃波の伝播と爆轟波の構造に関わる熱移動と化学反応の機構を主題とし、運動量保存則とエネルギー保存則を適用した動力学による基本的な手法を解説している。本書では論文および書籍類を数多く参考にしているが、とくにKubota, N.: Propellants and Explosives, 2nd Edition, Wiley―VCH, 2007より多くの資料を採用している。本書での記載が不十分なところは参考にされたい。
 
2013年6月
久保田浪之介

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