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転がす技術
なぜ、あの会社は畑違いの環境ビジネスで成功できたのか

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07101-0
コード C3034
発行月 2013年07月
ジャンル ビジネス

内容

日本の中堅、中小の製造業は厳しい環境におかれている。景気に左右されづらい新規事業を立ち上げることは、多くの企業の課題だ。
そこで本書は、すでに自社の中にある技術、既存客、廃棄物までも含めた“資産”を自覚し、それらを転がし、少しだけ拡張して、低リスクで環境ビジネスを新たな収益の柱に育てるノウハウを、事例を中心に解説する。

「転がす」とは、自社がもっている得意技術や顧客、販売ルート、工場の廃棄物・副産物などを生かして収益や価値に変えることであり、それには5つのストレッチ法がある。それぞれ地方で取材された豊富な事例はユニークで虚をつかれるものが多く、まさに「目からウロコ」。
さらに、現業の分野や技術別の27業種へ向けた事例と参入の具体的なヒント、環境ビジネスならではの収益を上げる11のビジネスモデル、販路開拓のコツなどマーケティング戦略についても解説している。

弓削 徹  著者プロフィール

(ゆげ・とおる)
東京・浅草生まれ。製造業のマーケティングコンサルタント。法政大学法学部卒業後、プランナー、クリエイターとしてSONY、サントリー、オリンパス、雪印などの製品開発、広告・販促キャンペーンを成功させ、「製造業なら弓削」との評価を得る。〔ノートパソコン〕の名付け親。
現在は「ものづくりマーケティング」をテーマに、中小製造業のための新規事業や製品開発、ウェブや販促ツールの制作など、実践的で低リスク・低コストにこだわった支援での業績アップを使命として活動する。
全国の商工会・商工会議所で年間50回をこなす講演は、わかりやすいと評判。ビジネス誌寄稿、ラジオ番組などメディア出演多数。
ウェブサイト : http://www.yugetoru.com/

目次

CHAPTER1
これに気づけば成功できる!低リスク発想術
① 参入に成功するためのネタは99%社内にある
[社内にいる青い鳥に気づいていますか]
[自動化できない製造技術はあるか]
[本業が回っているうちに新規事業へ]
② ヨコ展開するストレッチ思考の視点をもつ
[こんな参入はストレッチじゃない!?]
③ 拡大する成長市場だからオンリーワンの“次の柱”がみつかる
[どんどん市場が伸びている環境ビジネス]
[環境経営、BCPに取り組む企業はすべて顧客候補]
[行政のアメとムチ、マスコミの関心も高い]
④ 全社員が賛成するより「誰が買うの?」という製品を選ぶ
[全員が反対するビジネスを選べ]
[わかりやすい製品市場から、ズラす]
[環境ビジネスでも中小モノづくり企業はニッチで輝く]
[新興国で売り勝てるのは生産設備、分析・測定機]
⑤ 地方企業や小企業ほどチャンスがある
[環境ビジネスには地域性がある]
[状況・法律が激変する環境市場に対応できるのは小さなオーナー企業]
⑥ 意識するのは<顧客・行政・社会>の3つのニーズ
[つかむべき3つのニーズと視点]

CHAPTER2
畑違いの会社も参入できる5つのストレッチ思考と事例
[他社が成功する分野と自社が参入するべき分野はちがう]
[ユニーク技術×環境分野=オンリーワン]
① <ストレッチ1>自社の得意技術を環境製品に転用する
[技術をストレッチした事例]
ゼンマイは“貯められる”エネルギー:■東洋ゼンマイ
母なる地球を癒す、ブロックメーカー:■コヨウ株式会社
温度を計れば知りたいことが「見える化」する:■日油技研工業
日陰をつくって地球を冷やしたい:■日本ワイドクロス
ビニールホースを使って省エネできる?:■株式会社トヨックス
② <ストレッチ2>既存製品を環境対応に切り替える
[製品を環境対応にした事例]
会社存亡の危機が10倍の性能向上をもたらす:■根本特殊化学
美容師とお客様の両方にメリットのある環境製品とは:■タカラビューティーメイト
尊敬をあつめる「風で織るタオル」:■池内タオル
③ <ストレッチ3>工場から出る廃棄物・副産物を生かす
[廃棄物を製品化した事例]
消火器が肥料に姿を変える:■株式会社モリタ
工場から出るおがくずが教材になる:■北星鉛筆
山を助け、燃料代を浮かせ、子供たちを笑顔にする:■木島組/焼山温泉清風館
④ <ストレッチ4>既存の顧客・販路を見込んで開発する
[顧客を見込んで開発した事例]
消費者目線のモノづくりで売場をつかむ:■アイリスオーヤマ
自然エネルギーはアウトドアでこそ役立つ:■アウトドアグッズメーカー
⑤ <ストレッチ5>自社のために開発した省エネ製品・技術を外販する
自社の経験から幅広いソリューションを提供:■協和機電工業
メッキのオンリーワン技術:■三光精工
金属に関わる総合コンサルティング:■福岡金属
●大企業の参入例

CHAPTER3
業種別!あなたの会社が選ぶべき環境ビジネス
[環境ビジネスとの絡み方を考える]
① 電機・精密機器・電子部品メーカーの参入分野
■太陽電池を評価する機器に特化
■ナノ化することで環境性能を見出す
■工場の操業を保証する無停電電源装置
■魚がおいしく見えるLED
■LEDではない次世代蛍光管
② 金属加工・プラント・鉄鋼メーカーの参入分野
■鉛筆用から蓄電池の市場へ
■燃料電池の低コスト化に貢献
■外壁材になる太陽電池
■金属熱処理の技術で炭を焼く
③ 化学・樹脂・ガラス・塗料・化粧品・雑貨メーカーの参入分野
■化粧用スポンジで排水を浄化
■強度のあるパネルから防音パネルへ
■宇宙用から建築用へ展開
■太陽光を照明として建物内に取り込む
■環境志向であることがブランド価値をつくる
■自然に還るエコな歯ブラシ
④ 食品メーカーの参入分野
■甘いシロップで電気料金が下がる
■食べられるパッケージでゴミ削減
■おからが加工自在なエコマテリアルに
■ホタテ貝の除菌・消臭効果を活用
⑤ 繊維・製紙メーカーの参入分野
■和紙を折り込んだ繊維は軽く、涼しい
■障子の特性でオフィスを明るく
■竹繊維なのに着心地がよい服
■和紙がリチウムイオン電池の部品になる
■災害時に、紙の強さ、軽さで人を助ける
⑥ 住宅・建材・家具メーカーの参入分野
■解体ゴミがスポーツ選手を見守る白線になる
■壁材を砕いたらエコな土になった
■地下5メートルの温度で空調する家
■道路にアートを描き、温度上昇を抑制
■廃土を舗道や園芸に使い、地球に還す
⑦ 一次産業の参入分野

CHAPTER4
実際の製品開発─この手順なら失敗しない
① 好調企業は“ニーズ開発”なんてやっていない
[消費者は何も教えてくれない?]
② マーケティング調査の代わりにこの情報収集・調査を!
[基本情報は無料で集められる]
[インターネット、メディア、人で調べる]
[現実的な調査手法、「観察調査」]
[ユーザー体験をして改善点を導き出す]
③ 本業の顧客を巻き込み、見込み客に変える「R&S開発法」
[R&S“リサーチ&セールス”で行こう]
[見込み顧客との関係性を築く]
④ 助成金やODA、法規制の情報をつかんでいちはやく舵を切る
[規制と助成金が市場をつくる]
[外務省のODA案件にも注目する]
⑤ 工業デザインとネーミングで機能・特長を見える化せよ
[環境製品も工業デザインでインパクトを与える時代]
[ネーミングで特長を見える化する]
⑥ その環境ビジネスには経営理念との適合性があるか
[新規事業はM-O-N-A-Sで妥当性をチェックする]
[企業スローガンをつくる効用]
⑦ 不足技術を企業間で供与して価値を拡大
[中小企業同士の連携でモノづくりの課題を解決する]
[提携先企業・組織の見つけ方]
⑧ 資金調達には政府系ファンドやクラウド・ファンディングも
[資金調達は政府系機関に相談することから]
[新しい資金調達の手段を知る]
⑨ 開発した製品の「ヒット力」を10項目で点数化する
[事業発想のチェックポイント]

CHAPTER5
環境ビジネスはこう稼ぐ! 11の収益モデル
[環境市場で勝てる11の収益モデルを知る]
① 代書屋さんモデル
[助成金ごと売り込む、書類作成も請け負う]
② クレジットモデル
[高額設備をリース・レンタルする]
③ プリンタモデル
[フィルターなど消耗品で息長く収益を上げる]
④ メインテナンスモデル
[設備メインテナンス、修理で稼ぎ、次にもつなげる]
⑤ ノーリスクモデル
[無料お試し、無料診断、成果報酬型で顧客を獲得]
⑥ 商社/OEMモデル
[代理店へ製品を委託、または逆に他社製品を販売]
⑦ ブーメランモデル
[環境製品を看板にして本業も売り込む]
⑧ 通販モデル
[通販サイト、通販カタログ誌を販路とする]
⑨ フランチャイズモデル
[環境サービス・製品のノウハウを売る]
⑩ プラントモデル
[対応設備を社内で稼働させてリサイクルなどを受注]
⑪ コンサルティングモデル
[特定業種の環境課題を解決するサービスを提供]

Data File◎ 環境ビジネスの分野一覧

COLUMN
自然に学ぶモノづくり4つのパターン
環境ビジネスの環境問題

Conference Room
製造業以外~サービス業の参入分野
環境ビジネスの販路開拓

はじめに

 小さいころ、男の子なら誰もが一度はゼンマイのおもちゃで遊んだことがあるでしょう。
 ゼンマイ。
 その懐かしい響きには昭和の香りこそすれ、明日のニッポンを変えていく環境技術のイメージはありません。
 富山県黒部市でさまざまなゼンマイを製造している東洋ゼンマイの長谷川光一社長も、10年ほど前までは同じ意見でした。
 「玩具や家電だけではない、何か新しい用途はないか、いや、あればいいけれど……」。
 そして地元・黒部川の自然を再発見する黒部川フィールド・ミュージアムへの参加を打診されたとき、伝統のゼンマイを使って何か新しいことができるのではないか、と考えはじめます。
 そもそもゼンマイの特長とはどのようなものか。10秒ていどで巻き上げてしまえば、一定のスピードとチカラでゆるゆると解放され、その間に仕事をしてくれる。おもちゃのクルマをぐいっとうしろに引っ張って離すと、意外に部屋のはじっこまで進んでいく、あれです。
 人が巻き上げるのですから、動力はいわば人力。
 しかし、安定してゼンマイが解放されているあいだ、クルマを走らせたり、掃除機の電源コードを収納したり、電車の連結ドアを閉じたりと、けっこうちゃんと仕事をしてくれる。
 「うまくやれば発電という仕事もできるのではないか」
 誰もが過去の仕掛けと考えていたゼンマイが、人力発電という独立電源へと進化をはじめた第一歩でした。

 きっかけとなった黒部川フィールド・ミュージアムは、川沿いに広がる自然の素晴らしさを伝えることがテーマです。それならば、自然の姿を音声で語りかけるマシンを黒部の川べりに置き、それをゼンマイのチカラで動かせないか。風景の説明を聞きたいと思った人が自分でハンドルを回し、その労力に応えるかのように音声ガイドが流れる。
 箱の中には、巻かれたゼンマイが戻るときに発電する機構が入っています。小さな電力でも作動する最新のICレコーダーを組み込めば、ハンドルは10数回も回せば十分。子供たちなら、きっとアトラクションのように楽しみながらハンドルを回してくれるに違いない。センサーが通行者を感知して、勝手に音声が流れ出すシステムとはことなる、なんだか体温を感じさせるやりとり。
 この「ゼンマイ式音声ガイド」は、1日に750回も稼働するほどの大好評を博すことになります。
 その後も京都をはじめとする観光地のガイドや、覗いた双眼鏡の対象物についての音声ガイドが流れるマシン、さらに街頭のコミュニティラジオ受信機などに設置が進みます。
 長谷川社長は、「ゼンマイは古典的な技術だけれど、うまく使えばエネルギーの節約ができる、たとえばいま課題となっている電力消費のピークシフトにも貢献できるのでは」と語ります。
 いまは、さらに小川の流れでゼンマイを巻き上げて発電するゼンマイ水力発電へと研究が進んでいますが、それは本文で。

 古い技術を現代的な価値としてリファインし、そして環境製品へと展開した、この事例。 
 モノづくり企業には、磨きをかけつづけてきた得意技術が必ずあり、それを少し先へ伸ばす=ストレッチすることで、新たな価値観が見えてくるのです。
 現業の市場は縮小あるいは飽和しており、新規事業開発は急務であるとわかっている。新たなフィールドの受け皿は成長産業でなければならず、その点では環境ビジネスは申し分ない。ところが、いざ検討をはじめると「どの分野に手を伸ばしていいかわからないし、技術開発をゼロからはじめていては時間がかかりそうだ、どうもむずかしい」と二の足を踏むケースも多いのです。
 低リスクで参入したい、現実的な分野を選びたい、しかし価格競争などには巻き込まれたくない。そうしたご要望をもつ会社さんにおすすめする実践的な参入手法がストレッチ(=ヨコ展開)です。
 つまり、社内にある既存技術などの資産を生かし、伸ばし、転がして、環境ビジネス分野でオンリーワンの立場を築くのです。
 社内の資産とは、技術だけではなく人材や生産設備、無形のノウハウ、お客様企業、提携・協力企業から、果ては産業廃棄物までさまざま。
 そして、大企業と競合しては勝ち味がうすいため、めざすのはオンリーワンです。誰もが思いつくような大きな市場ではなく、ニーズを絞り込んだ、いわゆるニッチな市場こそをねらうのです。

 もうひとつ、興味深い事例をご紹介します。
 真夏、工場の屋根に直射日光が当たると、当然建物内の温度は上昇し、エアコンはフル稼働となります。
 そうした屋根に張りめぐらせることで遮熱・遮光し、エアコンの電気代が4割以上も削減できるネットがあるというのです。太陽光と熱はさえぎるけれど、風は吹きぬける特殊なネット。屋根とネットの間に空気の層ができ、それも断熱の役目を果たします。
 この遮熱ネットは工場や店舗、倉庫などの折板屋根を中心に施工がすすみ、2010年は2万㎡、2011年は4万㎡超、そして2012年は8万㎡に迫るヒット商品となっています。
 ここまでのヒットとなっている理由のひとつに費用対効果があります。高反射塗料を塗るよりも遮熱効果が高く、鋼板のような建材でダブルスキン化をするよりもコストが安い。なにしろ、ネットですから。
 ところで、このネットを開発した大阪の日本ワイドクロスは、なんとかつては蚊帳をつくっていた会社。やがて農業用資材が本業となり、防虫ネットを製造・販売するようになります。その技術を環境製品に応用した遮熱・遮光ネットが、この「ルーフシェード」です。
 太陽光と熱をさえぎり、風は吹きぬけるネットの秘密は本文でお読みいただきますが、ここにも本業で長く培ってきた技術が環境ビジネス分野にいかんなく発揮されていることに気づかされます。
 どの会社にも、独自の技術などの資産があります。それを生かして取り組む環境ビジネス。できれば本業がなんとか回っているうちに、得意技術をうまく「転がして」有望な新規事業に参入してほしいと思います。

 また、環境技術や製品を開発はしたものの、どのように売り込んでいけばよいのかがわからないという顧客開拓の悩みもよく聞きます。筆者は、異業種から環境ビジネスにとりくんだ数社の支援先とともに試行錯誤をしながら製品開発や販路開拓の課題を解決してきました。
 支援先の1社である菊川工業は老舗の建材メーカーでしたが、特徴的なソーラーLED街路灯などの分野に参入し、年々売上が2倍増を果たし、2012年3月にはソーラーLED街路灯を都内商店街に57基一括納入し、同環境分野で東京都最大の助成金獲得にいたりました。
 中小モノづくり企業が環境ビジネスに参入するときの問題点は2つです。どのような製品を開発するのか、そしてどうやって販路を開拓するのか。
 これらの点も含め、環境ビジネスの選び方から参入手順、失敗しない売り方の仕組みづくりの方法など、コンサルティングの過程で体得した成功のためのノウハウにくわえ、全国の中小企業さんを取材した事例を本書にわかりやすくまとめたつもりです。
 環境ビジネスに特有なマーケティング手法を知れば、営業部隊のない小さなモノづくり企業でも、おカネをかけず、新規営業もせずに売上がつくれます。
 私は技術の専門家ではなく、マーケティングが職務です。そこで、技術で会社を成長させてきたあなたと知恵を合わせ、環境ビジネスへ新規参入する道すじをご一緒に描いていけたら。そうした思いでこの本を書かせていただきました。
 日本中の未来あるモノづくり企業の皆様に、新規事業へ参入する際の参考としてお読みいただければ、これにまさる幸せはありません。本書の出版につきましては日刊工業新聞社編集部の藤井浩さんに企画を見出していただき、執筆においてもたいへんお世話になりました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。
 また、出版の世界について教えていただいた山田稔さんにもお礼を申し上げます。
 そして、私の知るもっともすぐれた地球人である父・弓削清治、家族のみんなにも感謝しています。


2013年7月
製造業のマーケティングコンサルタント 
弓削 徹(ゆげ・とおる)

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