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おもしろサイエンス
カビの科学

定価(税込)  1,728円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07081-5
コード C3034
発行月 2013年06月
ジャンル ビジネス 化学

内容

カビは私達の周りの至る所に存在し、あまり好かれる存在ではないが、実はカビは、与えられた環境で懸命に生きていだけで、人類の発展に大きく貢献する力も持っている。本書はそんな好悪併せ持つ、カビの実像・活用法、期待されている未来までを科学の視点でわかりやすく解説する。

李 憲俊  著者プロフィール

(り のりとし)
1954年 韓国 大邱生まれ 
1977年    国立慶北大学 農学部 獣医学科 卒
1991年    国立忠南大学農学部 獣医学科 助教授
1991年 日本 (財)食品薬品安全センター
1996年    衛生微生物研究センター開設

かび検査マニュアルカラー図譜(共著)
NHKの「ためしてガッテン」、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京など、カビや室内汚染微生物対策関連番組に多数出演。

目次

はじめに

第1章 地球に生きる生物としてのカビ
~カビとはどういう生き物なのか~
1 地球の主役は微生物? もっと微生物のことを知ろう!
2 カビとはどういう生き物なのか? 菌類の特徴と仲間たち
3 生物の進化とカビの誕生 カビと人間の関係は?
4 カビと人間の歴史(1) カビを表す言葉の誕生
5 カビと人間の歴史(2) 科学の進歩とカビの分類のあゆみ
6 生活環境の微生物(1) 細菌とカビはどこが違うのか?
7 生活環境の微生物(2) 母が娘を産む?酵母の増え方
8 生活環境の微生物(3) カビの増え方と形の関係
9  カビの性別(1) 同じカビが交配?雌雄同体性のカビ
10 カビの性別(2) 別のカビと交配?雌雄異体性のカビ

第2章 カビの生理と生態
~生きるためのシステムと発育条件~
11 カビの基本構造?菌糸 生き抜くための多彩な能力
12 カビといえば湿気? カビと水分の本当の話
13 こんなところにもカビが! 様々なものに生えるカビ
14 カビはアルミ好き? カビが生えるのにはわけがある
15 カビの驚くべき成長力 一粒の種が一週間で森に!?
16 乾燥に強いカビたち 好稠性カビのすごい能力
17 カビの呼吸 真空パックはどこまで有効?
18 カビは何度まで生えられるか? 温度を感じて生き抜く戦略

第3章 カビによる健康被害
~カビは怖い生物なのか~
19 目に見えない空中のカビ 健康への影響をどう評価するか
20 不快だけではすまない カビ臭と健康被害の関係
21 室内カビの意外な汚染源 浴室の天井に注目!!
22 正しく知ろう! 肺炎コウジカビの健康リスク
23 見た目の判断は危険! カビ毒は削って焼いても除けない
24 気候変動はカビに何をもたらすのか?
25 有害なばかりではない カビが病気治療の役に立った話

第4章 生活の中のカビ対策
~こうしてカビは防ぐ~
26 なぜ乾燥した室内にカビが? ピンポイントでみるカビと湿度
27 換気扇では不十分? 効果的な浴室のカビ対策とは
28 工業製品にカビ発生! カビの発生理由は様々
29 室内のカビ対策のポイント カビは空気の流れが苦手
30 カビが生えたらどうする? カビ対策の3つの基本
31 カビは本当にしつこい? カビの性質からみた対策の有効性
Point
室内のカビ対策~家の中にカビを生やさないために~
室内にカビが発生したら~被害を出さない、広めないために~

第5章 カビと生きる
~カビと人間の深い関係~
32 日本の伝統家屋にみる カビと生きるための工夫
33 現代住宅とカビ 快適性と裏腹の問題点
34 日本の食生活とカビ(1) コウジカビの恵み、みそ、しょうゆ
35 日本の食生活とカビ(2) 日本料理の心、カツオブシ
36 日本の食生活とカビ(3) 日本の至福、日本酒、焼酎
37 西洋の食生活とカビ 芳醇な味わい、チーズ、ワイン

第6章 住環境にみる主要カビ
~身近なカビたちの素顔と生活~
38 私たちは様々なカビと生きている
39 有益だけど有害? 聖なる名前をもつコウジカビ
40 本当は黒くないクロカビ あの手この手で生き残る
41 ブラシのようなボサボサ頭 アオカビは多芸多才
42 脅威の速さで菌糸を伸ばす 見た目はふわふわ、クモノスカビ
43 まるで虫! ススカビは個性的な見た目の汚染カビ
44 キュートな色に惑わされるな! アカカビの多様な悪役ぶり
45 クロカビだけじゃない 浴室汚染のダークホース、フォーマ
46 長い長いおつきあい 虫ではなかった水虫の話

第7章 カビの調べ方
~カビの検査の手法あれこれ~
47 カビの同定法(1) カビを見分けるポイント
48 カビの同定法(2) 分生子の作り方に注目!
49 カビの培養法 カビの育て方の基本
50 カビ数測定法 カビは育てて数える
51 空中浮遊カビ測定法 空気中のカビのつかまえ方
Column
菌という言葉のイメージ
なぜ「カビ取り剤」はあっても「細菌取り剤」はないのか?
一度カビの胞子を飛ばしてしまうと後が大変!
カビ取り剤は塩素で漂白もする?
カビは、増やさないことが一番大事
トイレのタンクにカビが生える!?
カビは繁殖のため、胞子をはるかかなたまで飛ばす

参考文献

はじめに

 カビが、みそや日本酒などの発酵食品作りに利用されてきたことや、ペニシリン(抗生物質)、クエン酸といった有益な物質を作り出し、人の生活に貢献してきたことは多くの人が知っていると思います。また、カビが非常に強力な毒を作ったり、肺炎やアレルギーの原因となって人の健康に害を及ぼすことについても、昨今マスメディアで取り上げられる機会が増え、広く知られるようになりました。このように、カビの有益性や有害性については、普段の生活の中でも情報を得る機会は少なくなく、すでに一般的な知識として普及しているのではないかと感じます。ところが、カビそのものについて、正しい情報を持っている人は意外に少ないようです。
 ある時、小学校の先生からメールで相談を受けました。「科学がこれだけ発達しているのに、なぜ家のカビを全部殺す技術がないのか?」という生徒からの質問に、上手く答えることができなかったのです。あなただったら、この質問に何と答えますか? 私の答えはこうです。
 まず、家の中のカビすべてを殺し、排除する必要はありません。すべてのカビが人間にとって有害で不要なものではないからです。また、カビなどの微生物が存在しない環境、すなわち、微生物が生きていけないような環境は、人間にとっても良い環境ではありません。なぜなら人間もカビも地球上に生きる同じ生物なのですから。つまり、家の中のカビすべてを殺す技術など必要ないわけです。それより大事なことは、カビがどういう生物で、どのように生活しているか、人間を含めたほかの生物とどう関係しているかを正しく知ることです。そうすれば、何らかの答えが出てくるでしょう。カビそのものを知るということは、とても大切なことなのです。
 そこで、私は、多くの人にカビを正しく知ってもらうためにこの本を書きました。この本の中では、
「カビとはどういう生物なのか」
「カビが生きるためのシステムとは」
「カビは健康にどのような影響を与えるか」
「カビが発生する理由と対処法」
「カビと人との関係とは」
「住環境にはどのようなカビがいるのか」
「カビはどのように検査するか」
の7つの視点で話しを進めています。
 私は、顕微鏡でカビを覗く生活を30年続けていて、カビの観察やカビ汚染被害への対応については経験豊富です。私の様々な経験を活かして、少しでも多くの人に生物としてのカビを知ってもらい、生活の中でその知識を生かしてもらえれば幸いです。この本が、日々の生活の役に立つことを願っています。
 最後に、企画から出版に至るまで多大なご尽力と原稿の大幅な修正をして頂いたNPO法人カビ相談センター会誌「かびと生活」の小菅旬子編集委員長、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の藤井浩氏に厚くお礼申し上げます。

2013年6月
李 憲俊 

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