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社長が「在庫削減!」と言い出した会社は成長しない

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ 四六判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-07079-2
コード C3034
発行月 2013年05月
ジャンル 経営

内容

日本では「在庫は悪」との固定観念があり、狂信的な在庫削減に取り組む企業が後を絶たない。本書は在庫が持つ経営効果を再定義し、単にキャッシュフロー向上だけでなく、度を過ぎた納期への追従やトータルコストダウンに向けた前向きな在庫活用術を説く。

本間峰一  著者プロフィール

(ほんま みねかず)
1958年生まれ、東京都出身。電気通信大学電気通信学部応用電子工学科卒業。
NEC製造業システム事業部、みずほ総合研究所コンサルティング部を経て、2012年に経営コンサルタントとして独立(株式会社ほんまコンサルティング事業部)

中堅・中小の製造業者、卸売業者、サービス業者、情報システム業者などの収益性改善、生産性改善、在庫マネジメント強化、生産管理システム見直し、SCM改革、情報システム活用などのコンサルティングを実施中。

東京都中小企業診断士協会会員
東京都中小企業診断士協会中央支部認定「生産革新フォーラム研究会」代表
川崎市中小企業サポートセンター派遣専門員
東京商工会議所経営力向上フォローアップ事業 支援担当中小企業診断士
ICT経営パートナーズ協会理事
日本生産管理学会会員、経営情報学会会員、システム監査人協会会員

主な資格:中小企業診断士、情報処理技術者(システムアナリスト、システム監査、プロジェクトマネージャ、アプリケーションエンジニア)
主な著書:『コストダウンが会社をダメにする』『“JIT生産”を卒業するための本』(以上日刊工業新聞社)『サプライチェーン・マネジメントがわかる本』『図解でわかる生産の実務 生産計画』『失敗しないERP導入ハンドブック』(以上日本能率協会マネジメントセンター)など


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ご相談は下記にご連絡ください。
㈱ほんま コンサルティング事業部
ホームページ http://www.homma-consulting.jp/
E-Mail:m.homma@mbf.nifty.com

目次

目   次


はじめに

第1章  在庫削減から前向き在庫活用アプローチへ
1-1 なぜ在庫削減が注目されてきたか  
1-2 在庫削減アプローチから卒業する  
1-3 在庫を前向きに活用する  
1-4 前向き在庫活用を実践している企業(㈱日伝)  
  (1)在庫問題に関わる同社の経営方針/(2)同社の物流センターで取り組まれていること/(3)物流センターが在庫品だらけにならないための工夫/(4)物流センターを重視した同社の人事政策/(5)同社の情報システムはオリジナル
C0LUMN レオン自動機によるATO(受注組立)生産  

第2章  在庫は何のためにあるか
2-1 在庫はビジネス潤滑剤としての役割を持っている  
2-2 納期調整在庫にはどんなものがあるか  
  (1)調達担当者の予測に負う部分が大きい見込み在庫/(2)需要スピードのバラツキを吸収するための安全在庫/(3)工程間で処理を待たされる滞留在庫/(4)まとめ処理を起因に発生するロット在庫/(5)調達間隔の差で発生する手配サイクル在庫/(6)補充手配在庫とVMI
2-3  リードタイムが増えると仕掛品在庫も増える  
  (1)納入リードタイムは納入業者側からの視点/(2)生産リードタイムはモノづくりに必要な期間/(3)部品の発注から納入までを表す資材調達リードタイム/(4)納入リードタイムの大部分を占めることもある設計リードタイム/(5)輸送期間を示す物流リードタイム
2-4  どうやって在庫は削減させるか  
  (1)リードタイム短縮の進め方/(2)小ロット化の推進/(3)在庫拠点の集約
2-5 需要予測計算が当たらない?  
  (1)移動平均法の活用/(2)指数平滑法の活用/(3)季節変数の設定/(4)イベント感応度による補正/(5)その他の需要予測計算の方法

第3章  在庫はなぜ「悪」とされたか
3-1 トヨタ生産方式はなぜ在庫を問題視したか  
3-2 在庫が増えると経費が増える  
3-3 在庫が増えると資金が不足する  
3-4 在庫が変動すると利益が変動する(粉飾決算への誘惑)  

第4章  在庫はなぜ必要か
4-1 物流コストを削減しようとすると在庫が必要になる  
4-2 ブルウィップ効果が在庫を必要とする  
4-3 納入先からの取引条件要求が在庫を必要とする  
4-4 日本独特の取引慣行が在庫を必要とする  
4-5 グローバル化の進展が在庫を必要とする  
4-6 生産管理システムの導入が在庫を必要とする  

第5章  売れない時代の在庫マネジメントのあり方
5-1 前向き在庫活用で企業業績を上げる  
5-2 在庫を活用して差別化を実現する  
5-3 在庫を活用した製造戦略を実行する  
  (1)計画的に製品在庫を設けてそこから出荷するMTS/(2)在庫レスで設計段階から受注生産するETO/(3)設計済製品を受注してから生産開始するMTO/(4)部品を先行手配して受注後に組み立てるATO(BTO)/(5)ATOへの期待と課題
5-4 在庫を使って利益を増やす  
  (1)企業利益とスループットの関係/(2)制約工程をフル稼働状態にする
5-5 受注生産と在庫生産を組み合わせる  
5-6 売れている品目の在庫切れを起こさない  

第6章  だからといって過剰在庫は必要ない
6-1 最初に「多過ぎる在庫」を明らかにする  
6-2 なぜ「過剰在庫」が発生したか  
6-3 過剰在庫の発生要因と対策  
  (1)死蔵品状態の在庫/(2)手配時の見込み違いによる在庫/(3)マスター数字の設定が見直されていない/(4)コンピューターのロジックがおかしい/(5)誰かが売れると過信して手配した/(6)複数の要因が混在して悪さを誘発している

第7章  調達計画が前向き在庫マネジメントの基本だ
7-1 調達計画は営業と共同で作成する  
  (1)販売実績は企業活動で最も重要な情報/(2)需要予測はどう活用するか/(3)営業担当者の能力に左右される販売予測/(4)営業と製造の連携でつくる販売計画
7-2 調達計画作成で大事なこと  
  (1)関係者間での情報共有/(2)現場の立場になって考える/(3)協力会社の経営のことも考える/(4)部分最適思考に気をつける/(5)手段と目的を混同しない/(6)生産計画に物流活動も組み入れる
7-3 MRPⅡ需給調整計画によって計画精度を上げる  
  (1)生産負荷を調整するラフカット能力計画/(2)S&OPは製販連携による需給調整計画/(3)ATPで現物在庫を置かずに納期調整
7-4 取引先とおかしな約束をしていませんか  
7-5 流動数曲線管理を利用しよう  
7-6 社内の意識改革ができるかどうかがカギを握る  
  (1)マスターデータ、在庫データが整備されないとコンピューターは機能しない/(2)在庫精度の向上を図る/(3)有効在庫も管理する/(4)不良在庫もしっかりと管理する/(5)構成部品表を管理する
7-7 現場のサバ読みには注意しよう  

参考文献

はじめに

平成25年度の日本経済界はアベノミクスの話題一色とも言える状況にあります。アベノミクスの第一の矢として打ち出された日本銀行(日銀)による大規模な金融緩和方針と、それに触発された円安が日本の経済再生を導くことができるか、多くのビジネスマンが期待と不安を感じながらこの金融緩和の行く末を見守っています。
 ただし、日銀が単に金融緩和しただけでは民間金融機関にお金が貯まるだけで、経済成長にはつながりません。経済成長実現のためには、個々の民間企業が金融機関から融資を受けたお金で付加価値額を増やす努力をすることが求められます。そのための方策の一つが「設備投資」ですが、設備投資とともに「在庫を活用した企業成長」の推進も忘れてはなりません。
 本書はこの「在庫を活用した企業成長」に関して、経営管理の側面から解説することを目的にした本です。
 日本のビジネス社会には、「在庫は悪」という考え方が浸透しています。経営者から、「企業生き残りのために在庫削減を推進すべし」という指示を受けている方も多いと思います。しかし、経営者からの過度な在庫削減指示は、筆者が前著「コストダウンが会社をダメにする」で紹介した「コストダウン・シンドローム」にもつながる後ろ向き経営活動と言えます。
 在庫削減やコストダウンの推進は、短期的に企業利益を生み出す要因になりますが、中長期的な企業成長に対して適した施策とは言えません。当該企業は「縮小均衡の罠」に陥ることで、企業としての魅力を失っていく可能性があります。最後は価格競争でしか国内外の競争企業と太刀打ちできない企業になる危険性もあります。
 企業が価格競争だけで付加価値額(TOCで言えばスループット)を増やすことは簡単ではありません。また、日本企業の付加価値額が増えなければ、日本全体の付加価値額の総和であるGDP(国内総生産)も増えていきません。アベノミクスの目標であるインフレ率(物価上昇率)2%の実現にもほど遠い状況となります。アベノミクスが効果を上げるためには、第4の矢、すなわち日本のビジネス社会に漂う「縮小均衡マインド」からの脱皮が必要です。
 本書は、在庫活用を通じて「縮小均衡の罠」から脱出する策について紹介した本です。前著「コストダウンが会社をダメにする」で紹介した付加価値(スループット)重視アプローチを、より実践的な観点に落とし込んだものでもあります。
 本書の第1章は、イントロダクション部分として、在庫活用の基本的な考え方と実際に在庫活用を企業成長戦略に取り組んでいる会社の事例を紹介します。
 第2〜4章では在庫管理に関する基本概念を解説します。ビジネス社会では在庫管理は当たり前の用語として使われていますが、物流部門など一部の方を除くと、在庫管理に関して学んだことのある方は少ないと思われます。在庫管理の基本を押さえずに在庫活用戦略を展開しようとしても、活動に矛盾が生じて行き詰まる可能性があります。
 第5〜7章が本書の中心であり、類書に対する差別化ポイントとしている部分です。今までの在庫管理の本ではあまり紹介されてこなかった“前向き在庫活用”で、付加価値を生み出す在庫管理(マネジメント)アプローチを紹介します。
 ところで日本語の「在庫管理」という言葉には、「在庫コントロール(統制)」と「在庫マネジメント(経営)」の2つの意味が含まれていることに注意する必要があります。今までの在庫削減や適正在庫というような在庫管理アプローチは、どちらかというと在庫コントロールアプローチが中心でした。それに対して本書の第5〜7章で述べている在庫管理アプローチは、在庫マネジメントアプローチとも言える内容です。両者の考え方の違いを理解していただくことも、本書の目的の一つです。
 本書の出版に当たっては、さまざまな方にお世話になりました。本書における事例公開を快諾していただいた株式会社日伝殿、レオン自動機株式会社殿には紙上を借りてお礼申し上げます。生産革新フォーラムメンバーをはじめとする中小企業診断士やコンサルタントの皆様、過去のコンサルティング活動を通じて知り合った多くの企業の皆様からは、実際に企業経営の世界で起こっている生々しい在庫問題を教えてもらいました。皆様からのご教示がなければ本書を執筆できませんでした。また、本書出版の機会を与えていただきました日刊工業新聞社殿、そして小生独立後の家庭を支えてくれた妻や息子がいなければ、本書の出版は実現できませんでした。皆様のご多幸をお祈り申し上げますとともに、心より感謝申し上げます。
 最後になりましたが、本書が日本企業および日本経済の成長に少しでも役立てばと祈念しております。

平成25年4月
株式会社ほんま 
経営コンサルタント 

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