買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい地震と建物の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07047-1
コード C3034
発行月 2013年03月
ジャンル ビジネス

内容

今後30年の間に、マグニチュード8クラスの巨大地震が東海沖、東南海沖、南海沖で立て続けに発生すると言われている。そのなかで、建築物の耐震安全性への関心がさらに高まっている。本書は地震発生の仕組み、建物の耐震性、免震や制震などの耐震構造の仕組み、最新の地震対策などを初心者にもわかりやすく解説する。

省エネ・エコテクフェア展開中!←こちらをクリック!

斉藤大樹  著者プロフィール

(さいとう たいき)
現職:豊橋技術科学大学 建築・都市システム学系 教授 工学博士
経歴:1990年 東北大学大学院工学研究科博士課程 修了
1990年 東北大学工学部建築学科 助手
1992年 米国イリノイ大学土木学科 客員研究員
1996年 建設省建築研究所第3研究部 主任研究員
2000年 JICA長期専門家(ルーマニア、地震工学)
2002年 (独)建築研究所構造研究グループ 上席研究員
2004年 (独)建築研究所国際地震工学センター 上席研究員
2011年 豊橋技術科学大学建築・都市システム学系 教授
     (独)建築研究所 特別客員研究員(兼任)
主な著書:「耐震・免震・制震のはなし 第2版」日刊工業新聞社、2008年

目次

第1章 地震の発生と地震波の伝わり方
1 ヴェーゲナーの大陸移動説 「地球収縮説との論争」

2 マントル対流と大陸の移動 「大陸を動かす原動力」
3 プレートの衝突と地震の発生 「地震は岩盤の破壊現象」
4 折り曲げられた日本列島 「全国に分布する活断層」
5 周期的に繰り返される地震 「活断層の活動度」
6 地震のマグニチュードと震度 「地震の規模と揺れの強さ」
7 日本独自の震度速報 「世界に誇る防災システム」
8 全国に張り巡らされた強震観測網 「建物の強震観測のすすめ」
9 弾性体を伝わる2つの波 「P波とS波の違い」
10 表面波と長周期地震動 「ラブ波とレイリー波」
11 揺れる前に知る緊急地震速報 「速報をいかに有効に利用するか」
12 地震による津波の破壊力 「津波のスピードと水の圧力」

第2章 地震による揺れと被害
13 加速度と慣性力 「頑丈な建物が地震で倒れる理由」
14 建物の周期と共振 「高い建物と低い建物はどちらが安全?」
15 定規を使った実験① 「免震構造の基本原理」
16 定規を使った実験② 「TMD制振の基本原理」
17 地震による建物の揺れの計算① 「揺れを数式化して解析」
18 地震による建物の揺れの計算② 「エネルギーのつり合い」
19 地震動の応答スペクトル 「剛な建物と柔な建物」
20 地震時の超高層の揺れ 「どの階がよく揺れる?」
21 地盤による揺れの違い 「建物を選ぶ前に土地を選ぶ」
22 地盤の液状化と対策 「固い地盤が液体になる不思議な現象」

第3章 地震に対して建物はどのくらい安全か
23 日本の地震学を築いた外国人技術者たち 「地震学の父ジョン・ミルン」
24 関東大震災の衝撃と教訓 「煉瓦造から鉄筋コンクリート造へ」
25 耐震設計法の歩み 「今も変わらない安全目標」
26 耐震設計法の流れ 「どのように設計されているのか」
27 阪神淡路大震災の教訓 「建物の良し悪しが生死を分ける」
28 急がれる耐震改修 「危ない建物はまだたくさんある」
29 建物の耐震診断 「建物の耐震性はエネルギー吸収能力」
30 建物の用途や重要度による耐震性の違い 「重要度係数が高い建物」
31 発電用原子炉施設の耐震設計 「原子炉施設はどこまで安全か」
32 地震による死亡リスク 「バックグラウンドリスク」
33 建物の安全水準の決め方 「総費用最小化原理とパレート最適」
34 地震による人的被害をいかに減らすか 「リスクを減らす3つの取り組み」
35 地震災害と保険制度 「地震保険の成り立ち」
36 地震保険の仕組み 「加入する前にしっかり理解しよう」
37 地震保険料から知る建物のリスク 「あなたの建物の地震保険料はいくら?」
38 住宅の耐震性能を知る 「住宅性能表示制度」
39 構造計算書偽装問題と法改正 「建築士の信頼を取り戻すために」

第4章 建物を地震に強くする方法
40 建物の材料と強度 「材料の特徴を理解して利用する」
41 鉄筋コンクリートの原理 「コンクリートの弱点を鉄筋で補強」
42 耐震構造の仕組み 「強い構造体にする」
43 壊れて耐える耐震構造 「粘りを持つ構造」
44 免震構造の仕組み 「長周期化と減衰で揺れを減らす」
45 アイソレータの役割と構造 「免震構造を支える重要な装置」
46 ダンパーで揺れを抑える 「振動エネルギーを吸収する装置」
47 免震構造で気を付けること 「免震構造の計画上の留意点」
48 制振構造の仕組み 「風と地震の揺れを抑える」
49 制振構造に用いられる装置 「いろいろなダンパー」
50 風揺れと制振構造 「高層になると無視できない風の振動」
51 風揺れと免震構造 「免震構造では風も大敵」
52 伝統建築に見る耐震技術 「先人の知恵に学ぶ」

第5章 地震対策のいま
53 自助・共助・公助で防災 「防災対策の3つの取り組み」
54 建築物の被災度判定 「被害の把握と二次被害の防止」
55 応急危険度判定の方法 「危険な建物を見分ける」
56 津波のハード対策 「高地移転か巨大堤防か」
57 津波のソフト対策 「津波が来たら構わず逃げる」
58 地震からいかに身を守るか? 「地震のときに家具を押さえてはいけない」
59 家具の転倒防止対策 「家具の固定力を計算する」
60 地震に対する事業継続計画 「震災を生き延びる企業とは」
61 どのような耐震改修工法を選ぶか 「経済性それとも耐震性?」
62 非構造部材・建築設備の地震対策 「天井とエスカレーターは要注意」
63 模型で地震防災を学ぼう 「手を触れて実感することが大切」
64 模型実験のための相似則 「実物大建物と模型建物の関係」
65 世界に誇る地震・津波実験施設 「実物大構造物の破壊挙動を捉える」
66 世界の地震災害 「三重苦が人的被害を拡大」
67 地震防災分野の国際協力 「日本がリードする減災へ」

【コラム】
●杞憂
●マンションの揺れを再現する
●防災とコンピュータ・シミュレーション
●リスクと法規制
●ルーマニアの思い出

参考文献
索引

はじめに

 2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生したとき、私は東京で会議中でした。会議のテーマは、住宅の耐震改修をどのように促進するかというもので、全国の自治体の防災担当者も大勢参加していました。会議室のある鉄骨造の高層ビルがゆっくりと揺れ始め、その揺れが収まるどころかさらに大きくなったとき、この地震はかなり大きいと確信しました。震源が東北らしいという情報が入ったときには、心配されていた宮城県沖地震がついに来たか、という思いが頭をよぎりました。会議は中止となり、東北から来られた先生は部屋を飛び出しました。しかし、これほどの被害になるとは誰が予想できたでしょう。
 私は仙台で学生時代を過ごし、就職、結婚をして家族をもちました。休みにはよく三陸の港町を訪れ、採れ立ての海の幸を楽しみました。仙台空港の近くにある貞山堀で開催されるボート大会には、友人とチームを組んで毎年参加しました。大津波がその懐かしい場所を次々と飲みこんでいく様子を、会議室のテレビで唖然として見ていました。信じられないという思いと自然の力への畏怖で体が震えました。
 1995年の阪神淡路大震災では、直下型地震による激震の恐ろしさを知りました。防災ではなく減災という言葉が使われ始めたのもこの頃です。災害を防ぐのではなく、災害の発生を覚悟して、それを少しでも減らそうというのが減災です。今回の震災でも、防潮堤で津波を防ぐという防災の発想では不十分で、いかに早く住民を避難させるかという減災の発想が重要だということを痛感しました。国に防災を任せる「公助」だけではなく、自分の身は自分で守るという「自助」と地域で助け合う「共助」によって災害を減らす取り組みが必要なのです。
 しかし、高い防災意識を継続して持ち続けることは容易ではありません。記憶は風化し、次の震災のときにはすっかり用心を忘れてしまっているかもしれません。物理学者で随筆家の寺田寅彦は、天災への用心を忘れてしまう人の愚かさを随筆の中で何度も指摘しています。「天災は忘れた頃にやってくる」という有名な言葉もその中で生まれました。また、人は自分に都合の悪いリスクを過小評価する傾向があります。どうせ危険なことなど起きないと決め込んで、目先の利益を追い求め、安全対策にお金を掛けるのを後回しにするのです。
 国は南海トラフを震源とする巨大地震の対策を検討しています。この地域では1970年代から東海地震の発生が懸念されており、震源の真上にある静岡県は日本で最も耐震対策が進んでいます。2000年代に入り、東海地震は単独ではなく東南海地震や南海地震と連動して起きる可能性が高いことが指摘されました。さらに東日本大震災の発生を受けて、震源域は九州沖まで拡大され、いまではマグニチュード9クラスの南海トラフ巨大地震が想定されています。
 南海トラフを震源とする巨大地震は、過去に繰り返し発生しており、地震が断層の歪の蓄積と解放という周期性を持つ以上、いずれ起きることは間違いありません。日本の産業の中枢を担う東海・南海地域が被災することは、国の浮沈に関わる重要な問題であり、対策が必要なのも事実です。一方で、東日本大震災を予測できなかったのに、次の巨大地震が簡単に予測できるのかと思われるかもしれません。すぐにでも起きるといわれていた東海地震は、かれこれ30年以上起きていません。その間に別の場所で阪神淡路大震災や東日本大震災が起きました。対策が必要なのは南海トラフの地震だけではありません。あなたの足元でいつ大地震が起きても不思議ではないのです。そのためにも、日頃から地震への備えをすることが大切です。
 地震は誰にでも降りかかる問題ですが、一般の人が地震や建物の耐震性について理解することは容易ではありません。寺田寅彦は、随筆を通して科学のおもしろさから防災の心構えまで多くのことを私たちに教えてくれました。この本の執筆の話をいただいたときに、そんな本を作りたいと思いました。心掛けたのは、私の大学の恩師が好きだった、井上ひさしの次の言葉です。
 「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」
 自分の未熟さゆえに、専門的な内容を短い文章と図でまとめることは簡単ではありませんでしたが、本書を読まれた方が、地震への備えや建物の耐震性に少しでも関心を持っていただけたら幸いです。
 
2013年3月 
斉藤大樹

買い物かごへ