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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいレンズの本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-07046-4
コード C3034
発行月 2013年03月
ジャンル ビジネス

内容

カメラをはじめさまざまな光学機器、各種記録メディアなどで活躍するレンズ。本書では光を操るレンズがどのように作られその機能を発揮しているか、レンズの機能を理解するのに必須である光の基本的な性質とあわせて、やさしくかつ体系的に解説した。

齋藤晴司  著者プロフィール

(さいとう はるじ)
1972年に日本光学工業株式会社(現 株式会社ニコン)に入社。
顕微鏡の開発関係に従事し、その後測定機、測量機関連の開発、生産技術、品質保証業務に就く。2005年から全社の技術者教育関連業務全般に従事。光学や品質工学及び、レンズ実験などの講座を担当する。
●主な著書
「絵とき「光学」基礎のきそ」(日刊工業新聞社)、2011年

目次

はじめに

第1章 レンズって何だろう
1 レンズの始まり「レンズの始まりは紀元前に遡り、様々な努力で現在の光学製品に」
2 身のまわりのレンズ「光の応用技術の発展とともに広がるレンズの活躍の場」
3 レンズの形「一般的にレンズ表面の形状は球面」
4 光を集める「光の向きを変えるミラー、光を集めるレンズ」
5 像を作る「ピンホールでも像を作ることが可能」
6 望遠鏡の始まり「遠くのものを近づけて見る望遠鏡の発展は、欠点を補う歴史でもある」
7 顕微鏡の始まり「望遠鏡と同じ時期に作られ始めた顕微鏡」
8 カメラの始まり「小さい穴(ピンホール)で像を作る」

第2章 光について
9 明るい光と暗い光の違い「明かりの明暗」
10 光の色「光の色と波長」
11 光の進み方「光の直進性」
12 反射したり透過する光「レンズやプリズムなどは光が透過する性質を利用」
13 光の通り道は決まっている「異なる媒質の境界面では光が折れ曲がる」
14 ガラスに入ったときの光の曲がり方「スネルの法則」
15 波のように進む光「光の回折現象」
16 光が重なると明るさや色が変わる「光の干渉現象」
17 光の振動方向に偏った光「偏光」
18 光の色により曲がり方が違う「光の分散」
19 光路を直線で理解する「幾何光学」
20 光を波として理解する「波動光学」

第3章 レンズの基本的な性質
21 レンズは何からできているの?「光学ガラスは珪石や硼酸など数百種類にも及ぶ材料を調合する」
22 物質により光の曲がり方が異なる「屈折率と光の曲がり方」
23 レンズの形による分類「球面レンズは光を集める3種類と拡散する3種類の計6種類」
24 レンズが光を曲げるしくみ「1枚のレンズでは2箇所の面で光を曲げる」
25 光の集まる場所「焦点と焦点距離」
26 レンズの厚さと主点の位置「主点と主平面」
27 レンズの種類と像のでき方「レンズの結像作用」
28 像の位置や倍率を簡単に求める公式「レンズの基本式」
29 像のできる場所を計算で求める「ガウスの結像式と倍率の式」
30 像の大きさを求める「凸レンズでも凹レンズでも倍率は同じ方法で求まる」
31 複数のレンズを通る光の経路「複数のレンズで収差を低減させたりレンズ長を変える」

第4章 レンズの収差
32 集めた光は必ずしも一点に集まらない「レンズの収差」
33 光軸上の一点に集まらない収差「球面収差」
34 彗星のように点像が尾を引く収差「コマ収差とアッベの正弦条件」
35 像面でピントの合う位置が異なる収差「非点収差と像面湾曲」
36 物体と像の相似の関係が崩れて像がゆがむ「歪曲収差」
37 色のにじみ「色収差」

第5章 レンズを用いた光学系の性能と性質
38 レンズでどこまで細かいものが見える?「レンズの分解能、開口数」
39 物体を明るく均一に照明する光学系「光なくして物体を見ることはできない」
40 レンズの明るさ「明るさの指標Fナンバー」
41 撮影できる範囲「画角」 98
42 光量を調整する「絞りと瞳」
43 像の良し悪し(再現性)「像のコントラストの評価」

第6章 レンズの設計方法
44 レンズの企画開発「使用目的によって求められる機能は異なる」
45 レンズ設計①基本構成決め「文献や過去のレンズ構成をもとに基本構成とする」
46 レンズ設計②収差補正の実施「収差を減らす検討」
47 レンズ設計③性能評価の実施「性能の事前評価方法」
48 製造評価段階「問題点に対する事前対策の検討」
49 技術の進歩とレンズ設計「記録方式はフィルムから撮像素子を用いたデジタル記録へ」
50 収差の発生原因と補正「レンズの組み合わせなど多くのパラメータを検討」
51 レンズ設計の課題と今後「自動計算アルゴリズムの発見や撮像素子の発展」

第7章 レンズの製造の流れ
52 レンズの原料ができるまで「調合して作るものから自然界にあるものまで」
53 レンズの製造工程「目標のレンズの規定に合わせて作る」
54 レンズの加工工程「レンズを所定の形状に仕上げる」
55 品質の確認工程「個々のレンズの品質がレンズシステムに大きな影響を与える」

第8章 レンズを組み立てる
56 レンズの軸「レンズの中心が一直線上に乗り傾きがないことが必要」
57 レンズシステムを調整する「レンズによる収差を最小限にする」
58 ズームレンズのしくみ「ピントを合わせながら倍率を変えるためにレンズの収差を最小にする」

第9章 レンズを使った製品
59 像を作る(基礎編)ルーペで像を見る「凸レンズ1枚で拡大像を見る」
60 像を作る(応用編①)カメラのレンズ「像の明るさは像面中心部と周辺部で異なる」
61 像を作る(応用編②)顕微鏡「凸レンズ2枚の構成」
62 信号を作る(基礎編)光ファイバー「光を情報伝達手段として利用」
63 信号を作る(応用編)CD/DVD「光の強弱をデジタル信号の1と0に置き換え情報を記録」
64 分析する(基礎編)プリズム・虹「分光により物質の成分を調べる」
65 分析する(応用編)分光器・蛍光顕微鏡「物質の特定や形態を観察」

【コラム】
●光の直進性とレンズ
●人の眼では検出できない光の位相差
●レンズの焦点距離を測る
●光を集めるレンズ
●レンズでできる「虚像」って?
●レンズでできる理想の像とは?
●高度な機能が求められるレンズ
●レンズを通る光線の進行方向を推定する
●双眼鏡のレンズの仕組み

参考文献
索引

はじめに

 人間はもちろん、動物や植物にとっても太陽は必要不可欠のもので、私たちは太陽からほとんど無限に近いエネルギーをもらっています。それは暖めてくれる熱であったりまわりを明るく照らしてくれる光であったりします。これらのおかげで地球上の生命が維持されています。太陽の光を利用する歴史は長く、古くから記録があります。近年特に、このクリーンな太陽エネルギーを利用促進する機運が高まっています。
 “ものを見る”ということは、光が物体を照らし、反射された物体の情報を持つ光が眼に入り、その光が網膜の上に像を作り、脳がこれを認識することによります。普段なかなか意識することはありませんが、光が持つ情報を受け取ってはじめて私たちはものを見ることができるのです。このことは暗いところではものを見ることができないことからも明らかです。
 このようなメカニズムがきちんと知られていない頃から、レンズがものの像を拡大する機能は知られており、紀元後60年頃にこの記録が残されています。
 小さいものを拡大する機能、遠くのものを拡大する機能、光を集める機能。この三つの基本的なレンズの機能についてさまざまな応用がなされてきました。光学機器を使って人間が獲得した知識は数えきれません。
 レンズは光の進む方向を意図した方向に変えるための一つの手段といえます。うまく光の方向を変えることで像ができます。できる像を意図したような像にすることは、多くの人々の試行錯誤の経験と、そこから生まれた知識の積み重ねがあってこその成果といえます。その中には、偶然見つかったものもあったでしょう。
 このような知識が体系づけられて後世に伝わり、さらに新しい技術が加えられ、どんどん進化してきた結果が今日の光学機器が存在しえる理由です。
 さて、本書ではレンズについてその歴史から、レンズの形や組み合わせが生み出す機能、レンズが扱う光の特徴、さらに、レンズが求められる機能を発揮するために実際にどのように作られているかを解説しています。
 レンズにはその性質の理解の積み重ねが体系づけられ理論ができ、これをもとにさらに新しい利用・活用方法が広がるこの繰り返しから成る長い歴史があります。
 現在では、レンズがいろいろな光学製品において使用されています。身のまわりにはカメラのようにレンズと一目でわかるものから一見してレンズが内蔵されているとは気づかないものまで多岐にわたります。どんな光学製品でも詳細に見ていくと過去の技術の蓄積の上に成り立っていることがわかります。
 レンズの製作過程は一般にはあまり知られていませんが、少し独特なところがあります。それは開発過程から製造過程にわたり見受けられます。本書ではこれらの点も含め光学製品全般にわたり見ていきます。
 今後、レンズの用途はさらに広がっていくことでしょう。なぜならレンズで扱う「光」は、この世で最も速いものであり、これ以上のスピードを持ったものは、存在し得ないからです。ですから光を用いる技術開発はますます盛んになっていくことが期待されます。
 本章を書くにあたり、いろいろな著作物を参考にさせていただきましたことに感謝いたします。参考にさせていただきました資料は後ろに掲載いたしました。また、本書を出版するに当たり日刊工業新聞社の出版局の方々および担当された方々に感謝を申し上げます。

平成25年3月
齋藤 晴司

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