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省エネと環境に配慮した
産業廃水処理

定価(税込)  2,808円

監修
著者
編者
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-07017-4
コード C3043
発行月 2013年02月
ジャンル 化学

内容

どんな産業でも、製品を生産するためには大量の水を使う。そのため、世界的に環境基準が厳しくなる中、産業排水を上手に処理・再利用する技術はこれからますます重要度を増してくる。本書は、その基礎から実際の運用までを初心者にもわかりやすく解説していく。

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栗田工業株式会社  著者プロフィール

 1949年創業。水処理薬品、水処理装置(用水処理、排水処理、運転管理)、環境施設を事業の柱とする。環境問題が深刻化する中、「水と環境の先進的マネジメント企業」を企業ビジョンに据え、水や環境に関する薬品や装置、メンテナンスサービスに加え、マネジメントノウハウを提供することで、カスタマーに最適なシステムを提案することを目指し、「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念としている。
ホームページ:www.kurita.co.jp

北川幹夫  著者プロフィール

(きたがわ みきお)
1969年 信州大学繊維学部大学院修士課程(微生物学専攻)修了
同年 栗田工業株式会社総合研究所 入社 排水処理技術の研究開発
(主に活性汚泥法、二段活性汚泥法、嫌気性処理等の基礎研究)
1985年 技術開発センター 排水処理技術の実用化・応用研究開発
(主に嫌気性処理設備、MBR、生物膜処理法等の実用化検討)
2003年 事業開発センター 教育推進グループ
(排水処理関連の技術伝承及び設計・運転管理の指導)
2005年以降 栗田総合サービス株式会社 勤務
(国内外の排水処理設備の設計・運転管理指導)
取得資格 技術士(衛生工学) 環境計量士
著 書  栗田工業監修 わかりやすい水処理設計(技術評論社・工業調査会)共著
     栗田工業監修 よくわかる水処理技術(日本実業出版社)共著

岡崎 稔  著者プロフィール

(おかざき みのる)
1953年 京都大学工学部卒業
栗田工業取締役総合研究所長、常務取締役開発本部長、日本メムテック(株)代表取締役社長、USフィルター・ジャパン(株)代表取締役社長、ビベンディ・ウォーター・システムズ・ジャパン(株)代表取締役社長などを歴任
現 在 一般社団法人日本宅配水協会理事、横浜市立大学非常勤講師、(有)テクノライターズ代表取締役
    科学技術長官賞を受賞、工学博士
著 書 「超純水のはなし」共著(日刊工業新聞社)
    「調べてみよう暮らしの水・おいしい水」共著(岩波書店)
    「科学で見なおす 体にいい水・おいしい水」共著(技報堂出版)
    「よくわかる 水処理膜」共著(日刊工業新聞社)
    「知らなきゃヤバイ!飲料水争奪時代がやってくる」(日刊工業新聞社)
    「水の羅針盤 世界にひろがる日本の水戦略と技術」(水道産業新聞社)

目次

はじめに

第1章 代表的な工場排水処理設備の処理フロー
(1)食品加工工場排水の一般的な処理フロー
(2)鉄鋼関連コークス工場排水処理設備の一般的な処理フロー
(3)製油所排水処理設備の一般的な処理フロー
(4)電子産業関連工場排水処理設備の一般的な処理フロー
(5)自動車製造工場排水処理設備の一般的な処理フロー
(6)ごみ処理設備の洗煙排水の処理フロー
(7)メッキ排水の処理フロー

第2章 生物処理一般
2.1 浄化に関与する微生物
2.2 好気性処理と嫌気性処理
 2.2.1. 好気性菌、嫌気性菌
 2.2.2. 好気性処理における有機物の分解・菌体の合成
 2.2.3. 嫌気性処理(メタン生成)における有機物の分解・メタンガスの発生

第3章 好気性処理
3.1 好気性処理に必要な環境条件
 3.1.1. 負荷量
 3.1.2. 水温の影響
 3.1.3. pHの影響
 3.1.4. 溶存酸素(DO)
 3.1.5. 必要栄養源
 3.1.6. 塩類濃度の影響
 3.1.7. 毒物・阻害物
3.2 好気性処理における必要酸素量、必要空気量
 3.2.1. 必要酸素量の求め方
 3.2.2. 必要空気量の求め方
 3.2.3. 実装置の酸素溶解効率の測定方法
3.3 好気性処理における汚泥の発生量

第4章 標準活性汚泥法
4.1 標準活性汚泥法の概要
4.2 標準活性汚泥法におけるバルキング
 4.2.1. バルキングの分類
 4.2.2. 糸状性バルキング
 4.2.3. 非糸状性バルキング(Zooglea Bulking)

第5章 二段活性汚泥法・多段活性汚泥法
5.1 二段活性汚泥法・多段活性汚泥法の原理
5.2 処理フローと機能
 5.2.1. 処理フロー
 5.2.2. 第1曝気槽(AT―1)の運転条件
 5.2.3. 第2曝気槽(AT―2)の運転条件
 5.2.4. 二段活性汚泥法における必要酸素量
 5.2.5. 前段槽での発熱
5.3 二段活性汚泥法・多段活性汚泥法の注意点

第6章 MBR(Membrane Bio Reactor)(膜分離活性汚泥法)
6.1 使用する膜の種類
6.2 MBRの種類及び特徴
 6.2.1. 槽内設置型、槽外設置型
 6.2.2. MBRの特徴
6.3 膜の目詰まり防止方法及び膜の洗浄
 6.3.1. クロスフローろ過
 6.3.2. 膜の洗浄
6.4 MBR運転時の注意点
 6.4.1. 運転開始時の事前確認項目
 6.4.2. 運転時の諸注意点
 6.4.3. 膜の寿命と交換

第7章 生物膜式処理法
7.1 生物膜式処理法の種類・概要
7.2 流動床方式
 7.2.1. 流動床方式の概要
 7.2.2. 流動床方式と浮遊汚泥を用いた活性汚泥法の相違
 7.2.3. 流動床方式における酸素溶解効率
7.3 流動床方式における運転時の注意点
 7.3.1. 運転開始
 7.3.2. 充填材の堆積防止
 7.3.3. 充填材の浮上防止
 7.3.4. スクリーンの閉塞防止
 7.3.5. 運転環境条件
 7.3.6. 後段の凝集沈殿、凝集加圧浮上設備
 7.3.7. 分析項目、内容

第8章 硝化脱窒処理法(生物脱窒処理法)
8.1 排水中の窒素成分
8.2 硝化脱窒処理法概要
8.3 硝化工程、脱窒工程に必要な環境条件及び注意点
 8.3.1. 硝化工程の環境条件
 8.3.2. 脱窒工程の環境条件
 8.3.3. その他の計画時及び運転時の注意点
8.4 機能別の硝化脱窒処理方式概要
 8.4.1. 標準方式(前段が硝化槽、後段に脱窒槽設置)
 8.4.2. 循環方式(前段が脱窒槽、後段に硝化槽設置)
 8.4.3. ステップ・フィード方式 (複数の脱窒槽と複数の硝化槽を設置)
 8.4.4. 高BOD対応型処理方式(硝化脱窒処理の前処理にBOD除去設備設置)
8.5 運転開始時の注意点

第9章 好気性処理、硝化脱窒処理において問題が生じた時の解決方法
9.1 好気性処理方式に共通するトラブル解決概要
9.2 処理方式別に個々のトラブルに対する対応
9.3 硝化脱窒処理設備のトラブル解決概要
9.4 硝化脱窒処理方式における「硝化脱窒設備にて処理水のNが高い」とのトラブル対応

第10章 嫌気性処理
10.1 嫌気性処理概要
10.2 有機酸生成工程(液化工程・酸性発酵期)及び有機酸生成反応槽
 10.2.1. 有機酸生成工程
 10.2.2. 酸生成菌、酢酸生成菌の特性
 10.2.3. 有機酸生成工程で発生するガス組成
 10.2.4. 有機酸生成反応槽
10.3 メタンガス生成工程(ガス化工程・アルカリ性発酵期)
 10.3.1. メタンガス生成工程及びガス発生
 10.3.2. メタン菌及び生育環境条件

第11章 高負荷型嫌気性処理設備
11.1 UASB方式(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)、EGSB方式(Expanded Granular Sludge Bed)の特徴
11.2 標準処理フロー及び標準仕様
 11.2.1. 標準フロー
 11.2.2. 標準設備仕様
 11.2.3. 標準負荷
 11.2.4. 腐食対策
11.3 グラニュール状汚泥の保持
11.4 運転立上げ手法
 11.4.1. 各機器の単体運転
 11.4.2. 種汚泥の手配及び投入
 11.4.3. 槽内液の循環、加温、pH調整
 11.4.4. 原水の通水
 11.4.5. 日常の運転管理に必要な測定項目
11.5 嫌気性処理に関連するその他の注意点
 11.5.1. 硫化水素の発生
 11.5.2. 発生ガスの脱硫
 11.5.3. 高負荷型嫌気性処理水の後処理
 11.5.4. メタンガスを用いたガス発電

第12章 嫌気性処理において問題が生じた時の解決方法
12.1 嫌気性処理におけるトラブル対策の概要
12.2 嫌気性処理のトラブルに対する対応

第13章 一般の凝集処理関連
13.1 無機凝集剤、有機系高分子凝集剤
13.2 凝集剤添加によるアルカリ消費量

第14章 リン酸含有排水処理
14.1 難溶性金属塩生成法
 14.1.1. アルミニウム塩、鉄塩(第二鉄)による処理
 14.1.2. カルシウム塩による処理
14.2 各リン酸処理方法におけるアルミニウム塩、鉄塩、カルシウム塩の必要量

第15章 フッ素処理
15.1 産業別のフッ素排水の特性
15.2 基本的な処理法
 15.2.1. フッ化カルシウム法
 15.2.2. アルミニウム吸着法
 15.2.3. 吸着樹脂法
15.3 ホウフッ酸の処理

第16章 重金属排水処理
16.1 重金属処理概論
 16.1.1. 処理方法
 16.1.2. 原水pHから予測される処理特性
16.2 重金属排水の処理
 16.2.1. 重金属排水
 16.2.2. 排水の種類と処理特性
 16.2.3. 表面処理工程で使用される工業薬品
 16.2.4. 分析項目と排水処理の関係
16.3 処理技術
 16.3.1. 水酸化物法
 16.3.2. 置換法
 16.3.3. 共沈法
 16.3.4. 硫化物塩法
 16.3.5. キレート樹脂法
 16.3.6. クロム排水の処理

第17章 シアン排水処理
17.1 シアン含有排水の発生源と処理特性
 17.1.1. 非メッキ工場排水
 17.1.2. メッキ工場排水

おわりに

はじめに

 排水処理装置は如何なる状況下においても省エネルギーを追求し環境に優しい処理を継続させることが、排水処理装置の運転管理を行う我々の責務である。想定外の状況が生じたからとは言え環境に欺く処理で良しとは決してできない。今日、排水処理装置の持つ役割は放流規制値を十分に満足できる高度な処理水を排出することは当然であり、さらに循環型社会の一環として都市の景観用水や農村の灌漑用水源、工場用水源として水資源供給源の中核になりつつある。このような排水処理装置の役割を考えると、日常、トラブルに対するリスクを最小限とした、より省エネルギー追求と環境重視の運転を行うにはどのような運転管理を行うべきであるか。仮にトラブルが生じた場合、最短で正常復帰させるためにはどのような対応を行うべきであろうか。その答えの一つとして、排水処理装置の運転管理は経験を基にした知識・知見に頼るのではなく、ある操作条件の変更はどのような結果が得られるであろうか、と何らかの予測を持ったうえで省エネルギーと環境に配慮した運転管理手法が必要であると感じ本書を作成した。
 排水処理装置は排水の汚濁物質が主に有機物であるか、重金属などの無機物であるかにより有機排水処理と無機排水処理に大別される。有機排水処理は汚濁物質である有機物(BOD、COD)を経済的で安全に処理するため、微生物(活性汚泥)を用いる生物処理装置が広く採用されている。生物処理は多種類の混合系である微生物集団の代謝反応を利用しているため、多くの現象が絡み合い、装置の設計や運転管理に経験が重要視されることはやむを得ない。そのため生物処理は経験工学であるとの間違えた認識が持たれ、理論的な運転管理が不足している。集団を形成する微生物は排水を処理する共通目的を持った微生物間の相互機能を働かせており、そこには法則が存在する。処理装置の運転管理において、その基礎となる法則性を無視することはできない。
 無機排水処理の代表である重金属排水やシアン排水処理に係わる基幹技術は15年から20年前に確立されてはいるが、近年の排水性状はより複雑となり従来の処理技術では十分な処理が行えず、新たな技術が開発実用化されつつある。そのため従来の処理技術の範疇では新たな排水性状に追従できなく、過去の経験を前提とした運転管理手法のみでは新たな技術や複雑化した排水性状に対応できるかは疑問である。
 多種類の排水処理に適用されている全ての処理方式につき説明を行うことはできないが、有機排水処理装置では代表的な基本となる標準活性汚泥法から、耐バルキングを主目的とした二段(多段)活性汚泥法、生物処理に必須であった沈殿槽を不要としたMBR(膜分離式活性汚泥法)や充填材に微生物膜を付着固定化させた生物膜式処理法、一般的な活性汚泥処理とは処理目的や構成微生物集団が異なる硝化脱窒処理法、さらに処理形態・機能が全く異なる嫌気性処理法につき記載することとした。また実装置において問題が生じた時の解決方法などについても整理した。
 無機排水処理装置では一般的な懸濁物(SS)処理の基本となる凝集処理から、リン酸含有排水処理、半導体製造排水やステンレス鋼板製造排水に含まれるフッ素排水処理、さらに金属製品の表面処理工程から排出される酸洗、メッキ、リン酸被膜排水などや金属製錬所排水、鉄鋼排水、さらに最近顕在化している鉱石採掘跡の坑内排水などの重金属排水、それにメッキ工場からのシアン排水などにつき記載した。特に重金属排水処理とメッキ排水処理では、従来の性状とは異なる排水組成が多くなり新たな処理技術を駆使する状況が必要とされつつある。
 これからの排水処理装置は省エネルギー化と環境重視が絶対条件である。さらに嫌気性処理装置から発生するメタンガス(バイオガス)を用いたガス発電に代表される創エネルギー源としての役割も求められる。残念ながら本書ではそこまで十分に網羅することはできていないが、今後、本書を叩き台として不足個所を捕捉し、新たな先端技術を加味した排水処理設備を建設・運転する参考にして頂ければ幸いである。
 なお本書を執筆するに当たり加藤勇氏、吉村二三隆氏、長井悟氏より多大な情報と助言を頂き感謝致します。さらに書籍、資料などから数多く引用させて頂きました。それらは各章の巻末にまとめて記載します。また本書を出版するに頂き日刊工業新聞社 出版局書籍編集部 藤井浩様をはじめ出版局書籍編集部の皆様に感謝致します。

2013年2月
北川幹夫

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