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高信頼性接着の実務

定価(税込)  2,592円

著者
サイズ A5判
ページ数 240頁
ISBNコード 978-4-526-07000-6
コード C3043
発行月 2013年01月
ジャンル 化学

内容

接着接合は部品組立における重要な要素技術だが、見よう見まねで安易に使用されているケースも多い。しかし、接着強度が高く、強度のばらつきが少なく、耐久性にも優れた接着(高信頼性接着)を行うためには各工程における作りこみが不可欠である。本書では主に接着を行う技術者を対象に、接着不良を未然に防ぎ、高信頼性接着を行うための基礎と現場で必要とされるポイントを解説する。

原賀康介  著者プロフィール

(はらがこうすけ)
株式会社原賀接着技術コンサルタント
専務取締役 首席コンサルタント

専門  接着技術(特に構造接着と接着信頼性保証技術)

生年月日  昭和25年1月22日
学位    工学博士

昭和48年(1973年)京都大学工学部工業化学科卒業、同年三菱電機(株)入社、生産技術研究所、材料研究所、先端技術総合研究所に勤務。2007年より電気化学工業(株)に兼務出向。入社以来39年間にわたって一貫して接着接合技術の研究・開発に従事。特に、構造接着技術と接着信頼性保証技術の開発に注力。
2012年3月三菱電機(株)および電気化学工業(株)を退任。
2012年3月株式会社原賀接着技術コンサルタントを設立し、各種企業における接着課題の解決へのアドバイスや社員教育などを行っている。

構造接着の適用例
エレベーター意匠構造パネルの接着化、制御盤・配電盤の接着・リベット併用組立、オーロラビジョン・フラットマトリックスCRTのレンズ接着、産業用換気扇のウェルドボンディング組立、大形パラボラアンテナの反射鏡の接着組立、人工衛星の太陽電池パネルの接着組立、モーター磁石の接着接合、車両空調装置枠体のウェルドボンド組立など

受賞
1989年 日本接着学会技術賞
1998年 日本電機工業会技術功労賞
2003年 日本接着学会学会賞
2010年 日本接着学会功績賞

目次

まえがき

第1章 接着接合の特徴・機能と、事例に見る活用と効果
はじめに
1.接着接合と他の接合法の比較
2.接着接合の特徴・機能と効果
3.接着接合の欠点
4.接着接合の適用事例―接着の特徴・機能の生かされ方―
 4.1 二液室温硬化型変性アクリル系接着剤について
 4.2 板金パネル構造物の接着組立て
  4.2.1 エレベーター
  4.2.2 エスカレーター
  4.2.3 駅ホーム可動式安全扉
  4.2.4 バスの車体パネル
  4.2.5 パラボラ反射鏡
4.3 金属筐体の組立て─接着・リベット併用─
  4.3.1 大型映像装置
  4.3.2 制御盤、操作盤
  4.3.3 高速列車用空調装置筐体
4.4 接着と溶接の併用接合─ウェルドボンディング─
  4.4.1 高速列車用空調装置筐体
  4.4.2 産業用換気扇の羽根
4.5 軽量ハニカム構造物の接着組立て
  4.5.1 ハニカムとは
  4.5.2 電車の乗降扉
  4.5.3 駅ホーム可動式安全扉
  4.5.4 エレベーターの床
  4.5.5 大型電波望遠鏡
  4.5.6 人工衛星
4.6 モーターの永久磁石接着
  4.6.1 FA用サーボモーター
  4.6.2 リニアサーボモーター
  4.6.3 エレベーター巻上機
  4.6.4 風力発電機
  4.6.5 電車用、自動車用駆動モーター
4.7 ガラス機器の接着
  4.7.1 大型光学赤外線望遠鏡―すばる―
  4.7.2 大型ディスプレイの発光素子
  4.7.3 大型ブラウン管―爆縮防止―
4.8 パイプの接着
  4.8.1 ルームエアコンの熱交換器
  4.8.2 ゴルフクラブ
おわりに
参考文献

第2章 接着設計技術と接着管理技術
はじめに
1.接着設計技術と接着管理技術
 1.1 接着設計技術とは
 1.2 接着管理技術とは
2.接着設計技術と接着管理技術における要素技術
 2.1 接着設計技術における要素技術
 2.2 接着管理技術における要素技術
3.接着設計技術の勘どころ
 3.1 機能設計
 3.2 材料設計
 3.3 構造設計
 3.4 工程設計
 3.5 設備設計
 3.6 信頼性設計
4.接着管理技術の勘どころ
 4.1 部品管理
 4.2 材料管理
 4.3 工程管理
 4.4 設備管理
 4.5 検査・品質管理
5.接着設計技術と接着管理技術の連携
 5.1 接着の設計と管理は車の両輪
 5.2 2次元から3次元の技術へ
おわりに
参考文献

第3章 実際の高信頼性接着の作り込み
はじめに
1.接着信頼性のセオリー
2.高信頼性接着の基本条件
 2.1 良い破壊状態と良くない破壊状態
  2.1.1 凝集破壊と界面破壊
  2.1.2 凝集破壊率
 2.2 接着強度のばらつきの指標
  2.2.1 変動係数CV
  2.2.2 変動係数CVと凝集破壊率
 2.3 接着強度の実力値
 2.4 多数接着した時の最低強度はどのくらいか
  2.4.1 接着強度の分布
  2.4.2 正規分布の場合の最低強度の上限値
  2.4.3 最低強度の上限値pを簡単に求める
 2.5 最低強度をどのくらいにおさえればよいか
 2.6 高信頼性接着の基本条件
3.「接着は難しい」と感じるわけは?
4.やさしい接着のメカニズム(接着の過程)
5.(STEP1)接着剤の塗布
6.(STEP2)接着剤の分子と被着材料の表面の分子の距離を近づける
7.(STEP3)被着材料表面への接着剤の濡れ広がりと結合力の発生
 7.1 接着の結合力の基本(分子間力)
 7.2 表面張力
  7.2.1 表面張力について
  7.2.2 被着材料の種類と表面張力
  7.2.3 毛細管現象と浸透接着
  7.2.4 固体の表面張力の評価方法
 7.3 最も強い分子間力(水素結合)
 7.4 被着材料の表面を清浄にする(表面処理)
  7.4.1 一般環境中での物質の表面状態
  7.4.2 弱境界層(WBL層)の除去
  7.4.3 安定で接着しにくい表面の活性化
  7.4.4 機械的方法による粗面化の効果と問題点
 7.5 油面接着性接着剤
 7.6 被着材料表面の極性を高くして表面張力を高くする(表面改質)
  7.6.1 表面改質の目的
  7.6.2 表面改質の方法
  7.6.3 表面改質のメカニズム
  7.6.4 表面改質と作業環境(湿度)
  7.6.5 表面改質後の接着可能時間
 7.7 プライマー、カップリング剤塗布による表面処理
8.(STEP4)接着剤の固化
9.(STEP5)接着層での内部応力の発生
 9.1 接着層での内部応力
  9.1.1 硬化収縮応力
  9.1.2 加熱硬化における熱応力
  9.1.3 接着層での内部応力
 9.2 内部応力によって生じる諸問題
 9.3 内部応力の発生と緩和のメカニズム
  9.3.1 硬化収縮応力の発生メカニズム
  9.3.2 熱応力の発生メカニズム
  9.3.3 内部応力の緩和
 9.4 内部応力を小さくするには
 9.5 接着部の形状と内部応力
  9.5.1 接着剤層の厚さ調整
  9.5.2 部品の厚さの影響
  9.5.3 部品の接着部の構造の影響
  9.5.4 勘合接着における内部応力
10.(STEP6)接着機能の維持と劣化(環境・応力劣化)
 10.1 接着部の劣化に影響を及ぼす諸因子
  10.1.1 環境的因子
  10.1.2 応力的因子
  10.1.3 環境・応力の複合因子
 10.2 接着部の弱点
 10.3 第3の内部応力(吸水膨潤応力)
おわりに
参考文献

あとがき
索 引

はじめに

 接着接合は、機器の小型化、軽量化、高性能化、高機能化、コストダウンなどの点で大きな効果が得られるため、近年各種の産業分野で急速に用途が拡大している。一方、用途の増加につれて、市場における接着部の不具合や、接着組立工程における不具合が増加していることも事実である。
 接着接合の作業そのものは特別な熟練技能や高度な設備を必要とするものではないため、簡単な教育や研修だけで接着作業が実施されていることが多い。いわば、「見よう見まね」で接着剤を使っているというのが現実である。
 接着強度が高く、強度のばらつきが少なく、耐久性にも優れた接着を高信頼性接着という。接着接合は、完成後の検査はほとんどできないため、高信頼性接着を行うためには、設計段階での材料、構造、プロセス、設備、品質管理法の作り込みと、作業段階における工程管理、プロセス内検査が重要である。しかし、どのような点に注意して作り込めばよいのかについてはあまり知られていない。例えば、接着に適していない表面状態の部品を接着しても良好な接着性能は得られない。では、どうやって接着前に部品の接着面の状態を見分けるかというようなことであり、これは、魚や野菜の新鮮さやおいしさをどうやって見分けるかということと類似している。
 本書では、40年近くにわたって機器組立に接着剤を活用し、高信頼性接着の技術を構築してきた筆者が、信頼性の高い接着を行うために必要な接着技術の基礎をわかりやすく解説した。主として接着剤のユーザーの立場から「どうやってくっつけるか」、実際に接着を行う人の方策につなげることができるような内容としている。
 接着剤を開発、製造、販売される接着剤メーカーの方にも読んでいただき、より高性能で使いやすい接着剤の開発につながり、接着剤のユーザーとメーカーが相互に連携して接着の高信頼性化を図っていくための一助としていただきたい。

2013年1月
原賀康介

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