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福島原発で何が起こったか
政府事故調技術解説

定価(税込)  1,512円

著者
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サイズ A5判
ページ数 200頁
ISBNコード 978-4-526-06994-9
コード C3034
発行月 2012年12月
ジャンル ビジネス 環境

内容

原発事故後、各機関から調査報告書が公表されたが、膨大なデータ提示の一方で市民にとってはわかりにくいものとなった。そうした中、政府事故調委員長・技術顧問らが改めて事故の正確な理解を促すため、技術の側面から時系列でとらえて解説。調査報告書では語れなかった「見解」や失敗学からの「考察」、高校生にもわかるよう配慮した「解説」を通じて、事故の真相と今後に必要な対策を体系的に理解できる。


淵上正朗  著者プロフィール

(ふちがみ まさお)
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 元技術顧問
㈱小松製作所 顧問
東京大学非常勤講師、工学博士
1949年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。小松製作所取締役専務執行役員を経て現職。専門は建設機械、鋳造機械、産業用ロボット。主な著書に『ロボットを導入した生産システム』、『実際の設計(共著)』、『続々・実際の設計 失敗に学ぶ(共著)』(日刊工業新聞社)ほか

笠原直人  著者プロフィール

(かさはら なおと)
東京大学教授、工学博士
1960年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。日本原子力研究開発機構を経て現職。専門は構造解析、高温強度、高速増殖炉。主な著書に『原子炉構造工学(共著)』(オーム社)、『高温強度の基礎・考え方・応用(共著)』(日本材料学会)、『構造工学ハンドブック(共著)』(丸善)、『実際の設計(共著)』、『続・実際の設計(共著)』(日刊工業新聞社)、『震災後の工学は何を目指すのか(共著)』(内田老鶴圃)ほか

畑村洋太郎  著者プロフィール

(はたむら ようたろう)
東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 元委員長
消費者安全調査委員会 委員長
工学院大学教授、東京大学名誉教授、工学博士
1941年生まれ。東京大学大学院修士課程修了。東京大学教授を経て現職。専門は創造学、失敗学・危険学、医学支援工学。主な著書に『続々・実際の設計 失敗に学ぶ』(編著・日刊工業新聞社)、『失敗学のすすめ』、『危機の経営(共著)』、『危険不可視社会』、『未曾有と想定外』、『勝つための経営(共著)』(講談社)、『直観でわかる数学』、『技術の創造と設計』、(岩波書店)ほか多数

目次


はじめに 

ひと目で理解◦各号機原子炉で起こった事故の内容 
ひと目で理解◦各号機原子炉の時系列チャート 

第1章 概要と予備知識
1 福島第一原子力発電所の概要
2 炉心損傷に関するデータの見方
3 事故の経緯の概要

第2章 事故の経過(政府事故調報告のわかりやすい説明)
1 地震発生から全電源喪失までの全体の状況
1-1 事故の経緯 
1-2 補足 
(1)電源喪失状況の詳細 
(2)地震による損傷の可能性について 
2 全電源喪失後の1号機の状況
2-1 格納容器圧力の異常に気付く11日23時50時分まで 
2-2 それ以降の経緯 
2-3 補足 
(1)ICが機能しなかったと判断される根拠 
(2)ベントの遅れ 
3 交流電源喪失後の3号機の状況
3-1 HPCIを手動停止した14日2時42分まで 
3-2 それ以降の経緯 
4 全電源喪失後の2号機の状況
4-1 RCICが停止した14日13時頃まで 
4-2 それ以降の経緯 
4-3 補足 
(1)代替注水の遅れ(問題点の指摘) 
(2)15日6時10分頃の爆発音について 
5 水素爆発の状況(1,3,4号機)
6 応急注水状況
6-1 消防車による代替注水 
6-2 使用済み燃料プールへの注水 

第3章 事故はなぜ防げなかったのか
1 重大な事故原因
1-1 全電源喪失の可能性の否定 
1-2 津波高さの予測の失敗 
2 炉心損傷回避の可能性
2-1 海外では行われていた安全対策の事例 
2-2 あり得た現実的な対応策(設備面) 
2-3 “適切な判断”による炉心損傷回避の可能性(事後対処面) 

第4章 失敗学からの考察
1 起こったことから考える
(A)誰も巨大津波を考えずに計画した 
(B)基本構造はアメリカで考えられ、日本で育てられた 
(C)事故の際は想定範囲内でしか考えられない 
2 背景要因を含めて考える
(D)“安全神話”をつくらざるを得なかった 
(E)推進者が規制しても安全は確保できない 
(F)社会から隔絶された“原子力村”ができていた 
(G)直近事象に意識が集中し“視野狭窄”が起こった 
(H)議論を避ける文化にはまっていた 
3 持つべきものの見方・考え方
(I)失敗の道・成功の道 
(J)起こる前に見つける 
(K)他分野に学ぶ 
(L)最悪事態を想定する 
(M)最悪事態の発生を防いだもの 

第5章 事故をより深く理解するための基礎知識
1 核分裂と崩壊
2 原子炉の事故とは
3 圧力容器と格納容器
4 冷却設備
(1)冷却設備の役割の違い 
(2)主な非常用冷却設備 
5 逃がし安全弁とベント設備
(1)逃がし安全弁(SR弁) 
(2)ベント設備 
6 操作と計測
(1)弁の操作 
(2)原子炉圧力計および原子炉水位計 
(3)CAMS 
(4)操作に対する制限 

あとがき 
参考文献・資料 
略語表 
索引 



はじめに

筆者の中の二人は、政府の「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(通称、政府事故調)に、畑村洋太郎が委員長として、淵上正朗が技術顧問として参画した。1年余の作業は、膨大かつ広範なものであったが、その報告書(以下、報告書)は、中間報告と最終報告書を合せると1,500ページにも及び、一般の人がそれを通して読むことはかなり困難と思われる。また、その報告書はわかりやすさよりも正確さを強く意識して記述されているため、一般の読者には読みづらい面があることも否めない。特に、技術的な部分は専門的な知識を要する内容も多く、理解がなかなか難しいと思われる。

しかし、今後の日本社会にとどまらず、世界へも大きな影響を及ぼすと思われるこの大事故について、多くの人ができるだけ正確な事実を理解しておくことは大変重要と考えている。そのことは、原子力発電に対する価値観の如何にかかわらず、あらゆる判断のもとになるからである。そこで、筆者らは「報告書」の内容をできるだけ多くの人に理解していただけるよう、わかりやすく、しかも正確な内容の本を出版しようと考えた。それが、この本の出版を考えた第一の目的である。

さらに、本書のもう一つの目的は、委員会報告では盛り込むことができなかった意見や仮説などについて、より踏み込んだ内容を記述することである。委員会報告では、確実な事実に基づく内容を記載するという方針から、「要するに結論は○○だ」とか「仮に××であれば、こういうことが言える」などの内容はかなり抑えられている。その点、本書では、知識や教訓の伝承を重視するという考えから、報告書に織り込めなかった内容を補足的に記述したい。

本書は、「報告書」の中の、事故の技術的側面を中心に取り上げており、事故の社会的側面、たとえば官邸や東京電力本店など発電所外における事故対処の状況や、事故後の避難や除染の状況などについてはほとんど触れていない。それらについては他書に譲ることとしたい。

第1章および、2章の内容については「報告書」に正確に基づいており、言葉遣いや表現に多少の違いがあっても、「報告書」の内容と一致している。しかし。第3,4章では、報告書と矛盾はないものの、そこには書かれていない内容や、やや踏み込んだ筆者らの意見・考察も含まれている。また、第5章では、この事故をさらに深く理解する上で必要な「勘どころ」的な知識が書かれている。第1章と第5章を先に読んでから、第2章以下に進むという読み方も良いと思う。

畑村や私は、昨年までは原子力について素人であり、東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻・笠原直人教授にも加わっていただいた。第1章から第3章までは淵上が、第4章は畑村が、第5章は笠原が主に執筆した。高校生程度の予備知識があれば理解できるよう、わかりやすい本となるように心掛けたつもりである。

2012年12月  
淵上 正朗

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