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世界を征するオリンパスの内視鏡 大腸がんに挑む医術と技術

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ 四六判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-06981-9
コード C3034
発行月 2012年11月
ジャンル ビジネス

内容

世界シェア70%を誇るオリンパスでは、従来より微細な病変を正確にとらえる拡大内視鏡の開発を軸に、大腸がんへの適用に向けた高度応用の道を急ぐ。近年実現した狭帯域光観察手法と高倍率高解像度を有した内視鏡技術を組み合わせたシステムを詳述。医術と技術の進化の様を伝える。

目次

まえがき

【第1章】 内視鏡のルーツを探る 
*医師と研究者、技術者の共同プロジェクト
医聖ヒポクラテスの時代からあった「内視鏡」/胃の中を見る「原始的内視鏡」が登場/新たな光源と軟性胃鏡の開発/胃カメラの誕生と撮影技術の確立/東大病院の医師とオリンパスが、胃カメラを共同開発/「体内をリアルタイムで見られない」という欠点に挑む/「技術開発は1人の力で、できるものではない」/ファイバースコープからビデオスコープへ

*患者の負担を軽くする技術を求めて
低侵襲医療が大きな流れとなった/医師の技量のバラツキを、医療器具がカバーする/増え続ける大腸がんの原因は、低検診率/完璧を期すには、内視鏡検査がベスト/大腸がんで死なないために!

【第2章】 拡大内視鏡完成までのイバラの道  

*大腸がんの早期発見に、拡大内視鏡が威力を発揮する
技術の進歩が、大腸がんから人々を救う/大腸は消化管として最終機能を果たす/大腸の内視鏡検査は、もう当たり前になってきた/内視鏡検査・治療は、「前準備」が大切/大腸ポリープは怖くない/怖いのは、進行の早い陥凹型がん

*拡大内視鏡には「技術の粋」が結集している
拡大内視鏡の開発をためらったオリンパス/医師の熱意に応えて、「再開発」に乗り出す/技術の粋を集めた内視鏡/1人の医師が、すべてを操作できるような設計機能/さらなる小型化に進む拡大内視鏡/先端部・挿入部に潜む最先端技術

*大腸という複雑な臓器に挑んだ、管とレンズの技術
初期の内視鏡では、S状結腸までが限界/終わりのない技術開発に挑む/倍率を上げるとともに、視野角を広げたレンズ/照明レンズの進化も必要になった/より多くの医師の要求に応えるのが責務

*内視鏡検査・治療を支える治療器具の進化もめざましい
治療法と治療器具は表裏一体の関係/内視鏡の登場で処置・治療術も変わってきた

*内視鏡下外科手術の分野でも積極的に活用
大腸がん手術では、腹腔鏡下大腸切除手術が主流に/患者の身体にやさしい手術法/1960年代末から、内視鏡下外科手術の隆盛を想定                               

*内視鏡下手術は、大きな可能性を秘めている
胆のう、胃などの治療に内視鏡下外科手術が普及/内視鏡下外科手術で活躍する医療器具

【第3章】 医師と行動をともにする技術者たち 
*医師たちとの二人三脚が、革新的な技術開発を可能にした
研究所に閉じこもっていては、技術の進歩がない/内視鏡操作に苦労する医師を、何とか助けたい!/医師たちの努力によって、挿入法が大きく前進/一般的な「ループ挿入法」は、患者への負担が大きい/腸管をたたむようにして直線にする「軸保持短縮法」                

*拡大内視鏡が大腸がん治療に、「革命」をもたらす
「ピットパターン診断」を可能にした100倍の拡大レンズ/色素を撒くことで、病変を浮かび上がらせる

*NBI、AFI、IRIは光の最先端技術
狭帯域光を利用した映像システム/拡大内視鏡+NBIシステムは最強のコラボレーション/NBIシステムに、「明るさ」を付加すれば「鬼に金棒」/がん細胞の微弱な自家蛍光を観察するAFI/三つの画像強調観察技術で難しいのは、色調の表現

*拡大内視鏡はどこまで進化していくのか
超拡大内視鏡に立ちはだかる壁

*オリンパスの技術を駆使するカプセル内視鏡
「暗黒の臓器」である小腸に挑む/口から飲み込むサイズにするのが、意外に大変だった/画像が6万点にも及ぶ難点を解決するために!/究極の目的は「自動診断」だ

【第4章】 技術の源流をたどる 
*「肉眼で見えないものを見たい」という開拓者魂
オリンパスの技術の源流は顕微鏡にある/ビジネスマンと技術者の志が結集して生まれた顕微鏡/国産最高峰の高みを目指して/研究者待望の写真装置付きの顕微鏡が登場

*顕微鏡の進化が、高機能の内視鏡の基礎となった
どんなものでも観察できるという技術を追究/細胞の形態変化を観察する顕微鏡/がんのメカニズムに挑む「共焦点」という技術/手術用顕微鏡にも新境地

【第5章】 技術の伝承とグローバル化 
*世界的に注目を浴びる内視鏡検査・治療
海外・国内向けに、内視鏡の基幹商品を投入/NBIの品質をさらにアップした次世代内視鏡/NBI技術を活用するESDが、欧米で高い関心を集める

*中国、インドなどの「内視鏡新興国」にも積極展開
中国では大腸がん患者の急増が避けられない/内視鏡医の育成が急務となっている/充実したメンテナンス体制が、グローバル戦略を支える

*オリンパスのグローバル事業は、国境を越えた技術伝承そのものだ
行き届いたサービスこそ日本企業、そしてオリンパスの強み/米国では、修理品の完成に24時間以内に応える体制を確立/モノづくりは日本、北米、欧州の三極体制で

【終 章】 医療機器の供給は社会貢献につながる 
*早期発見・治療すれば、大腸がんは90%以上が治癒する!
事業そのものが「社会貢献」という幸せ/大腸がん検診普及も、オリンパスが果たす社会的責任/ブレイブサークルの大腸がん撲滅キャンペーンによる検診普及/大腸がんと向き合う検診は、別に怖くない!

あとがき

はじめに

増え続ける大腸がんに立ち向かう拡大内視鏡
日本人の4人に1人は、狭心症、脳梗塞で、2人に1人はがんにり、3人に1人はがんで亡くなるといわれている。つまり数字上は夫婦のどちらかが、がんに罹る可能性があるというわけだ。こんな「身近な病気」にもかかわらず、決定的な治療法がいまだに見つからないという意味で、がんは、なかなか「手の届かない病気」ともいえるかもしれない。

かつての日本では、がんといえば「胃がん」を指すような時代があった。しかし今では、治療法が確立したこともあって減少傾向にある胃がんに代わり、「肺がん」「大腸がん」「乳がん」が、クローズアップされてきた。特に大腸がん(結腸がん+直腸がん)は男性では肺がん、胃がんに次いで3位、女性では乳がんを上回って1位の死亡率である。しかもその率、死亡率は今後、ますます高まると予測されている。

私は雑誌や単行本の取材、あるいはラジオ番組の制作などを通じて、経営者をはじめ数多くの方とお会いする機会があるが、私と同年代、もしくはそれ以上の方になると、徐々に健康に対する関心が高まるようで、中には「今日、大腸の内視鏡検査をやってきたよ」と言う方も少なくない。

彼らの話を要約すると、「大腸がんで苦しみたくない、死にたくない」に尽きる。そのためには、「検査で早期発見することこそが大切」というものだった。経営者にとって健康を害することは事業に大きな影響をもたらすだけに、細心の注意を払うのは当然だ。これは、ビジネスマンも同じだろう。また、家族の中心である女性に万一のことがあれば、家族全員の人生に変転をもたらすことは間違いない。

増加を続ける大腸がんから身を守るための最強の武器は、「定期的な内視鏡検査」であることを、名医といわれる多くの医師が指摘している。そして検査や治療、手術に絶大な威力を発揮するのが観察倍率70~100倍の「拡大内視鏡」なのである。通常の内視鏡(倍率35~40倍)よりも大腸の腸壁や腸粘膜を詳細に観察できるので、わずかな病変でも見逃さず、発見した場合の治療や手術にも対応する手術具も搭載するなど、これまでにない高機能を備えている。

「大腸がん適齢期」といわれる40歳を過ぎたこともあり、大腸がんに関心を深めていた私にそれを教えてくれたのは、知り合いの外科医だった。その医師はさらに、「拡大内視鏡のことを詳しく知りたければ、オリンパスを取材するといいよ」ともアドバイスしてくれた。

そんな折りに、日刊工業新聞社出版局から本企画のお話をいただいただけに、私にとってそれは、決して偶然ではなく必然であったように思う。担当編集の方からは、「世界で70%のシェアを獲得しているのが、オリンパスの内視鏡です。このような日本製品は、ほかに類を見ないといってもいいでしょう。そんな内視鏡技術の進化をたどりたい。技術者の前に立ちはだかった困難、そしてそれを乗り切り拡大内視鏡を完成させた技術者たちの信念、情熱、発想に軸を置きながら、その技術の真髄に迫るような内容にしたいと考えています」という誠に熱っぽい説明を受けた。

革新的な技術開発は、「総合力」で実現する
「オリンパスの内視鏡」と前記したが、正確を期せば内視鏡事業を手がけているのは、グループ会社の「オリンパスメディカルシステムズ」である。私は当初、内視鏡という未知の分野に挑んだ技術者個人に焦点を当てるストーリーを思い浮かべていた。しかし取材を進めていくうちに、個人の力が不可欠であることは言うまでもないが、それ以上に技術開発の原動力になったのは、多くの社員が参加する「チーム」であることを思い知らされた。本書では技術者の個人名も記してあるが、その名前の背後にたくさんのメンバーがいることを冒頭でお断りしておきたい。

本書を読んでいただければ分かるが、オリンパスの内視鏡の歴史は戦後、東大病院の医師と共同開発した「胃カメラ」に端を発する。しかしそれ以前にオリンパスは、顕微鏡分野でも大きな功績を残してきた。それらに関わった多くの技術者たちの技術、そして協力を惜しまなかった多くの医師たちの情熱が積み重なって内視鏡技術に結実し、さらに拡大内視鏡へと進化していくのである。取材した技術者の多くが、「内視鏡の機能を高めることは、会社の利益に貢献するとともに、たくさんの患者さんの命を守るという社会貢献になると思う」と発言していたのも印象的であった。

大腸がん患者は今後、さらに増え続けるだけに内視鏡の需要も拡大していくだろう。内視鏡の機能もさらに高まることになる。倍率100倍の拡大内視鏡が果たしている役割は大きいが、オリンパスではこれに光学系の最先端技術を付加し、より精密な検査を可能にしている。倍率も近い将来、400倍を超えることになると予測される。そうなると、がん細胞を詳細に観察できるようにもなり、がんの予防、治療、手術に画期的な革新が起きるはずだ。

オリンパスでは2011年に経営問題で騒動が起きたが、そのようなことでこれまで培ってきた内視鏡技術の進化に停滞があってはならない。内視鏡のより一層の進化が、今まで以上に多くの大腸がん患者を救い出すことになるからだ。

本書が読者の皆様にとって、内視鏡技術への理解を深めていただくための一助になれば、私としては本望である。

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