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伊藤園の"自然体"経営
伝統と最新手法が織りなすイノベーション

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ 四六判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-06963-5
コード C3034
発行月 2012年10月
ジャンル ビジネス

内容

「お~いお茶」のブランドを確立し、創業以来赤字決算がない優良企業として知られる伊藤園。独自の経営戦略を掲げ、多角化を進めながら成長を続ける。創業者である本庄兄弟の思想を継いだ社員たちの活躍とそれを支える独自の組織・システムを紹介するなど伊藤園の“強さ”の秘密をひもとく。

大倉雄次郎  著者プロフィール

(おおくら ゆうじろう)
関西大学名誉教授(商学博士)、公認会計士、税理士
東証一部上場会社(医薬品メーカー)財務経理副統括部長として、合併・連結決算・関係会社事業企画支援の責任者、関係会社社外監査役を経て、1996年4月に大分大学経済学部教授、2001年4月に関西大学商学部教授となり、2010年3月に関西大学名誉教授となる。専門は税務会計論、会計学、経営分析論、監査論など幅広い。
著書に『パナソニックの大転換経営』(日刊工業新聞社)、『就活オールガイド』(新星出版社)、『パナソニックとキヤノンに学ぶ 経営改革のための会計戦略』『企業評価入門』『連結会計ディスクロージャー論』(中央経済社)、『新会社法と会計』『新会計基準の基礎―理論と計算―』(税務経理協会)、『税務会計論』(森山書店)、『連結納税会計論』『企業組織再編の会計戦略』(関西大学出版部)など多数。NHK「視点論点」にも出演。
ホームページ:http://www7.ocn.ne.jp/~okuracpa/

目次

はじめに

第1章 本庄兄弟が記した未知なる一歩
1 二人の兄弟が起こした伊藤園
日本人の心“お茶”と伊藤園/伊藤園前史
2 風通しの良い会社づくり
伊藤園の果たした役割/広く、深く、さらに広く/経営に関する本庄兄弟の基本的な考え方
3 事業戦略の視点
機会の拡大作戦/競争こそ繁栄の源泉/すべてのお客様を大事に
〈コラム〉 日本の起業家の主たる系譜

第2章 革新的な発想で商品開発
1 お茶の開発イノベーション
日本人に欠かせないお茶をより身近に/真空パックで酸素や湿度から茶の品質を守る/顧客創造戦略で消費者の不満を解消/ウーロン茶との出会いが新たな発展に
2 「お~いお茶」開発秘話
缶入り緑茶へのこだわり/“缶入り煎茶”から「お~いお茶」に商品名を変える/缶からペットボトルへの発展
3 製品開発の飲料化比率
伊藤園にとって重要な飲料化比率とは/緑茶飲料に対する認知が足りなかった/市場は拓けた
4 商品づくりの五つのコンセプト
自然・健康・安全へのこだわり/良いデザインで提供するおいしい商品群/年代別の嗜好も加味した商品開発
〈コラム〉 T・Nブロー製法による缶入り煎茶(緑茶)の受賞履歴

第3章 会社の体質を変えるサプライ・チェーン
1 イノベーション機能
イノベーション機能と生産性向上/革新企業/生産部門の全体評価
2 茶産地育成事業から始める自然へのこだわり
茶原料仕入れ三つのルート/茶産地育成事業(新産地事業)で農業の活性化に貢献/茶産地育成事業(新産地事業)の特徴/契約茶栽培農家からの全量買い取り制度
3 荒茶加工工場と仕上げ加工工場
厳格な品質管理の下で進められる荒茶づくり/荒茶加工の浜岡工場/荒茶の仕上げを行う静岡相良工場
4 飲料製造は工場を持たないファブレスで
国際的企業の生産戦略であるファブレス経営/ファブレス生産の要点/品質管理にも絶対の自信
5 伊藤園とともに茶葉生産に取り組む人たち
静岡県牧之原市との強い絆/宮崎県のアグリセンター都城(茶産地育成事業(新産地事業)事例①)/大分県の茶産地育成事業に迫る(茶産地育成事業(新産地事業)事例②)/鹿児島県志布志市の有明茶・堀口園グループ(茶産地育成事業(契約栽培)事例)

第4章 総合飲料メーカーへの道
1 専門化と総合化
緑茶市場で得られたノウハウを総合化に活かす/中央研究所の研究コンセプトと成果/特定保健用食品(トクホ)への進出高らかに/カテキン緑茶への期待/さらなる進出を目指す野菜飲料市場
2 コーヒー市場への本格的参入
タリーズコーヒー買収の相乗効果/コーヒー飲料と店舗の両方で運営/タリーズコーヒーの概要
3 多角化の取り組みを強化
チチヤスの買収で乳酸飲料分野に進出/「エビアン」を取得してミネラルウォーター市場へ参入

第5章 ユニークなルートセールス方式
1 伊藤園のポジショニング
伊藤園のターゲット/販売チャネルは顧客の実態に合わせて/企業による自問自答とは
2 伊藤園のルートセールス方式
ルートセールス方式導入の経緯/商品開発につなげる社内提案システム“Voice”/“STILL NOW”の精神でお客様の期待に応える/ルートセールスの職能と求められる資質/営業マンの評価ポイントと欲しい人材/新入社員の面接で重視している点/ルートセールス方式はコストがかさむのか/マーケティング・ミックス/「お~いお茶新俳句大賞」
3 目標管理制度の七冠と八冠
課単位での損益計算書/管理部門も報奨の対象
4 販売分析

第6章 先読みの財務戦略
1 優良企業に不可欠なキャッシュ・フロー経営
伊藤園のキャッシュ・フロー経営はなぜ始まったか/七つの経営指標と報奨制度のドッキングで実現/その他の業績評価指針
2 種類株式の発行
種類株式の利用法/伊藤園種類株式の狙い
3 確定拠出型年金制度の導入
確定拠出型年金制度とは/会社拠出型年金制度の種類
4 独自の役員報酬と退職金制度
伊藤園ならではの役員報酬である業績連動型/役員退職金をストック・オプションで
5 財務数値を読む ―経営環境の変化への財務戦略

第7章 アメリカ市場から世界へ
1 アメリカ本土進出の基本戦略
未開の無糖飲料市場/アメリカ進出における3つの戦略と足跡/アメリカ事業の売上高
2 アメリカにおける茶文化の創造へ
「お~いお茶」の調査で嗜好の変化を見る/アンテナショップ“ITO EN New York”と“会(KAI)”/健康志向の高まり/肥満からの脱却へ向けて
3 アメリカにおける商品ライン
日本の茶文化の普及/アメリカ事業への取り組みのポイント/FDAによる認可/現地生産する有糖緑茶/無糖茶のラインアップ/有糖茶には三つの商品ライン/シリコンバレーで「お~いお茶」が大人気
4 新しい市場を求めて
オーストラリアへの進出/中国への進出/東南アジアへの進出

第8章 お客様第一主義の姿勢
1 これからの伊藤園が目指すもの
目指すは世界一のティーカンパニー/変化する消費者ニーズに対応/多角化・総合化する事業範囲/実力主義/伊藤園大学・大学院/社会的責任を果たすためのCSRへの取り組み
2 グローバルカンパニーとしての国際基準への取り組み
ISO9001(品質マネジメントシステム)/放射線量測定/ISO14001(環境マネジメントシステム)/ISO10002(苦情対応の国際規格)/FSSC22000(食の安全の国際標準規格)
3 さまざまな形で社会に貢献
循環型社会に貢献するリサイクルシステム/全力を挙げた東日本大震災の復興支援/コミュニティーカフェ/奨学金支給事業を行う本庄国際奨学財団/スポーツ振興への貢献/伊藤園という会社を経営していくこと

参考文献

はじめに

 「お~いお茶」で有名な株式会社伊藤園。緑茶飲料を中心に確固たる地位を築いている総合飲料メーカーである。また、過去に一度も赤字に陥ったことがないという、驚くべき優良企業でもある。
 その前身はフロンティア製茶株式会社と言い、本庄正則氏と本庄八郎氏という兄弟が設立した。伊藤園というその名前から、江戸時代より続く老舗と勘違いしている消費者も多いようだが、実は、戦後の高度成長期の真っ只中の1966年にスタートしたベンチャー企業なのである。
 創業者である本庄兄弟は、起業以前は自動車のセールスマンとして大活躍したという。それなのに、ある日、その後も日本を牽引していくことになる自動車業界から離れてしまう。
 それはなぜだったのだろうか。
 また、新たなビジネスとして“お茶”という日本文化になぜ着目したか。旧態依然としていたであろうお茶という分野で、なぜ新たな挑戦が可能だったのか。
 スイスから包装加工機の機材を導入したり、中国から独占的にウーロン茶を輸入するなど、創業当時から世界を見据えたグローバル活動を続けられた視点は、どこから生まれたのか。
 その後も缶入りウーロン茶や缶入り緑茶、ペットボトル入り緑茶、ホット用ペットボトル入り緑茶などさまざまなヒット作を生み出してきた原動力は何だったのか。
 経営者としては、今は誰もが理解するキャッシュ・フローやファブレス経営などを、いち早く導入できたのは何に基づいているのか。
 さらに、「お客様を第一とし、誠実を売り、努力を怠らず、信頼を得るを旨とする」という社是はどこから生まれ、どのように社員に浸透しているのか。
 伊藤園に関する興味は尽きない。
 創業者である兄弟の思想、さらにそれを受け継いできた社内システムに、企業発展、ひいては日本再生のカギがありそうである。
 本書の執筆に当たり、鬼籍に入られた兄の本庄正則氏に代わって、現会長で弟の本庄八郎氏にロングインタビューを行った。さらに、現社長の本庄大介氏をはじめ社内外の関係各部門にも取材を繰り返した。
 これらの情報をもとに、伊藤園の比類なき発展の原点と企業理念を探る。さらに、創業者の想いを受けついだ社員たちの活躍、それを支える独自の経営システムなど、伊藤園の“強さ”の秘密をひもといていきたい。
 伊藤園という会社は、“自然体”であることを常に意識しながら成長を遂げてきたように感じる。決して背伸びをせず、かといって慣習や常識にとらわれないフレキシブルな経営姿勢がそのように思わせるのだろうか。茶の文化を継承しつつ、食の安心・安全に応えるため自然材料にこだわってきた。飲料メーカーでありながら最終ボトリング工程を協力企業に任せるファブレス生産を率先したり、良好な財務体質を維持したりする柔軟さに、同社の魅力が詰まっていると言えるだろう。
 企業経営者だけでなく、多くのビジネスマン、さらにはこれから社会に羽ばたこうとする若人たちにも役立つ情報を多数盛り込んだ。ぜひ、ご一読いただきたい。
 なお今回の執筆に当たって、株式会社伊藤園会長本庄八郎氏、社長本庄大介氏をはじめとしたトップマネジメントや社内外の関係部門の多くの方々にインタビューをさせていただき、また広報部には資料収集や茶園・工場見学などで大変お世話になりました。有難うございます。
 本書の出版に際してご快諾賜わった日刊工業新聞社奥村功出版局長、編集にご尽力賜った矢島俊克書籍編集部副部長に感謝いたします。
                               
 大倉 雄次郎 

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