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SRモータ

定価(税込)  2,376円

著者
サイズ A5判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-06955-0
コード C3053
発行月 2012年10月
ジャンル 機械

内容

SR(スイッチリラクタンス)モータは、レアアースを使用しないので、省資源モータとして注目されている。また、低コストでエネルギー効率が高く、大量生産に向いているために、今後さまざまな分野での利用が期待される。本書では、SRモータの起源から理論、基礎技術を中心に解説する。

見城尚志  著者プロフィール

(けんじょう たかし)
経歴
1940年 静岡県生まれ
1964年 東北大学大学院工学専攻科修士課程修了後,ティアック株式会社入社し,磁気記録機器用精密小型モータの設計と研究を開始,同年秋から高級テープレコーダへ採用.その設計論を1968年にドイツの学術誌Elektrotechnische Zeitschriftに発表
1965年 職業訓練大学校常勤講師
1970年 東北大学より交流モータの回転電気機械の電磁界理論で工学博士
1971年 職業訓練大学校助教授
1976年 ロンドンで開かれた世界最初の小型モータ学会に出席し,その後の英語での著作と小形モータシンポジウム・展示会の着想を得る.
1981年 日本能率協会「小形モータ技術シンポジウム」企画委員長(90年まで),83年より展示会を併設,やがて世界最大規模になる.
1981年 職業訓練大学校教授
1984年 Oxford University PressよりStepping motors and their microprocessor controls出版,1985年Permanent-magnet and brushless DC motors出版(永守重信氏と共著),1990年Power electronics for the microprocessor age出版
1995年 講談社より『図解・わかる電子回路』を出版,本書は小型モータの制御技術を基にアナログ・デジタル回路をまとめた叢書,ベスト・ロングセラーとなる.
2000年 総合電子出版社より『新・ブラシレスモータ』(永守重信と共著)
2001年 IEEE Transaction on EducationにDeveloping educational software for mechatronics simulationを発表,『実験とシミュレーションで学ぶモータ制御』(日刊工業新聞社)でシミュレーション技法の詳細解説.
2005年 職業能力開発総合大学校定年退職,日本電産モーター基礎研究所 所長,性能において世界1のブラシレスモータの開発を宣言,2010年のF5B世界チャンピオン戦で目標達成.
2007年 日本電産モーター基礎研究所名誉所長.
2012年 日本電産技術顧問.

目次

はじめに

第1章 SRモータの起源と歴史
1.1  Switched reluctance motorの名称について
1.2  初期の英国のモータ開発
 1.2.1 デビッドソンのモータ
 1.2.2 電気技術史の中で考える
 1.2.3 スイッチング素子─放電管から半導体へ
 1.2.4 Digital intelligence
 1.2.5 ステッピングモータとしての発達と進化
1.3  近年の英国およびアイルランドでの研究
 1.3.1 時代の要請としてのSRモータ
 1.3.2 Professor Byrneの不思議なモータ
 1.3.3 ByrneとLacyの電気自動車モータ研究
 1.3.4 英国の大学での基礎研究と情熱
1.4  SRDLの設立とそれ以降
 1.4.1 Professor Lawrensonリーズ大学からの起業
 1.4.2 Professor Millerのグラスゴー大学からの発信
 1.4.3 米企業EmersonとIEEEがSRモータを評価
1.5  日本の動向
 1.5.1 電機メーカーと大学での研究
 1.5.2 日本電産によるEmersonのモータ部門とSRDLの吸収
1.6  地球資源の有効利用に期待されるSRモータ
コラム1.1 環状電機子
コラム1.2 誘導モータ

第2章 SRモータの概要
2.1  双凸極構造とステップ角33
 2.1.1 ステップ─SRモータの動きの単位
 2.1.2 アキシャルギャップ(Axial gap)方式
 2.1.3 多段型─双凸極に関するMartin Harrisらの理論
 2.1.4 単段型と相の意味
2.2  多相巻線と双凸極に関するパラメータ
 2.2.1 課題の背景
 2.2.2 用語とその定義
 2.2.3 ステップ角f,ステップ数Sおよび分速N
 2.2.4 回転磁界型モータとの関連・相違・比較
2.3  可変リラクタンス(variable reluctance)が意味するもの
 2.3.1 回転角の関数としての磁気抵抗(リラクタンス)
 2.3.2 コギングとディテント
 2.3.3 閉ループ駆動の必要性
2.4  2相モータで動作モードを見る
 2.4.1 低コストを特徴とする2相モータ
 2.4.2 駆動法に関する用語
 2.4.3 発展形と電気角・機械角の関係
 2.4.4 電動機動作と磁気エネルギー回生動作
 2.4.5 フルブリッジの利用はどうか?
2.5  基本となる3相6-4構造とその発展形
 2.5.1 120°配置と60°配置
 2.5.2 ポールアークの選定
 2.5.3 Urwicklung(primitive winding)と倍体
 2.5.4 4象限運転と3象限運転
2.6  4相モータと5相以上
 2.6.1 出力係数やトルク密度の高い4相モータ
 2.6.2 5相および多相
まとめ

第3章 SRモータの理論
3.1  トルク発生の原理と数学的扱い方
 3.1.1 双凸極型モータ(Doubly-salient motor)
 3.1.2 磁気エネルギーと磁気随伴エネルギー
 3.1.3 トルク式の2つの表現形式
 3.1.4 鋼板のB-H特性とモータとしての}-i特性の関係
 3.1.5 磁気的に線形の場合
3.2  平均トルクの理論─}-i軌跡の図形的意味
 3.2.1 平均トルク
 3.2.2 平均トルクを最大にするには
 3.2.3 磁気飽和の効用
3.3  永久磁石型同期モータとの相違と類似
 3.3.1 表面磁石型同期モータ(SPM)
 3.3.2 SPM型の逆起電力とトルク式など
 3.3.3 SPM型とSRモータのトルク計算比較
 3.3.4 強い飽和とパラメータ
3.4  電磁エネルギー流の理論
 3.4.1 Poyntingベクトルで考える
 3.4.2 回転するロータへの適用
 3.4.3 面積分と体積積分
 3.4.4 エアギャップの意味
3.5  磁気現象による損失とトルクの関係
 3.5.1 磁気エネルギー,ヒステリシス損失,ヒステリシストルク
 3.5.2 周期積分で考える
 3.5.3 トルクの別表現式─SPM型モータのトルクの数学的意味
3.6  交流機の等価回路
 3.6.1 ロータ入力を機軸に考える
 3.6.2 ロータ入力の分解
付 録  A1 面積分と体積積分
     A2 Stieltjes(スティルチェス)積分について

第4章 SRモータにおける体格と装荷
4.1  基本的な体格と仕様の決定
 4.1.1 最初の基本ASSとTRV
 4.1.2 出力係数Koutと出力方程式
 4.1.3 その他の性能指標
4.2  電気装荷と磁気装荷
 4.2.1 標準となる考え方
 4.2.2 装荷配分と電磁界理論との関連
 4.2.3 SRモータ定速運転の場合
 4.2.4 直流モータやSPM型ブラシレスモータとの比較
4.3  定格と絶縁階級
 4.3.1 温度上昇
 4.3.2 冷却法
 4.3.3 絶縁階級
 4.3.4 定格の種類
4.4  損 失
 4.4.1 銅 損
 4.4.2 鉄 損
 4.4.3 機械損
 4.4.4 漂遊損
4.5  電磁的損失とトルクの関係
 4.5.1 高調波のない回転磁界での現象
 4.5.2 スロットの影響
 4.5.3 SRモータの特殊性
4.6  ライバル設計
 4.6.1 プリウスIPM代替という発想
 4.6.2 中型モータでの基礎研究
 4.6.3 50 kW級のSRモータ設計における磁鋼選定の問題
4.7  振動・騒音対策その他からの構造要件
 4.7.1 “Ovalization”と4つ葉のクローバ
 4.7.2 スロット深さとヨーク厚
コラム4.1 トルク式(4.10)をp=1の場合に確認する

第5章 SRモータの駆動・制御システムの概要
5.1  スイッチング回路とスイッチング素子
 5.1.1 最も基本的な回路から
 5.1.2 フルブリッジ回路(full bridge)と3相ブリッジ
 5.1.3 半導体スイッチング素子
5.2  SRモータ駆動制御回路の基本
 5.2.1 各相の独立
 5.2.2 深い磁気飽和の利用
 5.2.3 磁気飽和を扱う計算法について
5.3  駆動回路の基本形と電圧の方程式
 5.3.1 基本微分方程式
 5.3.2 コアレスモータでの事前確認
 5.3.3 陰性オイラー法による計算
 5.3.4 解析解
 5.3.5 磁気非線形モデル化の一例
 5.3.6 モータの力学系
5.4  運転モード
 5.4.1 シングルパルスモード(Single-pulse mode)
 5.4.2 ヒステリシスコンパレータによる電流制御
 5.4.3 定周波hard chopping駆動
 5.4.4 簡単な総合制御システム
5.5  高度な駆動技術
 5.5.1 連続電流モード─高速領域でのトルク増大
 5.5.2 一定トルク制御ができるかどうか
 5.5.3 制御システム
 5.5.4 最後に

第6章 他種モータとの比較
6.1  比較の意味
6.2  直流モータとの比較
 6.2.1 巻線型直流モータの界磁システムと電機子
 6.2.2 他励モータ:二軸理論の基礎
 6.2.3 直巻モータ:簡単な原理で広い速度領域
 6.2.4 定トルク駆動と定出力駆動
 6.2.5 ブラシレス化の選択肢として
6.3  永久磁石型ブラシレスモータとの比較
 6.3.1 Power/weight ratio最高のモータ設計
 6.3.2 SRモータはネオジム磁石モータにどこまで挑戦できるか
 6.3.3 IPM構造について
6.4  回転磁界型交流モータ
 6.4.1 回転磁界とその発生原理
 6.4.2 ヒステリシス同期モータとはどのようなものか?
 6.4.3 等価回路とその有用性
6.5  同期リラクタンスモータとの比較
 6.5.1 実用困難な直流リラクタンスモータ
 6.5.2 二軸理論によるリラクタンスモータのトルク式の誘導
 6.5.3 リラクタンスモータの構造とSRモータとの比較
6.6  籠型誘導モータとの比較
 6.6.1 等価回路理論
 6.6.2 インバータ運転によるT-N特性
 6.6.3 誘導モータの起動トルク理論
 6.6.4 起動特性で有利なSRモータ
 6.6.5 高速領域でも有利なSRモータ
6.7  SRモータの用途展望と課題
結 言
コラム6.1 F5Bと競技規定

Epilogue
記号表
索 引

はじめに

 Switched reluctance motor(SR モータ)は省資源型モータとして重要な電気機械であり,そのエレクトロニクス技術がこの数年で大きな進歩を遂げた.
 筆者がSRモータの初期の開発で重要な役割を担った人々との縁ができたのは,1976年3月にロンドンで世界最初の小型モータ会議(IEE Conference on Small Electrical Machines)が開かれたときのことだった.そのとき36歳だった.本書の執筆の峠を越えたのが,それからまた36年を経たときだった.
 本書は多くの方との出会いによって実現した.ここに名前を挙げながらこの物語りを綴らせていただきたい.
 SRモータ研究にJohn Byrne教授がUniversity College Dublinで残した足跡は大変に大きかった.残念ながらご高齢のために当時のことを忘却されておられたが,ご令嬢Patriciaには資料収集でご尽力をいただいた.彼女と連絡をとりながら,Jim Lacy教授からその当時に試作された実験機を大学の倉庫から探し出して修復できたという報を受けた時が,上に記した峠のことである.彼はByrne教授とともにSRモータの駆動制御システムの最初に手掛けて1976年の会議に展示した.そのモータに筆者は目を奪われたのだった.
 グラスゴー大学のTim Miller教授とはOxford University Pressのシリーズエディタ仲間であり,彼の著作を参考にしたことはいうまでもないが,彼がSchenectadyにあるGeneral Electricでのエンジニア時代にByrne教授を迎えて行なったディスカッションの様子を聞いたのだが,それは実に有益で興味深いものであった.
 英国HarrogateにあるNidec SR Drives LimitedのSteve Randall氏との2011年夏の出会いとディスカッションなくして本書はできなかった.同社のDr. Roy Blake, Dr. Mike Turner,およびDr. Norman Fultonからは様々のサポートを得たことも付記したい.
 種々の小型モータの比較研究と教育に情熱を燃やしておられる国立宜蘭大学(台湾)の陳正虎助理教授からは,様々のタイプのSRモータの資料提供をいただいた.
 電気機器に造詣の深い大西和夫博士と田原和雄博士には度々ご足労を願って,草稿をもとに頻繁に討論させていただいた.これほど密度の高い議論は大学はもとより企業においては稀有だったと思う.
 日本電産の関係者で特筆に価するのが,高野祐一君とのディスカッションである.彼は千葉 明教授(現東京工業大学)の下で,東京理科大学においてトヨタプリウスのIPM型モータに匹敵するSRモータの設計と計測研究で修士号を得て2011年のIEEEのElectric Machines Committee of Industry Applications SocietyのFirst Awardを得ている.この設計について第4章で紹介し,その後の研究成果は第6章に論じている.
 最後に2人の名前を挙げたい.まずSRモータの父と呼ばれるPeter Lawrenson教授である.1980年にSRDL(現在のNidec SR Drives Limited)を創立してSRモータの普及には全力を注ぎ,その功績に対してIEEEからエジソン賞を受賞した人物である.彼がBritish Council Scholarとして来日したのは1979年のことだが,そのときに,モータメーカーとしてはまだ揺籃期にあった日本電産の創業者である永守重信氏に引き合わせる機会を得た.1994年にEmerson ElectricはSRモータを有力な次世代モータとして捉えてSRDLを傘下に入れた.そして2010年,大きく成長した日本電産はEmerson Electricのモータ部門を傘下に収めて,SRモータの普及を牽引する道を選択した.
 SRモータを普及促進するためには,技術者のための標準となる学術書も必要である.浅学を顧みずその制作の役割を担おうと決意したのは一昨年の秋である.こうして日刊工業新聞社との縁を得て2年の歳月をかけて本書が実現した次第である.

2012年10月吉日
見城 尚志

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