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半導体衰退の原因と生き残りの鍵

定価(税込)  2,052円

著者
サイズ A5判
ページ数 216頁
ISBNコード 978-4-526-06949-9
コード C3034
発行月 2012年09月
ジャンル ビジネス 電気・電子

内容

「今後、半導体企業が生き残る鍵は設計力強化にある。」本著は、日本の半導体メーカーがシステムLSIに舵を切った後、何故このように急激な衰退の道を歩んだかを細かく分析し、残された道を提言するもの。「グローバルに通用するASSPを開発するファブレス会社」となるためには、自前主義を捨て、モジュラー型製品開発に特化した組織構造とし、設計力を強化することが必須の条件となる。

佐野 昌  著者プロフィール

(さの しょう) 

1953年愛知県生まれ。1977年、東京大学理学部物理学科修士課程終了。1983年、プリンストン大学エレクトリカルエンジニアリングコンピュータサイエンス学科修士課程終了。
1977年日立製作所入社。半導体部門にてメモリとマイコンの設計および事業企画に従事。ルネサステクノロジ、半導体理工学研究センター、ルネサスエレクトロニクスを経て、グレイセル・コンサルティングを設立。
現在、(株)古賀総研勤務。
著書「戦略の策定と実行の手法」「岐路に立つ半導体産業」

目次

まえがき 

第1章 変化した半導体の事業環境  
1-1 成熟期を迎えた半導体産業
1-2 微細化の限界
1-3 市場セグメントの細分化と製品仕様の多様化
1-4 デジタル化がもたらした産業構造の変化

第2章 SOCのビジネスモデル  
2-1 モジュラー型産業構造と分業
 2ー1ー1 モジュラー型製品
 2ー1ー2 ファブレス会社とファウンドリメーカ
 2ー1ー3 TSMC
 2ー1ー4 アプリケーション志向
2-2 変化した環境への対応
 2ー2ー1 専業化
 2ー2ー2 セグメント細分化とモジュラー型産業構造への対応
2-3 ファブレス戦略
 2ー3ー1 積極的ファブレス
 2ー3ー2 ARM

第3章 ASICとASSP  
3-1 設計生産性ギャップとその影響
 3-1-1 設計生産性ギャップ
 3ー1ー2 ウェハファブ投資は究極のイニシャルコスト
3-2 ASSPの勢力拡大
3-3 ソフトウェアの生産性危機とその影響
 3ー3ー1 ソフトウェアの生産性危機
 3ー3ー2 ソフトウェアドリブン開発
3-4 ASIC型日本メーカの苦戦

第4章 SOCとEDAツールの歴史  
4-1 SOCの歴史
 4ー1ー1 ゲートアレイとスタンダードセル方式ASIC
 4ー1ー2 FPGA
 4ー1ー3 SOCの登場
4-2 EDAツールの歴史
4-3 EDAツールベンダの現状

第5章 SOCの生き残り策  
5-1 SOCビジネスの重要性
5-2 日本メーカ衰退の原因
 5ー2ー1 モジュラー型産業構造と分業に対する対応遅れ
 5ー2ー2 情報通信分野での劣勢
5-3 SOCメーカの生き残り策
 5ー3ー1 経営戦略
 5ー3ー2 技術力強化

第6章 SOCの設計  
6-1 設計付加価値
 6ー1ー1 設計付加価値とは何か
6-2 SOC設計工程概説
 6ー2ー1 設計の各工程で行う作業
 6ー2ー2 記述例
6-3 高位設計の重要性
 6ー3ー1 高位設計とは
 6ー3ー2 設計力強化の核心
 6ー3ー3 高位設計の特徴
 6ー3ー4 高位設計の課題と今後の方向
6-4 高位設計の効果
 6ー4ー1 工程別の設計開発費
 6ー4ー2 新規設計と展開設計
 6ー4ー3 サイクル精度SystemCとTLM
6-5 プラットフォーム型開発と標準化

第7章 まとめ  

あとがき 
索引

はじめに

 日本の半導体メーカは1980年代にDRAMで世界を席巻したが、1990年代に入ると韓国メーカの追い上げや円高により収益の悪化に苦しむようになった。さらに1990年代後半にはDRAMで巨額の赤字を出すようになった。この結果、日本メーカはDRAMから撤退することを決断し、システムLSIへと経営の舵を切った。しかしシステムLSIに経営リソースを傾斜投入していながら、システムLSI事業は不振が続き、売上縮小、収益悪化、リストラの繰り返しで、ほとんど一直線に衰退の道を歩んできた。
 2010年末から2011年初にかけて東芝がシステムLSI事業の見直しを発表した。2011年10月にはパナソニックがテレビ事業とともに半導体事業のリストラを発表した。また2012年2月にはエルピーダメモリが会社更生法の適用を申請しマイクロンに買収されることになった。さらに2012年7月にはルネサスエレクトロニクスがリストラ計画を公表した。日本の半導体メーカは総崩れの状態である。すべての日本メーカが何故このように急激な衰退の道を歩んだのか、本書ではシステムLSIに焦点を当て、底流を流れる共通の原因を分析している。このため個々のメーカの課題やリストラについては議論していない。なお本書ではその分析が明確になるように、広義の意味を持つために定義が曖昧なシステムLSIという言葉ではなく、SOC(System on a Chip)という言葉を用いている。また、メモリやアナログには言及せずにSOCに議論を集中させている。
 1社だけでなく日本の半導体メーカすべてが歩調を揃えるように衰退の道を歩んだ第一の原因は、ファブレス会社とファウンドリメーカの台頭による設計と製造の分業化に対応できなかったことである。現在では設計と製造の分業が設計と製造を併せ持つIDM型より優れたビジネスモデルであると認識されているが、今まで日本メーカはIDM型企業を志向して、分業化の流れに対応できなかった。このため、アプリケーション分野に適応した製品の開発でファブレス会社に敗れ、製造の規模と設備投資でTSMCに敗れた。これが日本メーカの衰退の第一の原因である。
 設計と製造の分業が進んだ根底にある原因はSOCの産業構造がモジュラー型に変化したことである。1990年代にLSIの性能向上によって画像データをデジタル処理できるようになり、電子機器のデジタル化が進展した。デジタル化は電子機器とSOCの産業構造をモジュラー型に変え、その結果、分業が進んだ。世界的な分業化はSOCの市場においてASIC(Application Specific IC)からASSP(Application Specific Standard Product)へのシフトも引き起こした。市場がASSPにシフトしても、日本メーカはASIC型の開発体制を採っていたためASSPをうまく開発することができなかったのである。
 では何故日本メーカがこれらのモジュラー型構造と分業の波に乗れなかったのであろうか。自前主義が災いしたのである。自前主義はどんな部品も自前で作るので摺り合わせが容易であり、小さな改良を積み重ねて高性能、高品質を実現できる。1980年代以前、日本メーカはこのやり方で成功した。しかし産業構造が変化してモジュラー化が進展したSOCでは自前主義では勝てないのである。現在、SOCメーカだけでなく家電メーカも苦境にあるが、自前主義が災いしてデジタル化によるモジュラー型産業構造に対応できない点は共通している。
 本書ではSOCの生き残りの鍵となる対応策についても提言している。SOCメーカの老朽ファブや余剰人員のリストラはやらなければならないことであるが、それだけでSOCメーカが生き残ることはできない。まず、根底にある衰退の原因を取り除くことである。生き残り策については第5章で議論している。また、技術面での生き残りの鍵は設計力の強化にある。設計力の強化については第6章で議論している。技術論の箇所は多少専門的であるが、雰囲気だけでもよいのでご理解頂きたい。

 2012年9月  佐野 昌

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