買い物かごへ

ナノ粒子安全性ハンドブック
―リスク管理とばく露防止対策―

定価(税込)  3,024円

編者
サイズ A5判
ページ数 256頁
ISBNコード 978-4-526-06938-3
コード C3043
発行月 2012年09月
ジャンル 化学

内容

ナノ粒子の実用化にともない、どのようなリスク管理を行うかが重要な課題となっている。本書では最近の動向と防止対策、特性評価法、安全な取扱い方法までを網羅した。企業・研究所でのナノ粒子の管理手法とばく露対策がわかる1冊。

目次

出版にあたって
本書の読み方

第1章 ナノマテリアルのリスク管理の現状と動向
1.1 ナノテクノロジーへの関心
1.2 ナノリスク検討の背景
1.3 リスク管理の考え方
1.4 ナノリスクに関する動向
 1.4.1 国際的動向
 (1)国際機関 (2)米国 (3)欧州
 1.4.2 国内動向
 (1)調査・研究関係 (2)省庁別のガイドラインなど
(3)厚生労働省の通達
1.5 まとめ

第2章 リスク評価の考え方と管理手法
2.1 リスクアセスメント
2.2 ナノマテリアルの有害性評価
 2.2.1 評価試験
 2.2.2 経気道ばく露
 2.2.3 有害性試験における投与方法
 2.2.4 粒子の特性と生体の反応
 2.2.5 量反応関係と許容濃度設定
2.3 作業環境中に浮遊するナノ粒子・ナノマテリアル粒子のばく露の評価
2.4 コントロールバンドによるリスク管理

第3章 ナノ粒子の気相中での存在状態・挙動および特性評価法
3.1 ナノ粒子の存在状態と特性
 3.1.1 ナノ粒子凝集体の発生・放出
 (1)ガスのビルドアッププロセス 
 (2)ナノ粒子懸濁液の噴霧・乾燥プロセス 
 (3)ナノ粒子凝集体の分散・飛散プロセス
 3.1.2 ナノ粒子凝集体の特性と挙動
 (1)凝集粒子の代表径 (2)凝集粒子の体積と密度 (3)凝集粒子のフラクタル次元(4)凝集粒子の動力学的形状係数
 3.1.3 粒子の凝集特性の評価
 (1)オフライン計測 (2)オンライン計測
(3)凝集粒子のオンライン計測例
 3.1.4 ナノ粒子の環境への影響
 (1)環境への影響 (2)反応性 (3)粉じん爆発
3.2 ナノ粒子の特性評価法─粒子径測定、濃度測定─
 3.2.1 ナノ粒子の測定方法の概要
 3.2.2 ナノ粒子の飛散状態の把握
 3.2.3 気相中粒子の簡易測定法
 (1)光散乱式気中粒子計数器 (2)凝縮粒子計数器
 3.2.4 ナノ粒子の特性評価法各論
 (1)形態、組成、構造の評価 (2)粒子径・粒子径分布測定
 (3)粒子濃度(個数、表面積、質量) (4)粒子径分級(弁別)装置
 3.2.5 飛散ナノ粒子の測定管理
 (1)管理粒子径の特定 (2)測定装置の選定 (3)測定システムの構成
 3.2.6 測定実施の手順
 (1)測定手順の明確化 (2)測定結果の記録
 3.2.7 ナノ粒子測定に関わる注意点、課題
 (1)測定粒子径の解釈 (2)浮遊粒子の吸引サンプリング系による測定誤差
3.3 飛散性の評価法
 3.3.1 巻き上がり性の評価法(分散度)
 3.3.2 粉体取扱時の気中への飛散性(Dustiness)
 (1)落下法 (2)ボルテックスシェーカー法 (3)ダイナミック法
(4)粉体の吸引・注入と分散が独立した方法
 3.3.3 測定の実例
 (1)ナノ粒子の飛散に関するモデル的評価
(2)ナノ粒子製造現場での測定例 (3)ナノ粒子選別測定の例(4)付着ナノ粒子の洗浄に関わる粒子測定

第4章 ばく露防止対策技術
4.1 製造ラインの密閉化
 4.1.1 製造装置およびラインのばく露防止
 4.1.2 各粉体処理単位操作の密閉性と問題点
 (1)供給操作 (2)混合・混練操作 (3)粉砕操作 (4)分級操作
 (5)乾燥操作 (6)造粒操作 (7)捕集操作 (8)合成操作
 4.1.3 アイソレータなどによる密閉化
4.2 局所排気装置およびプッシュプル型換気装置
 4.2.1 換気および排気の種類  
 (1)全体換気 (2)局所排気 (3)プッシュプル換気
 4.2.2 局所排気装置の設置例と管理
 (1)機種選定と留意点 (2)囲い式 (3)外付け式・レシーバ式 (4)付帯設備 (5)保守点検
 4.2.3 局所排気装置の封じ込め性能の維持と評価
 (1)性能評価 (2)封じ込め性能に影響を与える要素
 4.2.4 プッシュプル型換気装置の設置例と管理
 (1)有効性 (2)構造要件 (3)性能要件 (4)保守管理
 4.2.5 プッシュプル型換気装置の選定
 (1)選定と留意点 (2)換気装置の管理レベル(3)排気(換気)装置の集じん装置と高性能フィルタ
 4.2.6 大型機械のばく露防止対策
4.3 建築および建築付帯設備
 4.3.1 建築および建築付帯設備計画
 4.3.2 建築および建築付帯設備の計画の考え方
 (1)施設計画の方針 (2)ゾーニングとナノマテリアルの持ち出しの防止 (3)ナノマテリアルの速やかな排除 
 (4)ナノマテリアルの堆積防止 (5)排水の処理
 4.3.3 建築および建築付帯設備の推奨仕様
 (1)CL1〜2の建築および建築付帯設備 (2)CL3の建築および建築付帯設備 (3)OEBレベル4のナノマテリアルを扱う施設
4.4 大気拡散防止技術(捕集装置)
 4.4.1 本節の概要と目的
 4.4.2 集じん装置の種類と大略性能
 4.4.3 バグフィルタ、電気集じん装置の集じん特性に関する研究事例
 4.4.4 100 nm以下のナノ粒子を対象としたフィルタの粒子透過率
 4.4.5 市販各種BF用清浄ろ布の集じん性能
 4.4.6 フィルタ選定指針
4.5 個人用保護具
 4.5.1 呼吸用保護具
 (1)呼吸用保護具の種類 (2)呼吸用保護具の選定(防護係数・指定防護係数) (3)使用上の留意事項(面体と顔面の密着性)
 4.5.2 保護衣およびその他の保護具
 (1)保護衣 (2)保護めがね(ゴーグル) (3)保護手袋・シューズカバー (4)呼吸用保護具の保守管理方法 (5)個人用保護具のJIS規格

第5章 食品および医薬品分野の拡散防止・ばく露防止対策の実際
5.1 食品分野における拡散防止技術の現状
 5.1.1 ゾーニング
 (1)ゾーニングの概要 (2)ゾーニングの設計  (3)ゾーニングの方法 (4)ゾーニングの実例
 5.1.2 清掃・洗浄
 (1)清掃・洗浄の分類 (2)残留物の除去方法  (3)残留物の評価方法 (4)清掃・洗浄作業による発生物の処理方法 (5)その他
 5.1.3 食品設備の気密化評価
 (1)穀物サイロ (2)密閉型コンテナ
 5.1.4 まとめ
5.2 医薬品分野におけるばく露防止対策
 5.2.1 医薬品プラントの例
 (1)ゾーニング (2)ヒトの動線・エアーフロー (3)製造プロセス (4)洗浄プロセス (5)まとめ
 5.2.2 医薬品におけるコントロールバンドの考え方
 (1)ばく露限界濃度(OEL)の算出  (2)ばく露限界濃度(OEL)の運用  (3)医薬品開発初期段階における活性成分のばく露限界幅(OEB)の設定・運用 
 (4)安全性データのない物質  (5)薬物粉じんばく露量のモニタリングおよび管理方法  (6)ナノマテリアルのコントロールバンド

第6章 ナノマテリアルのばく露防止対策ガイドライン(案)
6.1 ばく露防止対策の基本と考え方
6.2 ばく露防止対策
6.3 関連図表

付属資料
ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について
(平成21年3月31日 厚生労働省 労働基準局長通達)

索 引

はじめに

出版にあたって


 ナノ粒子、ナノ物質を素材とする製品は、この10年余りの研究・開発を通じ、本格的に普及する段階に移行しつつある。新物質の安全性やリスクを十分考慮せずに大量普及させたアスベスト、PCBなどを教訓に、本格的な普及を前に、その安全性評価とリスク管理の重要性が世界的に認識されている。わが国でも厚生労働省が、「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応について(基発第0331013号)」を2009年3月末日に通達した。この通達は「ナノマテリアルの生体への健康影響は、未だ十分には解明されていない」状況の中で、各事業者が予防的にばく露防止措置に努めることを定めたものである。
 国際的にも、ISO/TC229/WG3において、詳細は本書の最後で述べるControl Bandingの概念に基づくリスク管理法の仕様書が検討されている。ナノ物質の毒性(ハザード)に関する研究は多く、主要なナノ物質の暫定的な許容濃度も公表され始めている。しかし、開発後の年数が短く、特に低濃度の長期ばく露による健康影響は、十分な結論が得られていないため、公表された対策は、総じて概念的なものにとどまっている。製造者が実際に安全対策を講じる際に、具体的な技術的事例や指標が少ないため、実行が困難との要望が日本粉体工業技術協会にも寄せられた。同協会は、ナノ物質の安全性向上のためのガイドライン作成委員会を立ち上げ、粉体に関わる産学官の識者によりナノ物質の安全性確保に関わる知見、事例を、数年にわたり取りまとめてきた。
 本書は、その成果を集約したもので、製造者が、掲載された知見や具体例に基づいて製造プロセスを検討し、適切な設備などの設置、運用法を定め、ナノ物質の安全な製造を実行する一助となるため出版された。本書の最後には、安全性確保のための方法論をガイドライン試案として示した。前述したControl Bandingの考え方に基づくもので、重大な齟齬はないと思われるが、具体的な許容値など、今後の研究の蓄積により定めるべき部分も多く、試案にとどめ、適宜修正されることを前提としている。本書が、ナノ粒子、ナノ物質の安全な製造法の確立に寄与し、今後期待されるナノ粒子、ナノ物質を利用した新規機能性部材、製品の本格的普及の一助になれば幸いである。
 また、本書に記載された全事項は、ナノ粒子、ナノ物質にとどまらず、今後、新たに開発されると思われる様々な新規物質、新規製品の健全で安全な製造にも適用可能であると確信している。高い国際競争力を有する新規物質、製品の安全な開発・普及にも本書が貢献できることを切に願うものである。

東京農工大学
教授 神谷 秀博

買い物かごへ