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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいレアアースの本

定価(税込)  1,512円

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サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06928-4
コード C3034
発行月 2012年08月
ジャンル ビジネス

内容

レアアースは、電気・電子、自動車、鉄鋼など様々な 産業に利用されているが、その97%を中国に支配されている。本書では、レアアースの実像から説き起こし、代替、リサイクル・リユース技術、新たな資源開発技術をトコトンらしく図解でわかりやすく解説していく。

藤田和男  著者プロフィール

[59]、 [60]、[64]
東京大学名誉教授、芝浦工業大学MOT大学院(元)教授、ボランティア団体:Geo3 REScueForum代表、1965年東京大学工学部資源開発工学科(石油専修コース)を卒業して、アラビア石油(株)に入社、30年勤務。その間1969年から4年間石油開発本場の米国テキサス大学大学院へ社費留学、石油工学博士号(PhD)を取得して石油危機が始まる直前の1973年2月帰国する。その後アラビア湾のカフジ油田に8年余り、日中石油開発(株)の;勃海湾プロジェクトに2年余り、マレーシアのKL駐在代表として2年などの海外勤務計15年の海外勤務。1994年11月末アラビア石油(株)を退社して東京大学工学部教授に就任。1997年より大学院主任、1999年より地球システム工学専攻の専攻長(学科長)を務める。2003年3月東京大学を退官して芝浦工業大学にわが国初めて開設したMOT(技術経営〕大学院に招かれ7年間、2010年3用こ退職し現在に至る。専門は石油開発工学を主軸に石油資源論、地球環境・エネルギー論、プロジェクト経済評価など。

西川有司  著者プロフィール

第1章、[26]、[61]、[62]、[63]、36ページ、70ページ、152ページコラム
2008年から日本メタル経済研究所主任研究員として、2012年4月までレアアースを含む世界の資源の調査、研究に従事、現在JP SESOUFICES(株)社長および米国レアアース会社(USRareEarthslnc.)顧問や欧州復興開発訳行EGP顧問、国際資源大学校講師、資源素材学会資源経済部門委員会委員長。資源探査、開発が専門。1975年早稲田大学大学院資源工学修士課程修了し、三井金属鉱業(株)に入社。レアメタル、レアア-スを含む資源探査開発や資源プロジェクト評価などに従事3,1996年三井金属資源開発(株)より海外資源コンサルタントとして世界銀行、欧州復興開発銀行などの資源プロジェクトに従事するなど世界各国の資源プロジェクトを手がけてきている。世界鉱物資源デ-タ-ブック(1998)共著オ-ム社ほか、レアア-ス関係論文、記事など多数国内、海外で出版。

藤田豊久  著者プロフィール

第3章([26]は除く)、[39]~[42]、108ページコラム
1983年東北大学から工学博士。1995年~2003年まで秋田大学教授。2002年~3年秋田大学SVBL長。2003年から東京大学大学院工学系研究科教授。1986-8年米国ミネソタ大学客員研究員、1998年米国セントクラウド大学客員教授、東北大学客員教授。2005年~9年環境資源工学会会長。2012年より東京大学人工物工学研究センター長を兼任。他に、ベトナムおよび中国の大学の客員や名誉教授。専門は資源処理工学、リサイクリシグ、鉱物処理、環境浄化、機能性流体。約50の特許、約400の発表論文。

亀井敬史  著者プロフィール

第7章
1994年 京都大学工学部原子核工学科卒。1996年同大学院修士課程修了。1999年同大学院博士後期課程研究指導認定退学。工学博士。ローム株式会社、京都大学、国際高等研究所、立命館大学を経て現在、応用科学研究所でトリウム原子力を柱とする持続可能な社会構築の研究に従事。可搬型超小型トリウム溶融塩炉や高効率中性子加速器の開発に取り組む。環境先進国スウェーデンのNPO国際トリウム・エネルギー機構の日本代表を務める。

中村繁夫  著者プロフィール

6章
1974年 静岡大学大学院修士課程修了。蝶理に入社、希少金属・化成品を担当。同社レアメタル部門で30年間輪入買い付けを担当、世界100カ国を歴訪。レアメタル不足をビジネスチャンスと捉え、部下10数人の部門ごとMBOで独立、レアメタル専門商社を立ち上げた。2004年 アドバンス卜マテリアル・ジャパン(株)を設立、代表取締役社長に就任。2006年 アルコニックス(株)取締役副社長を兼任。2008年 副社長を退任。現在はアドパンスト・マテリアル・ジャパン(株)代表取締役社長。「ガイアの夜明け」、「カンブリア宮殿」、「NHK特集」、「夢の扉」など多くのメディアに出演。レアメタルを広く紹介する為の講演や著書「レアメタル・パニック」(光文社)、「レアメタル資源争奪戦-ハイテク日本の生命線を守れ」旧刊工業新聞社)「レアメタル起入門」(幻冬舎)など多数。

金田博彰  著者プロフィール

第2章
東京大学名誉教授。専門分野は資源探査工学および環境資源地質学(金属資源の探査および資源評価を専門とし、日本のみならず中国、韓国、ミャンマーをはじめ諸外国で鉱床調査を行ってきている。また、2000年に入り、資源消費と地球環境問題の関連性も研究課題にひとつとしている。)東京大学理学部卒業、同大学大学院工学系研究科修士課程修了、博士課程中退。東京大学工学部助手、助教授を経て東京大学工学系研究科教授(2004年3月退官)。2004年に東邦大学理学部教授。

美濃輪武久  著者プロフィール

第4章、[43]~[45]
信越化学工業(株)磁性材料研究所長。1976年東北大学工学部修士、同年工学部金属材料工学科助手、1982年信越化学工業(株)入社。希土類磁石の研究及び製造技術開発を担当。2009年より同社磁性材料研究所長。専門は属磁性材料、希土類磁石。

目次

はじめに

第1章 レアアースっていったいなんだろう?
1 レアメタルってどんなメタル?「資源が偏在し、金属の分離や精錬が複雑」
2 レアアースはレアメタルの仲間「レアアース17元素レアメタル47元素」
3 17元素の総称をレアアースと呼んでいる「レアアースは特性が似た元素のグループ名」
4 レアアースはどこにあるのか、なぜ日本にないの?「レアアース鉱床は大陸に分布」
5 レアアースは放射性元素のトリウムといつも一緒「よく共存しているがトリウムはレアアースではない」
6 レアアースは自動車、コンピュータなどたくさんの製品に使われる「ハイテク製品への利用拡大」
7 レアアースはハイテクを支える調味料の役割「添加剤として素材を変え機能を豊かにする」
8 レアアース原料は輸入に依存している「米国も日本も脱中国依存へ」
9 ハイテクには不可欠なレアアース「素材あっての憂いなし」
10 どんな産業に使われているの?「加工産業はレアアースがなければなりたたない」
11 まだまだ発見しよう機能ポテンシャル「元素の特性がわかってくると用途開発に結びつく」
12 用途がないレアアースや在庫になっているレアアースはどうなるの?「レアアース事業はバランス産業」
13 レアメタルのなかでレアアースの魅力はまだまだ拡大「レアメタルの中でも際立った力」

第2章 レアアース資源をどのように探すのか?
14 たくさんあるレアアース資源-世界の埋蔵量分布は?「鉱物資源は有限?」
15 鉱物と鉱石、それに鉱床はどのような関係「鉱石鉱物を多量に含むほど価値が高い」
16 レアアース鉱物種は豊富だが経済的な工業原料対象は少ない「鉱物の種類は豊富」
17 どのようにレアアース資源はできたのだろう「レアアース鉱床は火成岩が原点」
18 なぜ様々なタイプの資源があるのだろう「酸性火成岩の生成と密接な関連」
19 どのように資源を開発するの?「レアアースの資源開発法」
20 たくさん資源があるのに鉱山は少ない「レアアース資源の価値は何なの?」
21 開発技術も資源の種類で相違する「鉱床型によってかわる」
22 レアアース資源とトリウム問題「中国はどのようにしてきたのだろう?」

第3章 レアアースはどのように鉱石から取り出すの?
23 レアアース鉱物をどうやって集めるのか?「レアアースを集める2つの方法」
24 鉱物を選鉱するってどんなこと?「分離濃縮して品位を高める」
25 レアメタル鉱物も一緒に選鉱「選別し濃縮する」
26 放射線はどのように防ぐの?「トリウム貯蔵所には分厚い壁が」
27 副産物のレアアース鉱物も価格が上がれば選鉱する「経済的な価値が問題」
28 中国のイオン吸着鉱から簡単にレアアースが取り出せるの?「イオン吸着鉱」

第4章 レアアースの精錬はどのようにするのか
29 レアアース精鉱からレアアース元素を溶かし出す「レアアース水溶液」
30 溶媒抽出ってどんな方法?「攪拌と静置の繰り返し」
31 溶媒抽出法で様々なレアアース元素を分離「分離精製は結構大変」
32 どのようにレアアース酸化物から金属を作るの?「金属精錬法」
33 さまざまな用途に使われるレアアース「それぞれのレアアース化合物・金属」
34 レアアース磁石ってそんなにすごいの?「サマリウム磁石とネオジム磁石」
35 レアアース磁石の製造は手間がかかり複雑なんだ!「磁石合金の作り方」
36 日本のレアアース磁石は世界一「高性能磁石はほぼ日本が独占」
37 用途開発最前線、Nd磁石の新しい応用はまだまだありそうだ!「その高性能を活かして」
38 高価なレアアース元素の使用量を削減する省資源技術開発「価格の高騰に対応」

第5章 都市鉱山ってなに? リサイクルできるの?
39 “都市鉱山”てなんだろう?「レアアースをどう取る」
40 リサイクルの方法はどうするの?「より経済的なリサイクルを模索」
41 リサイクルはまだもうからない「工場内のリサイクルは行われているが・・・」
42 廃家電製品はどうやって集めるの?「法律の施行と3R概念の確立」
43 レアアースの代替えの研究は?「不安定な供給対策」
44 Nd磁石のリサイクルの方法は?「いろいろな再生方法」
45 レアアース元素のリサイクルはどうやるの?「最も有望なのはネオジウム磁石」

第6章 レアアースのマーケットと世界のトレーディングの実態
46 レアアースのマーケットの歴史「意外に知られていないレアアースの希土哀楽史」
47 レアアースの供給と需要量には差がある「増大する需要に資源開発は対応可能か?」
48 レアアースのお値段と最近の異常な値上がり「なぜレアアース市況は異常な乱高下をするのか」
49 レアアースの日本への輸入の実態「国家備蓄、日本政府の対応は?」
50 中国は20年にわたる戦略で世界を独り占めして輸出規制「中国は長期的視野に立ち産業政策を実行」
51 レアアースのトレーディング方法や価格の決め方は?「合理的な価格決定メカニズムが必要」
52 レアアース価格の高騰で、ハイテク産業はどうなるの?「多様化が進みさらに市場は拡大」

第7章 レアアースに含まれるトリウムの溶融塩炉原発とは
53 溶融塩炉原発とは?トリウムはどんなメタル?「ウランの次に重い元素」
54 トリウムの利用の歴史と原爆の材料に不合格「少量だがいろいろな所で使われてきた」
55 トリウム溶融塩炉ってどんな原子力発電機?「最も効果的に活用する方法」
56 スマートグリッドにも役立つトリウム溶融塩炉「燃料棒のない原発」
57 溶融塩炉は超小型にできるし津波や地震にも安全「超小型発電設備も可能」
58 トリウム発電技術の世界の動きとエネルギー源の可能性「残った課題を克服するための研究」

第8章 レアアースの地政学リスクとは?
59 地政学(Geopolitics)のルーツは?「歴史の流れを積み上げた積分的考察」
60 レアアースの埋蔵量と生産量の需要量の世界分布「偏在しているわけではないレアアース」
61 家電立国日本の存亡にかかわるレアアース問題「家電部品の製造に不可欠なレアアース問題」
62 レアアースの地政的リスクへの対策-米国は着々と進めている「米国の「グリーンエネルギー革命」にはレアアースが不可欠」
63 日本のニーズに合うレアアース資源と人材育成を!「重レアアース元素を多く含む資源」
64 総合ハイテク・資源エネルギー国家戦略を!「各国とも力を入れる」

【コラム】
●原料を中国に完全制覇された米国や日本
●今、資源開発ラッシュ、期待されるレアアースの生産量
●カザフスタンの原爆実験場がレアアースの生産基地になるかも?
●永久磁石開発の歴史
●なんで廃棄物を都市鉱山というのか?
●中国の環境問題
●北海道の畑作、北限をトリウム発電で農業工場に-夢への挑戦
●これから国際紛争の火種が絶えないかも!先ず欧米は中国をWTOに訴えた

レアアースにかかわる年表

あとがき

参考文献

はじめに

  この本を手にしたあなたは、「ジスプロシウム」や「テルビウム」、「ネオジム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 恐竜の名前ではありません。これらは日本の自動車産業、通信・家電機器の製造に無くてはならない貴重な希土類と呼ばれる元素です。

英語では「レアアース」と呼ばれ、希少金属「レアメタル」31鉱種の一つです。そしてこのレアアースは他の30鉱種にない素晴らしい機能と効用を持った“優れもの”の集団で、なんと17元素の仲間で構成されているのです。今やレアアースは、電気・電子、自動車、光、セラミック、エネルギー、医療、鉄鋼、機械など様々なハイテク産業で幅広く利用され、高機能材料としての重要性を増し、私たちの生活になくてはならないものになっています。
しかし現在、そのレアアースの世界マーケットの97%は中国に握られている上、その中国が、自国の国内需要、資源保護、環境対策を理由にレアアースの輸出を制限し始めました。2010年9月の尖閣諸島事件を契機にした中国のレアアース原料の大幅輸出削減は日本のレアアース調達に打撃を与えました。ハイテク産業を発展させてきた加工技術立国の日本にとって、レアアース原料の安定供給は、産業の維持発展を阻害しかねない深刻な問題です。レアアースの供給障害が起これば、レアアースメーカーや加工産業だけでなく、レアアース製品のユーザーにも影響を与え、その影響はあらゆる産業に及びます。

米国では、レアアースは軍需産業に不可欠な素材であり、日本以上に中国の輸出削減に危機感を募らせています。希少金属のリサイクルの研究やレアアース使用量の減量化、代替製品の開発研究なども開始されましたが、中国は輸出削減に加えて自国内に磁石工業団地をつくり、日本企業を誘致しようとしています。生産拠点を中国に移転してしまえば、日本のハイテク技術の産業基盤が失われかねません。

もう一つまったく別の面からレアアースを見てみましょう。実はウランと同じように放射能をもつトリウムはレアアースと共存し、レアアース鉱物の中にレアアース元素と一体となって埋蔵されていることが多いのです。これまでトリウムは邪魔者として除かれた後のレアアース原料を日本は、輸入してきたため放射性物質のトリウムへの関心は低く、資源開発の対象ではありませんでした。
ところが福島原子力発電所の事故後、いち早くアメリカ、中国では、トリウムはウランと違いプルトニウムを出さないのでクリーンで安全性の高い原子力発電の燃料として、その重要性が再認識されてきました。特に、ウラン型原発依存からの脱却の是非の議論が活発となる中、トリウム発電の可能性を、わが国でも遅れを取らずに探るべきでしょう。中国ではレアアースの生産から得られるトリウムの備蓄を既に始め、トリウム溶融塩炉発電の技術開発を2011年1月からスタートしました。核拡散防止につながるトリウム発電が見直されてきたわけです。本書では第7章(125ページ)にトリウムの溶融塩炉原発とはなにかやさしくとりあげています。

実は私は、これまで「レアアース」のことはあまり気に掛けませんでした。ところが2008年夏、原油価格が史上最高値に暴騰したころから、「日本産業に必要不可欠な貴重なレアメタルやレアアースの価格が暴騰している・・・、輸入量が激減するかも・・・」とにわかに世間が騒がしくなり、「これは何かしないといけない」という気持ちになりました。そこで年来の友人で、国際メタル実業界のエキスパートである日本メタル経済研究所に所属していた西川有司氏に相談し、執筆適任者を集めて頂きました。そして私が過去に本書のシリーズでお世話になった日刊工業新聞社の出版局にお引き受け頂き、大急ぎで編集委員会を設置し、出版に漕ぎつけたのがこの本です。

執筆者の面々には、金属鉱物学、鉱床学のご専門の東大名誉教授の金田博彰先生、東大で鉱物選鉱、精錬学を教えている藤田豊久教授、同じ分野で産業界の実務派、レアアース磁石の第一人者信越化学磁性材料研究所長の美濃輪武久氏に加え、応用科学研究所の特別研究員でトリウム溶融塩炉発電に詳しい亀井敬史氏に執筆頂きました。さらには国際レアアースマーケットや輸出規制状況や価格推移などに詳しく、世界を股にかける国際レアメタルトレーダーのAMJ社の中村繁夫社長にも執筆に加わって頂きました。

トコトンやさしく「レアアース」のことがわかる本は本書が日本初でしょう。みなさんの座右の本として推薦します。本書では「レアアース」の技術的側面の深堀だけでなく、国民の理解を深めるため、時宜を得た啓発書としてさらに質実向上したと自負する次第です。最後に執筆者の諸先生に心から敬意を表します。

2012年8月
東京大学名誉教授 監修者・編集委員長 
藤田 和男

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