買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい熱設計の本

定価(税込)  1,512円

著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06915-4
コード C3034
発行月 2012年07月
ジャンル ビジネス 機械

内容

電子機器の設計における熱の対策について、「なぜ熱くなるの?」といったエネルギーの流れから解説した本。電子部品の多機能化・高密度化に伴って課題となっている熱設計を根本からやさしく紹介。熱のメカニズム、熱設計の基本プロセス、具体的な設計例など、設計者の入門書としても最適となっている。

国峰尚樹  著者プロフィール

(くにみねなおき)
(kunimine@thermo-clinic.com)
1977年 早稲田大学理工学部卒業、同年沖電気工業(株)入社。電子交換機の冷却技術開発、パソコン、プリンタ、HDD、デバイス等の熱設計、熱流体解析システムの開発に従事。2007年 (株)サーマルデザインラボを設立。「熱問題の撲滅」をめざし、東奔西走の日々を送っている。
主な著書に、エレクトロニクスのための熱設計完全入門、トラブルをさけるための電子機器の熱対策設計、電子機器の熱流体解析入門(いずれも日刊工業新聞社)などがある。

藤田哲也  著者プロフィール

(ふじたてつや)
1981年 日本大学理工学部機械工学科卒業
同年 沖電気工業(株) 電子通信事業部 実装技術部入社
無線/有線伝送装置の実装設計に従事
2002年 (株)ジィーサス入社
現在 (株)ジィーサス 熱設計ソリューション部 部長

鳳 康宏  著者プロフィール

(おおとりやすひろ)
1993年 東京理科大学 工学部 機械工学科 卒業
同年 (株)リコー 入社
複写機の設計に従事
1998年 (株)ソニー・コンピュータエンタテインメント 入社
PS2(R)、PlayStation(R)3の設計に従事
現在 同 第一事業部 設計部5課 課長

目次

序章 そもそも、熱設計とは?
1 熱設計ってなに? 「「熱対策」との違い」
2 「だいたいどのくらいか」で十分! 「各種仕様から事前に見積る」
第1章 なぜ熱くなるの?熱いとどうなるの?
3 なぜ電気製品から熱が出るの? 「電気製品の構造とエネルギー変換」
4 どこから熱が出る? 「発熱原理と発熱源」
5 能動部品と受動部品 「電気エネルギーの利用と制御」
6 プリント基板も発熱する? 「電気抵抗と発熱」
7 最近の熱問題 「難易度が増す熱問題」
8 熱いとどうなるの? 「発熱と製品事故」
9 電球とLED 「熱放射の有無による影響」
10 コンピュータ 「高速化・微細化による熱の壁」
11 電源、インバータ 「トランスやダイオードの損失」
12 車の中って暑いんですけど? 「動作温度と保存温度」
13 太陽は巨大なストーブ? 「日射による温度上昇」

第2章 そもそも、熱ってなに?
14 そもそも、熱ってなに? 「熱の単位は?」
15 熱とは「エネルギー」です 「1Jのエネルギーに出来ること」
16 エネルギーは発生も消滅もしない 「エネルギー保存則」
17 熱エネルギーも他のエネルギーと同じ 「エネルギー保存則」
18 では、温度ってなに? 「熱と温度の違い」
19 電化製品の中のエネルギーの流れ 「エネルギー保存則は絶対!」
20 熱も水が流れるが如く 「熱力学第二法則」
21 温度が上がるしくみ 「温度上昇と定常状態」
22 冷却機構とは 「熱を「消す」ではなく「運ぶ」」
23 熱の移動手段は3通りだけ 「伝導・対流・放射」
24 固体の中を移動 「伝導と熱伝導率」
25 流体と一緒に移動 「対流と対流熱伝導率」
26 対流熱伝達率の求め方 「状況によって変わる状態値」
27 宇宙に広がる太陽の熱 「放射と放射率」

第3章 熱を広げて冷やす
28 電子機器の熱はどこを通って逃げるのか? 「電子機器の放熱経路」
29 熱が放熱経路を通りやすくするには? 「放熱経路と熱対策」
30 部品の温度を下げる方法は三つだけ! 「熱対策の分類」
31 熱抵抗ってなに? 「熱設計に不可欠な「熱抵抗」」
32 直列熱抵抗では最大熱抵抗部を攻める! 「熱対策の基本!(1)」
33 並列熱抵抗では最小熱抵抗部を攻める! 「熱対策の基本!(2)」
34 フィンを設けて放熱面積を増やす 「放熱器による伝熱面積の拡大」
35 熱を伝えて表面積を増やす 「熱拡散による伝熱面積の拡大」
36 熱を基板に伝えて冷やす 「配線パターンによる熱拡散」
37 筐体に接触させて熱を逃がす 「筐体への放熱活用」

第4章 風を吹いて冷やす
38 風が吹くとなぜ冷える? 「対流熱伝達率の増大」
39 換気扇と扇風機は働き方が違う 「風量と風速の役割」
40 換気に必要な風量は簡単に計算できる 「物質移動による熱輸送」
41 扇風機の吹き出し側は風速のばらつきが大きい 「局所冷却ファンの使い方」
42 ファンは静かに使いましょう 「ファン騒音の低減」
43 煙突をつければよく冷える! 「煙突効果を使った冷却法」
44 流れを乱せばよく冷える! 「乱流促進による冷却」

第5章 奥の手で冷やす
45 水冷にすればよく冷える? 「水冷といっても結局は空冷」
46 熱伝導率無限大の魔法の棒 「ヒートパイプ」
47 ヒートパイプの使い方 「PS3(R)での実装例」
48 冷たい空気の作り方 「冷熱サイクル」
49 クーラー、冷蔵庫のしくみ 「気化熱」
50 熱を逆流させる電子デバイス 「ペルチェ素子」

第6章 温度を予測する
51 伝熱の基礎式は熱設計に使えるの? 「伝熱の基礎式を使った実務熱計算」52 伝熱の基礎式をもっと大規模に組み合わせよう! 「熱回路網法の活用」
53 熱流体解析を使いこなす! 「熱流体CAE活用のための課題」
54 一人前のメッシュが切れるには十年かかる? 「離散化誤差を抑えるメッシュ分割法」

第7章 正しく測定できてますか?
55 温度の測り方 「目的別測定留意点」
56 熱電対とは? 「測定原理」
57 熱電対温度計の使い方 「原理を理解した使い方」
58 放射温度計の使い方 「放射率設定の重要性」
59 チップ部品の測り方 「間接測定原理」

第8章 開発現場の熱設計
60 PS3(R)を例題に熱計算してみよう 「開発現場の熱設計」
61 熱設計で最初にやること 「密閉筐体でデザインできるか」
62 箱の表面から出る熱量は? 「必要換気量の計算」
63 ファンの性能と箱の空気抵抗 「P-Q線図」
64 いろいろなファン 「各種ファンのP-Q特性」
65 熱設計では最初にファンを決める 「ファンの選定方法」
66 自然換気か強制換気か 「煙突効果による換気量」

コラム
●実装技術ってなに?
●単位は重要!
●エネルギーの話
●熱設計とEMC
●ネジ・ギヤ・ヒートパイプ
●手計算のススメ
●開発体制・チームワーク
参考文献

はじめに

 「熱設計」という聞き慣れない言葉を初めて耳にしたのは35年前になります。その頃「熱設計」と言えば、電源やアンプのヒートシンク設計や、ファンの選定、通風口面積の計算などを指していました。熱は、ほんの一部の設計者、専門家が関わるもので、一般には「何かあったら、ヒートシンクやファンをつけて何とかするもの」という「後処理」の認識しかありませんでした。装置の大きさや発熱量にも余裕があり、「後付け」が可能だったのです。
 しかし、当時機械室に鎮座していたような高性能機器が、スマホやデジカメ、ノートPCに形を変え、誰もが携帯する時代になり、開発者は総力を上げて熱と格闘するようになりました。使う人も熱に敏感になり、「あの製品は熱くて夏場にフリーズする」などの噂がネットを駆け巡ります。
 そこで、最初から熱を考えて設計をしようと思い、勉強を始める人もたくさんいます。ただ、伝熱工学は「電気屋さん」が学校であまり触れることのない技術分野でもあり、熱設計への道のりはあまりにも遠く、挫折する人も少なくありません。「門外漢にもわかるやさしいガイドブックはないものか?」そんな声も何度か耳にしました。
 そんな中、日刊工業新聞社の「トコトンやさしいシリーズ」で熱設計の企画が持ち上がりました。早速、熱設計コンサルタントの藤田氏を巻き込んで構成案を作りました。しかし、極力数式を使わず、絵で理解でき、実践にも役立つ本というハードルは高く、遅々として執筆が進みませんでした。

 その頃、長年PlayStation(r)3(PS3)の熱設計を手掛けているソニー・コンピュータエンタテインメントの鳳氏と出会いました。
 「手計算で熱設計できない人にはCAEは使わせない!」など、ユニークな私見を持ちながら、常に「わかりやすい表現で設計ノウハウを後輩に伝承すること」を考える姿勢に共感し、執筆への参加を依頼しました。こうして執筆スタイルが全く異なる三人が共同作業を始めることになりました。本書の構成と執筆者は次のとおりです。

序章(鳳)は「熱設計とはなんぞや」という基本について、難しく捉えている方々の肩の力を抜くことを目的とした章です。
第1章(藤田)では、電子機器と熱との関わりをやさしく説明しました。熱を考えることの大切さを知って頂く章です。
第2章(鳳)は、熱の基本原理のなかで、設計に使える便利な部分だけを抽出してわかりやすく解説した章です。
第3章~第4章(国峰)では、熱設計に必要な常套手段について解説しています。熱設計を担当される方には基礎知識となる内容をまとめた章です。
第5章(鳳)では、新しい冷却デバイスについてその原理や使い方をやさしく解説しました。
第6章(国峰)では、熱設計に必要な温度予測手法について説明しました。今や設計に広く浸透した熱流体シミュレーションについても解説しました。
第7章(藤田)では、製品の信頼性保証で重要な「温度測定」について解説しました。現場で作業を行う際の泥臭い話も交え、より実用的な話を入れました。
第8章(鳳)は、PS3を例にして、「熱設計とはどんな手順で何を考えるか」を解説しました。具体的な数字をもとに、冷却能力を決める手順を簡潔に説明しており、業務で設計を担当されている方には是非読んで頂きたい章です。

 「わかりやすさ」を重視したため、理論的には厳密さを欠く記述も多々あります。また、それぞれが書きたいことを自分流の個性で執筆したため、硬軟織り交ぜた一冊に仕上がっています。少しでも「熱」を身近なものに感じ、製品設計に活用して頂ければ幸いです。
 最後に、貴重な写真・文献・資料・データを提供して下さった多くの企業の方々、そして有益な助言を頂いた日刊工業新聞社出版局の鈴木徹氏に心から感謝いたします。

2012年6月20日
執筆者代表 国峰尚樹

買い物かごへ