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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい炭素繊維の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06914-7
コード C3034
発行月 2012年07月
ジャンル ビジネス 化学

内容

航空機や次世代自動車への有望素材として注目される炭素繊維。その軽さや強さだけでなく、高い熱伝導率、X線透過性などさまざまな特徴を生かした用途の広がりが今後期待される。本書は炭素繊維について、特性、製造方法、各分野での応用までをわかりやすく解説する。

平松 徹  著者プロフィール

(ひらまつ とおる)
1944年 東京生まれ
1968年 京都大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了
同年 東レ(株)入社
1970年から34年間に渡って、炭素繊維、炭素繊維中間基材、炭素繊維複合材料に関して、順次、研究、技術開発、技術戦略企画、技術マーケティングに従事
     (1990年:複合材料研究所トレカ(炭素繊維)研究室長、1997年:トレカ(炭素繊維)技術部長、2000年:ACM(先端複合材料)技術部長)
2004年 同社退職
2005年 独立行政法人科学技術振興機構(JST)「さきがけ」研究プロジェクト「生命現象と計測分析」領域技術参事。さきがけ研究者の支援事業の企画・運営に従事
2011年 担当領域の研究期間終了に伴い退職
現在 平松先端材料事務所を開設、技術コンサルタント
(株)東レ経営研究所 特別研究員
STEP-21(滋賀県 シニア テクニカル エンジニアリング パートナーズ企業組合)
主席コンサルタント

<受賞>
1993年度 高分子学会賞(技術)
「超高強度炭素繊維の開発」

目次

第1章 炭素繊維とは
1 炭素繊維とは「炭素繊維の定義と特徴」
2 炭素繊維の種類「PAN系炭素繊維とピッチ系炭素繊維」
3 炭素繊維はいつ発明され、いつ工業化されたか「炭素繊維の発明・開発・工業化の歴史」4 PAN系炭素繊維の作り方「製造工程と化学構造の変化」
5 PAN系炭素繊維はどんな構造「PAN系炭素繊維の微細構造モデル」
6 炭素繊維の理論強度・弾性率と実測値「理論強度・弾性率と実測値の比較」
7 強度を高くする「PAN系炭素繊維の強度向上の歩み」
8 弾性率を高くする「PAN系炭素繊維の弾性率向上の歩み」
9 PAN系炭素繊維の品ぞろえ「PAN系炭素繊維の品種構成」
10 ピッチ系炭素繊維の2つのタイプ「メゾフェーズ(異方性)タイプと等方性タイプ」
11 ピッチ系炭素繊維の特性と品ぞろえ「特性と品種構成」
12 炭素繊維の機能的特性「熱的・電気的・化学的特性など」
13 炭素繊維の広がる用途「用途と需要量拡大の歩み」
14 炭素繊維の拡大する市場「炭素繊維市場の拡大の歴史」

第2章 炭素繊維複合材料とは
15 炭素繊維複合材料とは「炭素繊維複合材料の定義と種類」
16 母材(マトリックス)に使われる樹脂「マトリックス樹脂の種類と特性」
17 炭素繊維強化樹脂複合材料の強度・弾性率「一方向CFRPの強度・弾性率と異方性」
18 力学的特性の種類と補強繊維による特性の差異「引張特性、圧縮特性、曲げ特性と補強繊維」
19 複合材料は設計の自由度が大きい「複合材料部材設計の特徴」
20 熱可塑性樹脂複合材料(CFRTP)の特性「CFRTPの長所と短所」
21 複合材料の優れた耐疲労性、振動減衰性「耐疲労特性、振動減衰性」
22 複合材料の機能的特性「比熱、熱膨張率、熱伝導率、電気伝導率」
23 炭素繊維の中間基材とは「中間基材の種類と作り方」
24 部材・部品の成形方法(1)「部材・部品の成形方法(全般)」
25 部材・部品の成形方法(2)「オートクレーブ法、レジントランスファー法など」
26 部材・部品の成形方法(3)「フィラメントワインディング法、射出法など」
27 サンドイッチパネルの成形方法「サンドイッチパネルの構成と特徴」
28 CFRP成形品の検査・品質保証「検査・品質保証の概要」
29 C/Cコンポジットとは「製造方法、特徴、用途」

第3章 スポーツや日常生活で使われる炭素繊維
30 スポーツで愛用される炭素繊維「スポーツ用具へのCFRPの適用状況」
31 ブラックシャフトで飛距離アップ「ゴルフシャフトの基材・積層構成と特徴」
32 カーボンロッドは細・軽・ピン「釣竿の基材・積層構成と特徴」
33 炭素繊維でデカラケ・厚ラケ・長ラケ誕生「ラケットの基材・積層構成と特徴」
34 多くのスポーツ用具がカーボン化「さまざまなスポーツ用具へ広がるCFRP」
35 炭素繊維でノートパソコンの軽量化「パソコンのハウジングへの適用」

第4章 土木・建築や一般産業用機械などで使われる炭素繊維
36 炭素繊維シートで橋脚の耐震補強「炭素繊維シート接着工法の特徴」
37 CFRP板で高架道路床板の耐震補強「CFRP板接着工法の特徴」
38 CFRPで軽量建材「立体トラス構造やライトルーフの特徴」
39 CFRPの土木・建築へのいろいろな適用例「軽量高欄、ケーブル・ロッド、電磁波シールド壁」
40 カーボンコンポジットロールで高速回転「CFRP製ロールの特徴と用途」
41 カーボンCT天板やカーボンロボットアーム「医療用X線機器やロボットへの適用状況」
第5章 自動車やエネルギー関連用途で使われる炭素繊維
42 自動車では、レーシングカーから使われ始めた「レーシングカーやスーパーカーへの適用状況」
43 汎用自動車への展開「汎用自動車へのCFRPの展開構想」
44 CFRP製のプロペラシャフトは軽量・安全「CFRP製プロペラシャフトの展開状況」
45 CFRP製外板は軽量化と意匠性「CFRP製外板の展開状況」
46 大量生産型・低コスト成形技術の開発「ハイサイクル一体成形技術の開発」
47 天然ガス自動車用カーボン高圧タンク「圧縮天然ガス(CNG)用高圧タンクの特徴」
48 燃料電池自動車に使われる炭素繊維「燃料電池の電極と高圧水素タンク」
49 風力発電の羽根の大型化「軽量化と高剛性化による羽根の大型化」
50 小型風力発電の軽量・静音化「羽根のCFRP化による軽量・静音化」
51 ウラン濃縮遠心分離機やスーパーフライホイールを超高速回転「ウラン濃縮遠心分離機やスーパーフライホイールへの適用」
52 海底油田掘削プラットフォーム「海底油田掘削用のCFRP製パイプやケーブルの開発状況」

第6章 航空・宇宙用途で使われる炭素繊維
53 大型旅客機へのCFRPの導入と発展「大型旅客機へのCFRP適用の歴史」
54 エアバス社での1次構造への適用「1次構造へのCFRP適用の歩み」
55 ボーイング社での1次構造への適用「新規高靭性CFRPの開発とB777の1次構造への適用」56 超大型エアバスA380への適用「A380へのCFRP適用状況とA350への適用計画」
57 ボーイングB787ドリームライナーへの適用「B787へのCFRP適用状況」
58 B787におけるCFRP大量使用のメリット「機体構造のCFRP比率50%の効果」
59 国産リージョナルジェットMRJへの適用「MRJの尾翼桁間構造への新成形法の適用」
60 ホンダビジネスジェットへの適用「胴体へのCFRPの適用状況」
61 ジェットエンジンやヘリコプターへの適用「高効率、低騒音、軽量化」
62 人工衛星への適用「人工衛星へのCFRPの適用状況」
63 国産ロケットH?ⅡAへの適用「H?ⅡAへのCFRP適用状況」

第7章 炭素繊維の展望と課題
64 炭素繊維による航空機のCO2排出量削減「LCAケーススタディー(航空機)」
65 炭素繊維による自動車のCO2排出量削減「LCAケーススタディー(自動車)」
66 リサイクル技術の開発「炭素繊維協会によるリサイクル技術開発の状況」
67 飛躍的な需要の拡大が期待できる炭素繊維「炭素繊維の飛躍的拡大への展望と課題」
【コラム】
●エジソンと京都府八幡市の竹
●炭素繊維とマトリックス樹脂の接着力
●日常生活に密着した炭素繊維の用途
●PAN系およびピッチ系炭素繊維の発明とセレンディピティ
●炭素繊維の本格的商業生産の開始とその後のグローバル発展
●炭素繊維の電波望遠鏡や宇宙ステーションでの活用例

参考文献
索引

はじめに

 今、炭素繊維が注目を集めています。
 機体構造重量の50%が炭素繊維複合材料から作られた革新的な旅客機であるボーイングB787ドリームライナーの世界初の運航が昨年11月に日本で開始されました。B787は炭素繊維複合材料を大量に使用することで大幅な軽量化が図られ、燃費が20%改善しただけでなく、与圧や湿度を従来より高く設定できるなど客室快適性も向上しています。さらにB787の生産には炭素繊維複合材料の原料基材の供給や機体の製作に、日本企業の寄与が非常に大きいことも関心を引いています。
 また、炭素繊維は自動車の軽量化の切り札としての期待が持たれています。地球温暖化の問題が大きく取り上げられていますが、自動車の軽量化による燃費の向上を通じた二酸化炭素排出量削減への取り組みが本格的に開始されています。
 さらに、グリーンエネルギーの主力として期待されている風力発電においても、発電効率アップのために羽根の大型化が進展する中で、大型化に伴う重量の増加や羽根のたわみの増大という課題に対して炭素繊維は大きな役割を果たしつつあります。
 炭素繊維がこのように航空機や自動車などの軽量化の切り札と期待される理由は、鉄と比較して比重が1/4と軽く、単位重量当たりの強さが10倍以上、硬さが7倍以上という高い力学的特性を有することにあります。炭素繊維はそのままで使われることはなく、樹脂などの中に埋め込まれた複合材料として使われます。炭素繊維複合材料は強度や弾性率が高いことに加えて、耐疲労性、振動減衰性や耐腐食性に優れ、X線透過性が高い、熱伝導率が高い、熱膨張率が極めて小さく寸法安定性に優れるなどの特徴があり、複数の特徴を活用した応用も多く行われています。
 炭素繊維は40年前、1970年代初期に本格的商業生産が開始されて以来、最初はゴルフシャフト、釣竿、テニスラケットなどスポーツ用途で活用されました。1980年代に入り大型旅客機の構造材料としての活用が始まり、1990年代に入って印刷機や製紙機などのローラー、圧縮天然ガス自動車用の高圧タンク、高速道路などの橋脚の耐震補強など産業用途に展開されて、2011年の全世界使用量は約3万8千トンまで拡大してきています。
 また、炭素繊維はその発明・開発・工業化およびその後の高性能化などにわたって日本の寄与が非常に大きく、生産量も世界の約70%を日本の炭素繊維メーカーが占めているなど、日本が世界をリードする重要な先端材料です。
 炭素繊維やその応用について専門書や学術誌で多くの発表がなされていますが、一般の方向けの本は少ないようです。炭素繊維に対する理解を広め、炭素繊維の活用による省エネルギー・二酸化炭素排出量削減や日常生活の豊かさの向上が進む一助になればと考えて本書に取り組みました。
 出版に際しては、多くの文献や資料を参考にさせていただき、同時に図表の引用をさせていただきました。さらに、炭素繊維やその応用に関係する企業や研究機関から写真を提供していただきました。ご協力をいただきました多くの方々に、厚くお礼を申し上げます。また、日刊工業新聞社出版局の田中さゆり氏をはじめ関係者各位には大変ご尽力をいただき感謝いたしております。
 出来るだけ分かりやすくと心がけましたが、不十分なところも多いかと思います。あるいは、さらに深く知りたいと興味を深められた方もおられるかと思います。その際は巻末に記載した参考文献などを参考にしていただければと考えます。
 炭素繊維は今後さらに大きく発展して本格的な拡大期を迎えると考えますが、本書が炭素繊維とその応用についての理解を深め、その大発展の一助となれば幸いです。
 
2012年7月                            
平松 徹

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