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おもしろサイエンス
冷凍技術の科学

定価(税込)  1,620円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06916-1
コード C3034
発行月 2012年07月
ジャンル ビジネス

内容

冷凍技術は、システム・機器の進歩とともに、細胞と水分の関係などの研究が進んだ事により、今、急速に発展している。本書では、「モノを冷凍する」とはどういうことなのかから、新たな冷凍技術・機器、広がる応用範囲までを具体的エピソードを交え、わかりやすく解説する。

高橋 守  著者プロフィール

(たかはし まもる)
 希釈冷凍機関係メーカー顧問、工学博士。1950年生まれ、国立大学工学関連の研究科卒。希釈冷凍メーカーで冷凍物理の研究リーダーを長く務めるかたわら、公的資金によるプロジェクトなどに参加。メーカー退職後、顧問として後輩の指導に従事する一方、私立大学の客員教授を務める。

目次

はじめに

第1章   歴史からみる冷凍の仕組み
冷凍とは〝人為的に凍結〟させること―微生物や化学的な作用を抑制
冷凍技術は「気化熱」のやりとり―水は蒸発時に80倍の熱を持ち去る
  冷凍技術の発端は16世紀から?―水を冷やしたり、凍らせたりする“技術”
  18世紀から理論、発見相次ぐ―冷凍機関の発展は蒸気機関の発展と表裏一体
  蒸気力利用陸上車の先駆者エバンス―史上最も影響を及ぼした化学者ファラデー
  ティロリエがドライアイスを製造―医師のゴーリーが製氷機械を考案
  ジュール・トムソン効果―液体と気体の境界がなくなる「臨界温度」発見
  “魔法瓶の元祖”「デュワー瓶」誕生―1926年には新しい冷却法
  簡便なヘリウム液化機が世界に貢献―核磁気冷却、希釈冷却法など極低温領域へ
  低温を生み出す「三つの方法」―冷凍機などはこの三つのいずれかを利用

第2章   冷凍するにはいろいろな方法がある
  冷凍サイクルは熱のエネルギーを利用―媒体となる物質を「冷媒」という
  冷媒が循環している「冷凍サイクル」―蒸発・圧縮・凝縮・膨張を繰り返す
  冷凍装置の冷却できる能力を「冷凍能力」―周囲から熱を奪う量を「冷凍効果」
  循環する冷媒はなくならないのか―雲と雨の関係を圧縮機と凝縮器がしている
  優れモノ、オゾン層を壊すフロン―使用が禁止され回収が義務付け
  フロンに替わり自然冷媒復活―新冷媒開発が世界的テーマとして急がれる
  フロンは回収され、再生、または分解―回収技術と破壊技術に大別される
  処理義務がないイソブタン―地球温暖化係数は約400分の1
  冷媒の代わりに水素吸蔵合金を使用―脱フロンへの切り札の一つにも
  超低温による急速凍結も可能に―二段階圧縮冷凍機で稼働することを可能に
  期待されるエジェクタ冷凍サイクル―エジェクタで効率低下を防止
  細胞を壊さず冷凍・解凍できるCAS冷凍技術―「過冷却」現象を利用
  高圧静電誘導エネルギーで急速凍結―マイナス3℃の庫内で解凍も
  音エネルギーで強制的に熱を奪う―それを冷却に利用する「熱音響冷凍」
  太陽熱で冷却する―ニューサンシャイン計画

第3章   どんどん新しくなる冷凍機器
  冷蔵庫は気化熱で庫内を冷やす―冷媒を圧縮し液体にして気化する
  冷媒を吸収する液体を使う吸収型―産業用の大型冷蔵庫での使用に適す
  冷蔵庫の冷却には直冷方式と間冷方式―冷蔵庫はエアカーテンになっている
  チラーは熱源や装置等の温度を一定に保つ―冷媒を使った冷凍機と水回路からなる
  「ペルチェ効果」利用の電子式冷蔵庫―小さく騒音が少なく安価
  製氷機はブラインを循環させて氷を作る―ブラインは冷却力を運ぶ不凍液体
  蓄冷器を介するスターリング冷凍機―スターリングエンジンで温度差
  世界初の「高効率蒸気だき吸収冷凍機」―高い省エネ性と環境性などが特徴
  冷凍車は運転席で低温を管理―液体窒素を使ってマイナス50℃以下にも
  環境に優しい冷凍車発電式冷凍装置GBS―余った電気はバッテリーに蓄電
  天体望遠鏡「すばる」に利用されている冷凍機―取り付け自由のGM冷凍機
  単純な管で構成されるパルスチューブ冷凍機―運転時の振動が小さいのが利点
  省エネルギーかつ環境調和型冷凍機―従来の冷凍機に代わる磁気冷凍システム

第4章   今やこんなものまで冷凍できる!
  食品は長期保存を目的に冷凍―マイナス18℃なら1年程度保存可能
  冷凍食品は〝鬼門〟通過がポイント―「最大氷結晶生成帯」を一気に通過する
  下ごしらえ・調理・急速冷凍・包装―合格した冷凍食品は一貫してマイナス18℃
  冷凍食品の始めは「イチゴ」から―学校給食が普及に大きな役割
  精子の冷凍保存は液体窒素で“瞬間冷凍”―「リスクはまったくない」
  冷凍精子の歴史は230年以上―最初の精子バンクは日米に誕生
  女性の卵巣凍結保存も始まっている―卵子凍結は技術的に完成している
  癌の治療にも凍結療法―超低温で急速冷凍
  低温冷凍外科をめぐって活発な研究―ナノ医学にも大きな期待
  骨移植の骨の再建に最も有利な最新技術―「自家液体窒素処理骨移植」
  ティースバンクは再生医療―保存した歯を移植・再利用
  生きている体が対象のコールドスリープ―死後の体が対象のクライオニクス
  人体凍結は血液を入れ替え液体酸素で凍結―ただし多くの国で人体凍結は違法
  研究進む生物の低温保存技術―精子・卵・胚などの冷凍保存技術は確立
  超伝導マグネットはマイナス269℃まで冷却―風力発電タービンにも応用
  3000℃を冷却するロケット冷却装置―アブレーション冷却やフィルム冷却など
  冷凍船舶の最大能力はマイナス約50℃―マイナス162℃のLNG船はシンプル構造
  無数のパイプが銀盤を作るスケートリンク―ブライン液に冷却され凍っていく
  優秀者に与えられる「冷凍技師制度」―「冷凍空調技師」と「食品冷凍技師」
  「冷凍空気調和機器施工技能士」という国家資格も―1級は厚生労働大臣認定

コラム  
  戦艦「大和」「武蔵」は冷房完備
  人命を救うため己の命を縮めた医師ゴーリー
  私たちを守っているオゾン
  「チラー」と「冷凍機」は違うの?
  叩きあげの〝化学者魂〟―マイケル・ファラデー
  種々の特異な性質を示す液体ヘリウム
  テッド・ウィリアムズが冷凍保存に

はじめに

  「冷凍」という技術について調べていくと、「低温物理学」という何やら難しい学問に突き当たります。少し気後れする気分をおさえて覗いてみると、案の定、「絶対零度」「超伝導」「超流動」等々の難しい言葉、そして、数式のオンパレードです。

当然、それだけ見るとそれらの書物を閉じたくなってしまいますが、そこに書かれている文章を、がまんして数行だけ読むと、それまでしかめ面をして肩に入れていた力が抜けていくような一文に出会います。それは—「低温を得ようとする努力は、室温以下の温度を得ようとする努力でもあった」という一文です。つまり、「部屋の温度を涼しくしようとする、誰でもが何時でも考え得るような単純な発想からの努力というふうに考えて差し支えない」という意味です。

そういうことか、ということで、それではと改めて低温物理学というものに食い付くと、やはりそれは予想以上に難しいことがわかります。一文にもこう記しています—「冷やす技術は,暖める技術に比べると格段に難しい」。そして、こうも続きます。「たき火という寒さのための暖房が有史以来存在したのに対し、暑さのための冷房が普及したのはつい数十年前であることを見ても〝冷却〟あるいは〝冷凍〟の技術を得るためには大いなる時を要している」。

つまり、冷やすということは、それだけ〝難しい〟ということを、合点してもらえるのではないでしょうか。

そこでこの本では、どのように低温、冷凍技術が開発されていったのかを、頭が痛くなるような言葉や数式などは登場させず、興味のもてる部分を中心に話を展開しようと試みました。何が冷やすポイントなのか、その技術というのはどんなものなのか、どんなものに使われているのか、そして、冷凍される対象物にはどのようなものがあるのか——などです。そのために、東京大学や東北大学の専門の先生などからのアドバイスをいろいろといただきつつ、わかりやすい文章で伝えようと努力したのが本書です。

生活の中で、また、勉強の過程で、さらに学問として興味を持ってもらえれば、これに勝るものはありません。

2012年7月
冷凍技術と生活研究会

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