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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいフッ素の本

定価(税込)  1,512円

監修
編著
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06894-2
コード C3034
発行月 2012年05月
ジャンル ビジネス 化学

内容

フッ素とは最も軽いハロゲン元素で、歯科関係製品などをはじめ、自動車、半導体、家電製品、エネルギー環境分野など実に幅広い産業分野、身の回りの製品に使われ、大きな役割を果たしている。本書では、そんなフッ素の基礎から、特性、広がる応用分野についてわかりやすく解説していく。

山辺正顕  著者プロフィール

(やまべ まさあき)
1965年京都大学大学院修士課程修了。旭硝子株式会社取締役中央研究所長、(独)産業技術総合研究所研究センター長、研究コーディネータを経て、2009年より研究顧問。専門は有機フッ素化学・環境科学。主な出版物は「フッ素系材料の開発(共編)」、シーエムシー出版(1987)、「フッ素系材料の応用技術(監修)」、シーエムシー出版(2006)。日本化学会フェロー、高分子学会フェロー。国連環境計画技術経済アセスメントパネル上席専門職。

F&Fインターナショナル  著者プロフィール

●編者
原田 光恵(はらだ みつえ)
横浜国立大学卒業。東京工業大学工学部技官を経て1991年F&Fインターナショナル代表。

高須賀 智子(たかすか ともこ)
1999年東京工業大学大学院博士後期課程修了。工学博士。現東京農工大学大学院工学府教務職員。専門は有機フッ素化学。

目次

第1章 フッ素ってなんだろう?
1 私たちの生活に深くかかわるフッ素の製品 「焦げ付かない調理器具から太陽電池や医薬まで」
2 他の元素にはないフッ素の特徴は? 「周期表の右上に位置するフッ素原子」
3 太古の昔からフッ素は使われていた? 「波瀾万丈のフッ素の歴史」
4 フッ素はどこで採れるの? 「蛍石がフッ素のみなもと」
5 フッ素製品はどのようにして作るの? 「基本原料はフッ化水素」
6 フッ素の製品はどれくらい使われているの? 「生産量は少なくても存在感のあるフッ素樹脂」
7 フッ素はリサイクルして使いましょう 「フッ素も枯渇が懸念される資源」

第2章 身の回りにあるフッ素を探そう!
8 傘や衣服が水や油をはじくのはフッ素の役目 「撥水撥油剤」
9 天然皮革もフッ素で守る 「皮なめし工程でフッ素加工」
10 台所や食卓で活躍するフッ素 「フッ素加工された調理器具」
11 住宅や車両でフッ素が省エネに貢献 「フッ素系発泡剤」
12 休日もフッ素は大活躍 「スポーツウェア・シューズ、釣り具」
13 フッ素が守る安心・安眠 「リチウム一次電池」
14 フッ素の入ったエアゾールは燃えないから安心 「喘息薬の吸入にも使用」
15 実験室で欠かすことのできないフッ素樹脂製器具 「ガラス製ばかりではない実験器具」
16 ビニールハウスもフッ素で長持ち 「高耐候・耐久性フッ素樹脂フィルム」
17 フッ素を塗料にしたら塗り替え不要 「超耐候性フッ素樹脂塗料」
18 ドームの天井もフッ素材料 「膜構造建築物に使われるフッ素樹脂フィルム」


第3章 家電製品を支えているフッ素
19 テレビも携帯も画面はフッ素の液晶 「優れた特性のフッ素系液晶」
20 液晶ディスプレイの技術革新にもフッ素 「液晶ディスプレイの視野角向上と消費電力低減」
21 家電のプラスチック筐体の安全にもフッ素が役立つ 「フッ素で難燃性向上」
22 フッ素がタッチパネルを快適に 「フッ素で防汚と滑り」
23 フッ素で冷やしている家庭用エアコン 「不燃性で安全なフッ素の冷媒」


第4章 交通・輸送で活躍するフッ素
24 自動車にはフッ素の機能が欠かせない(総論) 「フッ素ポリマーが自動車のいろいろな部材に」
25 自動車のエンジン周りはフッ素が守る 「高温部位にフッ素ゴム・フッ素樹脂」
26 自動車の燃料が流れる配管にもフッ素 「燃料を透過しにくいフッ素ゴム・フッ素樹脂」
27 自動車の座席もパネルもフッ素の出番 「フッ素の機能は車の中でも使われている」
28 カーエアコンはもちろんフッ素 「蒸発潜熱が小さいフッ素化合物」
29 軽量材料の製造にもフッ素が活躍 「フッ素がマグネシウムの燃焼を防ぐ」
30 消火剤に使われるフッ素 「飛行機の中でもフッ素で安心」

第5章 半導体、情報通信で活躍するフッ素
31 半導体とフッ素の関係 「半導体製造に必要なフッ素系材料」
32 シリコンウェハが使えるようにするのはフッ素の役目 「シリコン酸化膜除去に使われるフッ酸」
33 細かい作業もフッ素は得意 「リソグラフィ工程に使われているフッ素化合物」
34 フッ素は超微細加工のエキスパート 「半導体製造用のエッチングガス」
35 フッ素で装置を大掃除 「半導体製造装置のクリーニングガス」
36 パーツを洗うのはフッ素溶剤 「優れた特性を精密加工部品の洗浄に発揮」
37 情報・通信に欠かせないフッ素で被覆した電線「 パーフルオロ樹脂の優れた誘電特性」
38 光ファイバーをフッ素で作ってみたら… 「水素原子をフッ素原子に置き換えて光ファイバーを作る」
39 フッ化物ガラスの不思議 「アップコンバージョン発光」


第6章 お医者さんの処方箋にもフッ素の入った薬が…
40 フッ素の麻酔薬は後遺症がなくて即効性 「フッ素系吸入麻酔薬」
41 ステロイド薬って安全?フッ素が問題を解決します 「フッ素化ステロイド」
42 フッ素の入った抗がん剤は万能? 「抗がん剤」
43 ペニシリンの耐性はフッ素で解決 「合成抗菌剤」
44 一番売れている薬にもフッ素が 「高脂血症治療薬」
45 フッ素は高齢化社会にも貢献しています 「排尿困難や緑内障など高齢者向け医薬にもフッ素が使われている」
46 より安全に、より健康な社会を目指して 「フッ素と新薬」
47 医農薬品におけるフッ素の役割 「医薬品中のフッ素はどのような働きをする?」
48 がんの診断にはフッ素が欠かせない 「診断薬としても有効なフッ素同位体」
49 薬を飲むときもちょっと注目 「医薬の包装材」
50 最先端の手術にもフッ素が必要 「人工血管、人工臓器」
51 雑草退治にフッ素が大活躍 「除草剤」
52 フッ素がもたらす美味しい果物 「殺菌剤」
53 安心安全な野菜はフッ素の賜物 「殺虫剤」
54 あなたのペットはフッ素が守ります 「動物薬」


第7章 21世紀のクリーンエネルギー、環境のカギを握るフッ素
55 フッ素で〝動く〟燃料電池 「究極のクリーンエネルギーシステム」
56 フッ素が太陽電池を守る 「軽量で耐候性・耐光性・電気絶縁性に優れるフッ素フィルム」
57 電池の主役はフッ素 「リチウムイオン電池」
58 電気が使えるのもフッ素のおかげ 「受変電設備で活躍する絶縁ガス」
59 原子力発電に欠かせないフッ素 「六フッ化ウランで同位体濃縮」
60 電気をためるのもフッ素の役目 「誘電率制御でたくさんの電気を貯める」
61 フッ素の入ったイオン液体 「デバイスの安全性・耐久性向上のための電解質」
62 フッ素で初めて実用化できた苛性ソーダ製造用イオン交換膜 「塩素やアルカリに耐えるイオン交換膜」
63 水処理にも活躍するフッ素の膜 「相分離誘起で作る多孔膜」
64 焼却炉で活躍するフッ素フィルター 「集じん機にフッ素フィルター」
65 宇宙で活躍するフッ素 「宇宙服表面や人工衛星もフッ素で保護」

【コラム】
●最初にフッ素を紹介した人は?
●偶然生まれたフッ素製品
●フッ素と環境問題
●カーエアコン用冷媒の変遷
●フッ素で電気を起こす??
●フッ素で虫歯のない歯をつくろう
●フッ素の入った化合物は自然の中でどうやって作られる?

参考文献
索引

はじめに

 「今なぜフッ素なの?」、この本の企画を出版元である日刊工業新聞社の書籍編集部に持ち込んだ時の第一声です。そうです。この疑問に答えることこそがこの本の役目です。フッ素は塩素や臭素、ヨウ素と同じ仲間でハロゲン元素と呼ばれていますが、私たちの身の回りで、塩素は食塩や塩ビ、消毒剤など、臭素はプラスチックの難燃剤、ヨウ素もかつてはヨードチンキ、写真の感光材などとして多く使われてきました。さて、フッ素はどうでしょうか? 「フッ素って何だろう?」、「フッ素ってどこに使われているの?」、「なんでフッ素なの?」誰もが抱くこのような疑問にわかりやすく答えて、できるだけ多くの人たちに「フッ素」の魅力を知って貰いたいというのが本書を企画した「フッ素屋」の共通する想いなのです。
 和洋を問わず多くのフッ素化学の入門書、専門書が出版されていますが、どの本も専門的すぎて一般の人たちに読んで頂くのはやや難しすぎる感じです。フッ素は科学的、学問的にも大変興味深い元素ですが、それ以上にフッ素は私たちの日常の生活の中で、便利で快適、安全・安心な暮らし、さらにはハイテクに到るまで大いに役立っています。住まい、健康、交通運輸、パソコンや携帯電話などの半導体・情報産業など多くの分野でフッ素の技術、フッ素の製品が使われています。にもかかわらず、一般には「フッ素」と聞くと、ほとんどご存じないか、フロン? これって地球環境を破壊する悪者でしょう、と思い込んでおられる方が多いのです。
 本書はこのような背景の下に、フッ素の製品を作っている企業の志ある技術者が大学の先生方のご協力を得て、そもそもフッ素とは? から始まって、様々な製品とその技術を紹介し、さらにフッ素の拓く未来を描こうとしたものです。
 第1章は「フッ素って何だろう」という疑問に答えることから始まります。いつ頃から人類はフッ素の存在に気付いたのか、資源はどの位あるのか、フッ素を含む製品にはどんな特徴があってどうやって作るのか、などをわかりやすく紹介します。第2章では「身の回りにあるフッ素」を探してみました。思いがけないところでフッ素が身近に使われているのを実感頂けると思います。第3章は「家電製品を支えているフッ素」をまとめました。第4章、第5章は「交通・運輸」あるいは「半導体・情報通信分野」で活躍しているフッ素をリストアップしました。第6章は皆さんがお医者さんにかかった時に、実は多くの処方箋の中でひそかに頑張っているフッ素をとりあげました。風邪薬はもとより、感染症やぜんそくの治療、麻酔剤などもフッ素の出番です。さらに野菜や果物、といった農作物の収穫にもフッ素が役立っています。第7章は地球環境問題のカギを握るクリーンエネルギーへのフッ素の貢献です。これらの解説を通して、フッ素の意外な活躍の現状とフッ素の拓く未来への明るい展望を示します。
 この本をお読みになった読者の方々が少しでもフッ素の多彩な特性に興味をお持ちになり、このところ環境の悪化に悩み続けている我々の地球を明るい持続可能なブループラネットとして再生していくために、さらなるフッ素の活用に一肌脱ごうと考える若い人たちがどんどん増えてくることを心から期待しています。
 本書は、執筆にご協力頂いた多くの技術者、研究開発者の方々の「フッ素をもっとよく知ってもらいたい」という熱い思いがひとつになって、編集委員会が意図したとおりの「トコトンやさしいフッ素の本」に仕上げることができたと自負しております。
 最後に、この本の基本構想を最初に言い出されたのは、元ダイキン工業(株)の円尾恵一様でした。円尾様を囲んでのキックオフミーティングを2011年8月に予定しておりましたが、残念なことに円尾様は7月中旬に熱射病で急逝されてしまいました。我々関係者一同、このご遺志を継ぎ、何とかこうして予定通りに本書を出版することができました。ここに故円尾様に本書を捧げて、深甚なる謝意を表します。また本書の完成に有益なご助言を頂いた日刊工業新聞社の藤井浩様ならびにお世話になった関係者各位に心から感謝申し上げます。

平成24年5月 
独立行政法人 産業技術総合研究所 
研究顧問 山辺 正顕

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