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おもしろサイエンス
水の科学

定価(税込)  1,620円

著者
サイズ A5判
ページ数 144頁
ISBNコード 978-4-526-06872-0
コード C3034
発行月 2012年05月
ジャンル ビジネス

内容

普段何気なく存在している水が何処から来て、どんな面白い力を秘めているか知られているようで知られていない。 本書は、水とは一体何か、どこから来て、どんな性質を持ち、どんなメカニズムで利用されているか、をわかりやすく絵ときで紹介した読み物。水をめぐる様々な何故に目からウロコの解答を与える。

神崎 愷  著者プロフィール

(かんざき やすし)
1942年 神奈川県厚木市(愛甲郡南毛利村)生まれ
神奈川県立厚木高校、横浜国立大学、東京工業大学大学院(卒業、修了)
青山学院大学理工学部化学科実験講師、東京工業大学理学部化学科助手、
昭和薬科大学薬学部助教授、教授(2009年退職)
現在:神奈川工科大学非常勤講師、青山学院大学客員研究員
専門:電気化学

目次

はじめに  
元素周期表  

第1章 地球と水
地球は本当に水惑星か?  
宇宙を眺めれば物質の起源が分かる  
火の玉からまず水素とヘリウムが生まれた  
膨張しながら炭素や酸素の原子が生まれた  
地球はどのようにしてできたのか  
地球の水の奇跡  
海がなかった原始の地球  
地球を一変させた海の誕生  
星間分子と生命の誕生  
大気中の酸素と生命の進化  

第2章 ミクロの目で見た水
水は万物の根源か  
水は元素ではなかった  
水分子を解剖してみよう  
「純粋な水」って何だろう  
水分子の性質  

第3章 水分子がたくさん集まるとどうなる?
水の不思議な性質  
いろいろな氷  
水はなぜ0℃で凍り、100℃で沸騰するのか  
水は凍るとなぜ体積が増えるのか  
固体の中でも水は凍ったり融けたり  

第4章 水のケミストリー
H2Oを二つに割ると  
H+とOH-の不思議―1  
H+とOH-の不思議―2  
水に光を当てたら水素と酸素ができた!  

第5章 水は力もち
質量と水蒸気の力  
ものを溶かす力  
イオンを溶かす力―1  
イオンを溶かす力―2  
イオンを溶かす力―3  
超純水パワー  
ものを溶かしだす力  
水がものにしみ込む力  
ジャイアントセコイアを支える力  
ものを分ける力  
溶かす力と追い出す力の組み合わせ  

第6章 生体系の水
細胞2分子膜の不思議  
水は巨大分子も溶かす  
生命を支える力  
水を通さない膜がイオンを通すからくり  
水を通さない細胞膜が水を通すからくり  
画像診断の決め手  

コラム   
ビッグバン理論  
宇宙からの電波と星の温度  
現代の錬金術?―核化学  
物質はなぜ特定の電磁波を吸収するのか―波動力学の出現  
集合体の不思議―マックスウェルの悪魔  
沸点や融点はなぜ一つの温度に決まってしまうのか? ―ギッブスの相律  
質量と重さ(重量)  
化学反応の「はかり」―モル  
濃度は「力」―気体定数Rのもう一つの意味  
江戸の化学―宇田川榕菴  
ナイヤガラ発電所にまつわるエジソンと(ウェスチングハウス+テスラ)の葛藤  
ポリウォーター事件  
富士山を使った永久機関?  
SPring-8、タンパク質の立体構造を決めるX線回折装置  
イオンチャンネルはマクスウェルの悪魔?  
家庭用冷凍庫の温度はなぜマイナス18℃なのか  

おわりに  

はじめに

本書を執筆し始めた2011年は、東北地方太平洋沿岸を襲った津波の想像を絶する大災害、それに引き続いて起こった紀伊半島での未曾有の大雨による水害、さらにその年の冬には記録的な大雪と、水を巡る大きな災害が人々を苦しめました。しかし、一方で水は、我々にとって身近な物質であり、水惑星地球とか、生命をはぐくむ母なる水などというように、人類だけでなくすべての生物にとってなくてはならない重要な存在でもあります。
 このように敵に回せば恐るべき存在、味方にすればこれほど頼りになるものはない存在であるがゆえに、古代中国では人間を取り巻く万物の根源として「水」は木、土、火、金と並んで「五行」の一つに数えられていました。また古代ギリシャのアリストテレスに代表される哲学者は水、土、空気、火を物質の根源である元素と考え、宗教や政治を支えていました。その後、中世という長い時間が経過したあと、ルネッサンスや産業革命に後押しされて、実験に基づいた近代科学が急速に発展してきました。当然水にも科学の光が当てられるようになりました。
 水も含めた「物質」の研究には二つの流れがあります。一つはまだ原子や分子を直接見ることができなかった時代から発展してきた「集合体」についての研究です。その集大成が「熱力学」といわれる分野です。熱力学の誕生は17世紀のサディ・カルノーまでさかのぼります。洞察力に優れた研究者たちは、原子や分子を直接見ることができなかったにも関わらす、それらの存在を確固たるものとして物質を捕らえていました。そしてラボアジェらの優れた理論展開によって化学は急速な進歩を遂げたのです。
 物質の研究のもう一つの流れは、19世紀末から20世紀初めにかけて光(電磁波)による実験技術が急速に進歩したことで花開きました。粒子としての原子や分子の性質が次第に明らかになり、それまで熱力学と並んで万物を支配すると考えられていたニュートン力学に限界があることが証明され、代わって量子力学が生まれてきたのです。特にシュレーディンガーの波動力学においては、すべての物質は波の性質を持っているという革命的な理論が展開されました。そして、このような近代〜現代科学の発展に伴って、本書のテーマである水の不思議な性質も多くの人に知られるところとなったのです。
 では、科学の発展を受けて、もっとも単純な分子、ありふれた物質である「水」は研究され尽くしてしまったのでしょうか? 水分子1個や、水分子だけが集まった気体・液体・固体の研究がいかに進んでも、我々が目の前で相手にする水は量の違いはあれ、必ず何かの異物を含んでいます。いろいろな種類の物質を含んだ水の研究にはまだまだ研究の余地が残されています。
 代表的な例が、疎水性の細胞膜を貫通して、水分子を通過させるためのトンネル(チャンネル)アクアポリンです。この研究は1992年に初めて論文として発表され、今でも生化学者を魅了している研究テーマの一つです。もっと極端な例をいえば、非常に純度の高い水、マイナス120℃以下で融点を持っている無定型氷があります。この研究も2000年を挟んで新たな展開があり現在も研究中の興味あるテーマの一つです。
 本書ではこのような科学的根拠をもった研究をベースに水にまつわる「科学(サイエンス)」をできるだけ平易に紹介しました。本書を読んで水のユニークさ、そして科学のおもしろさ感じていただき、願わくは、科学の道に進む若者が増えていただければ望外のよろこびです。
  
 2012年5月
 神崎 愷

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