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今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしい薬の本

定価(税込)  1,512円

著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06817-1
コード C3034
発行月 2012年01月
ジャンル ビジネス 化学

内容

薬は体にとってよい効果をもたらす一方で、使い方によっては危険をもたらすこともある。薬とじょうずに付き合うためには薬の効果だけでなく、なぜ薬が症状に効果を発揮するのか、薬と体の仕組みを知る必要がある。
本書では薬とは何かから、薬のルールに隠された薬の仕掛けや薬が効くメカニズムをわかりやすく解説する。

加藤哲太  著者プロフィール

(かとう てつた)

東京薬科大学 薬学部 教授、薬学教育推進センター長
薬学博士
1947年岐阜県生まれ
岐阜薬科大学卒業

専門分野
・衛生化学(食品衛生、環境衛生)食品中の変異原物質の検索と生成機構、油脂の酸化と抗酸化剤の作用
・薬学教育(セルフメディケーションを実現できる薬剤師育成)
・青少年くすり教育

著書
・知っておきたいくすりの正しい使い方-自分の健康は自分で守ろう(少年写真新聞社)加藤 哲太 著
・知の森絵本「なるほど!くすりの原料としくみ -基礎知識と正しい使い方-」(素朴社)岡 希太郎、加藤 哲太 監修

社会活動
薬の正しい使い方やたばこの害、薬物乱用、アンチドーピングに関する講義、体験実習などを通じて、青少年の薬教育の拡大を目指す。
・日本学校保健会・医薬品の使い方に関する指導方法検討委員会・委員(平成17年~)
・セルフメディケーション推進協議会 理事

目次

第1章  医薬品とは
1 法律『薬事法』により厳しく規制 「薬とは」
2 薬は健康のサポーター 「自然治癒力と薬」
3 一般用医薬品と医療用医薬品 「医薬分類」
4 一般用医薬品は使用リスクに応じて3つに分類 「一般用医薬品の販売制度」
5 薬は両刃の剣 「薬の有効性 ・ 安全性 ・ 危険性」
6 特定保健用食品で病気の治療はできない 「あくまでも“食品”」

第2章  薬ができるまで
7 薬ができるまで 「長い年月と莫大な費用がかかる薬の開発」
8 有効成分を探す 「動植物などからの抽出、化学合成から」
9 薬の効果・毒性はまず動物で調べる 「医薬品の効果・安全性(非臨床試験)」
10 最終的に人の体で効果を調べて市場へ 「医薬品の安全性と治験」
11 病は気から、薬の効果も気から? 「プラセボ効果」
12 市場に出た後も薬の安全性をチェック 「市販後調査」
13 成分が同じでも価格が安いジェネリック医薬品 「ジェネリック医薬品」

第3章  薬の種類と工夫
14 錠剤、カプセル剤の仕掛け 「薬の種類(内服薬)」
15 飲み薬ではダメ、外用薬なら有効な薬 「外用薬の種類と吸収の仕方」
16 ステロイド剤と剤形 「さまざまな疾病にさまざまな剤形で使用」
17 狙ったところにだけ攻撃する分子標的薬 「標的指向(ターゲティング)型DDSとは」

第4章  体内における薬の旅
18 薬の入口(投与) 「目的に合わせた投与方法」
19 効果を発揮するのは飲んだ薬の一部 「初回通過効果と薬物動態」
20 血中濃度と薬の効果 「血液と一緒に体内を巡る薬の量(濃度)」
21 環境で薬の吸収が異なる 「薬の吸収」
22 肝臓は生体の化学工場 「酵素群シトクロムP450(CYP)による薬の代謝」
23 薬の理解に必要な酵素反応機構 「酵素反応機構」
24 効くのは飲んだ薬の一部分 「初回通過効果」
25 血液中のたんぱく質の量が効果に影響 「遊離型と結合型」
26 腎臓からの薬の排泄 「薬は腎臓から尿中へ排泄」
27 お酒と薬の代謝 「アルコール耐性と薬」
28 喫煙者は薬が効きにくい? 「喫煙と薬の血中濃度」

第5章  薬の相互作用
29 ジュースなどで薬を飲むと 「飲み物の成分と薬の相互作用」  
30 牛乳で薬を飲むと 「牛乳と薬の相互作用」
31 飲酒の習慣が薬の効果に影響 「アルコールの効果は複雑」
32 納豆やチーズも注意が必要 「食品との相互作用」
33 薬が薬の吸収を混乱させる 「複数の薬の同時服用には注意」
34 酵素の働きに作用する薬との飲み合わせ 「酵素に作用する薬の影響」
35 複数の薬の成分が影響しあうと 「重複 ・ 拮抗」
36 薬の飲み合わせの事故の予防法 「薬との付き合い方の基本」

第6章  薬の効く仕組み
37 薬は体にある物質に似せて働く「 アゴニスト(作用薬)とアンタゴニスト(拮抗薬)」
38 痛みと発熱のメカニズム 「解熱鎮痛薬」
39 薬で風邪は治せない 「風邪薬の効果」
40 胃痛が起こるメカニズム 「胃の薬」
41 細菌が原因で起こる病気と抗菌薬 「抗菌薬(抗生物質)」
42 糖尿病とインスリン 「糖尿病と薬物療法」
43 がん細胞の増殖を抑える抗がん剤 「がんの薬」
44 花粉により引き起こされるアレルギー「花粉症」 「花粉症の薬」
45 脳内の神経伝達物質のバランスが崩れるうつ病 「うつ病と薬」

第7章  薬の正しい使い方
46 薬の〝トリセツ〟添付文書 「薬の使用説明書」
47 薬の名前は正確に 「薬の名称・成分」
48 薬の「してはいけないこと」と「相談すること」 「使用上の注意」
49 効能効果と成分をチェック 「薬の効能効果」
50 用法・用量は必ず守る 「薬の用法・用量を正しく知る」
51 薬は必ずコップ一杯の水かぬるま湯で服用する 「薬の飲み方」
52 薬にも使用期限がある 「保管法・使用期限」
53 副作用と思われる症状が出た場合には 「薬の副作用」
54 薬物アレルギー 「軽症からアナフィラキシーショックまで」
55 漢方薬と副作用 「漢方薬にも副作用」
56 スティーブンス・ジョンソン症候群 「薬によるものが大半」
57 副作用が出たときの救済制度 「医薬品副作用救済制度」
58 子供の薬の服用 「子供と薬」
59 お年寄りの薬の服用 「お年寄りは副作用のリスクが高い」
60 発汗に作用する薬は熱中症に注意 「薬と熱中症」
61 お薬手帳を有効に活用しよう 「薬の名前や飲む量、そして過去に経験した副作用等を継続的に記録」
62 ゲット・ジ・アンサーズ運動 「薬剤師とのコミュニケーション」

第8章 薬教育
63 セルフメディケーションの基盤づくり 「小・中・高校における薬教育」
64 薬教育を楽しくする実験 「薬教育実施例」
65 脳に作用する薬物の怖さ 「医薬品と薬物乱用」

【コラム】
●スイッチOTC薬
●母と妻を犠牲にした治験 華岡青洲とその母と妻
●薬物送達システム(DDS:Drug Delivery System)でより安全、有効に
●タバコと肺がん 肝臓の酵素ががん発現に関与
●アルコール依存症治療薬
●医薬品依存症
●うっかりドーピングに気を付けよう
●セルフメディケーションと薬教育

参考文献
索引

はじめに

 日本では、病気は医者にかかって治してもらうという考えが古くから受け継がれ、戦後の国民皆保険制度においてもこれは継承されてきました。しかし近代社会におけるストレスの増加や食生活の変化が影響して増えてきたと考えられる生活習慣病やアレルギー性の疾患、高齢化に伴って当然増加する退行性疾患などに対しては、医者の治療に頼るだけではなく、自分自身で健康の保持増進や疾病の予防に努めることが求められるようになってきました。セルフメディケーションの重要性が高まってきた背景がここにあります。
 セルフメディケーションという言葉は、新聞、テレビなどのメディアもよくとりあげていますので大分普及しているようですが、正しく意味を把握している方はまだ少ないようです。適当な日本語訳または相当する概念がありません。セルフは自分、自己という意味です。メディケーションは病気を治す医療という概念を表す言葉です。両方をつなげると「自分で疾病を治す、自己医療」ということになりますが、少しニュアンスが違っています。セルフメディケーションが意味するのは、「治療」というよりむしろ「自分で自身の健康を管理する」ということです。医師や医療スタッフに頼らずに自分勝手な健康法を行うということではありません。
 こうしたセルフメディケーションを実現するためには、まず市民一人ひとりの取り組みが重要となります。すなわち①自分の健康状態を常にチェックする、②自分で病気にかからないための生活改善を実践するなどの行動が必要となります。さらに③生活者が健康や病気に関する正しい知識を持ち、薬の基礎知識と適切な使い方を身につけていることが必要不可欠であると考えられます。
 服用した薬は肝臓へ運ばれて分解(代謝)され、分解されずに残った成分が効果を示す。薬は人によっても、また時々の体調の変化によっても代謝の仕方が違い、薬の効き方も違ってくる。薬にはより効果を現すための工夫がたくさんされている。薬の副作用に関する情報には常に注意をはらう。
 これらは薬を理解し、正しく使用するために必須な知識だと考えます。このような薬に対する知識を私は「薬のセンス」と呼んでいます。そんな薬のセンスを、できるだけ沢山紹介しました。こうした薬のセンスを身につけ、自分自身の体調の変化に対応して病気に立ち向かう。これがセルフメディケーションでは大切でしょう。
 この本は、読者の方々に、さまざまな薬のセンスを高めていただくことを目指しています。薬というものの性質から、必ずしもトコトンやさしくはないかもしれません。この本を通じてトコトン薬が知りたくなることを後押しする本です。薬に興味を持ってください。そして薬について知ってください。分からなければ薬剤師に聞いてください。自分に合ったセルフメディケーションが見つかることと思います。
 なおこの本の執筆に際し、多くの文献や資料を利用させていただいたことを、ここに深く感謝します。また本書の出版に際し、ご配慮とご協力をいただいた、日刊工業新聞社出版局書籍編集部の田中さゆり様に心から感謝します。

2012年1月
加藤 哲太

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