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“JIT生産”を卒業するための本
―トヨタの真似だけでは儲からない―

定価(税込)  2,160円

編著
サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06802-7
コード C3034
発行月 2011年12月
ジャンル 生産管理

内容

トヨタ生産方式は一定の効果を上げてきたが、“小ロット化”や“かんばん”に代表されるJIT生産の導入で生産現場がかえって混乱した企業も多い。そこで本書では、トヨタ自動車以外の企業が、どうしたら収益が良くなる生産の仕組みを構築できるかを具体的に解説。

中小企業診断協会 生産革新フォーラム  著者プロフィール

● 中小企業診断協会 生産革新フォーラム(MIF)
中小企業診断協会東京支部中央支会に所属する製造業を専門とする中小企業診断士を中心とした研究会。1993年に設立され、月例会、工場見学、執筆活動などを通じて日本の製造業の経営のあり方に関する研究をしている。
http://blog.goo.ne.jp/mif-ken/

● 本間 峰一(ほんま みねかず):第1章担当
1958年生まれ、東京都出身。電気通信大学電気通信学部卒業。NEC製造業システム事業部出身。現在は銀行系総合研究所で中堅製造業の収益性改善やSCM改革を中心とするコンサルティングを担当。
中小企業診断協会会員、生産革新フォーラム代表、日本生産管理学会会員、システム監査人協会会員。
主な資格:中小企業診断士、情報処理技術者(システムアナリスト、システム監査、プロジェクトマネージャ)
主な著書:『コストダウンが会社をダメにする』(日刊工業新聞社)『サプライチェーン・マネジメントがわかる本』『生産計画』(以上日本能率協会マネジメントセンター)など
E-Mail:HGC02733@nifty.ne.jp

● 葉 恒二(よう こうじ):第2章担当
1960年生まれ、兵庫県出身。同志社大学工学部卒業。自動車部品会社、石油化学会社のエンジニアを経て現在は主に製造業を対象とするコンサルタントを個人で営んでいる。
中小企業診断協会会員、生産革新フォーラム幹事、成形加工学会会員。
主な資格:中小企業診断士
主な著書:『生産計画』(日本能率協会マネジメントセンター)

● 祖父江 昭宏(そぶえ あきひろ):第3章担当
1952年生まれ、奈良県出身。名古屋市立大学経済学部卒業。松下電送株式会社(現パナソニック)の、営業、SE、企画、開発部門を経て、現在は祖父江診断士事務所で、マーケティング、企画・開発、組織活性化支援業務に従事。
中小企業診断協会会員、生産革新フォーラム会員。
主な資格:中小企業診断士、情報処理技術者
E-Mail:sobue.akihiro@nifty.com

● 三宅 晴之(みやけ はるゆき):第4章担当
1954年生まれ、東京都出身。慶応義塾大学工学部卒業。大手電機通信メーカに勤務し、入社以来、社内情報システム開発・保守、生産改善、物流、SCM関係の業務を歴任。
中小企業診断協会会員、生産革新フォーラム幹事
主な資格:中小企業診断士、情報処理技術者(システム監査)

● 佐藤 知一(さとう ともいち):第5章担当
1956年生まれ、東京都出身。東京大学大学院工学系研究科修了。日揮(株)勤務。プロジェクト・アナリスト。国内および海外の製造業に向けた工場の設計と建設、ならびに生産システムの計画・構築に長年従事する。
中小企業診断協会会員、生産革新フォーラム幹事、スケジューリング学会理事、ものづくりAPS推進機構理事、日本経営工学会員。東京大学・法政大学・慶應義塾大学講師。
主な資格:工学博士、中小企業診断士、PMP、情報処理技術者(プロジェクトマネージャ)
主な著書:『時間管理術』(日経文庫)『革新的生産スケジューリング入門』『BOM/部品表入門』『サプライチェーン・マネジメントがわかる本』(以上日本能率協会マネジメントセンター)ほか
E-Mail:tomsato@rio.odn.ne.jp
Blog: http://brevis.exblog.jp

● 安保 秀雄(あんぽ ひでお):第6章担当
1959年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学大学院理工学研究科修了。1985年、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社。企業情報システムやエレクトロニクス分野の雑誌編集に従事。日経エレクトロニクス副編集長、日経コンピュータ副編集長、日経コンピュータグラフィックス編集長、日経ITプロフェッショナル編集長などを務める。2010年、エスエーシー代表。生産革新フォーラム会員。著書:「働く人の心をつなぐ情報技術 概念データモデルの設計」(白桃書房、共著)、「ITによる業務変革の正攻法」(日経BP社)。

● 田島 悟(たじま さとる):第7章担当
1959年生まれ、群馬県出身。1982年早稲田大学理工学部を卒業。同年キヤノン株式会社に入社。生産管理部門、本社生産企画部門、研修部門講師などを経て2007年同社を退社。2008年ブレークスルー株式会社を設立、代表取締役に就任。以来、国内外のコンサルティングや研修等に従事。東洋大学大学院経営学研究科講師。公益財団法人日本生産性本部コンサルタント。JICA(国際協力機構)専門家。生産革新フォーラム会員
主な資格:中小企業診断士
主な著書:『生産管理の基本としくみ』(アニモ出版)
 『生産管理の基礎知識が面白いほどわかる本』(中経出版)など。
E-Mail:satoru.tajima@nifty.com

目次

CHAPTER1  JIT生産に対する疑問の声が聞こえるようになった
1.親会社がJIT生産を導入したために部品会社が在庫の山になった 
2.JIT生産導入によって生産継続の危機が生じた 
3.一時的に販売が滞ったことで生産体制が崩れた 
4.無理に小ロット化したことで赤字に転落した 
5.在庫を削減したために競争力が低下した 
6.JIT生産によって物流費が高くついてしまった 
7.原価を「見える化」したにもかかわらず利益率がアップしない 
8.JIT生産を導入するとIT化が遅れてしまう 

CHAPTER2  なぜJIT生産はうまく機能しないのか
1.JIT改善コンサルの指導はカイゼン活動が中心 
2.かんばんとJIT生産の関係 
3.売れただけを作るという言葉への呪縛 
4.トヨタ自動車は生産計画に基づいて生産を行っている 
5.日本の製造業者は受注生産が多く、トヨタの真似はできない 

CHAPTER3  あらためてジャスト・イン・タイムのメリットを考える
1.小ロット化によるリードタイム短縮と在庫削減 
2.かんばんによる進捗調整機能 
3.ジャスト・イン・タイムと自働化(改善活動の効果) 
4.財務的側面からみたジャスト・イン・タイム生産の意味 

CHAPTER4  JIT生産を導入するときに生じやすい10の悩み
1.JIT生産とは、「売れに合わせて作る」ということですか? 
2.デルのようにBTO生産を行うのですか? 
3.受注変動の激しい状況でも、生産の平準化は必須ですか? 
4.「かんばん」利用が前提ですか? 
5.部品の調達の中心が海外でもJIT生産は可能ですか? 
6.生産現場は今まで通りのセル生産でよいですか? 
7.物流が大事なポイントだそうですが? 
8.棚卸資産は増えないですね? 
9.情報システムの改造は必要ですか? 
10.全体最適は可能なのでしょうか? 

CHAPTER5  JIT生産から真のジャスト・イン・タイムへ
1.あなたの会社にトヨタ生産方式が向かない五つの理由 
2.解決への三つの原則 
3.自社のポジションの分析と、方針の立案 
4.解決の定石・その1:需給調整による解決 
5.解決の定石・その2:需要側での解決 
6.解決の定石・その3: 供給側での解決 
7.解決の定石・その4: 企業間協力のすがた 
8.解決をはばむ障害 

CHAPTER6  受託生産型企業でのジャスト・イン・タイム生産導入事例(OKI EMS事業本部)
1.なぜジャスト・イン・タイム生産が必要なのか 
2.ジャスト・イン・タイム生産の事例 
3.ジャスト・イン・タイム生産を持続させるための条件 

CHAPTER7  ジャスト・イン・タイム生産に関するキーワード解説
1.かんばん方式 
2.ニンベンのついた自働化 
3.あんどん 
4.段取り改善 
5.ポカヨケ 

参考文献 
執筆者略歴

はじめに

私たちは製造業関係の中小企業診断士を中心とした研究会「生産革新フォーラム(MIF)」のメンバーです(この研究会は約20年前に発足し、当時はCIM研究会と称していました)。主な研究テーマはJIT生産、MRPⅡ、TOC、APS、SCM(注)など製造業をとりまく理論とその実践で、研究会では毎月の例会と年2回の工場見学を実施しています。
研究会設立以来、日本および中国にある50件以上の工場を見学してきました。本書のテーマであるJIT生産関連でも、トヨタ自動車、九州トヨタ自動車、日野自動車などのトヨタグループの工場、物流センターなどを、また、JIT生産やトヨタ生産方式(TPS)を取り入れているトヨタグループ以外の工場もいくつか見学しました。工場見学の後にはメンバーによるディスカッションを行います。メンバーの中にはJIT生産導入に関わったことのある人間もいるためいつも白熱した議論となります。トヨタ自動車生産管理部出身の小谷重徳先生(現首都大学教授)に月例会で話をしていただいたこともあります。
このような一連の工場見学を通じてメンバーが共通に感じた疑問がありました。それは、トヨタグループの工場を見学した際には新鮮な驚きがありとてもわくわくするのに、トヨタグループ以外のJIT生産工場では感動を覚えることが少ないということです。たしかに工場現場にはトヨタ生産方式をベースとした改善の仕組みが導入されています。また、こうした工場は5Sが行き届いており、職場環境も整然としています。ところが、工場見学していてもトヨタの工場のように感銘することがあまりありません。
そしてそこから私たち研究会のメンバーがたどりついた結論は「トヨタ以外の企業で導入しているトヨタ生産方式とトヨタ自動車の生産方式は違う」のではないかということです。ではどこが違うのか、それが研究会で本書を執筆するにあたった動機です。
研究会でこのことを議論していく間に、わかったことがあります。数あるトヨタ生産方式やJIT生産の解説本の中に平準化生産計画を具体的にどう立案するのかを記述した本がほとんど見当たらないことです。平準化はJIT生産を有効に機能させるためには欠かせない前提条件です。平準化が機能していない工場では、いくらトヨタ式の改善活動を実施しようが、かんばんを導入しようが、ジャスト・イン・タイムによる業績向上は実現できません。
 一方で小谷先生の話などから本家トヨタ自動車のトヨタ生産方式を支えている平準化生産計画は緻密な数値理論と役割分担に基づいて立案されており、他の企業では到底真似できないであろうこともわかりました。
そこで、本書では平準化の実現を通じて真のジャスト・イン・タイム生産を実現するには何をしたらいいかを中心に執筆しました。上の図は当研究会が考えるジャスト・イン・タイム生産システムのイメージですが、本書はこれをベースにしています。一般的なトヨタ生産方式やJIT生産に関する本にはでてこない生産計画に関する記述を強化してあります。
ただし、前述のとおりトヨタ自動車の精緻な生産計画システムを他社で真似することは現実的ではありません。そこで、一般企業でジャスト・イン・タイム生産システムを構築するという観点で汎用性を高めた記述を心がけました。そうした意味を込めて、本書のタイトルも「“JIT生産”を卒業するための本」にしました。本書が単なるトヨタの真似だけではない各企業固有のジャスト・イン・タイム生産システムを構築していただく一助となれれば幸いです。
なお、本書では読者の混乱を避けるためにトヨタ生産方式、JIT生産に関する用語に関して次のように記述することにします。
「トヨタ生産方式」および「TPS」は原則的にトヨタ自動車の自動車生産に関して言及する場合に限定して用います。トヨタ生産方式から発展した生産方式に関しては「JIT生産」と表します。その上で、当研究会が提唱する概念に関しては一般的なJIT生産と区別するために「ジャスト・イン・タイム生産」と表記します。また、JIT生産および海外で主に使われている「リーン生産」をベースとした改善活動を支援するコンサルタントを「JIT改善コンサルタント」と称することにしました。
第1章はJIT生産がうまくいっていない事例に関して、具体的にどういった問題が起きているかを紹介します。最近はJIT生産に否定的な声も聞かれるようになってきました。
第2章ではJIT生産とトヨタ生産方式の違いを中心に解説します。この部分の理解が不十分なままジャスト・イン・タイム生産に取り組んでもうまくいきません。
第3章ではジャスト・イン・タイムのメリットを紹介します。ジャスト・イン・タイム生産が期待されている理由を理解していただけると思います。
第4章は実際にジャスト・イン・タイム生産を導入しようとする担当者が直面しやすい悩みを紹介します。ジャスト・イン・タイム生産を定着させるためにはこうした悩みの克服が必要です。
第5章ではジャスト・イン・タイム生産に取り組むための具体的なアプローチを紹介します。本章が本書の中心です。
第6章では、実際にジャスト・イン・タイム生産に取り組んでいる企業の事例としてOKIのEMS事業本部を紹介します。EMSというもっとも難しい受注生産形態の生産工場での取り組みは多くの工場でジャスト・イン・タイム生産システムを構築する際の参考になると思います。
第7章は、ジャスト・イン・タイム生産に関するキーワードを解説しました。
本書を通じて多くの日本の製造業が効率的な生産システムを構築し、生産性向上が実現することを祈念しています。
最後になりましたが、ご多忙な中を当方からの取材や問い合わせに応じていただきました沖電気工業株式会社(OKI)EMS事業本部の皆様と首都大学東京の小谷重徳先生には大変お世話になりました。深謝申し上げます。

平成23年11月
生産革新フォーラム(MIF) 
代表 本間 峰一 

(注)JIT(Just In Time)生産
  トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)
  MRPⅡ(Manufacturing Resource Planning Ⅱ:製造資源計画)
  TOC(Theory Of Constraints:制約条件理論)
  APS(Advanced Planning and Scheduling)
  SCM(Supply Chain Management)

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