買い物かごへ

今日からモノ知りシリーズ
トコトンやさしいにおいとかおりの本

定価(税込)  1,512円

著者
著者
著者
サイズ A5判
ページ数 160頁
ISBNコード 978-4-526-06799-0
コード C3034
発行月 2011年12月
ジャンル ビジネス 化学

内容

かおりの効用を積極的に取り入れる時代になっている。におい・かおりは我々の生活に非常に密着しているだけでなく、産業分野でも大きな意味を持つ。雑貨や玩具製作では、従来よりにおい・かおりは重要であり、最近では工業製品にもかおりの演出が必要となっている。本書では、身近なかおりの紹介から、嗅覚の機構、体臭、悪臭なども含め、幅広い情報を網羅し、豊富な図とともにやさしく解説する。

倉橋 隆  著者プロフィール

(くらはし たかし)
1990年 筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了。1990年 岡崎国立共同研究機構生理学研究所 助手、1992年 ジョンズ・ホプキンス大学医学部リサーチ フェロー、モネル化学感覚センターリサーチ フェローなどを経て、1996年 大阪大学大学院理学研究科 助教授、1999年より同大学院基礎工学研究科 教授。
現在、大阪大学大学院生命機能研究科 教授、三重大学医学部 客員教授。理学博士。

福井 寛  著者プロフィール

(ふくい ひろし)
1974年 広島大学大学院工学研究科修士課程修了。同年 ㈱資生堂入社、香料開発室長、メーキャップ研究開発センター長、素材・薬剤研究開発センター長、特許部長、フロンティアサイエンス事業部長、資生堂医理化テクノロジー㈱社長などを歴任。
現在、福井技術士事務所代表。工学博士、技術士(化学部門)、日本化学会フェロー、東北大学未来科学共同研究センター 客員教授、東京理科大理工学部 客員教授、大同大学情報学部 客員教授。また、早稲田大学、山梨大学、近畿大学、千葉工業大学に非常勤講師として勤務。

光田 恵  著者プロフィール

(みつだ めぐみ)
1996年 奈良女子大学大学院人間文化研究科生活環境学専攻博士課程修了。1997年 名古屋工業大学ベンチャービジネスラボラトリー 講師、1998年 大同工業大学工学部建設工学科 講師、2001年 大同工業大学工学部建築学科 助教授。
現在、大同大学情報学部情報デザイン学科かおりデザイン専攻 教授。学術博士。

目次

目次


第1章 におい・かおりの世界
1 におい・かおりって一体何だろう「嗅覚的な描写もうまかった紫式部」
2 嗅覚にはどんな役割がある「生命維持、種族維持、精神的な役割を持つ」
3 嗅覚はどんな性質を持っている「順応、記憶、個人差、鋭敏さ、強さと質」
4 嗅覚メカニズムの歴史「においを感じる仕組みはどのように考えられてきたのか」
5 自然のにおい「天然の薬となる花や草木」
6 日本のかおりという風景「さまざまなかおりに癒される」
7 嗅覚にかかわる産業「新規分野に利用される香り」
8 火の発見から始まった香りの利用「香りの世界史」
9 香りを嗅ぎ分け鑑賞する文化「香りの東洋・日本史」

第2章 においを感じる仕組みを知ろう
10 生物における嗅覚の機能と多様性「昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類の嗅覚」
11 嗅覚の仕組み「高性能のセンサーや分析機器を持つ鼻」
12 匂いをキャッチする嗅覚受容体「40万種類を嗅ぎ分ける能力」
13 神経の情報伝達と体への伝令「電気やホルモンが体じゅうをめぐる」
14 匂いの刺激で電気が走る「静止膜電位、脱分極、過分極、活動電位、受容器電位」
15 細胞の興奮が起こる機構「イオンポンプとイオンチャネルがイオンを運ぶ」
16 受容体とチャネルを結ぶもの「酵素とセカンドメッセンジャーの働き」
17 嗅覚中枢の働き「グロメルラスで近い匂いのチューニング」
18 嗅覚情報の脳内処理と嗅覚の特性「僧帽細胞と房飾細胞の働き」
19 微弱な刺激を増幅する機構「増幅して刺激を感知する仕組み」
20 ずっと嗅いでいるとにおいがわからなくなる「ダイナミックレンジを広くする」
21 匂いのマスキングの仕組み「CNGチャネルの抑制が強く関与」
22 どのような乾燥状態でも匂いを感じる「匂い受容の対浸透圧戦略」
23 においが混ざったときに何が起きるか「嗅ぎ分ける仕組み」

第3章 活躍する香料
24 香料とは何だろう「香料の分類と使用状況」
25 貴重な天然香料「植物性香料と動物性香料」
26 花から芳香成分を取り出す方法「温度に注意して香り成分を抽出」
27 合成技術が香料に貢献「合成香料の製造法」
28 よりおいしく食べるために「フレーバー」
29 口に入らない製品の香り「調合香料・フレグランス」
30 においと化学構造「基本骨格、官能基、異性体などでにおいが決まる」
31 「におう」だけではない香料の効果「抗菌効果、酸化防止効果など」
32 使いやすい香料の姿「乳化、可溶化、粉末化、カプセル化、包接」
33 香料の安全性「食品衛生法と薬事法」

第4章 生活に利用される香り
34 香り松茸、味しめじ「食べ物の匂い」
35 おいしさも香りで決まる「香りの感覚の進化とフレーバー」
36 化粧品と香り「美と健康の目的に利用」
37 香りの頂点「香水」「フレグランスの香り」
38 お風呂も身体も良い香り「浴用剤や防臭化粧品のにおい」
39 心地良い香りに包まれて「衣料用、ハウスホールド、室内用の芳香剤」
40 においで虫を制御する「昆虫の行動とにおい」
41 香りの魔術師「香りを創る」
42 アロマテラピーで心も体も癒す「芳香植物を使った植物療法がルーツ」
43 科学的な「におい」の効果研究「アロマコロジー」
44 乳幼児用の薬からたばこまで「医用・産業用の香料」
45 危険を知らせる匂いの付与「都市ガスの賦臭剤」

第5章 悪臭をやっつけろ
46 悪臭苦情の変遷「苦情の対象も変化していく」
47 住まいの気になるにおい「においの基準」
48 悪臭成分とはどんなもの「においと人体に影響を及ぼす化学物質」
49 嫌なにおいの対策「発生源管理、換気、消・脱臭」
50 臭気対策の効果の感じ方「臭気成分濃度と臭気強度の関係」
51 空気清浄機の働き「各種方式がある空気清浄機」
52 消臭剤、脱臭剤、芳香剤はどんなもの?「さまざまな作用で効果を発揮」
53 嫌な体臭の発生を抑制「腋臭、加齢臭、口臭を防ごう」
54 保管方法で生ごみ臭を抑制「臭気を発生しにくくする」
55 トイレのにおいをシャットアウト「付着物で水洗式でもにおう」
56 リビングのにおいと対策「台所から広がるにおい」
57 介護環境のにおい「高齢社会に対応した対策」

第6章 においの分析や評価の方法
58 においはどうやって測定するの?「悪臭を客観的な数値で測定」
59 嗅覚パネルになる方法「嗅覚パネルの選定方法」
60 嗅覚で臭気の濃さを測る「臭気濃度と臭気指数を測定」
61 嗅覚でにおいの強さ、快・不快度を測る「臭気強度、快・不快度、容認性を測定」
62 嗅覚でにおいの質、印象を測る「質や印象を数値化する手法」
63 機器測定の役割と分類「においを数値化する機器」
64 特定悪臭物質の測定方法「固定相の保持時間の違いを利用」
65 低濃度臭気の成分分析「試料を前処理する方法」
66 現地に適したにおいセンサー「半導体センサー」
67 においの質を測るセンサー「においの質を識別」
68 無臭とは?「無臭の基準」

【コラム】
●匂いで生存戦略
●嗅覚マスキング
●お酒の香り
●かぐわしい? 体臭
●におい・かおりに関係する資格ってどんなもの?
●各国の嗅覚測定法

参考文献
索引

はじめに

 私たちのまわりにはさまざまな「におい」があります。朝起きてから歯磨きや朝食のにおいで1日の始まりを感じる人もいるでしょう。子供の頃、小学校に行くとき、一緒に行く友達の家の玄関で待っていました。すると、その家の味噌汁のにおいがしました。自分の家はにおわないのに他人の家はにおっているため、一種の結界を作っているのだと思ったものです。私は味噌汁のにおいを嗅ぐとこんなことを思い出します。このようににおいは、記憶を呼びさましたり、感情を呼び起こすなど脳の機能と密接にかかわっています。
 また、脳と関係するストレスの緩和にも、精油を用いたアロマテラピーが使われており、嗅覚を使ったリラクゼーションが流行しています。気分にも影響を与えるにおいとしては香水があります。調香師は新しい香水を、自らの感覚を駆使して創造してしまいます。有名な調香師の技は、まさに芸術の域に達しているといってよいでしょう。
 あまり意識はされませんが、食品にもフレーバーとして香料が使われていますし、化粧品やハウスホールド製品にも香料が使われています。現代では、香料はさまざまな産業に利用されています。その根底には香料の合成技術の進歩があり、ノーベル賞を受賞した野依博士の不斉合成もその大きな技術の一つです。
 においは良いものばかりではありません。ある人の好むにおいも他の人には悪臭と感じることもあります。また、工場の嫌なにおいや生活の中で感じるトイレや生ごみのにおいなどは悪臭で、快適な生活には悪臭除去は大切です。
 においやかおりを感じる嗅覚は五感の中である一定の存在感を示していましたが、嗅覚の機構についてはあまりはっきりせず、ある意味で芸術的な表現などが主流だった時代が続きました。嗅覚に関する研究は1980年代から急速に進歩しました。1991年にバックとアクセルが「嗅覚受容体」を発見し、2004年にノーベル生理学・医学賞が授与されました。これ以外にも多くの研究者が嗅覚に対して多角的なアプローチを行い、それまでは不明瞭であった嗅覚の機構が明らかになりつつあります。
 本書ではこのようないろいろな顔を持つにおい・かおりをトコトンやさしく解説することを念頭に置きつつ、それぞれの筆者が得意とする分野を担当し全6章にまとめたものです。
 第1章は「におい・かおりの世界」と題して、におい・かおりの全体像をさまざまな角度から解説しています。第2章は「においを感じる仕組みを知ろう」と題して、今一番ホットな嗅覚の機構を解説しています。第3章は「活躍する香料」と題して、香料の分類やその特徴などを解説しています。第4章は「生活に利用されるかおり」と題して、生活の中で使われているかおりの例を具体的に紹介しています。第5章は「悪臭をやっつけろ」と題して悪臭の種類とその抑制や除去方法を解説しています。第6章は「においの分析や評価の方法」と題して捉えにくいにおいの分析方法や評価方法を解説しています。限られたページの中で、図表やイラストを多用することで最大限の情報をわかりやすく盛り込むことができたと思います。
 本書は、できるだけやさしい説明を心がけたために、あいまいさなどが残っている部分があるかも知れませんが、そのような箇所があればぜひ教えていただきたいと思います。
 また、本書の出版にあたり多くの文献や資料などを参考とさせていただきました。資料を提供していただいた方々に厚くお礼を申し上げます。また、日刊工業新聞社の奥村功さん、木村文香さんをはじめ関係者各位に大変お世話になりました。ここに改めて感謝申し上げます。

 2011年12月
 倉橋 隆
 福井 寛
 光田 恵

買い物かごへ