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図解 グローバル農業ビジネス
―新興国戦略が拓く日本農業の可能性―

定価(税込)  2,052円

著者
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サイズ A5判
ページ数 192頁
ISBNコード 978-4-526-06793-8
コード C3034
発行月 2011年12月
ジャンル ビジネス

内容

相変わらず国内保護が見てとれる農業政策だが、保護する先に将来展望はない。日本農業の復興のためには、今後、海外展開が重要であり、日本の農業の特徴に見合った戦略を立案すれば、世界に打って出るだけの競争力はある。本書は、日本の農業の持つ技術やノウハウに着目したグローバル戦略を解説、提言する。

井熊 均  著者プロフィール

(いくま ひとし)
株式会社日本総合研究所 執行役員、創発戦略センター所長
1958年生まれ。81年早稲田大学理工学部機械工学科卒、同大学院理工学研究科を修了。三菱重工業株式会社を経て、90年日本総合研究所に入社。99年株式会社アイエスブイ・ジャパン代表取締役。2001年日本総研産業創発センター所長、02年同創発戦略センター所長就任。06年から日本総研執行役員。株式会社イーキュービック取締役、日綜(上海)投資諮詢有限公司董事などを兼任。03年から早稲田大学大学院非常勤講師。
専門は、事業の計画・提携・運営、産業政策、ベンチャービジネス、環境産業、公共IT政策、地域経営、公共財政、中国・アジア市場など多岐に渡り、これまでの共編著含め著書は48冊を超える。

三輪泰史  著者プロフィール

(みわ やすふみ)
株式会社日本総合研究所 主任研究員
1979年生まれ。2002年東京大学農学部国際開発農学専修卒業。04年同大学院農学生命科学研究科農学国際専攻修了。同年株式会社日本総合研究所入社。現在、創発戦略センター主任研究員。
専門は、農業ビジネス、ブランド構築、バイオマス利活用、地域振興など。バイオマスエネルギーに関する新会社「合同会社バイオガス・ネット・ジャパン」、農産物のブランド化に関する新会社「合同会社Agri Biz Communication」の立上げに参画。
主な著書に『図解 次世代農業ビジネス』(日刊工業新聞社)、『甦る農業―セミプレミアム農産物と流通改革が農業を救う』(学陽書房)、『よくわかる最新バイオ燃料の基本と仕組み」(秀和システム、共著)ほか。

目次

はじめに

第1章 農業保護か経済成長か
1.1 衰退続く日本の農業
 (1)生産力低下がもたらす産業基盤の弱体化
 (2)生産力低下をもたらした政策構造(インフラ偏重、流通構造)
 (3)農業鎖国政策の構造
1.2 明らかになった成長戦略
 (1)内需の幻想
 (2)新興国市場の成長
 (3)拡大する企業の新興国投資

第2章 農業の可能性
2.1 可能性高まる一次産業
 (1)始まった資源高騰時代
 (2)的中するIPCCの予測
 (3)崩れる農産物の需給バランス
 (4)新興国に広がる格差問題
2.2 日本農業の技術力
 (1)技術指向の日本農業
 (2)高品質農産物を生み出す農業技術の事例
 (3)高品質農産物を届けるバリューチェーン

第3章 世界に広がる高付加価値市場
3.1 新たな付加価値市場の登場
 (1)中間層、富裕層が広げる付加価値市場
3.2 中国沿岸部富裕層の購買力
 (1)沿岸部の急成長
 (2)中国の農産物流通ルート
3.3 中国のブランド事情
 (1)富裕層と国内生産のミスマッチ
 (2)日本の農産物の圧倒的な品質

第4章 グローバル・アグリのビジネスモデル
4.1 展開戦略①:輸出モデル
 (1)国・地方自治体が進める輸出政策
 (2)輸出モデルの事例
 (3)農産物輸出の抱える三つの課題(生産力の限界、輸入障壁、流通基盤)
4.2 展開戦略②:現地生産・現地販売モデル
 (1)現地生産・現地販売モデルの事例
 (2)逆輸入モデルの行き詰まり
 (3)歓迎される現地生産・現地販売
 (4)現地生産・現地販売のリスク

第5章 外需で始まる日本農業復活の
シナリオ
5.1 生産力から生産ノウハウへ
 (1)日本の農業技術開発の構造と実態
 (2)日本と中国の農業技術格差
 (3)生産力より生産ノウハウに目を向ける
5.2 新たなモデル①:バリューチェーン・モデル
 (1)日本品質を支える農産物バリューチェーン
 (2)日本式農産物のバリューチェーン構築プラン
5.3 新たなモデル②:知財ビジネス
 (1)種子メジャーに見る知財戦略
 (2)日本にある農業知財ビジネスの種
5.4 知財ビジネスの参入戦略
 (1)知財ビジネスを支えるブランド戦略

第6章 グローバル・アグリ・ビジネスが拓く日本農業の将来
6.1 グローバル・アグリ・ビジネスが日本農業を変える
 (1)日本版バリューチェーン・モデル
 (2)グローバル・アグリ・ビジネス知財戦略
6.2 ビジネスモデル実現のための取り組み戦略
 (1)農業企業のグローバル化戦略
 (2)グローバル展開に合わせた政策
6.3 日本農業再生の道
 (1)グローバル・アグリ・ビジネスがもたらす農業再生

索 引
参考・引用文献

はじめに

 TPPへの参加を巡り、製造業を中心とする推進派と農業を中心とする反対派の議論が続いている。正直なところ、今回に限らず、何度も繰り返されてきた、安心・安全を錦の御旗にした我田引水の反対派の論調に我々は辟易としている。この国が海外に向けて閉じた姿勢を示して幸せになった歴史があるのだろうか。
 一方、日常的に海外で仕事をするようになって、我々は日本の農業はTPPにそんなに反対するほど弱いのだろうか、という疑問を感じる。日本の果物を食べ慣れた人にとって海外の果物の味は満足できるレベルには程遠い。野菜にしても芳醇でみずみずしい国内の野菜とは比べるべくもない。日本の文化を支持してくれる外国の人達の評価も同じ様なものだろう。
 これだけの品質を誇る産業が海外への扉を開くことによって栄えることはあっても衰退することがあるのだろうか。あるとしたら、農産物を作っている現場に問題があるのではなく、経営や政策や戦略が悪いのではないか。かつて、海外のコメが低価格で輸入されたときでも、日本のコメへの消費者の支持は全く揺るがなかった。工業製品でも、消費者からこれだけ確固たる信任を受けている商品は見当たらない。何故、消費者のこれだけの支持を信じることができないのであろうか。
 日本の農業は世界でもっと売れるはずだ。しかし、そのためには何が売れるのかを明らかにしなくてはならない。そこで、我々が結論付けたのは、「売れるのは世界最高の商品の競争力を貶めている政策の影響を受けた農産物そのものより、それを作るためのノウハウや知財である」、ということだ。海外に日本のノウハウを提供し、その対価を国内に還流することで、日本の農業が潤うだけでなく、既得権にまみれた日本の農業の構造を変えることができる、と考えた。

 本書は以上のような認識により、まず、前段において日本の農業の構造や日本企業の海外展開を取り巻く環境を述べた後、日本の農業の持っているノウハウや知財を明らかにした上で、それらを活かしたグローバル展開の方策について述べた。日本の農業が自らの本当の価値に気がつき海外に展開すれば、必ずや新たな発展に向けた活路があると信じる。本書がそのために多少でも貢献できるのであれば、著者としてこの上ない喜びである。
 本書は日本総合研究所創発戦略センターの三輪泰史君と一緒に執筆した。本書の内容の多くは三輪君の手によるものである。激務の中、共に執筆していただいたことについて御礼申し上げる。本書の企画、刊行に当たっては、日刊工業新聞社の奥村功様にお世話になった。毎度のご支援、ご指導に心より感謝申し上げる。
 最後に、筆者の日頃の活動にご支援、ご指導を頂いている株式会社日本総合研究所に対して心より御礼申し上げる。
 
2011年 初秋
井熊 均 

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