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図解 人工筋肉
―ソフトアクチュエータが拓く世界―

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 176頁
ISBNコード 978-4-526-06749-5
コード C3053
発行月 2011年11月
ジャンル 機械

内容

生体の筋肉組織を工学的に作ることによって柔らかな動きを可能にするソフトアクチュエータ「人工筋肉」は、ロボットなどの産業分野ばかりでなく医療・福祉の分野でも応用が期待されている。

目次

はじめに 

第1章 人間の筋肉の仕組み
筋肉の種類 
筋肉の構造 
人間の筋肉はなぜ動くのか? 
筋肉の収縮様式とモデル化 
 1.等尺性収縮 
 2.等張性収縮 

第2章 アクチュエータとしての人工筋肉
メカトロニクスとアクチュエータ 
アクチュエータの分類と評価 
 1.アクチュエータの分類 
 2.代表的なアクチュエータ 
 3.アクチュエータの選定に必要な特性 
 4.定常特性と動特性 
 5.アクチュエータの性能評価 
生物の筋肉とアクチュエータの違い 
人工筋肉に求められるもの 
 1.人工筋肉の定義 
 2.現状の人工筋肉の分類 

第3章 空気圧ゴム人工筋肉
空気圧ゴム人工筋肉とは 
空気圧ゴム人工筋肉の特徴 
人間の筋肉と空気圧ゴム人工筋肉の比較 
MacKibben型ゴム人工筋肉 
 1.MacKibben型ゴム人工筋肉の構造と特徴 
 2.MacKibben型ゴム人工筋肉のモデル式と制御方法 
 3.MacKibben型ゴム人工筋肉の応用例 
軸方向繊維強化型ゴム人工筋肉 
 1.軸方向繊維強化型ゴム人工筋肉の仕組み 
 2.MacKibben型ゴム人工筋肉との比較 
 3.軸方向繊維強化型ゴム人工筋肉の力学的な平衡モデルと制御方法 
 4.軸方向繊維強化型人工筋肉の応用例 
その他のソフトアクチュエータ 
 1.フレキシブルマイクロアクチュエータ 
 2.バルーン型腱駆動アクチュエータ 
 3.螺旋偏平形チューブアクチュエータ 
 4.フラットリングチューブ 
 5.バブラ 

第4章 高分子人工筋肉
高分子人工筋肉の研究の歴史 
高分子人工筋肉の分類 
 1.高分子人工筋肉の種類 
 2.電気駆動型高分子人工筋肉の分類 
イオン性高分子人工筋肉 
 1.イオン性高分子人工筋肉の駆動原理 
 2.代表的なイオン高分子材料 
 3.メカトロデバイスとしての構造デザイン 
 4.イオン性高分子人工筋肉の特徴 
電気性高分子人工筋肉 
 1.電気性高分子人工筋肉の駆動原理 
 2.代表的な電気性高分子材料 
 3.電極配置 
 4.電気性高分子人工筋肉の特徴 
高分子人工筋肉の応用例 
 1.イオン性高分子人工筋肉の応用例 
 2.電気性高分子人工筋肉の応用例 

第5章 その他の人工筋肉
形状記憶合金アクチュエータ 
 1.形状記憶合金 
 2.形状記憶合金アクチュエータの駆動原理 
 3.形状記憶合金アクチュエータの特徴 
 4.形状記憶合金アクチュエータの応用例 
静電アクチュエータ 
 1.静電エネルギとは 
 2.静電アクチュエータの駆動原理 
 3.静電アクチュエータの特徴 
 4.静電アクチュエータの応用 
磁性流体アクチュエータ 
 1.磁性流体とは 
 2.磁性流体アクチュエータの特徴 
 3.磁性流体アクチュエータの応用例 
EHDアクチュエータ 
 1.EHD現象とは 
 2.EHDアクチュエータの応用例 
 3.EHDアクチュエータの特徴 
ER流体デバイス 
 1.ER流体とは 
 2.粒子系ER流体 
 3.均一系ER流体 
 4.ER流体の応用 
MR流体デバイス 
 1. MR流体とは 
 2.MR流体の特徴 
 3.MR流体の応用 

《エピローグ》人工筋肉の未来 

索 引 

はじめに

 人工筋肉とは、生体筋肉の組織や性質を模倣することを目指して開発されているアクチュエータ(駆動装置)の一種である。もっと具体的に言い換えると、人間の筋肉のように「軽く」、「力強く」、「柔らかい」性質をもったアクチュエータのことをさす。この3つの性質を同時に満たすのは、そう簡単なことではなく、現在も多くの研究者がしのぎを削って開発にいそしんでいる。人工筋肉の研究領域は、化学、機械、電気、制御、生命科学と多岐にわたり、様々なアプローチでの開発が進められている。本書は、特に実用化に向けての最終段階である「メカトロニクス」という観点から人工筋肉の世界を覗いてみることとする。
 人工筋肉のようなアクチュエータが求められるようになった背景について説明しよう。
 従来からあるモータや油圧システムなどに代表されるアクチュエータは、岩石を砕くような大きな力を出力したり、ナノメートル単位の位置精度で制御したりするなど、人間にできない作業を実現することが主な役割であった。これらのアクチュエータの多くは重厚長大で剛性が高い。一方、近年、メカトロニクス分野における人間との協調作業や生物模倣(バイオミメティクス)の分野において、従来とは違う性質をもったアクチュエータの存在が求められている。たとえば、リハビリテーションデバイスやパワーアシストなどの人間の筋肉活動を補助するような装置や、昆虫型マイクロロボットや飛翔ロボットなどの小型移動ロボットがこれにあたる。これらのシステムは、多少の位置決め精度を犠牲にしても、軽くて柔らかい特性をもった生体の筋肉のような機能が必要となる。このような機能を目標として、人工筋肉の開発が盛んに行われるようになった。
 現在は生体筋肉の代替のみならず、工場の生産ラインや医療用デバイス、精密機器など様々なフィールドで人工筋肉の利用が期待されている。この意味で人工筋肉の応用は、イノベーティブな産業に“柔軟に”対応しながら今後ますます広がっていくであろう。人工筋肉は、ひょっとしたら未来を変えるかもしれない多くの可能性を秘めたアクチュエータなのである。
 本書の構成を説明する。まず第1章にて、人工筋肉のお手本である生体の筋肉の駆動原理とその性質について概説する。次に第2章にて、メカトロニクス機器で用いられているアクチュエータの分類とモータ・油圧・空気圧などの一般的なアクチュエータの駆動原理とその評価について述べた後、アクチュエータとしての人工筋肉の定義について述べる。さらに第3章にて、空気圧ゴム人工筋肉について詳細に説明していく。次に第4章にて、高分子人工筋肉の分類と代表的な電気駆動系の高分子人工筋肉について説明し、第5章にて、形状記憶合金や静電アクチュエータなどのその他の駆動方式の人工筋肉について紹介する。最後に、人工筋肉の抱える課題と将来について著者の私見を述べる。
 著者の浅学非才により、すべての人工筋肉を網羅できない箇所も散見されるが、本書を多くの技術者や大学院生、大学生に読んでいただき、人工筋肉に興味をもつきっかけになってくれれば幸いである。 
2011年 晩秋

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