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心をもつロボット
―鋼の思考が鏡の中の自分に気づく!―

定価(税込)  1,944円

著者
サイズ A5判
ページ数 300頁
ISBNコード 978-4-526-06781-5
コード C3034
発行月 2011年11月
ジャンル ビジネス 機械

内容

世界で初めて「鏡の中の自己像に気づく」ロボットの実験に成功した世界的に有名なロボット研究者が案内する「テクノロジー」と「心の理論」の両方を考察する知的冒険の書。その研究は「新しい技術によって心をもつロボットを実現する」第一歩。鋼の思考が鏡の中の自分に気づく!

武野純一  著者プロフィール

(たけの じゅんいち)
 1950(昭和25)年8月1日生。1974(昭和49)年明治大学工学部電気工学科卒業、同大学大学院工学研究科電気工学の修士、博士課程。1979(昭和54)年明治大学工学部助手、同専任講師、助教授を経て、1997(平成9)年同大学理工学部教授となり、現在に至る。その間、1989(昭和64)年ドイツカールスルーエ大学に訪問教授として留学、さらに1994(平成5)年同大学の客員教授として再度渡独し同大学の双碗型自律移動ロボットKAMROのプロジェクトに参加した。なお、学会活動は編集委員the International Journal of RSJ(日本ロボット学会)、国際会議議長ICAM94(International Conference of Advanced Mechatronics、日本機械学会)、ロボット学会理事RSJ、ロボット学会Advanced Robotics編集委員長、IFToMMアジア地区プレジデント等を経て、現在はBICAの設立メンバー・プログラム委員、ロシアCSIT国際プログラム委員。また、2003(平成14)年に大学発ベンチャ「有限会社ヒューリスティックス科学研究所」を設立。なお、100周年記念功労賞JSME(日本機械学会)、最優秀論文(SCI 2003, ―2004, CCCT04, IEA/AIE 2005)、学会貢献賞論文ICST 2008を受賞。なお新聞掲載、テレビ出演が多数ある。
 専門は、自律移動ロボット、ヒューマノイド・ロボット、ロボット視覚、ロボットの顔表情、人工知能、人工意識、ロボットの情動と感情、立体映像による遠隔制御ロボット、連想と感性のデータベース、意識ネットワーク、ロボットの心。

目次

はじめに 

第1章 現代ロボットの入門
―メカトロニクスと生物型ロボット―
それは古代から始まった/コンピュータは思考しているか?/生き物ロボットと働くロボット/人工知能の行き詰まり/自分も他も何もない?/サイバネティクスのロボット/進化を始めたロボット/ロボットが心をもつって?/現代のロボットを支える技術

第2章 ロボットの光と影
―それはヒトの光と影でもある―
アトムが大活躍した/冗談をいうロボットたち/美しい女性ロボットの誕生/機械がヒトに戦いを挑む/ロボットの愛と死/クローンに自我の移動ができるか?

第3章 ロボットの心って何だ?
―脳科学とコグニティブアプローチ―
ヒトとは何か?/精神って何だ?/脳神経のネットワークがすべてを決めている?/精神とはプログラムか?/精神が肉体から離れる?/精神と肉体とは一体なのか?/脳には内部の処理がないのかあるのか?/ヒトを理解する道具、ロボット/情報は物質か?/意識のプログラム?/脳の神経ネットワークが心のすべてを生み出している?

第4章 言葉に感情的に反応するロボットを作る
―インターネット情報から感情と意識を計算する―
初めに言葉があった/ヒトは感情的でもある/言葉から感情が生まれる?/言葉を話す機械?/心のプログラムとは?/言葉は意味をもっている/インターネットの文章を使え!/ロボットの頭部をアルミで作る/それを理解するために作る/肌はポリウレタンだ/ロボットに感情がつながった

第5章 鏡の中の自分に気づくロボットを作る
―ロボット自我の実現に向けて―
ナルシスは自分の姿に惚れた/私とあなた、そして…/ミラーステージ仮説/自分に気づくロボット/ヒト意識のモデルを考える/無限マークの二重ニューラルネットワーク/ミラー・ニューロンと似ている/メカトロニクス・モデル/自覚をもつロボット/意識するプログラムを作る/見真似が意識を引き起こす?/鏡の中の自己像は身体の一部のように感じる/鏡は古代の超先端マシン?/意識と無意識の揺らぎの中で/私、自己、自分について

第6章 心をもち、意識するロボットの活躍
―モナドが思考や感情を表現する―
生物と機械の違い/ヒトの素晴らしさを知る/理性か感情か?/情動と感情を作る/幻の痛み、ファンタムペイン/身体の痛み、心の痛み/生まれながらにもつ機能/ヒトは自己意識を獲得する/考えるロボット/意味を理解するロボット/「チャイニーズ・ルーム」問題を解く?/未知の世界があることを認識する/止まらない思考/考えがまとまらない、認知が不協和の現象

第7章 ヒトを理解する道
―すべては創造力から始まった―
カタツムリの意識/構造と機能を特定する/それは単なるプログラムだ/ロボットとの戦争が始まる/自分の尻尾に噛みつく蛇/セクシーなロボット/果てしない挑戦/心遣いのできるロボット/脳病治療への鍵/鏡治療と理想の人工義肢/大規模なシステム破壊を自ら防ぐ/未知の世界を学習し尽くすロボット/経験を積み、それを生かすロボット/すべてはヒトの創造力から始まった/そして創造力とは何か?

あとがき
付録
索引

はじめに

はじめに―ロボットを研究して人を理解する道へ
 

私はロボットを30年近く開発する研究者です。
 いまもロボットを作り続けています。
 大学に就職するときにロボットの開発をやろうと決めていました。学生時代に国立の研究機関に手伝いに入っていて、そこにあったロボットを見て強い興味をもったのです。その研究所は当時、赤坂の首相官邸の真下にありました。
 私が小学生の頃は、テレビでは「鉄腕アトム」そして「鉄人28号」などが大人気となっていて、大きくなったら「お茶の水博士」のようになって、アトムのようなロボットを作ろうと漠然と思っていたものです。
 そのため、中学高校時代には、物理や数学の好きな若者になっていました。物理学は誰にも負けないという気持ちでしたが、その高校ではいつも数名私より上位の友人がその席を譲ってくれませんでした。大学では物理学をやりたかったのですが、戦後ベビーブームで、入学試験ではどこでも数十倍の競争率となっていました。結局私の希望は実現できませんでした。
 大学に入って、そこは電気工学の学科でしたが、大学の先生は熱心に授業をしていて、私も比較的勉強していたからでしょうか、いつも上位の成績をキープしていました。
 大学時代は、ですからモータ(Motor)や電磁気(Electromagnetics)というロボットを動かす部分や、通信装置(Tele-communication)の勉強をしていたのです。
 私は、当時、教職課程を取って数学の教師を目指そうとしており、また両親は「お前がやる気であれば、進学してよい」と言っていましたので、大学院修士、博士と進んで、ついに工学博士となりました。
 私は、ついに“お茶の水博士”の道を歩むことができるようになったのです。
 そして、1980年の少し前、私は大学の助手として電気・電子工学科でロボットの研究を始めるチャンスをもらったのです。その学科は電気回路や電子回路の設計(Electronics circuit design)が専門でしたので、回路設計の基礎は習得しました。これはロボットのモータを動かす、腕や足を動かす信号を作ることでした。
 皆さんは、コンピュータ(computer)が家に一台はある時代に生まれたと思います。1970年、私が学生のころは大学にだってコンピュータが1台あるかどうかという時代です。当時は外国製ならIBM、国産なら富士通、ほかにもいくつかありましたが、大型のコンピュータが、まさに一つの教室のような広さの部屋に置かれていたのです。もちろんインターネットなどの考えもありませんでした。プログラムもコンサートの入場券のような厚紙でできたカードに穴を開けたり、あるいは紙でできたテープに穴をあけて作りました。
 当時のコンピュータの大きさは自動車にだって詰め込むことができないので、家の中で作業するような移動するロボットに積むなどという考えはあり得ませんでした。
 しかし、コンピュータの進歩は速く、たちまちのうちに冷蔵庫くらいのミニコンピュータ(Mini-computer)、いわゆるミニコンが出現し、そして1980年前後には机の上に置くことができるくらいの大きさとなったマイコン(Micro-computer)なるものが現れたのです。コンピュータの小型化には電子回路を小さく積み込む技術、集積回路技術LSI(Large Scale Integrated circuit)、の発達が重要でした。この技術は日本が得意でした。
 すなわち、コンピュータをロボットに積み込むことができるようになったのです。
 コンピュータは計算機ですが、考え方によっては万能の信号作成器(Universal signal generator)です。いままでモータを動かすために設計していた電気回路は、コンピュータで置き換えられることがすぐにわかりました。プログラムを作ればコンピュータから色々な信号を出してモータを自由に動かすことができるわけです。
 すでに、1960年前頃からアメリカの大学では人工知能AI(Artificial Intelligence)の研究が始まっていて、そのテーマの8割はロボットに関わる研究でした。その後、人工知能はヒト会話の研究(言語研究)や物事の思考による判断の研究(推論研究)の分野と、ロボット(Robotics)研究の分野に分かれていったのです。
 ロボット研究を切り離した人工知能はLISPやPrologといった人工知能言語を開発し、エキスパートシステム(Expert system)と呼ばれる専門的知識を応答するコンピュータシステムが実現されました。また、その時代のロボット研究では、大きな電動車椅子のような装置にミニコンピュータを積み込み、部屋内の障害物を避けながら走行させるという実験が行われています。
 私は大学の研究者になったのであれば、まだ他人がやっていないようなロボットを使った研究を目指そうと考えました。
 私は、中学高校生のころからヒトの視覚、眼、に興味をもっていました。とくにヒトがものを認識する働きについて知りたいと思っていました。ヒトは眼で自動車を見て、なぜヒトはそれを自動車と判断できるのかという問題です。また、ヒトが見ている世界は立体的な映像です。近くのものは大きく見え、遠くのものは小さく見える。さらに左右の眼に映っている画像の違いが立体的な認識を作っていると予想できました。
 そうだ、ロボットの3D、立体視覚(Stereo vision)の研究をやってみようと思いついたのです。
 認識の問題は、すでに多くの研究者が挑戦していましたので、研究の少ない立体視の研究をまず進めようと考えたのです。
 私は電動車椅子に似た走行装置にヒトの眼と同じように左右並行にビデオカメラを設置して、それらから得た左右画像の見え方の異なりを検出・計算して、ロボットから見えている3次元の障害物を認識しようとしたのです。
 ロボットに載せているコンピュータは1980年代中ごろのマイコンですので、処理速度はいまのコンピュータに比べてとてつもなく遅いのですが、この際、時間は無視して研究を進めました。
 それらの研究は2、3年で成果を得ました。
 簡単にいえば、ロボットは目を使って障害物にぶつからないように移動できるようになったのです。
 すなわち非常にゆっくりではありますが、ロボットはヒトの眼のように二つのカメラから目の前のデータを得て、障害物の3次元情報を検出して、それらの障害物に衝突しないように移動できたのです。5、6mの移動に1時間程度必要でした。
 学生とともにいくつかのプログラムの改良をしていたとき、突如として「これはロボットが見ているのか?」という疑問が頭に浮かびました。
 確かにロボットはヒトの眼のように二つのカメラから画像情報を受け取って、その情報をヒトの脳に当たるコンピュータで計算し、障害物の位置や大きさを検出し、その結果を利用してロボットの移動計画を作り、それをモータに送り、実際にロボットが動くことができるようになりました。
 この計算の流れはヒトの脳で行われている処理とほとんど変わらないと考えられます。すなわち、ヒトの眼から画像情報が脳に移動し、それを使って脳は3次元空間のモデルや障害物のモデルを作成し、その計算結果を利用して移動計画を立てて、行動を実施するのです。もちろんヒトの脳の仕組みはまだほとんどわかっていないのですが、当時は皆そのように考えていたのです。
 しかし、これは何か自分の感覚と違うのです。
 いままでの考えだと、そのロボットはまるっきり情報を受け取ってそれに対して反応をしているだけでした。
 ところが、ヒトにはなにか自分の“内部からいつも働きかけている”ものがあります。また、歩いていて目の前に突然自転車が現れれば、それに“気づく”ことができます。そのとき、普通は“恐ろしさを感じて”自分の身体が緊張するのがわかります。ですから、自転車を避けることより一瞬動けなくなるというのがそのときの感覚です。そのとき同時に“不快の感情が生ずる”のを感じます。動けるようになるのはその一瞬の後です。
 このようなヒトとしての自分の感覚は非常に興味を惹きました。そして、ロボットが「見る」ことができるようになるためには、ロボットのいままでの技術をさらに一層跳躍させる必要を感じたのです。
 これが、私を「ロボットの意識(Robotic Consciousness)、心(Mind)」という研究に進ませたのです。
 もうひとつお話したいことがあります。
 私は子供たちとチャップリン(Charles S. Chaplin, 1889-1977)の映画をよく見ました。
 あるとき彼の「街の灯(City Lights, 1931)」を見て、とても感動してしまったのです。
 盲目の美しい花売り娘が街角でチャップリンと出会います。自動車から降りてきたように思えた彼を裕福な青年と勘違いしたのです。でも実は彼は心の優しい貧しい紳士でした。彼は彼女の気持ちを大切にして懸命に働きながら裕福な紳士を演じ続けます。しかしあるとき、思いがけないことから大金を手に入れます。そしてそれを使って彼女をウイーンの病院で治療することができます。
 その後、彼女は治療によって視力が回復し、街の花屋を開業し成功します。そこに貧しい紳士、彼が偶然通りかかります。彼は道路に捨てられていた一つの花に気づき、それを拾います。彼女はその姿を見て微笑みます。なぜならその身なりの貧しい紳士が捨てられていた花を拾って嬉しそうな様子をしていたからです。彼女は店にある小さな花をとり、店を出て彼に近づきます。小さなコインも手にしています。そして、彼女はその花を渡します。それを見た貧しい紳士は驚きと恥じらいとともに彼女の視力が回復していることを心から喜びます。しかし深い悲しみもあります。なぜなら、彼女は彼があの裕福な紳士であるとは気づかないからです。
 彼女はコインを渡そうと彼の手をそっと握ります。そのとき奇跡(Miracle)が起こります。彼女はその瞬間に気づきます「あなたでしたの!」と。
 私はこの「街の灯」という作品によってヒト意識の重要性に気づいたのです。これらのヒト意識への探求が、私を「ロボットの意識(Robotic Consciousness)、心(Mind)」という研究に導いたのです。
 それは1989年でした。
 時はまさに、ゴルバチョフ(当時、ソビエト連邦共産党書記長)が提唱したペレストロイカ(改革)とグラスノチ(情報公開)が生じさせた、冷戦の象徴である東西を分断する壁の崩壊と東ドイツの消滅という世界を驚かせる事件があったそのときでした。
 そして、私はその年にドイツに留学し、その激動のヨーロッパを訪れ、東欧の瓦解を近くで見ることになります。留学先にドイツを選んだ理由は、「意識」の研究として、カント(Immanuel Kant, 1724-1804)を代表するヒトの観念という哲学的洞察にそこで触れることができると考えたからです。
 またその時代、日本においては「人間の知能を超える」と提唱された人工知能のための第5世代コンピュータ(Fifth generation computer:1982-1992)の研究プロジェクトが終結を迎え、またアメリカにおいては「脳の10年(The Decade of the Brain:1990-2000)」といわれる「ヒトの脳を理解しよう」とする研究プロジェクトが始まろうとしていたのです。
 私はどちらかというと、アメリカと同じような方向に進みたいと感じていました。
 しかし、私は研究計画を仲間に話すことができませんでした。皆に笑われるかも知れないと思ったのです。実際は私と同じような気持ちのロボット研究者が多数いたと思いますが、皆このテーマを真剣に議論するのは難しいと感じていたと思います。
 私は考えを心に秘めて時間を待ちました。
 日本ではちょうどその頃一つの自動車会社が突如として「ヒトのように二本足で歩く」ロボットを開発し世界中を驚かせました(1996年)。また、日本の家電メーカーが犬をテーマにしたロボットを開発して、一号機は大ヒットとなりました(1999年)。
 私は2000年頃から「意識」に関して一つのテーマを決めて研究を進めることにしました。それはロボットに自己意識(Self-consciousness)といわれるようなプログラムを実現することです。そしてこれはヒトの「心」を研究する科学的な第一歩となるかもしれないという可能性を感じたのです。
 皆さんはここで「ふざけんな!意識のプログラムなどできるわけないよ」と叫んだかもしれません。そういう方にこそ、ぜひともこの本を読み通していただけたらと思います。

 私たちは、2004年の春にその基本部分を作り上げ、一つの重要な実験に成功しました。それは「ロボットによる鏡像認知(Mirror image cognition)」でした。
 直径10㎝の小さなロボットが鏡の前で動きます。するとロボットは頭の上にある青いランプを点灯させます。このとき、ロボットはある計算によって目の前の他のロボット、鏡の中に写る自己像、が実は自分の写し身であると判断しているのです。
 読者の中には、そんなこと簡単なプログラムでできるのではないか?と考える方がいらっしゃると思いますが、ロボット自身が自分の情報をほとんどもっていないという条件の中でその実験を成功させるのはかなりの工夫が必要です。
 ヒトは、自分の情報などほとんどもっていないと考えられるのですから。
 また、私たちは「ヒト意識」と「話している言語」とは関連が強いという考えから、意識と言語の関連についての研究も進めました。
 その研究から、どんな言葉にも感情的に反応するロボットを作りました。
 このロボットに「爆弾だ(bomb)」と声をかけると、ロボットは反応し、「危険だ」と言葉を返し、同時に恐怖の表情になります。
 それだけではなく、スリルといった、恐怖と喜びが混じったような複雑な顔表情も作ります。

 これらのロボットは、いままでのロボットにはない新しい技術の登場と、世界中のマスメディアが報道しました。
 「鏡のロボット」も「感情的なロボット」もアメリカのディスカバリー・チャンネル(Discovery Channel News)の電子版の技術ニュースとして掲載されました。またさらにロイター通信、AP通信が報道をしたことによって、世界中のTVで紹介されました。
 海外では、ドイツの科学番組「プラネトピア(Planetopia)」で「世界初の意識をもつロボット」として紹介され、国内では「ワールド・ビジネス・サテライト(WBS)」や「日立世界ふしぎ発見」というテレビ番組で「心をもつロボットの登場」として紹介されました。
 これらの報道は世界中を駆け回りました。一時期はインターネット検索サイトであるグーグル(Google)の “Self aware” (自覚の意味)という検索ではじめは数百件から半年後は1億3千万件のヒット数となりました。
 これは一種の情報爆発であったと思います。結果、多くのブログが私の報道に対して批判や賛同を表明しました。また抗議のメイルが到着するなど、研究者としてはうれしい悲鳴を上げました。

 この本では、まず世界一のロボット王国と呼ばれている日本のロボット技術を支えているメカトロニクス(Mechatronics)技術の基盤と未来のロボット技術を切り開く生物型ロボット(Bio-robotics)の開発を紹介しましょう。そこではロボット発展の歴史、コンピュータの発明と人工知能の発展、知能ロボットの開発、人工知能のデッドロック、人工ニューラルネットの誕生、ポストモダニズムからの反論、脳科学の発達、サイバネティクスと生物型ロボット、進化するロボットとブルックスのアイデア、認知ロボットと人工意識、人工進化と創発、科学の進歩と発展、そして心をもつロボットへの道について述べましょう。

 続いて、ロボットの光と影です。鉄腕アトムの活躍、冗談を言うスターウォーズのロボットたち、美しい女性ロボットの誕生、ヒトと機械の戦争、ロボットの愛と死、自我の移動について述べます。それはヒトの光と影です。
 そして、現代の脳科学や認知科学の研究成果を通じて「ロボットの心」について考えてみます。そこではヒトとは何か、精神って何だ、脳神経のネットワークがすべてを決めている、精神とはプログラムか、精神が肉体から離れる、精神と肉体とは一体なのか、脳には内部の処理がないのかあるのか、ヒトを理解する道具、情報とは物質か、意識のプログラム、そして脳の神経ネットワークが心のすべてを生み出している、について紹介しましょう。
 さらに、言葉に感情的に反応するロボットの開発を紹介することを通じて、感情とロボットの関連性を探ります。そこでは初めに言葉があった、ヒトは感情的でもある、言葉から感情が生まれる、言葉を話す機械、心のプログラムとは、言葉は意味をもっている、インターネットの文章を使え、ロボットの頭部をアルミで作る、それを理解するために作る、肌はポリウレタンだ、そしてロボットに感情がつながった、を述べましょう。
 そして鏡の中の自分に気づくロボットの開発を通じて、心や意識をもつロボットとヒトの意識や心について探りましょう。そこではナルシスは自分の姿に惚れた、私とあなた、そして…、ミラーステージ仮説、自分に気づくロボット、ヒト意識のモデルを考える、無限印の二重ニューラルネットワーク、ミラー・ニューロンと似ている、メカトロニクス・モデル、自覚をもつロボット、意識するプログラムを作る、見真似が意識を引き起こす、鏡の中の自己像は身体の一部のように感じる、鏡は古代の超先端マシン、意識と無意識の揺らぎの中で、そして「私、自己、自分について」、について述べましょう。
 心をもち、思考するロボットの活躍について考察しましょう。そこでは生物と機械の違い、ヒトの素晴らしさを知る、理性か感情か、情動と感情を作る、幻の痛み、ファンタムペイン、身体の痛み、心の痛み、生まれながらにもつ機能、ヒトは自己意識を獲得する、考えるロボット、意味を理解するロボット、「チャイニーズ・ルーム」問題を解く、未知の世界があることを認識する、止まらない思考、考えがまとまらない、そして認知が不協和の現象、について語ります。
 ヒトを理解する道。ここではカタツムリの意識、構造と機能を特定する、それは単なるプログラムだ、ロボットとの戦争が始まる、自分の尻尾に噛みつく蛇、セクシーなロボット、果てしない挑戦、心遣いのできるロボット、脳病治療への鍵、鏡治療と理想の人工義肢、大規模なシステム破壊を自ら防ぐ、未知の世界を学習し尽くすロボット、経験を積みそれを生かすロボット、そしてすべてはヒトの創造力から始まった、について述べます。
 それでは読者の皆さん、世界にブレークスルーをもたらすかもしれないロボット技術への冒険の旅にでかけましょう。

 2011年9月
 武野純一

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