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物流リスクマネジメント
―止まらない物流、最強のBCP―

定価(税込)  2,160円

著者
サイズ A5判
ページ数 168頁
ISBNコード 978-4-526-06765-5
コード C3034
発行月 2011年10月
ジャンル 生産管理

内容

わが国の物流は世界に誇れる速さと高い精度を売り物にしてきた。その適時・適量・適切な物流を可能にしていた配送網が3.11の大震災で破綻した。本書はこの現実にどうやって対処すべきかを提言した物流関係者の必読書。物流のこれからの姿を明らかにしている。

花房 陵  著者プロフィール

(はなぶさ りょう)
1955年生れ、イーソーコ総合研究所主席コンサルタント。㈱アバンセ代表取締役、経営・物流コンサルタント暦25年。28業種200社以上の物流現場経験から、物流改善の総合アドバイザリー業務を継続中。業界紙寄稿多数、主な著作に『見える化で進める物流改善』(日刊工業新聞社)、『戦略物流の基本とカラクリ』(秀和システムズ)など、メールマガジン【物流現場見たまま感じたまま】。詳細:http://www.avancetokyo.com hanabusa@avancetokyo.com

●イーソーコ総合研究所:物流施設の設計や開発などを担当。物流施設の設計を得意とする一級建築士を抱え、物流施設の中長期改修計画などのライフサイクルマネジメントを実施する。物流不動産マーケット、物流施設の評価レポートも行い、賃料相場の動向や既存物流施設の周辺賃料相場、改善提案なども担当する。
イーソーコグループ http://www.esohko.com
㈱イーソーコ 代表取締役社長 遠藤文
〒105―0023 東京都港区芝浦1―13―10 第3東運ビル9F
TEL:03―5441―1237  FAX:03―5439―9540

目次

はじめに

第1章 リスクマネジメント
1―1 リスクとは何か
1―2 リスクはどこに生まれるか、5つの脅威とは
1―3 リスクを分類する(レベルとケース)
1―4 混沌(状況把握ができないとき)
1―5 リソース喪失状況の把握
1―6 喪失リソースへ初動対応
1―7 リスクをカバーする保険

第2章 BCP(事業継続計画)と物流
2―1 BCP標準モデル
2―2 リソースの状況把握
2―3 レベル別行動計画
2―4 100%リソース喪失事態
2―5 人材に刷り込まれたBCP
2―6 みんなのBCP
2―7 復旧手段
2―8 サプライチェーンマップ作成
2―9 ケーススタディ
2―10 BCPを継続運用させる

第3章 ライフライン遮断時の物流体制
3―1 リジリエンス=回復力とは何か
3―2 通信遮断での対応
3―3 インフラ遮断での対応(期待されるPPP制度)
3―4 命を守るサバイバルキット

第4章 物流網が破壊されたら、どう動くか
4―1 東日本大震災の被害状況
4―2 物流インフラ・輸送拠点
4―3 配送ネットワーク
4―4 サプライチェーン
4―5 緊急配送体制(行政機関、警察・消防・自衛隊、輸送手段)

第5章 電力不足問題への物流対応(原発事故)
5―1 原子力施設情報、NUCIA
5―2 電力使用制限対策
5―3 放射能対策、風評被害
5―4 これからの原子力政策の影響
5―5 物流とエネルギー問題

第6章 止まらない物流を具体化する
6―1 物流の自律性
6―2 業界超越ネットワーク
6―3 物流技術の継承
6―4 規模と範囲の経済性
6―5 強い企業と物流

第7章 BCP机上演習、ロードマップ
7―1 人災による潜在的危機
7―2 失敗とミス
7―3 自律行動のための権限委譲
7―4 リソース50%喪失からの復旧計画
7―5 従業員の初動対応
7―6 救命物資の初動対応
7―7 物流の初動体制
7―8 事業選択と集中の戦略論議
7―9 事業戦略再構築
7―10 新しいステージへ

第8章 100年続く事業を目指して
8―1 21世紀の時代認識
8―2 リジリエンスを持って
8―3 周回遅れ、烙印を消しさって
8―4 復活戦略の持ち方
8―5 100年越える企業を目指して
8―6 企業再生と日本再生を支える物流<新成長戦略~「元気な日本」~>

付録 復興構想会議が描く日本フェニックスと阪神・淡路大震災の教訓
1 復興構想会議とは
2 議論の推移
3 第一次答申の内容
4 神戸復興はいかに成されたか

おわりに

はじめに

 21世紀はアメリカで発生した同時多発テロで暗い幕が上がったが、10年後の最初の幕間は、日本にかつてない規模の大震災をもたらした。
 「まるで戦場のようだ」と、外国特派員は速報で世界に報じた。65年前、首都東京の焼失風景を知らずとも、メディアが報道する映像は目を疑うほどの衝撃だった。大自然の脅威が、近代的で豊かな先進国である日本を襲うとはにわかには信じられない。それほどの大規模・広域にわたる地震と津波による破壊は、世界中の目にも恐怖と憐憫の情を与えた。同時に発生した福島原子力発電所のトラブルによって、放射能物質拡散の脅威も世界中に広まった。
 PRAY FOR JAPAN! 日本人には生涯忘れられないフレーズが心に刻み込まれた。
 発災から4ヶ月(本書の執筆終了時点)、今まさに各地では復旧の途にある。救援の遅れにいらだちや、救済制度や復興構想の不安定さにも議論の余地は多い。評価も定まらないままに災害全般にわたる論評は避けなければならないが、4ヶ月にして明らかになった課題もある。生死を分ける救援物資の行方、喪失した工場や企業による全国的なサプライチェーンの弱さ。インフラ喪失や原子力の風評影響による国力の低下や国際競争力への多大なマイナス。
 この度の災害を機に企業家によって、事業の責任を負う読者にとって、まさに「走りながら思考を続ける一助」となるべく本書をまとめることにした。
 ゴーイング・コンサーン(going concern)とは企業の御旗であり、事業継続を意味している。ただし、CONCERNには、関知、 気遣い、恐れ、畏れ、怖れ、心配、事案、気掛かり、老婆心、憂慮、屈託、懸念、関係、関心……など、恐ろしいほどのマイナス用例があることに気づく。つまり、企業継続にはさまざまな障害や憂慮すべき事態が続々と降って湧いてくるのを、きちんと処理してゆかねばならないことを暗示している。この度の大震災を100年に一度の偶然であり、被害に備えておくことが不可能だったかのような風潮がまん延している。では100年越える企業がなかったのかと言えば、すでに今年100周年行事を予定している企業は600社以上もあり、創業100年越えでは22,000社、最古では聖徳太子の創業578年という大阪の木造建築工事業の金剛組がある〈2010年帝国データバンク調べ〉。
 歴代の企業は未曾有の脅威にも生き残り、そして継続を積み上げてきている。残されている教訓を学び、正にゴーイング・コンサーンを確保しなくてはならない。どのように正しく道を進むのか。「正」という文字は、「一」「止」と筆を進める。今一度災害に備えるのではなく、CONCERNに含まれているさまざまな意味を座して考えてみたい。
 バブル以降の失われた不況では、新たな「モノづくり日本」への渇望が言われてきた。優れた商品は特別な工場や職人の手元だけで終わるわけではなく、流通・物流があってこその「こだわりのモノづくりが世間に広がる」わけである。モノづくりには物流が欠かせないのである。
 日本の物流は世界に誇れる高速さと精度を売り物にしてきた。JUST IN TIMEという適時・適量・適切な物流が、全土に広まった道路網と高い不動産価格を影から支えてきた。この度の配送網破綻の現実から、物流は場面や条件によっての応用的なJUST IN TIMEが必要であることが明らかになった。物流インフラが喪失したとき、実行可能な物流を支えるには単なる効率だけでない、より上位の視座を持つことが求められた。すなわち、場面や条件というケースごとの物流、JUST IN CASEの物流を目指さなければならないであろう。
 本書では2つの問題提起を行いたい。
 一つは、天災は天災として備えることが必要であり、そのために災害そのものを予測するのではなく、災害による企業運営の資源損失を目処とした事業継続計画=BCPを構築することである。企業経営は最悪の事態に備えなければならないともいう。最悪の事態とは、読者のあなたや私がこの世から消え去ることでもある。決してブラックジョークでもない。あり得る想定なのだ。企業には強いリーダーが必要だが、一瞬にしてその後継者もろとも喪失することさえある。最悪の事態とは、そのようなことまでも視野に入れる必要があるのだ。「私がいなくなり、事業を継続させるためには、一体どうすればよいか?」。多くの課題が目に浮かぶ。経営資源の喪失に応じたケース別のBCPを構築したい。
 さらに二つ目には、BCPでの復旧レベルを発災時点への立ち戻り(レジュームレベル)ではなく、競合や業界内部での立ち後れを凌ぐような、より高いレベルへの復活(ハイパーレジューム)を企画することである。なぜなら、災害発生時にレベルダウンしてからは、最短でも1ヶ月の遅れが競争力や業界内部での評価が下がるわけで、完全復旧したとしてもすでに周回遅れ、凋落の烙印を受けたままでは、その後の競争にハンディが課されるだけだからである。品揃えや売上額というような規模の指標では不可能かも知れないが、付加価値額、一人当たり生産額、利益率、納税目標などの単位生産性指標であるなら、復旧後に前より高めることが可能だ。
 二つ目は異質な提案かも知れない。しかし、BCP発動による事業立て直しには必ず「事業における選択と集中」という戦略が重視されるはずだし、全方位での事業復旧など、限られた期間では現実的には不可能だ。自ずと事業選択や商品選択、供給責任や自社の強みをもたらす事業の選択が行われ、さらにここにおいて発災時点へのレジュームではなく、さらに磨きのかかったレベルへの回帰が志向されるものでなければならない。規模の復旧ではなく事業価値の復旧を目指すことになるのだ。
 いわば「災い転じて福となす」べく、災害をものともせずに不死鳥のようにマーケットにリバイバルすることを意図したいのである。
 どこに選択の集中を目指すか。復興期における産業や地域のあり方を提示した『復興構想会議の概要』を巻末付録として取り上げた。
 いざ有事のとき、従業員への給与支払いや、資金繰り、パートナーシップへの影響を最小とするためには最長1ヶ月がデッドラインなのである。さあ、めまぐるしい緊急事態からの復活旅行が始まる。

平成23年7月吉日   花房 陵

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