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大震災のとき!企業の調達・購買部門はこう動いた
―これからのほんとうのリスクヘッジ―

定価(税込)  1,512円

編者
編者
著者
サイズ 四六判
ページ数 224頁
ISBNコード 978-4-526-06747-1
コード C3034
発行月 2011年09月
ジャンル 経営 ビジネス

内容

2011年3月11日に起きた東北大震災。日本企業は、納期遅延・生産停止に見舞われ、各調達・購買部門はその火消しに動いた。震災直後、各調達・購買部門はどう動いたのか。そして、「何ができなかったのか」「何ができたのか」「今後、何を講じようとしているのか」。その3点について、全国の調達・購買関係者の現場報告や実情からまとめ、これからのほんとうのリスクヘッジについて考察した本。

坂口孝則  著者プロフィール

(さかぐち たかのり)

株式会社アジルアソシエイツ取締役
ほんとうの調達・購買・資材理論(http://purchasing.cobuybtob.com)主筆

大学卒業後、メーカーの調達部門に配属される。調達・購買、原価企画を担当。バイヤーとして担当したのは200社以上。コスト削減、原価、仕入れ等の専門家としてテレビ、ラジオ等でも活躍。企業での講演も行う。メールマガジン『世界一のバイヤーになってみろ!』執筆者。著書に『調達力・購買力の基礎を身につける本』『調達・購買実践塾』『だったら、世界一の購買部をつくってみろ!』『The調達・仕入れの基本帳77』『結局どうすりゃ、コストは下がるんですか?』『調達・購買 戦略決定入門』(ともに日刊工業新聞社刊)『牛丼一杯の儲けは9円』『営業と詐欺のあいだ』『1円家電のカラクリ0円iPhoneの正体』(ともに幻冬舎刊)『会社が黒字になるしくみ』『思考停止ビジネス』(ともに徳間書店刊)など多数。

メールアドレス : sakaguchitakanori@cobuybtob.com
Twitter : @earthcream

牧野直哉  著者プロフィール

(まきの なおや)

ほんとうの調達・購買・資材理論(http://purchasing.cobuybtob.com)主筆
神戸大学大学院経営学研究科非常勤講師

大学卒業後、重工業メーカーにて小型発電プラントの輸出営業を担当。海外へ進出する日系企業への設備販売、現地据付工事管理、オペレーション支援事業に従事。後に資材調達部門へ異動し、機械部品調達を担当。これまでに担当したサプライヤーは国内外合わせると500社以上。担当事業の海外進出により、海外での新規サプライヤー開拓、調達システム構築も経験。現在は外資系機械メーカーでサプライチェーンマネージャーとして、生産管理、購買、物流管理のマネジメントに従事。社外での講演活動も行っている。バイヤー同士が集まって化学反応を起こす場である「 購買ネットワーク会」幹事。購買ネットワーク会ではケーススタディの執筆、スペシャルトークのほかに、「材料費高騰と戦うバイヤーの集い」といったテーマを絞った分科会の開催に力を入れている。著書に「調達・購買 戦略決定入門」(日刊工業新聞社刊、共著)

メールアドレス : makinonaoya@cobuybtob.com
Twitter : @ryomaskmt

購買ネットワーク会  著者プロフィール

購買ネットワーク会について

 「日本の購買を変えていく取り組みをしよう!」というバイヤーの熱い想いから発足。大手製造業・小売業・調達コンサルティングファームをはじめとする600名以上のメンバーが集まる調達・購買業界では日本最大の組織。現在、関東、中部、関西、中四国で定期的に開催されている交流会には毎回30名~60名の現役バイヤーが出席。バイヤーのバイヤーによるバイヤーのための企画によって運営。交流会では講演、ケーススタディ、ロールプレイを実施。現在では、バイヤーのニーズに合わせた様々なコンテンツを提供。購買ネットワーク会のコンセプトは次の3点。

(1)日本一ハードルが低くて高い会であること
(2)自主的な会であること
(3)楽しく、役に立つ会を目指すこと

購買ネットワーク会HP:http://www.co-buy.net/
Twitter : @cobuynet

目次

はじめに あらたなサプライチェーン構築をめざして

Chapter1 震災時の危機に立ち向かったバイヤーたち
Story① 突然の混乱はバイヤーたちを飲み込んだ
(解説パート1)地震当日に何ができたのか
Story② 「大丈夫」という言葉より大切なもの
(解説パート2)各企業が集めた情報と、情報収集で気をつけたこと
Story③ それでも調達活動は続いていた
(解説パート3)対策の立案、状況の掌握と生産の確保
<調達・購買担当者にとっての震災~アンケートより①>

Chapter2 緊急時、サプライヤーへの対応が復興につながる
Story④ 「緊急対策」はキャンセルできない
(解説パート4)サプライヤー工場生産復旧までの遠い道のり
Story⑤ 納期催促の悲劇と喜劇
(解説パート5)不完全なサプライヤー生産ライン復旧の中での納期調整
Story⑥ バイヤーはサプライチェーンを守れたのか
(解説パート6)震災被害からの復旧、そして復興へ
<調達・購買担当者にとっての震災~アンケートより②>

Chapter3 企業におけるこれからの危機管理
      ~供給クラッシュ全体破断状況にいかに対処すべきか
Story⑦ 思索としての危機管理
Ⅰ.クラッシュ・マネジメント:予測不能事態の発生
Ⅱ.4つのクラッシュ...もの・サプライヤー・社内連携・指揮系統
Ⅲ.供給クラッシュへの対応
Ⅳ.震災後の調達・購買部門のあり方
(解説パート7)震災後のバイヤーのあり方
1.情報の取り扱い
2.バランス感覚
3.想定外

コラム
震災後の通信手段について
近いからこそわからない
買い占めは起こったのか
冷静と情熱のバイヤー
復興の順番
企業がもつべき柔軟性

はじめに

はじめに あらたなサプライチェーン構築をめざして

 春先の穏やかな金曜日の午後、明日は会社にいかなくてよいというだけで、オフィスの雰囲気がほんの少し明るくなる、そんな時間でした。私はいつも通り、自分の席で翌週から始まるあるプロジェクトの準備に追われていました。ちょうどそのときです。
 ああ、揺れているな。そう感じたときにはだんだん収まっていくのがいつもの地震でした。ところが、なかなか収まりません。それどころか過去には経験のない振れ幅で、だんだんと大きくなっていきました。小さなころから、揺れを感じたら机の下に身を隠す訓練は、数多く行ってきました。でも、実際に揺れている中、恐怖の中で机の下に潜るのは初めてです。そして停電。これはいつもとは違う。そして、とうとうやってきたか、との思いが頭をよぎりました。
 地球上で起こる地震の約10%が、日本で起こっています。日本人にとって地震とは日常的に発生するものです。過去にも新潟県中越地震、阪神淡路大震災と大きな地震に襲われてきました。ただ、今回ほど被災地域以外で震災被害による間接的な影響を受けたことはありませんでした。すくなくとも、日本で発生した地震の影響でアメリカの自動車メーカーの稼働が長期間ストップすることはなかった。今回の地震の影響ほど、我々がグローバル化の真っ直中にいることを思い知らされた出来事はありませんでした。
 震災発生以降、経験のなかった出来事が同時に発生し、バイヤーはサプライチェーンの維持に奔走していました。そして新聞・マスコミ誌上でも、かつてないほどに「サプライチェーン」との文字を目にしました。調達・購買とはサプライチェーンの一構成要素です。日本のGDPの30%を占めている製造業のサプライチェーンが寸断され、その影響は遠く海外にも及んでいました。そんな中で、ある業界のトップ同士が震災からの復旧に際し連絡を取り合い、協力し合い、この難局を乗り切ろうとしているとの新聞報道を目にします。サプライチェーンの中にいる調達・購買担当者、バイヤーたちも、いまだかつてない災禍ののち、復旧へ向けどのように動き、困難に立ち向かっているか。私は知りたくなりました。こんなときだからこそ、日本のバイヤーが協力し合う場が必要ではないかと考えたのです。
 私は「購買ネットワーク会」という日本で最大のバイヤー組織を運営しています。そのメーリングリストを通じて、さまざまな情報を収集しました。現在進行形である震災復興に関して、バイヤーがとるべきアクションについて、叡智を結集しようと考えたのです。
 具体的には、
1.何ができたのか
2.何ができなかったのか(やりかたかったけど)
3.そしてやれなかったことに対する解決方策
を明確にしていきました。もちろん、メーリングリストだけではなく、ヒアリングに出向き、各社のその他の取組みについても情報を収集し続けました。また、バイヤーたちとの対話の過程で、あらたな調達・購買像について模索しました。
 全国のバイヤーたちと震災対策会議も実施し、震災発生に起こった出来事と、その後の行動に関するアンケートも実施しました。これによって、様々な現実が明らかになりましたが、一つ印象的なことがあります。震災発生の3月11日を境に、日本が大きく変わってしまったとの論調を目にする機会が多くなったことです。
 私が多くのバイヤーとの語らいの中で感じたことは、その変化は過去からの延長にすぎないという真実です。震災の影響によって、東北地方を中心とした製造業の供給力は一時的に大きく失われました。その状態から立ち直る過程で、バイヤーが直面した出来事は、すべて震災発生前バイヤーとしての行動と密接につながっています。震災前のサプライヤーとのリレーションは、震災発生との事態に直面しても、震災前の状態をそのまま反映していました。良好な関係は、震災発生という危機的な状況の下でも、前向きな対応をサプライヤーとバイヤー企業の双方に生み、好ましい関係を築く礎をより堅剛なものにしていったのです。一方、良好でない関係を乗り越えるほどに震災の影響は作用しなかったのです。
 今回東日本を襲った震災は、東北、関東に大きな被害を残しました。震災発生に準備していたクライシスマネジメントやBCP(事業継続計画)は、その多くが平常時に作られていました。震災発生という非常時にはあまりにも脆弱な内容であった反省もあります。一方、阪神淡路大震災での実体験をベースにした対応マニュアルによって、スムーズな対応を行った企業もあります。そのような差はなぜ起こったのか。事前に検討したマニュアルに、経験にもとづいた真実の落とし込みがあったかどうかの違いです。ただ、大変だったと苦労話で終わらせることなく、経験を理論や仕組みへと反映させ、歴史から学んだかどうかによるものなのです。
 本書では、震災発生から何を感じどのように動いたのかについて、現場で動いていたバイヤーの経験をベースに描きました。震災前と後がつながっている。この事実が求めるのは、震災発生という事態に際しての具体的な行動や判断を、日常へとどのように取り込んでいくか、将来どのように活かすのか、です。世界の10%の地震が発生する日本だからこそ、日常的に地震発生に備えることが必要になります。
 我々は未曾有といわれる震災を体験し、今、まさにその復興活動に取り組んでいます。調達・購買というサプライチェーンを担う我々も、これからの姿を模索しています。そこには、東日本大震災で起こったこと、体験したことから真の原因を探り出して、あらたなサプライチェーンを見いださなければならない。そもそもサプライチェーンの考え方は、日本で行われていたものを、欧米の研究者たちが日本の強みを分析し、理論化・体系化したものです。今回の災禍によって、強靱なサプライチェーンの構築を世界に先駆けて行う。これからの日本のバイヤーに課せられた使命です。震災発生をきっかけとして、日本のバイヤーによるあらゆる取り組みで、サプライチェーンがより強くなることを願っています。
 最後に、本書の執筆にあたっては、日本全国のバイヤーに、購買ネットワーク会を通じてご協力を頂きました。また、本書の執筆によって発生する印税もすべて東日本大震災の復興へ何らかの形で役立てられます。本書を書くことで、そして本書を手にすることで、復興活動に協力してくださったバイヤーの皆さん、ほんとうにありがとうございました。

 2011年7月
 牧野直哉 

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